ボタンを押すと即立ち読みできます!
2、3日前から積読になっていたのを読み始めたこちらのシリーズ、読み始めたら本当に本当にページをめくる手・次の巻を求める手が止まらず、読み耽っています。
タイトルには「ロンドンの蜜月」とありますが、蜜月というより、切なさ辛さが大きく、またもや泣きながら読んで少し休んで、また読んで泣いて…を繰り返しました。
日本で僅かながらも築いてきたと自負するものが、イギリスで粉々に打ち砕かれ、「何者でもない自分」を自覚させられる礼。
礼ほどの苦労も経験もしていないけれど、自分自身も会社を辞め、失業期間もあり転職も経験したため、読みながら礼と一緒に打ちひしがれ、どっとエネルギーを持っていかれた気がしました。
最終的にエドの力によって立ち上がり、自分の言葉でデミアンに勇気を与える礼の姿、心底格好よかった。。
決してエドと対等にはなれず、権力や金でエドを救うことはできなくても、、
愛する人の力を借りることに傷つきながらもそれを受け入れ、デミアンの作品を世に出したこと、一人の作家を殺さず光を当てさせたこと、それは礼だけではできなかったことだけれど、確実に、礼がいたことで成し遂げられたことなんだな、と。
そして作中で言及されている「欧米と比べ遅れている」と言われる日本のアートシーン。なんとなく知っていたけれど、登場キャラのセリフによって語られる内容はやはりショッキングでした。
数年前に大々的に行われていた「怖い絵」展を思い出し、どんな多大な人の努力によってあの美術展が開かれたのか、、と、のほほんと鑑賞を楽しんでいた自分が恥ずかしくなったりして;
決してロマンティックに語るだけでは済まない、商業主義の面を強く見せるアート界の現実があり、日本のアート界、携わる人々の意識が今後変わっていかなくてはいけないとしても。
礼の心にも強く残ったギャラリー客の一人のセリフ、「アートは、私の心にも宿っている」という言葉が、何か心に明るい希望を与えてくれる気がしました。
何者でもない存在である礼だけが与えられる、エドへの愛。
一生、対等ではいられないことを受け入れ、諦めること。
男としての自分の矜持やプライドを諦め、与えられる唯一とも言えるものを惜しみなくエドに与える礼の姿も、エドに負けないぐらい男らしく(あんまりこの言い方は好きじゃないけれど;)覚悟があり、最高にかっこいいー
そんなことを感じた一冊でした。うまくまとめられない。。
そしてやっぱり、自分は不器用で皮肉屋で、でも「認められたい」と心底願っている引きこもり(?)芸術家・デミアンというキャラが大好き!
愛すべき人物。デミアンがいつか、誰かに愛で包まれるといいな、、包まれてくれー…!!
と、そんなことを願いながら本を閉じました。
エドと「対等」でいるために自分の力で仕事を見つけたいと頑張るのですが……蜜月なんてとても言えない、礼にとってはハードな出来事の連続で胸が痛かった。 ここまで大きな権力、富を持っているパートナーと生きていくにはどう折り合いを付けるべきかという事がずっとテーマだった気がするなぁ。それは出会った時から付きまとっている事実で、エドはずっとそれがわかっていたんだよね。 礼にとってはほろ苦い経験でもあったかもしれないけど、礼の「らしさ」が発揮された物語でもあったなぁと思いました
礼とエドの遠距離恋愛が終わり、いよいよ始まったイギリスでの同棲生活。
タイトルにある蜜月というワードから甘々なエピソードを予想していたのですが、今作はイギリスで働き始める礼の、新しい世界に対する戸惑いや自分にとってのアートとは何なのか、なるべく自分の力で努力しエドと対等でありたいと思う、そんな様々な心の葛藤にいろんな感情が揺さぶられました。
前作で登場したデミアンが礼にすっかり心を開いていて、礼が職場でまともな仕事を任せてもらえないという悩みを吐露すると、黙ってギャラリーに連絡し礼を担当者に指名して展覧会への出品を申し出る姿に、デミアンにはこんな優しい一面があって礼は特別本当に信用されているんだなとほっこりした気持ちになりました。
ただ、それが地獄の始まりだったとその時は知らず・・・。
新しく登場したロブが二人の関係をかき乱してくれちゃいましたね。
