電子限定かきおろし漫画付き
これ、帯で損してるような気がする……。
早寝電灯さんは作家買いしてるんだけど、「睡眠姦していい?」の帯で、イロモノ路線に変更したのかしら……とかなり戸惑ったんですよね。
腐友さんもこの帯で、え?!と思ったらしいけど、とりあえず読んでみたらとっても愛を感じるお話で良かったよ!と勧めてくれたので、読んでみました。
3CP登場しますが微妙に世界が繋がっていて、どれも勇気を出して現状から一歩先に進もうとする姿がとても良かったし、人を好きになるっていいなーって思えるお話ばかりでした。
【表題作】
これが一番好き。
帯と試し読みだと、睡眠姦に挑戦する同棲カプのエロ奮闘記みたいに思えるけれど、スポットライトが当たってるのはそこじゃないんです。
スポットライトが当たっているのは「愛」。
お互い、相手のことが好きで好きで好きすぎて、相手がいつかいなくなってしまうかもしれないという根拠のない不安に揺れてしまったりする気持ちが、過去と現在の二人の姿を織り交ぜながら描かれています。
「睡眠姦」なんて突拍子もないことを言い出した攻め。
そのせいで受けが困りつつも「ずっとお前のことを考えていたよ」と吐露するんですが、それを聞いた攻めが受けの胸に顔を埋めながら「明日もそうしていてほしい…」と願うシーンがすっごーーく好き。
自由人ぽく見える攻めが恋人の言葉でこんなにも安堵する姿……萌える。
【for you and for me】
カフェ店員と常連客である大学の助手との恋。
「今日もなにか授業をしてくださいよ」と話をせがむ店員に対して、恐竜のことや菌のことなどあれこれ教えてくれる先生(助手ですが)。
そのやり取りについて「あの人が何か教えてくれると世の中がすごくいいもんで埋まってる気がする」と表現するところがすごく好きで、何にも代え難いひととき感、特別感に溢れてます。
(そして、特別姦と変換するようになってしまった私のPC……どうやらレベルが一歩上がってしまったらしい。)
【やがて土より咲く】
庭の発掘調査をさせて欲しいとやってきた考古学者と、その家に住む青年とのお話。
土に埋めたいもの、埋めたと思っていたものが再び日の目を見るまでのお話だけど、彼がいてくれたから……というところが良かった。
作家買い。
早寝電灯さんの絵柄ってちょっと独特で、もしかしたら好みが分かれるかも。けれど、この絵柄だからこそ描かれていく世界観が、個人的に途轍もなくツボなのです。
早寝電灯さんはエロいイメージがない作家さまなのですが、今作品の帯にびっくり。
「睡眠姦」。
もしかしてエロに特化した作品なのか?
早寝電灯さんなのに?
と思いつつ手に取りました。
一つの大学を舞台に紡がれていく、3つのオムニバス。
が、大学がメインに据えられた作品ではない。少しずつリンクしている、といった展開。
早寝電灯さん作品の大きな魅力の一つは、登場人物の感情の機微が細やかに描かれていることだと個人的に思っています。ゆえに、序盤、「?」と思うことも多い。が、その伏線を上手に回収していく手法がとにかく秀逸。
いたるところに撒かれた伏線が、読み進めていくうちに一本の線になっていく。
今作品に収録されている3作品に共通しているのは、相手への深い愛情。少しずつ見えてくる彼らの想いに激しく萌えました。
同じ大学を舞台にしているオムニバス作品、でありながら、3作品とも雰囲気が全く異なる。
ゆえに、1冊で3度美味しい。
個人的に短編集ってあまり好きではないのですが、読み込めば読み込むほど味わいのある作品ばかりですごくよかった。
文句なく、神評価です。
不思議な雰囲気と胸にじーんと残る余韻のある、早寝先生らしい一作。
大好きで何回も読み返しています。
どのお話にも同じ大学が出てくるのですが、どれも大学関係ではありつつも大学外のお話です。表題作のカプはその次のお話にも登場。
「睡眠姦、していい?」とはなんとも刺激的で、エロに振り切った話か!?と思うのですが、そういうのではなく!
攻めが突然そんなことを言い出した理由も、二人の馴れ初めも、知ってしまえば「なるほど」と思えて切なくなる。
表題作も大好きなんですが、特に好きなのは3つ目の「やがて土より咲く」。
受けの家の庭、土の下に埋められた悲しい記憶が、攻めによって”優しく懐かしい記憶”として掘り起こされていく…そんなお話です。
どのお話にもどこか切ない感じが漂うのですが、最後にはほっと優しい幸福感に包まれる感じ。静かな夜に、じっくり読み返したくなる作品です。
これは「帯買い」です。
『睡眠姦していい?』これまでそんな宣言あったでしょうか。
睡眠姦って、相手に内緒で、寝てる間にこっそり身体を拝借しちゃうヤツだよねぇ。
それを事前に同棲中の恋人に宣言しちゃうなんて面白い!ムフフ♡…と、帯や私の購入動機はこんな感じでしたが、作品全体は穏やかで優しく、しっかりと早寝電灯先生の世界でした。
エロはほとんどありませんので、ご注意を。
◆表題作
「今度体調良さそうなとき狙って睡眠姦していい?」
穏やかな朝のひととき、同棲中の恋人・健斗から突然そう宣言された広典。
戸惑う広典は、仕事中も「睡眠姦」の文字が頭から離れない。
でもそれを期待する気持ちもあり、いろいろ想像しては赤面してる広典がめちゃくちゃ可愛い!
