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前作が良かったので、こちらの作品も購入しました。3つのお話が収録されています。切なくてしっとりとしたお話たちでした。
以下、作品ごとに感想です。あらすじは既に書かれている方がいらっしゃるので割愛します。
「モイストヒーリング」
元教え子(大学生)×高校教師。
先の方も感想でおっしゃっていますが、ピアスホールが安定しない所とふたりの関係性が対になっていてグッときました。「きっと一生消えない傷になる」という裏表紙のモノローグがこういう言葉たちで構成されていたのかと思うと、すごくいいなと思いました。
「春の凪」
生徒会の先輩×密かな噂がある後輩
作者さんの絵では初めて見るタイプの受けでした。童顔の褐色男子です。意中の先輩に、言葉少ない彼はどうにか関係を築きたかったのかな、と思うとこういった健気な受けもかわいいと思いました。
「目を閉じて君に会う」
転校してきた人気者×地味でおとなしいクラスメイト(幽霊)
設定が設定なだけにどういうオチになるのか気になったのですが、等身大な彼らの終わり方というか、無理矢理ハッピーエンドにならずかといってバッドエンドでもなく、すとんとくる終わり方でした。もし受けの子が幽霊じゃなければと思いつつも、作中の台詞であるようにこんな関係でなければ話すこともなかった彼らはやはり、今の関係性だからこそ繋がりが持てたのかな、と切なくなりました。
西野君の心に切なくも愛しい傷ができた瞬間だったのだと思います。
「ピアスホールをあけるとき」
高校生×高校教師
「モイストヒーリング」の過去にあたります。前回は攻めの教え子視点で描かれていますが、今回は先生視点です。表題作が「モイストヒーリング」と聞いていたので最後にこの話がきてなるほど、と思いました。所々「モイストヒーリング」と同じ場面があり、このシーンの先生はこんな風に思っていたのか、と心情を知ることが出来て良かったです。
「ファーストピアス」
表題作ふたりの描き下ろしです。
「モイストヒールング」の最後でふたりが交わしていた会話を知っているため、攻めが先生を名前呼びをしている姿にすごく萌えました。ふたりが順調に進んでいる様子が伺えてよかったです。
どのお話にもエッチシーンはありますが、濡れ場メインではありません。
今作のコンセプトが後書きに描かれており、作品を読み終えた後にもう一度読み返したくなりました。
1作まるまるかと思いきや短編集でした。
でもなんとなーく全てが同じくらいの温度の作品で最初から最後まであまりテンションが変わらず読めました。
だからと言って、似てるストーリーがあるとかではなく、どれもとても良かったですよ!
ピアスの2人の話は、先生と生徒設定ですがあまり禁断感はなく、ただ不器用なすれ違いがあって、でも卒業後にちゃんとまた会えるのがゆっくりだけど確実に離れられなくなってる感じが良かったです。
私が1番好きだったのは「目を閉じて君に会う」
相手が幽霊… もう幽霊だって分かって読んじゃうから切ない…いつも幽霊系って、本当は生きてるとかないかなって思いながら読むけど…生きてなかったぁ…
一言だけの文字のやりとりとか好き…
死ネタは苦手なのですが、登場人物が1番好きでした。
結果、短編集だけど一作一作濃くて良かったです。
初読みの作家さまでしたが、あらすじに惹かれて購入してみました。
3つのCPのお話が収録されている短編集。すべて学生さんが主人公のお話。はじめ同じ高校が舞台かと思って読んでいましたが、よくよく見ると制服がちょびっと違うので、別の高校なんですね。
ネタバレを含んでいます。苦手な方はご注意を。
『モイストヒーリング』
大学生の甲斐くんが主人公。彼視点で話は進みます。
高校の卒業の時に、ずっと好きだった担任の柊先生に告白した甲斐くん。
卒業したら「先生」ではない。
好きになってくれなくても良い。せめて思い出が欲しい。
玉砕覚悟でそう告げた甲斐くんをあっさり受け入れてくれた柊先生ですが。
会いに行けば会ってくれる。身体の関係もある。けれど先生から連絡が来ることはない。先生は自分に対して恋愛感情を持ってくれているのか。
好きになった人に傷をつけてほしい、という意味合いもあり、先生にピアスホールをあけてもらう甲斐くんですが…。
というお話。
なかなか定着せず出血し続けるピアスホールが、二人の不安定な関係とリンクしていて、そして好きな人につけられた傷は消えてほしくない、という恋心ともつながっていてなかなか良かったです。
『春の凪』
