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パブリックスクール ―ツバメと監督生たち―

public school tsubame to kantokuseitachi

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表題作パブリックスクール ―ツバメと監督生たち―

スタン・ストーク,17歳,ウェリントン寮の監督生・桂人の恋人
桂人・ヴァンフィール,17歳,ウェリントン寮の監督生・スタンの恋人

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

名門パブリックスクールの監督生として
最上級生となった桂人。
寮の運営や大学受験の準備と、忙しないけれど充実した毎日を送っている。
唯一の気掛かりは、想いを伝え合ってから、恋人のスタンが一度も「愛してる」と言ってくれないこと。
自分との将来をスタンはどう考えているんだろう──。
そんな不安を抱えていた矢先、初めての寮代表会議が開催された。そこで顔を合わせた他寮代表のアーサーは、どうやらスタンの顔なじみらしい。
けれどそれ以来、なぜかスタンの様子がおかしくて…!?

大人気「パブリックスクール」シリーズ第6巻! !
「ツバメと殉教者」のスタン&桂人、書き下ろし続編が大ボリュームで登場!!
デビュー10周年記念、4冊連続刊行の最後を飾る待望の最新刊! !

作品情報

作品名
パブリックスクール ―ツバメと監督生たち―
著者
樋口美沙緒 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
シリーズ
パブリックスクール-檻の中の王-
発売日
ISBN
9784199009891
4.5

(157)

(117)

萌々

(28)

(4)

中立

(2)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
21
得点
711
評価数
157
平均
4.5 / 5
神率
74.5%

レビュー投稿数21

愛ってなんだろう

シリーズ6作目。
スタン×桂人CPは「-ツバメと殉教者-」に続く2作目になります。

読んでいる間中、ずっと愛とはなんだろうか…と考えさせられました。心が痛み、涙し、まだ少し未熟な彼らがもどかしく、愛おしい。前作同様、とても分厚く読み応えがあって、個人的に樋口美沙緒さんが描く愛を訴えかけるお話はとても琴線に触れる(と最近気付きつつある。まだまだにわかですが…;)ので、今作も泣きながら萌えて・萌えながら泣いてを繰り返しながら読み終えました。

前作の桂人はスタンから愛を与えられ、背中を押され、過去や親の呪縛から立ち上がることが出来ました。またアルバートも同様、ねじれを正して前へ進み始めて。(今回アルバートの成長は目を見張るものがあります…!)序盤のスタンと桂人は愛を育み、とても幸せそうです。けれどスタンだけは今だに過去の呪縛から動けずに居たのですね。

桂人はスタンに愛され愛すことで自己を確立できたけれど、スタンは……、そうじゃなかったんです。スタンは心の中にある大きな穴から目を逸らしていました。桂人がいて、アルバートがいて、それなりの幸せと適当な生活が一番だと言いながら大きく空いた穴を見ようとせず、埋める勇気もなく。

桂人は自分の愛では穴が埋められないと酷くショックを受けながらも、スタンがスタンで居られるためにどうあるべきか悩み苦しみ、アルバートもスタンの為にと動きます。スタンが自分の愛を取り戻すキッカケになるのはヴァイオリンだろうと、再びヴァイオリンの世界へ半ば無理矢理放り込んでーーーと展開していきます。


いや~~…、スタンの口から"それなり""適当"とか出た時は驚きましたよもう…。マジか?と。なに言ってるかわかってる?と。そんな言葉で愛されて喜ぶ恋人がいいるかーーーー!!!( `д´)⊂彡☆))Д´) パーン

決して愛し方も愛され方も知らない男じゃないはずなんです。前作で桂人へかけた言葉で「愛されるときが、ちゃんとくる。愛するときも。俺には、そう見える。」がとても印象的で心に残っていました。そんな風な言葉で相手を思いやれるスタンは決して無神経ではないはず。だからとても違和感を覚えました。

でもこの辺りがスタンの難しいところで、他者への気配りや思いやりや優しさは持ち合わせているのに、自分のこととなるととことん不器用。桂人が絡むと更に拗らせちゃうんです(;///;)そうだった。この人、桂人に釣り合う男になるまで「愛してる」すら言わないつもりの男だったわ…。

なんていうか…この表現が正しいかはわからないんだけど、スタンは愛を崇高しすぎている?というのかな。愛するのには資格がいると思っている節があって、自分には人を愛す資格がないと思っていそうなんですよね…。けれど愛は身近で自然にあるもので桂人への愛は確実に抱えている。矛盾したようねじれが生じて情緒不安定になっているように見えました。