どうして礼を自分の担当にしたがるのか、どうしてそこまで必死に礼にこだわるのか不信感と謎が増えるばかり。
嫌な予感を感じながら読み進めていくと、展覧会前のセレモニーでのロブの裏切りで、その謎の答えがわかり一気に怒りの気持ちが溢れてきました。
でも、一番つらかったのは、セレモニーの一件で礼がデミアンをひどく傷つけ信頼を裏切ってしまったこと。せっかく表にでてきてくれるようになったのに、自分のせいでまた心を閉ざしてしまうかもしれない。
この最悪の状況をどうすればよいのかわからず途方に暮れる礼が本当に痛々しくて可哀想で、思わず自分も悔し涙を流してしまいました。
ギル、オーランド、ジョナスが集まり、礼を励まし合うシーンは本当に癒しで、特にパブリックスクール時代に描いた舞台美術の背景絵の写真を見せられそこから自分の原点を思い出し、自分にとってのアートとは何かが明確になり気づきを得る心理描写は礼が向かうべき道が定まったようで、それまでの鬱屈した気持ちから前向きな気持ちになることができました。
エドがロブの盗作証拠を握っている事実を知り、あとはその証拠をどう利用するか、一人で決断をしかねる礼に、ギルが指輪物語を例えに伝えてくれた、エドが礼に一生言わないであろう言葉、これがすごく心に真っ直ぐ響いてきました。
ギルのおかげでエドの力を使う決心がついた礼は、あくまでその使い方は礼らしく、人を傷つけず悪く言わないというお母さんからの言葉を大事にしていて、礼はやっぱりどの人にも等しく愛を与えられる聖母のような子だなぁと改めてその優しさに癒されました。
礼がデミアンを説得するシーンもおもわずプロポーズか???と思うくらい情熱的で、あんなに作家と作品を理解してくれて愛してくれる人は礼以外いないんじゃないかと思ってしまうくらい、心に響きました。
エドがハリーを【スクエア】から引き抜き新ギャラリー【パルム】のギャラリストとして迎え入れたことに、大丈夫かな?礼との関係も良くなかったのに・・・と不安を感じていましたが、ハリーの礼に対する印象が変わったのは、礼が日本にいたときに関係を構築してきた作家たちからの連絡がキッカケだったと話す場面は、日本でやってきたことは無意味だったのかと打ちひしがれたいた礼にとって、とても救われる嬉しい言葉だなと思ったし、きみともうしばらく仕事がしてみたいというセリフは礼のひたむきな努力が報われたと感じられる瞬間でとても感動的でした。
なかなか頼ってもらえないエドの悲しみや苦しみも、ようやく報われて良かったなと思います。底知れない愛情の深さとスパダリ力はもはやカンストしてますね。
持つものと持たざるものの違いをはっきり思い知らされ、エドと対等になることはないと悟ってしまう礼が少し哀れで寂しく感じるけれど、それでも二人はお互いを愛し合っているから、その関係は成り立っているし、今後も葛藤を抱えながら二人寄り添って生きていく姿を想像すると尊い気持ちになります。
なるべく二人が穏やかに想い合って過ごしていってくれたらいいなと願うばかりです。
礼とエドのお話はこれで終わりなんですかね?
この二人が大好きなので、またどこかで二人のお話を読めることを楽しみにしたいと思います。
国立美術館の企画展で、デミアンの作品を展示することができ、成功を掴んだ礼。
やっと日本から英国に住むことになったが、今度は就職難に…最後はやはりエドの力を借りた形でギャラリーに拾われる。
エドの、力を借りてでも、礼がそばに居てくれることができるなら本望、な考えと、礼の何とか自立して、エドと対等な立場で愛し合いたいという思いがそこかしこで対立するストーリーになっています。
結局、何をやっても礼はエドの力からは逃れられず、持たざるものなのだと痛感するところは、読んでいて切ないけれど、持つものの側であるエドの気持ちもわかるような気がしました。
持つものの力の強さって、誤ると怖いんだな。
ギルがいい役割を引き受けていて、彼がいるせいで礼は視野が広がっていくんだと。
礼のなけなしのプライドというか、対等な立場でいたい、という願いは難しいと悟るのもギルトの会話でです。でも愛は1mmも変わらない、というセリフが良かった。
樋口さんはちょうど10周年だそうで、これ以外にもシリーズがありますし、すごい作家さんだなと思いました。