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表題作時のない男 顔のない男3

飛滝惣三郎,天才俳優
篁音彦,新人俳優

その他の収録作品

  • 愛のない男
  • 時のない男

あらすじ

天才俳優・飛滝に海外ドラマから出演依頼が!三ヶ月をイギリスで過ごす飛滝を追って、飛滝の秘密の恋人で、新人俳優の音彦はロケ地へ飛ぶ。
今度の飛滝の役どころは歴史大作の準主役で、フロックコートの似合う男「男爵」。
百年前の男になりきった飛滝の邪魔をしたくなくて、見守るだけのつもりだった音彦。
けれど撮影現場の事故で急遽、飛滝と共演することになってしまい…。

作品情報

作品名
時のない男 顔のない男3
著者
剛しいら 
イラスト
北畠あけ乃 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
シリーズ
顔のない男
発売日
ISBN
9784199003622
3.9

(34)

(12)

萌々

(10)

(10)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
12
得点
132
評価数
34
平均
3.9 / 5
神率
35.3%

レビュー投稿数12

受けの成長が足りず終われない感

シリーズ三作目で二話構成。最初の話は同業で付き合う面倒臭さ全開で、音彦が飛滝の才能に嫉妬したり悩んだりとぐるぐるしている。ちょっと売れて自尊心の高まりも見えるため、今までより複雑化し、あまり読んでいて楽しいとは思えなかった。

恋人としての付き合いが安定し、慣れが生む傲慢さはある種リアルだが気分良くは読めない。音彦はその点を自覚しながらも感情制御が下手になっていて、飛滝の相手としては物足りない。
前作で一緒に成長していって欲しいと思ったが、音彦は飛滝に甘えて退化してしまったように感じた。

二作目は飛滝がイギリスドラマの撮影に向かうお話。三カ月の別離が我慢できない音彦は、追いかけて見学に行ってしまう。
正直ここに萌えは一切なくて、ただただ撮影を滅茶苦茶にしないでくれ~とヒヤヒヤした。スタッフの所沢に一番共感したかも。無駄に現場の仕事を増やしている音彦は邪魔者でしかないんだから、謙虚でいて欲しかった。

結局俳優として得た答えは当たり前すぎることで、ここまでやらなきゃそこに辿り着けないなんて先が思いやられる。平均より少し歩みの遅い売れない俳優、ってだけなら良いが、音彦はやっと情緒が芽生えて人間として成長を始めた飛滝の恋人。
そういう目で見ると、どうしても見劣りするというか、力不足というか。

飛滝に魅力を感じてシリーズを追いかけてきたため、飛滝の厄介モンペのように音彦を評価してしまう。もっと飛滝の隣に並べるくらい精神面の成長を見せて欲しかった。
ここで終わりと言われても、安心して音彦に飛滝を任せることはできない気持ちをどう処理したらいいんだろう。まだ終われない感を残したまま終わってしまったシリーズだった。

とりあえず飛滝が好きだ、という感想だけは強く残った。

0

シリーズで一番好き

前の2冊に時間をかけたのに、こちらはあっという間に読みました。一番好きだった!今回の所謂劇中劇が海外かつ時代物だったのがよかったのだと思います。下手な現実感がなく、空想の世界にもっていってくれますからね!ありがたいことです。

この2人、大体いつも2人だけの世界に浸ってるから、「時のない男」で第三者の介入が沢山あったのもよかったのだと思います。女性に優しくする2人は、2人の世界にいる間は見ることができないから。こういうシーンでキャラクターのイメージが固まるのが好きなので、もっと見たかったなと残念に思う。

ひたすら我儘な音彦にずっとうんざりしていましたが、音彦が家族に愛されて育った良い子であり、ひたすら甘えるのは飛澤に対してだけで、なよなよはしていない豪気ある男だと思えるこの巻に満足。気づくのが遅くなってごめんよ。

そして3冊読んでやっと、どんな役でも音彦を惚れさせる飛澤と、どんな飛澤にも惚れる音彦の構図を楽しむ作品なんだと気づけたので、もっとこの2人が読みたくなった。お約束の安心感と美学。

0

読み返し率の高い大好きなシリーズ

「顔のない男」シリーズ最終巻。電子版表紙絵あり、挿絵なし、あとがきあり。
剛先生はもっとこのふたりを商業で書きたかったんじゃないかな? と思わせる終わり方。読者としても、まだまだ音彦の成長や、音彦を愛することで変化していく飛滝を見てみたかった。
1冊目の「顔のない男」の、兄弟役を演じるふたりがすごくツボで、それ以来ちょくちょく読み返しては、やっぱりいいなあ、と思うのだが、本作はそこまでのドキドキハラハラするような感覚はなく……というか、前二作に比べて、平和だなという感じ。3冊目となると音彦も役に入った時の飛滝の扱いを心得ているし、恋愛関係も安定しているからかな。

