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表題作進行性恋愛依存症

切れ者の社長・九鬼瑛一(30代半ば)
有能秘書・巫御圭(九鬼より一つ下)

その他の収録作品

  • ドラスティック・メタモルフォーゼ
  • 報復モラトリアム
  • 街に天使の降りる夜

あらすじ

経済界の若き俊英・九鬼は、自ら興した企業グループの順調な成長とは裏腹に、プライベート面も補佐する秘書の御巫に苛立ちを抱き続けていた。献身的ではあるが常に無表情で冷淡な御巫の態度は、学生時代に見せていた九鬼への恋情をまったく忘れたかのようだったが、御巫もまた、九鬼のそばにいる苦しさは増すばかりだった。二人のあいだに高まる摩擦熱は、御巫のある申し出で限界を迎え──。大量濃密愛書き下ろし!
出版社より

作品情報

作品名
進行性恋愛依存症
著者
かわい有美子 
イラスト
今市子 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
発売日
ISBN
9784862634719
3

(32)

(5)

萌々

(4)

(15)

中立

(4)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
10
得点
90
評価数
32
平均
3 / 5
神率
15.6%

レビュー投稿数10

我慢していたんだね

かわい氏のお話にしてはエロが濃い目ですが、全く不満が無かったので神評価にしました。

びしょぬれ特集用の短編のお話【ドラスティック・メタモルフォーゼ】から始まったようですが、十分説得力のある関係で、満足しました。(御巫のように献身的な人って、ファンタジーな気もしますが、そこはねぇ、BLですから)
【報復モラトリアム】から読んだほうが、時間軸的にはわかりやすいですが、やっぱり順番どおりに読むほうがインパクトが強いと思います。

かわい氏曰く、ツンデレ二人のお話になっちゃったそうですが、こういう関係も「ツン」扱いでいいんでしょうかね?

御巫(受)は、大学の頃から九鬼に恋しているわけで、恨みとともにずーっと引きずっている恋の相手に一矢報いたいというか、気づかせたいというか、ツンツンしてしまうのはわかるのですが、九鬼(攻)のほうは、それなりに気になっていたものの、どちらかといえばすっかり忘れていた関係なので、切れ者のクセに自分の恋には鈍感なだけで、ツンには見えない。
そもそも、何も言わずに渡米しちゃったりして、お前はツンじゃなくて鬼畜だ!その後だって、ヘッドハンティングさせたんだったら、早く側へ置いてやんなさいよ!です。いやー、御巫くん、よく2年以上も我慢しました。堪忍袋の緒が切れると、こうなるんですね。沢海さん(ヘッドハンティングのスペシャリスト)はきっと、全てを察知していてお膳立てをしてくれたと思いますよ。

今回も、働く男のかっこよさ満載な上(特に、九鬼よりも御巫の仕事には頭が下がります)、華々しい大学バスケと、事故の後遺症による挫折と、色々なシチュエーションから二人の関係をうかがうことができて、キュンキュン度も高く、本当に楽しかったです。

3

パズルを組み立てていくような面白さ

かわい有美子さんの作品は
これまではドラマCDでしか知らなかったのですが
先日、こちらで「空色スピカ」のレビューを読んでとても興味が湧いて
その際に薦めていただいた作品のうち、この作品が先に手に入ったので
かわい作品デビューの1冊となったんですが。。。

いきなりエロエロなんですけど!
もちろん、薦めていただいた際にも「エロい」とは聞いてたんですが
1ページ目からいきなりエロいとは聞いてなくてびっくりw
しかし、そんなことにめげずに(笑)読み進めていくと
それぞれのお話の構成の巧みさにどんどん惹き込まれていきました。

「ドラスティック・メタモルフォーゼ」がプロローグ的な位置付けなんでしょうが
これを読む限り、なぜこの二人がここまでお互いの事を牽制してたのか
そして、そんな二人がなぜここまで激しい感情で欲望を貪り合うまでになったのか
表面的な事しかわからずに、何かすっきりしないままなんですよね。

その謎解きが「報復のモラトリアム」で明らかになっていくのですが
このお話の構成が秀逸なんです。
大学のバスケット部で将来を嘱望された優秀なプレイヤー・九鬼(くき)と
そのプレイに魅せられてマネージャーとして入部した御巫(みかなぎ)。
そんな彼らの大学時代と
九鬼が興した会社に御巫が引き抜かれ再会した頃の話が
交互に配置され
しかも、視点も九鬼視点だったり、御巫視点だったりするので
読者の方は、まるでバラバラのパズルを組み立てるようにして読み進む事になり
それが、この二人のすれ違いや歪んだ感情をうまく表していて
とても効果的なんです。

