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表題作蛍火

宮地洸一,40歳,地方出身の私立大学文学部教授
塚原千里,40歳,直木賞候補にもなった中堅小説家

その他の収録作品

  • 蛍火 SIDE:洸一
  • 蛍火 SIDE:千里
  • 未来航路

あらすじ

大学教授の宮地洸一と小説家の塚原千里は、学生時代から連れ添って二十年の「恋人」。しかし、ここ数年は一緒に暮らしながらもセックスどころかまともな会話もない日々。ある日、些細な諍いから洸一は煙草と財布だけを手に家を飛び出し北へ…。一方、千里は独り残された部屋で互いを想い合っていた頃を思い出す。かつてはあんなに愛しく想い、添いとげようと決めた相手だったのに…。二十年の歳月を経て、凍りかけた想いに再び火が灯る――。不器用な男たちのラブ・クロニクル。

作品情報

作品名
蛍火
著者
栗城偲 
イラスト
麻生ミツ晃 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
発売日
ISBN
9784796400299
3.4

(35)

(10)

萌々

(6)

(12)

中立

(3)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
14
得点
113
評価数
35
平均
3.4 / 5
神率
28.6%

レビュー投稿数14

長く付き合っているパートナーがいる方に

どうでしょう?とお勧めしたくなる作品。四十路に突入したカップルがお互いの関係を見つめ直すきっかけをくれた、ささやかな心の旅路。よもやこういったお話をBLで読めるとは思いませんでした。

大学教員の洸一が疲れて仕事から帰宅すると、パートナーで小説家の千里は締め切り間際の追い込み中。すれ違いの生活が続く中、しばらく振りに顔を合わせたのに、家の中は散らかり、二人が交わす言葉はトゲトゲしく素っ気ない。俺はお前の何なんだ…。ムシャクシャして洸一は家を後にし、ハッテン場へと赴く。そこで彼は若い頃の千里によく似た健太と出会い、二人はプチ逃避行の旅へ…。

実は健太にも大事な人がいて、彼は洸一の中に未来を、洸一は健太の中に過去を見出し、それぞれに思いを馳せる。過ぎ去ってしまったあの頃、今この手の中にはないきらめく恋の幻影は確かにあった…。あの時の気持ちを痛いほど思い出すことで二人は袋小路の現状を打破し、一歩踏み出す勇気をもらうのです。

二人は身体を重ねようとするのですが、洸一が健太を千里の身代わりのように抱くことをためらうところにきゅんとしました。うさぎのぬいぐるみに名前をつけていつも連れて歩く健太は、最初どんな不思議ちゃんキャラなんだ?と引きましたが、これには深いワケがあって、明らかにされていくにつけ切なくなります。

読ませてくれますねぇ。よく作り込まれているのに仕掛けが浮いてこなくて、最後まで物語に引き込まれました。章立ては前半が洸一視点、後半が千里視点で構成されていて、出会いから現在までの二人のヒストリーがきちんと網羅されています。例によって後日談が収録されていますが、前向きな明るいトーンで締めくくられているので心地良く読み終えることができました。

そしてなんといっても本書のタイトルが物語の核を美しく表現していて特筆に値すると思うのですが、blacksimaさまが的確に解説してくださっており、個人的にとっても共感しています。

読後、心に残る余韻がジンワリとあたたかい気持ちにさせてくれるお話でした。

12

なんて斬新

40歳、同居して20年の倦怠期カップルのお話。
忙しさにかまけて、お互いに、会話も,触れ合うこともなくなっていた二人。
静かに不満をためていた洸一は、ある夜とうとう言ってしまいます。
「私って何?」
おおー!
コレってさ、家庭内別居とかさ、熟年離婚の時に妻が言う言葉じゃん。
BLでもって、いきなりこう来るか!!っと、その斬新さに感心。
でも、その洸一が家を出たあとの展開は、ちゃんとBL。
前半は洸一視点で健太との北への逃避行。
健太と一緒に過ごすことで、洸一は千里と、今、生きて共に暮らしていられることの僥倖に気付きます。
後半は千里視点。
洸一がいない間に、千里は二人の出会いと、そのころの気持ちを思い出します。
普通のBL作品だと、この後半部分がメインでしょう。
前半の洸一と健太の話も、これだけだとちょっと都合よすぎな甘い展開かも知れません。
この、それぞれのエピソードだけでも充分成立しているお話が、二つ合わさることで、作品に深みや奥行きがましているのです。
更に書き下ろしには、ちゃんと関係を修復した二人と、ちゃんと前を向いて歩き始めた健太が和やかにお話ししちゃうという、実に前向きな後日談まで付いてきます。
しみじみと、よかったなぁって思える、読後感のいい作品でした。

7

私のジャスティス!

