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表題作ボクはH

長谷川征司,29歳,真剣な交際を条件に付き合う
花井あゆむ,20歳,経験豊富な大学生

その他の収録作品

  • he is pure(描き下ろし)
  • カバー下:イラスト

あらすじ

二十歳の大学生・花井あゆむは経験豊富で気持ちいいことが大好き! ある日、都会の雑踏で男同士の痴話喧嘩&別れの場面に遭遇したあゆむは、振られた片割れの男・長谷川征司をホテルに誘ってみることに。すると長谷川から「真剣に俺と交際してくれるなら」と条件を出されてしまう。思わず頷いてしまったけど、遊び慣れているあゆむには「真剣な交際」がどんなものかわからなくて…?

作品情報

作品名
ボクはH
著者
吉田ゆうこ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
バーズコミックス・リンクスコレクション
発売日
ISBN
9784344845138
3.9

(63)

(25)

萌々

(22)

(8)

中立

(2)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
12
得点
239
評価数
63
平均
3.9 / 5
神率
39.7%

レビュー投稿数12

トラウマを抱えた者同士の恋愛の結末は…?

吉田ゆうこ先生の新刊です。
吉田先生といえば、
可愛らしい話から痛い話まで幅広く描かれる作家さんですが、
本作は非常に切なく、それでいて胸が温まるようなお話で、
今までの中で一番好きな作品になりました。

20歳のあゆむが、街中で頬を叩かれた男性・長谷川に声をかけたことから二人は知り合います。
長谷川が振られたのも男であり、
探りあいながらもお互いにゲイだということが分かり、
誘うあゆむに長谷川は、真剣交際を条件に出すのです。

あゆむは遊び慣れているけど、
とても純粋で素直ないい子だとすぐに分かります。
対して長谷川は、真剣交際こそ条件に出したものの、
あまりの変わり身の早さから、
疑念を抱かざる終えません。

どんどん長谷川に夢中になる あゆむ と、
どこか胡散臭い長谷川のやり取りは、
キュンとさせられる様な事ばかりで、
長谷川は あゆむ にいつも欲しい言葉をくれます。

しかし、そんな あゆむ を傷つけるのは、
やはり長谷川なんです。
自分が酷く振られたトラウマから相手にも同じ事を仕掛け、
バレたら捨てるということを繰り返しており、
ついには あゆむ も捨てられてしまいます。

誰に傷つけられても決して人のせいにはせず、
そうされる自分が悪いのだと思ってしまう あゆむ は、
自分に自信がなく、心が繋がる喜びを知らないから、
身体だけを求めるようになってしまったのだと思いました。

恋愛には勝ち負けがあり、
自分は強者でいたいと考える長谷川も、
身体は捧げてもキスは大切にとっておくような、
初心な あゆむ に本当は心から惹かれており、
変わり始めている自分を怖がっているようにも見えます。

人生にも灯台があって、
間違わないように運命の人を教えてくれたらいいのに…
という あゆむ。
悩んで迷って間違っても、やっぱり冷たくできないのは、
長谷川が自分と同じだから。

真面目や面倒くさい事は悪いことじゃない。
街中で居場所を照らす携帯電話が、
まるで灯台のように運命の人を照らしている…
そんな風に思える素敵なラストに胸が熱くなりました。
人目をはばからず街中でキスする2人にキュンとし、
心地良い余韻も残してくれます。

照れるとしかめっ面になる長谷川と、
真っ赤になってしまう あゆむ 。
それが分かってから表紙に戻ると、
牽制し合っている様な表紙の二人の見え方が違ってきますね。

4

ほの暗さの中の灯台を探そう

良かった…

吉田ゆうこ先生の作品は、何と云うか気持ちの奥底をぎゅっと締め付けられる感覚がするのですが、こちらも当にそう。

ゲイ同士の交際の難しさが、あゆむと長谷川を通して一端を知るような。

あゆむも、長谷川も過去には真剣に相手を好きになって、ほんとに心の奥底、柔らかい部分を許していたんですよね、当時好きだった相手に。

だけど、身体の関係が有って、相手は身体だけ。真剣な気持ちは、面倒臭い、鬱陶しいとかのことばで蹂躙された感じになっています。

あゆむと長谷川の違いがありまして。

あゆむは相手に望まない。
気持ちいいセックスが、出来れば良いし、自分は遊びの方が好きな側の人間だ、と決めている。自分も、相手から見ても、そう見えるように防御しているんです。
傷つきたくないから。

長谷川は、相手に望むんです。
自分だけを見てくれる。相手の、好きの価値観を自分に向ける、という。
自分が、相手にとっていちばんになること。それは、自分が傷つかないための戦法という考え。

どちらも、相反するようであゆむも長谷川も心の根っこは同じなんですよね…
自分と相手の、好きな気持ちも、相手に対する熱量も同じだといいと、心底望んでいるというか。

傷つきあった過去を経て、出会った2人はちゃんと過去にも、自分とも向き合うことが出来ました。

あゆむは可愛くて、20才らしい大人と夢もある感じが長谷川には、合っている。あゆむにも、長谷川の照れながらも、愛情を還すところは大好きなところなんでしょうね~❤️

過去と向き合って、互いを得られた2人は仲良くして行けるんだろうな。

ほんとに吉田ゆうこ先生の作品は、ちゃんと幸せになるけど、ほの暗さが存在して。
作中にもありますが、灯台を探すような。灯台を見つけて、ホッとする感覚。

ぐっと最後まで引き込まれて読みました。
お薦めです❗️

0

切なさと、優しさのバランスが絶妙

吉田作品は、熱量のない絵柄っていうのかな。あっさり、というか、飄々としている、といえばいいのか。
そんな絵柄に相反するようなドロドロの内面を抱えた男の子たち、のお話が多い気がしますが、今作品もそんな吉田ワールドが堪能できる一冊。雑誌で何話か読んでいて、彼らがたどり着く結末が気になっていた作品でした。