「体調が良さそうなときに…」という健斗の言葉を意識して、サプリ飲んだりしてるんだもん。
めちゃくちゃ睡眠姦待ってるじゃん!って思うと可愛すぎて萌えまくりでした♡
…と前半はこんな感じで、睡眠姦をエロとして楽しむ作品なのかと思っていたんです。
ところがこれが全く違っていて、2人の出会いの回想から始まり、真面目な恋人同士の愛の話へと展開していくんです。
優しくて、ホロっとくるような、思いもよらなかった感情に持っていかれました。
ちなみに、睡眠姦のほうはあっさり。
◆for you , and for me
カフェ店主・一誠と大学助手・全利(まさとし)の淡いラブストーリー。
健斗たちが大学生の頃の話で、表題作カップルも登場します。
ただただ優しい。時が止まったような2人きりの静かな空間で育まれる恋は、さながら純文学の世界のよう。
◆やがて土より咲く
このお話、すっごく好きです。
明野のもとへ、自宅の庭で考古学の発掘をさせて欲しいと依頼してきた喜田。
実は2人、はっきりとした面識はないものの、同じ大学出身で、当時チャラいグループに属していた明野は、しっかりと自分の世界を持って飄々と生きている喜田に対し、憧れの気持ちを抱いていたのです。
コミカルな場面もありつつ、シリアスな展開もあり。
事故で家族を失った明野が抱える、悲しみや後悔や向き合うことへの恐怖を、喜田が一緒に解き放っていくシーンが素敵でした。
かなりの良作だと思います。
早寝電灯先生、作品に空気感を与えるのが上手いなぁ。
3話とも、男に恋する戸惑いや葛藤を前提に、独特の空気感に包まれた穏やかなラブストーリーが綴られていて、個人的にとても好みでした^ - ^
「早寝先生のエロ?」と思いつつも睡眠姦目的で買ったつもりが、別のところで見事にやられちゃいました。
ただし、描き下ろしの鏡エッチは、エロかった♡
3編構成の短編集ですが、全て1つの大学に関係するお話です。
表題作、『明日、起きたら君は』
同棲3ヶ月目の広典さんと健斗は、大学の先輩後輩。
学生時代から健斗には驚かされっぱなしの広典さんだが、ある朝健斗から仰天発言が!
「今度体調の良さそうな時狙って睡眠姦していい?」
会社にいてもそのことばかり考えてしまう広典さんだが、悩みつつも体調を整えている描写にクスっとします。
睡眠姦をしたかった理由はそれほど大したものではないのですが、お互いのことが好きなんだという気持ちを再確認できたいいきっかけになりました。
問題の睡眠姦自体もあっさりしていました。
元々、酷いことをしたいわけではないですからね。
健斗は、広典さんが自分の事をたくさん考えていてくれた事が嬉しかったようです。
告白の時の健人の涙、可愛かったなー。
二作目は、『for you, and for me』
喫茶店の店主、一誠さんと大学で助手をしている全利さんとのお話。
コーヒーの香りに誘われて店に入ってきた全利さん。
実は、一誠さんは店の前を早足に通り過ぎる全利さんの事がずっと気になっていました。
ストローの袋で花を咲かせる全利さんに、恋の花を咲かせる一誠さん。
色々な話をするうちに2人は仲を深めていくが、一誠さんは告白するつもりはなくて…。
このお話にも表題作の2人がチラッと登場します。
二人の通う大学の助手をしているのが全利さんで、結果的にこのカップルをきっかけとしてお互いの思いに気付くことができました。
このお話はとても可愛いいのですが、あっさり目ではあります。
最後は、『やがて土より咲く』
私は、このお話が一番好きでした!
ある日、明野の家に庭や畑の発掘調査をさせて欲しいとの電話が入る。
考える余地もなく断る明野だが、勝手に庭にやってきたのは大学の同級生だった喜田で…。
明野には庭を掘り返されたくない理由があり、また喜田には自分の事に気付いて欲しくないと思っています。
明野は、大学時代から自分の知らない世界を知っている喜田に憧れと恋心を抱いています。
庭には、掘り返すのが怖いけど目を反らせない思い出が埋まっていて…
喜田は明野と接するうちに明野の自分への気持ちに気付き、ドキドキします。
この時、もう喜田と明野は両思いなんでしょう。
喜田は明野の支えになり、明野はやっと前を向いて生きていけるのではないか…と思わせるラストでした。
ジワっと胸が熱くなり、良作だったと思います。
表題作の健斗が発掘作業を手伝ったという描写があり、その関係者が喜田なのかな?と思いました。
書き下ろしでは、あの一件以来積極的になってしまった健斗と広典さんが鏡の前で…という展開に!
3作とも少し臆病な人々のお話でした。
勇気を出して一歩を踏み出す、そんな姿が印象的で読み終わると温かい気持ちになります。