そして、この二人が長い間
そんなやりきれない感情を押し殺していたからこそ
そしてお互いの気持ちを確かめ合ったあとには
あんなに激しい欲望のぶつけ合いのようなプロローグの場面になったんだな、と
すごく納得するわけです。

「街に天使が降りる夜」は
「報復のモラトリアム」でイライラさせられた読者へのご褒美的な甘々なお話でした。

しかしながら、未だにピンと来ないのがこのタイトル。。。
この「進行性恋愛依存症」にかかっているのはどちらなのか?
ずっと九鬼に憧れ以上の感情を抱いていた御巫がそうなのか
意識しないまま、御巫の事を必要としていた九鬼がそうなのか。。。
両方がそうなのだ、と思うほうが一番近い気はしますが。。。

かわいさんの他の作品をよく知らないのでなんとも言えませんが
私が今まで読んだ作家さんの作品とは一味違ってて
新鮮な気持ちで読めましたし
他の作品もぜひ読んでみたい、と思いました。

2

さすが、びしょぬれ特集…

社長にコップで水を頭からかけられたびしょ濡れ美人秘書が、
夜の社長室で社長にご奉仕中から始まった小説。
初っ端からこれか?!
いったいこの二人はどういう関係なの?!
と、掴みはOKというか。
いきなり濃厚な作品の世界に引き込まれてしまいました。

やり手の実業家・九鬼を秘書として公私ともにサポートする御巫。
二人がどうして深夜の社長室で淫らな行為に耽るに至ったか、
大学時代に何があったのかという事はその後、描かれて行くのですが。

大学時代、憧れの先輩・九鬼に尽くしまくった御巫。
怪我が原因で御巫に対して、暴君と化した九鬼。
九鬼の苛立ちも痛いほど判るし。
御巫の献身っぷりも痛々しくて切ないし。
二人で一緒にいるだけでストレスがたまり、
精神的に疲弊していくピリピリとした緊張感が痛かったです……
でもその痛さに、なぜか萌えるのです。

初めにエロエロ、次に精神的痛さ、
最後にあまあまを楽しめた充実した作品でした。

3

暴君社長×従順な秘書の2年半にわたる焦らしプレイごっこだなw

九鬼(くき)と御巫(みかなぎ)って
登場人物の名前がなんかめちゃくちゃ変わってると
その本の内容は“色モノ”なのかな?と、思うんだけど・・・
リーマン陵辱モノではあるけど“色モノ”というほど
ぶっとんではなかったですね。
けっこう心理描写においては共感できるようなリアルさもあり
読み応えのある作品でした。

いきなりエロシーンで突入するお話。
このエロシーンの意味を少しずつ紐解いていくんですよ。

暴君社長×従順な秘書は
大学時代の先輩後輩という間柄。
絵に描いたような傲慢でドSな攻めと
銀縁メガネにストイックでドMな受けv
再会してからは2年半も、お互いに焦らしプレイというw
どんだけおまえら我慢強いんだよという感じ。
攻めは酷い奴極まりないけどwww
受けがドMだから仕方ないよね★
当て馬や邪魔者はまったく登場しないのに
こんなにこじれるってふたりとも相当だよねwww

このまま終わったらつまらんなって思ったけど
オマケがすげぇ甘くてw
こいつデレやがったーーーっvと、ちょっとギャップ萌えしました。
最後に攻めが好きになったw

挿絵は今市子さんだからまたなんというか静かなエロスv
正直絡んでいる挿絵より
目も合わさないでテレビを見ている攻めの横で
淡々と朝食の支度をしている受けに萌えました。
ぱりっとびしっと整然とした感じでネクタイ姿v好きです。


2

執着受の粘り勝ち

まさに受の粘り勝ちといったお話でしたね。実に15年にもわたる執着愛には感動を覚えました。ここまで一人の男を思い続けられるって凄いです!

