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モブオ(主人公)が、10年ぶりに部屋から出て結婚相手を探すというところからお話が始まります。見た目も冴えないモブオですが、まわりのひとたちが温かい。それは、モブオが誰にも害を成さない、優しい男だからです。
手違いで洗われたお見合い相手は言葉も通じない長身のモデルのような外国人男性、ミーティア。もうこの設定で「次はどうなるの?!」ってなります。未散ソノオさんはこんなふうに読者の気持ちを惹きつけるオープニングが本当にお上手です。
モブオの置かれている環境は、悲しいことが起こっていても彼をその場に留め置かず、どんどん物事を進めようとします。それに対してミーティアが見せる思いやり、言葉の選び方、目線や触れ方がどれも本当に愛がすみずみまで行き届いている美しいものでした。まだこの時点ではお互いが思いやりを持って接している状態ですが、それは少しずつ形を変えて恋に発展してゆく経緯に胸が震えます。それぞれを愛おしいと思い始めると、どちらも照れ屋なのでかわいいやり取りなのですが、確かに愛を育んでいる様子は動物同士が大切に思い合う姿に似ています。欲のかけらも見当たらない、柔らかく優しく包み込むような素敵な関係は、周囲の攻撃にはとても強固な絆を発揮します。二人ともに悲しい過去があり、その傷にそっと触れて一緒に泣いてあげるような、支え合う姿にわたしも涙が出ました。素晴らしい作品です。
(あと、通訳兼キューピッドの戸張先輩の存在も最高でした。彼にも幸あれ)
発想は未散先生らしい独創性があって面白く、序盤は評価がどっちに転ぶか予想がつきませんでしたが、2人の出会いとくっつき方があまりに突飛なので、物語が進むにつれそこを無視できなくなり、最後までどうしても気になってしまいました。きっと第一印象でフィーリングがものすごく合ったのだと思うし、言葉が通じなくても常に互いの思いやりに溢れた人間性を感じられ安心でき、2人とも思い切れたのだということは分かります。それでもあまりにもトントン拍子すぎて、何かの弾みで破綻しないだろうかと不安を感じたり、2人の心情についていけないので会話が頭上で行われているかのように頭に入ってこなかったりして。戸張とミーティア、彼の姉の話からもっと時間をかけてここまで辿り着いていたら、感動できたかもしれません。私の感性にはちょっと高度な2人でした。
ソノオ先生の儚げな線で描かれた絵がストーリーにピッタリあっていました。
なんかつらい事あったのかなぁ〜と悲しみが滲み出てる2人。次どうなるの?って期待しながら読みました。
悲しいことは彼らだけじゃなくてもう1人の準レギュラー出演者も背負っていて、そういう経験からみんな人にとても優しく穏やかな心持ちなのが素晴らしかった。
起こった過去は変えられないし
その事について話された時にかける言葉って難しい。
ましてこのカップル共通言語が無く通訳さんを交えないと細かいところは伝わらない。
カタコトの英語や日本語だけでなく表情、仕草から気持ちを伝えあおう、分かり合いたいと思って一生懸命なところが可愛くいじらしくて心に響きました。
絵は好みじゃないんですけど、試し読みで気になって手にとることにしましたが…
あああ……凄い素敵なカップルでしたー!!
出会って間もないのに、しかも言葉も満足に通じないのに、精神的な繋がりの深さに心があったかくなる。
後から後から湧き出る2人の抱えるトラウマエピソードに涙止まりませんでした。モブオもミーティアも家族を悲しい形で失って、彼らの抱える心の傷は簡単には消えることはないけど、でも。
2人が結婚することで、「家族」というものに明るい未来を見出せたんじゃないかなと思いました。
2人の絆と深い愛に魅了された素晴らしいお話でした!
未散先生の作品はいつも独創性があって、未散先生でしか読めないおもしろさがあるので好きです。
そして、人間の性や弱さ、どうしようもないところへ向ける目がやさしい。
森魚が10年引きこもっていたけど、そんなことは関係なく、ミーティアが悲しむ森魚にやさしく寄り添ってくれる。
引きこもりについてはむしろ、その間、両親を死なせてしまった罪悪感に向き合って、何度も何度も後悔して考えて…自分が生きることは罰ではない、との結論に行き着く。
その考えを自分を責めるミーティアにも伝えてあげて、森魚もミーティアへやさしさを向けることができるのがやさしい世界だなと。
戸張先輩がただの通訳係なだけでなく、彼も心に傷を負っていて、2人の仲を取り持つと同時に3人で癒される場面が、ああ、未散先生やさしいなと思いました。
彼らが傷ついた現実世界はやさしくないんですけどね。そこをシビアに、でも陰鬱にはならずに描いて、ひょうひょうとしながらも前を向いて生きる人物が頼もしいなと、爽やかで元気になれる読後感でした。
