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表題作誘蜜リコリス婚姻譚

斎木千加也 25歳 製薬会社営業社員
千眼寺丹緒 30歳 製薬会社社長の弟・研究者

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

フェロモンで妖魔を誘う「人餌」体質の 丹緒は、外に出ると襲われるため、兄が経営する製薬会社で平和に軟禁されつつ研究者として働いていた。
ある日、研究室に配属されてきた千加也が取引を持ちかけてくる。「あんたを自由にしてやる、その代わり――」野生の狼のような年下の男が偉そうに提示した条件は、大好きな兄を陥れること。
丹緒は断固拒否したが、千加也は毎日やってくる上に「甘い匂いがする」と丹緒を嗅ぎ始め―― !?

作品情報

作品名
誘蜜リコリス婚姻譚
著者
さとむら緑 
イラスト
亜樹良のりかず 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
シリーズ
いちご牛乳純情奇譚
発売日
ISBN
9784778125561
3.6

(9)

(0)

萌々

(6)

(3)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
33
評価数
9
平均
3.6 / 5
神率
0%

レビュー投稿数3

タイトルがちょっと難しい?

「タイトルがちょっと難しい…?」
が、読み終えての最初の感想でした。なんだかすみません(笑)
不勉強なのでリコリスの匂いがぴんと来なかったのもあったかもしれません。

シリーズに出ていた正甫がお兄ちゃんが登場し、しかも恋人あり発覚して驚きました。それと「月夜ぎんいろ山犬異聞」ではちゃんと働いているの?と疑問だった未知留が結構忙しそうで予想外でした。

と、シリーズを通して読めば新発見があって楽しかったのですが、この1冊だけで読むと、専務の考えなさぶりに呆れてしまい、そんな役員がいる会社は大丈夫なのかと気になっているうちに、二人が幸せになっていたという感じでした。

あと、表紙イラストで妖魔が丹緒にちょっかいをかけているのが面白かったです。

0

やっと人並みの幸せが


「いちご牛乳純情奇譚」「月夜ぎんいろ山犬異聞」に続く3作目のお話。
とは言え、前2作と話は絡んでいないので単独で読んでも問題ありません。
ただ、前作から出ている人もいるので読んでいると話に入りやすいと思います。
今作は、唯一1作目から登場していた「薬売り」千眼寺正甫の異母弟・千眼寺丹緒(受け)の話になります。

人に害をなす妖を退治し薬の材料にすることを生業とする「薬売り」。
丹緒はその「薬売り」の一族に生まれる妖を引き寄せるフェロモンを出す人餌として生まれます。
人餌はその名の通り「薬売り」と共にいて、妖をおびき寄せる餌となることが役目なのですが、異母兄であり現「薬売り」である正甫は丹緒を人餌として使うことはせず、丹緒は年の離れた弟として大切に育てました。
妖に襲われる体質なため、研究所で仕事をするようになった今では自分の研究室の奥に自分の部屋を用意してもらい、自ら軟禁生活を送っています。
ある日、兄の政敵であるはとこの史明が甥・斎木千加也(攻め)が営業として連れてきます。
千加也は丹緒が正甫に不当に軟禁されていると勘違いし、丹緒を解放するかわりに正甫を裏切るようにと唆します。
自分を大事にしてくれた兄が大好きな丹緒は即座に断るのですが、千加也は毎日のように研究室にやってくるのです。
毎日顔を突き合わしているうち、千加也は丹緒から甘い匂いがするといいだします。
丹緒のフェロモンは人間には効きません。千眼寺一族である千加也が丹緒の体質に何か影響をうけたのではないかと薬を処方するですが、今度は丹緒が千加也から甘い匂いを感じるようになるのです。
そんな時、妖が研究所内に侵入し丹緒が襲われます。

千加也が丹緒のフェロモンを感じるのは何故か。
千加也から漂うフェロモンはなんなのか。
丹緒が軟禁されているという初めの設定が崩れた今、相変わらず千加也を丹緒の元にやってこさせる史明の真意はどこにあるのか。
どうやって結界の張られている研究所に妖が入ってこられたのか。
謎が次々と現れてきます。