若手企業家、九鬼の秘書である御巫の仕事は、九鬼のビジネス・プライベイト両面をサポートすること。御巫の仕事ぶりは隙がなく、行き届いたものなのですが、御巫は九鬼の前では一切感情を覗かせることなく、機械のように振舞います。過去の可愛く一心に自分を慕ってくる御巫とのあまりの違いに九鬼は苛立ちを覚えます。しかし、御巫の変化にははっきりした理由があるんです。 

二人は大学バスケ部の先輩・後輩でした。九鬼は日本屈指の天才的なスタープレイヤー。怪我のために選手の道を諦め、マネージャーとなっていた御巫は、九鬼に対して崇拝と恋慕の情を抱いていました。将来を嘱望されていた九鬼でしたが、ある夜、事故に巻き込まれたことで、生活は一変します。後遺症でバスケはおろか、一生歩くことすらままならないかもしれないという体になってしまうのです。友人も恋人も離れていく中、ただ一人御巫だけは、九鬼の側で献身的に尽くします。日常生活やリハビリの介助に加えて、性欲の処理まで(大人しい御巫が九鬼に乗っかっちゃう場面は、御巫が可愛すぎて、ちょっぴり萌えてしまいました。介護萌え?)。が、御巫の献身は、九鬼にとっては重荷だったんですね。自分を知る者がいない場所で再出発するために、九鬼は御巫に何も告げることなく突然、アメリカに渡ってしまいます。

当然、残された御巫は深く傷つき、何かが欠け落ちたようになってしまいます。それでも九鬼を忘れることができず、彼を憎んだまま想い続ける。そして、10年余を経て、帰国した九鬼に誘われ、共に仕事をするようになってからは、御巫はは九鬼に対して心を閉ざし、そんな御巫に九鬼は苛立ち、すぐ側にいるのに限りなく遠い、そんな関係が続いていきます。九鬼に心を閉ざしながらも、身を粉にして九鬼のために万全のサポートをしようとする御巫がホントに痛々しい…。九鬼にとって自分は無価値な存在なのだ、とひたすら自虐思考まっしぐらの御巫が哀れすぎて、かわい先生、これ以上御巫を虐めないで、とか思いながらもついツンデレ御巫に萌えてしまいました(私ってSか?)。 

二人の間には、純然たる意識の差があるんですよね。学生の頃、御巫にとって、九鬼は世界の中心だったんだと思います。それに対して、事故直後の九鬼は、心の中に他者を容れる余裕はなく、ある意味「自分しかいない」ような状態だったので、御巫を「捨てた」という意識すらないんですよね。だからこそ、御巫がなぜ自分に対して心を閉ざしているのかが分からない。うう~ひどい鬼畜だ、九鬼…。

ただ事故直後の九鬼の気持ちも考えてみると辛いですね。御巫は、決して同情からではなく、ただただ純粋に九鬼の役に立ちたい、九鬼に尽くしたいという一心で側にいただけなんですけど、プライドが高い九鬼にとって、無力感の中で相手から一方的に与えられるという関係は耐え難いものだったんじゃないかな。過剰な贈与は時に相手の負担になりますよね。だから、九鬼が御巫の方を向くには、少なくとも九鬼が自力で運命を切り開こうとする強い意思を取り戻す必要があったのかもなあとも思います。

御巫にとっては、本当に辛い15年でしたね。彼の中で、この15年というのは、止まった年月だったんではないでしょうか。御巫の仮面が剥がれ落ちて、泣きじゃくりながら、九鬼に向かってずっと抱えていた複雑な感情を吐露する場面はこっちも泣けてきました。

「あなたなど…憎んで…憎んで」

ずっと憎みながらも恋慕を捨て去ることが出来なくて、だからどんなに辛くても側にいることをやめられなかった…。切なすぎます…。長い時をかけて求めていたものを手に入れた御巫には本当に幸せになって欲しいです。

全体として御巫の九鬼に対する執着が丁寧に描かれていて読み応えがありました。ここまで思われていると知ったら、そりゃ九鬼も感嘆するしかないですね。 

ただ、九鬼の気持ちがいまいち見えにくい部分もあって…。九鬼が御巫に対し「愛おしさ」を感じるのが唐突すぎるんですよ。なぜあの場面で?という観が否めないというか。直前まで征服したいという欲求しかなかったはずなんだけど。九鬼の御巫に対する感情は、征服欲とリンクしていて、「愛おしさ」というのも実のところ意のままにならない御巫を征服し、仮面の奥にあるものを引きずり出したという達成感のようなものにすぎなかったのではないか?そんな一抹の不安が残りました。今まで苦しめた分まで御巫を大事にしてくれるといいんですけどね。

ラブラブの場面の割合が少なかったので、その後の二人のラブラブな姿を番外編で描いて欲しいなあ。

2

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