前半の「愛のない男」は、撮影現場で犬を預かってきた音彦が、飛滝の自宅で犬の世話をすることになるお話。飛滝が実は、動物や子どもが苦手だということが判明する。ミステリアスな男という印象が、犬の世話をすることで人間味が出てきて、可愛いところもあるのね、という印象に変わります。

後半の表題作。イギリス制作のドラマに出演することになった飛滝を追って、渡英した音彦。相変わらず飛滝は役に憑依されていて、私生活でも別人になりきっている。こっそり会いにきた音彦を見てもなりきり演技を崩さない飛滝に、音彦も即興の演技で応え…。
音彦はわがままで甘ったれだし、飛滝は変人だけど、一緒にいるとお互いが成長できる、いいカップル。この先のふたりは想像するしかないけど、音彦は役に入って別人になった飛滝に毎回新鮮な気持ちで恋ができるから、マンネリもしないのでは? そしてそんな音彦に対して、「浮気だ」って言う飛滝が可愛いくてニヤけてしまう。いやいや、中身は自分ですから! 

剛先生の文章、恋愛を通して成長する人間の描き方、飛滝のように歪みを抱えていたり、音彦のような完璧ではない人間に対して、温かな目線を感じるところが本当に、いつまでも大好きです。

0

作家没後に存在を知ったのが残念

「顔のない男」シリーズは、この巻で完結。シリーズ番外編の「優しい男」は同人誌で市販されていないので、諦めます。
続編を希望したくても作家没後なので、叶わないのが残念。
座布団⇒花扇に続いて、レビューで調べると、作風が似ているのがこのシリーズだということで、電子書籍で読みました。・・挿絵部分が全部空白で抜かれているのが残念だった。

好き嫌いあるかもしれませんが、私はこの二人の物語がとても面白かった。
音彦と飛滝は、「花扇」の初助と寺田の組み合わせと少し似ているような気がしました。

 音彦は、負けず嫌いで積極的。
我ままで甘え上手な正直者。嘘をつけない。
個性が無いのが個性の美男子。
音彦は、智恵子抄の智恵子のようにパートナーの天才が放つ才気に圧倒されても押しつぶされず、競わず尊敬することで上手く愛を繋げている甘え上手
・・素の状態がしっかりあるので、音彦は役柄の憑依状態を長時間保てない。

 飛滝は、特殊な生い立ちのため歪みがある性格。
天才型で憑依気質の飛滝は、音彦には包容力ある年上。
音彦には愛を向け、音彦の反応を鏡としている。
飛滝は、音彦のような気性の者でなければ愛せないし長続きしない。
犬や動物が苦手。
醜くあることを嫌い、常に美しくあろうとする。
完璧に役にナリきる憑依型演技を徹底してきたため、素の自分を見失っている・・・だから「(自分の)顔のない男」
音彦と出会ってからは、飛を演じることで音彦を忘れず私生活を保っている

剛シイラ先生に、長生きしてほしかった。そしてもう少しこのシリーズを書いて欲しかった。今頃シリーズを知ったことを残念に思います。

・・・調べたもの

「時のない男」
長妻藩 前田建明 男爵
   ・・長妻藩は(架空の藩)だから資料無し。

*前田家は維新後、鉱山と造船業に関わってはいます。ホントか??と驚いたのですが、架空と知って安堵。ビックリした。
次は、剛しいら先生作、架空の長妻藩関連の「倅なれども」を読もうと思ってます。

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もっと憑依を!

「顔のない男」の3巻目。
中編2編での構成です。

「愛のない男」
あのパーフェクトな俳優・飛滝惣三郎にも苦手なものがあった…それは「子役」と「動物」。
はあ〜なるほどねぇ。飛滝もその辺り、平凡だな!と思ったりして。
今回は、音彦とCMで共演する子犬と数日生活する展開になり、飛滝がアワアワする…
すると犬が逃げ出して、追いかけた音彦が足を怪我したりで、結局犬の世話は飛滝がすることになり飛滝の意に反して?犬はすっかり飛滝に懐く、という話。
この話は、音彦が飛滝に甘えてどこまで我儘を言っても許されるのかを試すような話でもある。「愛のない男」どころか、音彦には甘々だし、多分犬も飛滝の愛情深さを感じ取っているのでしょうね。

「時のない男」
飛滝は海外の映画のオファーを受け、3ヶ月イギリスへ。音彦は離れているのがイヤで追っかけでイギリスに行ってしまう。
イギリスでの飛滝は実在の人物、決闘で死んだ「前田男爵」になりきっていた…
来ました。なりきり展開!いつも通り飛滝は現実と役柄の境がわからないくらいに「前田」になっていて、撮影現場や下宿に見学に行く音彦も飛滝に合わせて、『日本から勉強しにきた者です』なんて言ったりして。
外国の監督やスタッフ達も飛滝の存在感に圧倒されるほどの飛滝の憑依ぶりは相変わらず。
音彦が意外と売れてきていて、今後結構いい俳優さんになりそう?

3作目で、よく言えば読みやすい、でも私的にはちょっと迫力が足りないかな、もっと怖いくらいの憑依を下さい!…という感じでした。

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