在籍する高校で生徒会役員をしている佐倉くん。ある日、夏凪くんという後輩の噂を聞きます。頼めば誰でもヤらせてもらえる、という噂。確認の意味もあって夏凪くんに声をかけるのですがあっさり肯定されて。その流れで関係を持つ二人ですが…。
夏凪くんは無表情で言葉も少ない子なので何を考えているのかわからなかったのですが、徐々に見えてくる彼の佐倉くんへの恋心が健気で可愛かった。言葉よりも身体が先行する彼らですが、高校生らしい、青く若い恋が描かれています。
『目を閉じて君に会う』
高校2年生の時に転校してきた西野くん。
そつなく人間関係をこなせる彼ですが、ある日教室の自分の机に男子生徒が座っているのを見かけます。その後机にちょっとした雑談が書き込まれるように。そのことに気付いた西野くんが机に返信を書き込むことで、相手が誰ともわからずやり取りをするようになるのですが、実はその相手は…。
というお話。
相手が相手だけに、西野くんの恋が成就することはない。けれど、確かにそこにあった彼らの恋が、切なく、儚く、思わず落涙。
表面的にそつなく何でもこなす西野くんが、彼との恋を通して素の自分を出すようになる姿が切なかった。
最後に『モイストヒーリング』の番外編にあたる『ピアスホールをあけるとき』『ピアスホールは塞げない』が収録されています。『ピアスホールをあけるとき』は柊先生視点。なので『モイストヒーリング』で分かりづらかった柊先生の気持ちが描かれています。
柊先生が甲斐くんに恋心を抱くようになった過程。そして甲斐くんに告白されたときの彼の気持ち。
『モイストヒーリング』ではなんとなく掴みどころのないキャラでしたが、『ピアスホールを~』では年下の、しかも生徒に恋する先生の葛藤が描かれていて萌え度がアップしました。
高校が舞台にはなっていますが、登場人物たちに接点があるわけではないのでなんとなくブツギレな感じ。『モイスト~』を軸に、じっくりストーリー展開したほうがよかったんじゃないかなと思ったりもしましたが、それでも、すべてのお話に共通しているのは「相手への切ない恋心」なので、読んでてキュンとしました。
「この恋が自分にとって一生の傷になる」というテーマで描かれた高校の教え子と元担任の先生のお話。
卒業の日にずっと好きだった先生に開けてもらったピアス。
このピアスの穴 にまつわるお話が三つ入ってます。
【モイストヒーリング】は開けてもらった側の視点(学生・受け)
【ピアスホールをあけるとき】は開けてあげた側の視点(先生・攻め)
【ファーストピアス】は描き下ろしで付き合ってる二人のお話。今度は先生の耳にピアスを開けようとして……
ピアスの穴というものに何の価値も見出していなかった私なので、ピアスの穴を開ける=相手の体に一生の痕跡を残せる行為という考え方に目から鱗。
そっかー、だから他作家さんの話(ブルースカイコンプレックス)で 受けのピアスの穴をいつ開けたかいう話になり、攻めが何となく不機嫌になってしまうという箇所があって、そこまで怒る事かなぁ??って余り理解出来なかったんですよね。…… 疎い私。
全部読んでみれば両片思いである事がわかるんだけど、先生は元生徒に対して有望な子だからこそ自分のせいで輝かしい将来の妨げになってはいけないという思慮があって、生徒からの告白を全面的に受け入れる事ができない。そんな状況で生徒の耳にまさに開けようとする時に先生が心の内で呟く「この傷は俺が恋をした証」というくだりはグッときました。
【目を閉じて君に会う 】
こちらは幽霊くんと相思相愛になってしまう高校生のお話。相手が相手だけに恋が成就したと言って良いものなのか……。
しかし恋は確かに存在しているのに二人に未来がないところが何とも切なかった。もっと二人が早く出会っていれば……と思わざるを得ません。
死ネタはほぼ九割読まない事にしているので表題作だけに惹かれて購入しましたがまさか、死んでいる人ネタが載っているとは思いませんでした…。
本当に、悲しくて切なくてどうしようもなくなってしまうので読みたくはないんですが、この本の中で一番好きなお話でした…。あぁ、こうしてレビューを書くために思い出すだけでも悲しくなります…。
最後はプリンが減っているじゃないですか、なのでまた来てくれるようになったのかな?とか、自縛的な存在で元の場所から離れられないんじゃないかな?とか、攻めくんが卒業したらどうなっちゃうのかな…とか、実は成仏しちゃった?などと考えると深みにはまってしまいます。
あぁ、切ない…。
あがた先生の本はこれが初めてだったのですが、作画も非常に安定していて場景に色が見えるようでした。これから他の既刊も読んでみたいと思います。