今作は受けも攻めもあまり好みじゃなかったです。
たとえそれが善意だったとしても、他人から聞いた話を鵜呑みにして他人の幸福を勝手に判断し、人の話を聞かない千加也。
いくら話を聞かないからといって、自分が鍵を開けなければ入ってこれない研究室に何度も入れてしまったり、自分では対処できないくせに兄に迷惑を掛けたくないからといってちゃんと報告しない丹緒。
どちらも私にとってはいらいらさせられる人たちで、前半は読むのが苦痛でした。
特に千加也は地の果てまで落ちた評価が爆上げされるというギャップ萌えを狙っていたのか、いくら社内で馴れ合っても仕方ないと思っていても年上でかつ先輩に対して初対面から「おまえ」だの「おい」だの敬語とはいわないまでもせめて丁寧語すら話さないという時点で社会人としてありえない。
この時点で読むのをやめようかと思ったくらい、いらいらしました。
自分から要求して、丹緒の作ったスパイスたっぷりの薬膳カレーやお茶を息も絶え絶えに食べさせられているシーンは胸がすく思いでした。

丹緒は物心つく前から父親に人餌として正甫の役に立つようにと教えられてきましたが、早くに父親が引退し正甫の代になってからは普通の人として生活できるようにバックアップしてもらったため、兄に多大な恩を感じています。
兄の役に立ちたいという想いが強くかなりのブラコンです。
相手が人外だから仕方ないとはいえ婚約者との仲を邪魔したいとか精神的にはべったりな感じ。
丹緒の精神年齢が10代の男ならいざ知らず、30歳という年齢からするとちょっと気になるところですが、箱入りだったことを考えると10代というのも仕方のないことかもしれません。

千加也は父親を早くに亡くし、千加也と妹と母親は伯父である史明の援助を受けて成長しました。千眼寺製薬の身内ということで友人関係にいろいろあったらしく、かわいくない性格になってしまいましたが、何事にも面倒がらず真摯に向き合うとても真面目な性格です。

中盤を過ぎ、二人の気持ちがお互いに向き始めてお互いのことを心配するようになってやっと先が気になる展開になってきてストレスなく読めるようになりました。


史明は自分が正甫にとって代わることが最終目的だと思ったのですが、どうみても破綻しているようにみえる計画なので真意がわからずどきどきしました。
が、最終的に明らかになった計画はあまりに杜撰な計画であきれました。いい歳した大人が知らないということを免罪符にやりすぎでした。
正甫は経営的な手腕は史明の方があると言っていましたが本当にそうなのかと疑問に思いました。
史明のしでかした騒動に対応を正甫がどうするかがわからず、最後のほうまでバッドエンドになるのだろうかと心配しました。
そういえば、過去2作も最後までどうなるかわからずひやひやする展開だったと今気づきました。
相応の後始末をすることになったのでもやもやすることもなく良かったです。

30歳まで箱入りにならざるを得なかった丹緒が制限されるしかなかった今までの分まで楽しんで二人で仲良く暮らしてほしいものだと思いました。

ところで、今まで皆勤だった正甫にすでにお相手がいたということに一番驚きました。彼らの話も結構気になります。20年以上も待たせている竜神様のところに嫁に行ってしまうのはいつになるのでしょうか。

正甫の秘書の灰脊は「月夜ー」の攻め様で、話に出てきた吸血鬼は「いちごー」の受け様です。
ちょっとでも気になったら彼らの話も読んでみてはいかがでしょうか。
3作とも全くテイストの違う話ですが、切なく優しいく泣ける話だった「いちごー」が一番私は好きです。

1

絶対幸せになってよ!!!