主人公は大学生のあゆむ。
気持ちいいことが好きで、身体だけの関係を持つことに抵抗がない男の子。
ある日あゆむは痴話喧嘩をしている男性を目撃する。
その男性・長谷川と、成り行きでホテルに行き、そのまま「真剣な交際」をすることになるが―。

過去にノンケさんに二股かけられ、あっさり振られた過去を持つあゆむ。
過去のトラウマから恋をすることに憶病になっていたあゆむが、誠実な男性である長谷川さんと知り合い、人を愛することの喜びを知る。

そんなストーリーかと思いきや、二転三転する。

二転三転しますが、バッサリ言ってしまうと、よくあるお話です。
攻めさんも、受けくんも、どちらも過去につらい恋をして、それ故に「愛すること」に憶病になっている。

再度、同じつらい目には遭いたくない。
恋に溺れたくない。

そんな葛藤と苦しみを抱えた青年たちの恋のお話。

が、さすが吉田さんというべきか。
王道のストーリーでありながら、読者をひきつける。

もがき、苦しみ、そして手に入れた最愛の恋人。
先が読める展開でありながら、登場人物たちの内面を繊細に、緻密に描いていてページを捲る手が止められませんでした。

主人公はあゆむで、彼視点でストーリーは展開していきますが、彼の目を通して描かれているのは長谷川という男性の苦しみなんですよね。その描き方が秀逸でストーリーにぐっと引き付けられました。

切なさと、甘酸っぱさと、優しさと。
そんな沢山の感情の機微がこれでもかと描かれていますが、それが掛け算となり二倍にも、三倍にも萌えが滾っていく。これぞ吉田マジックか。

吉田作品はほぼ読んでいると思いますが、この作品が一番好きかもです。

痛い話かと思いきや、優しくて温かな作品でした。

0

このタイトルは内容の1/3を表したものです。残りの2/3は……

三部構成で、ボク(受のあゆむ)がH好きというのは最初の1部に集約されます。可愛い受と甘い攻を堪能できます。そして残りの2/3は…さすが吉田ゆうこ先生でした。

吉田ゆうこ先生の作品は

可愛らしい絵柄
カッコイイ構図
会話メイン
ちょっとクセのある展開

が多くて、特にストーリー的には攻がキャラ変か?!と思うくらい再生していく話が多いと思います。

で、今回の攻も人間を取り戻し一皮剥けるパターン。
が、取り戻すということは、それまでに問題や欠陥があったわけです。
つまり真面目に語るなら賛否両論な攻なのです。
これが明らかになるのが第2部。

自分が過去にひどい振られ方をした。
もう恋愛で不利な立場になりたくないから自分は弄ぶ側になることにした。
だから平気で君を傷つけるよ。

うん、やばい。
もはや受のあゆむくんがHかどうかなんて吹っ飛んじゃいますね。

ここに唐突に攻の元カレである葵が登場。
第3部ではゆらゆらグラグラな関係が描かれます。勝手にライアーゲーム。
しかし展開していく中でちゃんとゴールが見えてきて、最後は見事フィニッシュ。

ともすれば何が何だかわからなくなりそうなストーリーですが、全部読んでみると、(キャラ変も含めて)その人の人生にはその相手が必要だったと思わせる説得力があるので不思議です。
最後には出会えて良かったと拍手を送りたくなる…。

ただただ萌える!スカッとして面白いよ!
というわけじゃないです。
でもこの感じはここでしか体験できないもので、個人的にはすごく好き。
性癖というよりは音楽やファッションの好みに近い部類だと思います。
なので語るのがちょっと難しい。
もし未体験なら、一度体感するのは悪くないかと。

ただし、読むなら絶対にイッキ読みをお勧めします。
展開迷子にならないように。

1

恋愛の真理への向き合い方

 恋愛は勝ち負け。分かっているつもりだけど、そういうことを考えているなんて誰も思われたくなくて、皆が目を背けようとしているところに焦点を当てた作品でしたね。誰だって傷つきたくないし、惨めになりたくない。だから、「惚れた方の負け」「惚れた弱み」と評される側にならないよう、必死に抗う2人。相手を素敵だと思う点はいくつもあったからこそ、本気で抜けられなくなる前に突然手を引いた長谷川。手酷く振られても自分の心に傷をつくらないよう、最後まで鎧をまとってふらふらした人間を演じ抜いたあゆむ。2人ともけっして褒められた人じゃないけれど、それぞれの気持ちは痛いほど分かって、気付いたらこの2人を心から幸せにしてあげて欲しいと祈っていました。

 相手に心を支配されてしまう、自分が恋愛の主導権を握れなくなることって怖いことですよね。一度そうなってしまえば、相手に嫌われたり振られたりしないようがむしゃらに行動して、本来の自分すら見失ってしまう。本当は自分と相手の熱量がまったく同じであればいいのだけど、なかなかそう上手くはいかないと思います。でも、だからこそ、長谷川の言うように潔く自分が「負けてもいい」と思える人に出会えたこと、これがとても幸福なことなんじゃないかと思うのです。自分が負けてもいい、この人になら自分の弱みも見せて共有して欲しいと思える、そんな相手を得られた2人。自分の中の蓋をしておきたいところを見せても尚、安心して傍にいられる人を見つけた喜びってすごく尊いなぁと感じました。失敗して、自分も一度は過ちを犯してから学んでいく2人の関係が人間らしくて素敵だなぁと思い、改めて吉田先生の作品が好きになりました。

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