めでたし、めでたしのその後のお話が読みたいと思う自分にとって
まさに神作品でした。

20年連れ添っているもののここ数年はすっかり倦怠期であった2人が
これで遂に終わるのか…と思った時
改めてお互いのことや過去を振り返り
お互いが唯一の存在であることを再認識していく過程が
洸一、千里両方の視点で丁寧に書かれていて
ものすっごくキュンとしました。

二人の関係が洸一=奥さん、千里=旦那なのも自分の萌えに合致。
そもそもあらすじ読んだときに
洸一の家出の仕方が「夫の世話と家事に疲れた妻」そのもので
攻嫁キター!!状態だったのでわくわくして読んだのですが
読んでみると千里も亭主関白って感じで
さらには受・攻両方が四十路と言う自分の好みのそのもの。

しかし、当て馬とのHってのが私はかなり地雷なので
健太君が出て来た時に「失敗だったか…」と思ったのですが
読み進めると自分の思いを裏切り素晴らしい活躍をしてくれて
「地雷?そんなの関係ないぜ!」なキャラになりました。
ほんと、この子にまでキュンキュンさせられるとは思わなかった。

だんだんと洸一と健太君が先生と生徒みたいに見えてきて
そっからだんだんお父さんと息子のように見えてきて
書き下ろしでの千里との初対面で私の萌えは振り切れました。

落ち着いてからもう一度読み直すと
2人の想いを深く読み込むことが出来て
より一層胸が萌えが振り切れました。
神様ありがとう。

6

こんな作品に出会うとは

BL、、、としてのカテゴリでこのような作品に出会うとは思ってませんでした。でも、あってもいいかなって思いました。だって、世の中の恋愛小説と同じくらいの広さを持てるBLの世界で、こんなおじさんたちのドラマがあっても良いと思うんですよね。
いわゆるオヤジもの、ってのとは全く違う切り口。

すごく、ありふれた(世の中のCPがみんなラブラブで過ごしてるわけないよね)日常の積み重ねの中で、今回の二人のようにすれ違って何のために居るのか?って思っている人も多いかも。
男女なら籍が入ってるし、とか、子供がいるし、とかの重石があるんだろうけど、同性同士だとそういうのも無かったりして。子供がいない夫婦も同じようなことを思い悩んだりするのかも知れませんね。

なんだかBL作品の海の中で、吐出した作品なのかなって思いました。

3

熟年カップルの

読み終わってからちょっと間が経ってしまったので
その時の気持ち・・とは少し違うのかもしれませんが、
読後がすごく良い作品でした。

長い間連れ添ったゲイカップルのその後。
あんなに好きで一緒になったはずなのに、いつかキスすらしなくなった。
いつも一緒にいるのは当たり前。
けれど、顔をみない日も多くなり、会話を交わさないのも日常になってしまった。
自分のなかに、相手を好きな気持ちはある。
愛していると思う、けれど、自分は相手にとって・・そしてこの関係はいったいなんなのか。
わからなくなった攻がさ迷いで~から始まるお話。

よもや、ほかの男と逃避行とか-(o゚Д゚ノ)ノ
のっけからどんなよ^と思っていたのでうが 
そこからの、巻末に向けて~のお話がじわじわと
グっとくるお話でした。
攻からみていた視点、受から見ていた視点。
苦手だったはずの料理をして待っている受の図に思わず
ズキュンと涙ホロリ。

最後は奇跡のご対面wふくめ
読み心地の良い作品でした。
出会い~ラブハピーエンドが作品としては全体的に多いですが
こういうのもたまにはいいよなとしみじみ思わせてくれる作品だったかなと思います。

6

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