私は作品を購入する時、無条件で好きな作家さんか、内容や設定等、必ず惹かれる部分があるものを選びます。
イラストレーターさん買いや苦手な設定と、外す確率が高くなるものに使う時間とお金が勿体ないと個人的には考えてます。
が、今回、好きな作家さんではあるのに、あらすじには1ミリも惹かれないと言う微妙な状況。
迷った挙げ句好きなシリーズと言う事で購入です。
結果、当たりでした。
これは、あらすじが良くないね!!
もうちょいエロ方面では無く、ほのぼの部分や感動的な部分を強調したほうがいいんじゃないでしょうか。




で、こちら「いちご牛乳純情奇譚」、そして「月夜ぎんいろ山犬異聞」と世界観を同じくする作品です。
共通して出て来るキャラクターは居ますが、作品としては独立しているので、今作だけで問題無く読めます。

このシリーズ、人外と人の恋愛譚がテーマなんですよね。
何故「恋愛」では無く「恋愛譚」なのかと言うと、物語を語っているように感じるからなのです。どこかおとぎ話を思わせると言うか。
優しくて切なくて哀しい。
そして最後は幸せな二人にホロリとくるラスト-。
前2作も既読ですが、個人的には今作が一番好みでした。


内容ですが、人外×特殊体質の人間による恋愛譚。
ちょっと切ない部分はありますが、基本的にはほのぼの優しくしっとり読ませてくれるお話になっています。

妖魔を誘うフェロモンを発する「人餌」体質の丹緒。
妖魔から身を守る為、兄の経営する製薬会社で保護されながら研究者として暮らしています。
そこに新しく配属されて来た、丹緒の「匂い」に惹かれる強引で強気な年下の営業マン・千加也。
彼は丹緒に「自由にしてやるー」と取引を持ち掛けて来てー・・・と言うものです。

妖魔から逃れる為、ずっと狭い世界で生きてきた丹緒。
とは言え、丹緒自身はそのことに全然不満を抱いてはいません。
何故なら、兄で特殊な家業を継ぐ正甫から大切に愛されて育ったから。
そんなワケで、丹緒が不憫な青年かと言うと、割とのほほんとしていて人懐っこかったりするんですよ。

で、萌えるのが丹緒と千加也のほのぼのしたやりとり。
丹緒の兄と敵対している専務の身内で、元々は手先的な存在である千加也。
なのですが、彼は基本的に善人。
丹緒の事も、非人道的な扱いを受けている彼を救いたいと言う気持ちがあったりするのです。それ自体が勘違いなんだけど。
で、丹緒の研究室を訪れては説得を試みる千加也。
このパートがやたらほのぼの可愛くてですね~。
やたら匂いが強いスパイスだのパクチーだの個性的な食べ物が好きな丹緒。
強引に丹緒手作りの料理を要求する千加也に、特製スパイスカレーをお見舞いして、撃沈させたりとか。
二人がたわいも無い会話なんかを重ねながら、互いに惹かれ合って行くのが、何とも可愛らしく描写されています。
自然に「いってらっしゃい」とか丹緒が言っちゃって、それに照れるけど隠して普通に振る舞う千加也みたいな。
いやもう、めっちゃほのぼのなんですよ~。

そうこうするうち、何故か安全なはずの研究室で妖魔に襲われる丹緒。
更に丹緒から感じる甘い匂いに、どんどん強い吸引力を感じ始める千加也。
そして千加也の身に起きる驚きの変異ー・・・と言った驚きの展開が続きます。

ここからがちょっと切なくてですね・・・。
引き離される二人的に。
互いが互いを想い、相手を助けるために自分が犠牲になろうとするんですよね。
こうゆう、愛する人が幸せなら・・・みたいな覚悟て、すごくすごく切ないからこそ萌えてしまう(´;ω;`)
また、こんな辛い状況だからこそ、何もかも捨てて丹緒を連れて逃げると決意する千加也に心をすごく動かされる。

ずっと狭い世界で生きてきた丹緒。
そんな彼が、広い世界に飛び出し、二人で生きようとする-。
もう、絶対幸せになってよ!!と熱く応援したくなる。
そしてそして、最後に美味しい所を持って行く兄!!
丹緒は深く愛されてるなぁと、なんだかホロリとしちゃいましたよ!!
兄もホントいいキャラなんですよ。

この作品、基本的に悪い人は出て来ないのです。
敵対する専務すら、何だか憎めないキャラ。
そんな感じの、優しくあたたかく、おとぎ話を思わせる素敵な作品。
とても好みでした。



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