ヴァイオリンは荒療治になってしまい、スタンも、桂人も、アルバートも、皆が皆苦しんでいるのは読んでいてかなり辛かったです。失った愛を再構築するために一度ぶっ壊して叩きならしているような感覚。それが正しいのか、間違っているのか、わけがわからなくなるぐらい痛々しかった…。

そんな中で桂人がもがきながらもスタンへの愛情を、愛し方を、少しずつ見つけていくのは心が打たれました。元々決して弱い人間ではなかったし、根気よく愛情深い人間ではあったんですが、恋しい相手への愛は簡単にはいかないですからね。どこまで踏み込んでもいいのか、愛していいのか、伝えても良いのか、悩みながらも強くなり、良い意味でしたたかになっていくのが非常に良かったです…!(臆病者のスタンには胸倉掴んで振り向かせるぐらいがちょうどいいw)桂人が自分の居場所を自覚した点も涙腺が緩みました。

またアルバートの成長もほんとにすごかった。少し頼りなくてスタンと桂人が両脇から支えて"3人で1体"となっていたけれど、スタンが自由でいられる為には自分がまず独り立ちしないとって。子供だったアルバートはもういませんでした。ストーク家の当主としてこれから立派になっていく片鱗もみられて、おばちゃん心にグッときて泣けます(;///;)

そしてスタン。
桂人に「愛しているけど、たぶん、愛せない」と言った時はめちゃくちゃ泣きました。言われた桂人も傷つき、言葉を吐いたスタンも傷ついている。心の中に愛を持つのと、愛を伝えていくのは別物で、スタン自身はそのバランスが取れずにいる。苦しかったです。だからこそスタンがスタンを取り戻して、愛を取り戻して、蹲った世界が広がっていくのに心がグワッと握りつぶされるぐらい…萌えた。良かった。ほんと良かった。

今作は音楽・芸術を通じて、人と人の繋がり、愛の繋がりを描かれているのも印象的でした。世界は舞台の上だけじゃない。舞台から降りたところにも世界はあるし、それらは全て繋がっているんだーーーと。読み終えた時の感情を上手く言葉に出来なくてもどかしいのですが、これから広い世界に羽ばたく若者の後ろ姿が眩しくもありました。

惜しむらくは恋人復活後が少なくてッッ(;ω;)ラブラブな2人がもっと読みたいよーーー!

※余談追記をコメント欄に書きました。その後が読めると紹介されてた小説Charaについてです。(ここではネタバレしませんが最新雑誌なので念のため…)

22

いるいる

その後が読めるという小説Chara vol.42 購入しました。スタン視点でその後の様子(ブルーネル寮の現状なども含む)や、スタンの胸の内を語る内容が主でした。イチャイチャは求めてたほど多くはなかったかな。
(小説Charaにレビュー入れます。)

覚悟して読みましょう

待望のパブリックスクールシリーズ六冊目。
こちらはシリーズ四冊目のツバメと殉教者の続編になります。

鈍い桂人と振り回されるスタン、二人の甘い学内えっちとさらにお互いの関係を深いものにするちょっとしたスパイスを楽しめるのだと、読む前は思っていました。
そんな自分を引っ叩いてやりたいですよ。読むなら覚悟しろ!!と。

最終学年となった桂人とスタンは、寮代表であるアルバートを影ながら支え夜に何度も逢瀬を重ねていました。嫉妬深いスタンは健在ですが、情熱的に桂人を抱くのに愛の言葉は囁かず、二人っきりの時にしか恋人らしい振る舞いをしないスタン。そのことに何か思うとこがあっても言葉にしない桂人。
序盤から、ん?不穏だな…と思いましたが一応安定した恋人関係を続けていた。
そんな二人の前に、六年生ながら別寮の代表に選ばれたアーサーが現れます。

アーサーは簡単に言うとスタンとヴァイオリンの先生を同じくしていた弟弟子で、コンクールで何度もスタンに負けた過去がある、現プロのヴァイオリニストです。そんな彼がスタンに再びヴァイオリンを弾かせようとするのが、今回の始まりですね。
このアーサーの考えにはアルバートもメンベラーズも協力的で何度もスタンにヴァイオリンをやるように迫るのですが、スタンは頑なに拒否します。そんな中メンベラーズたちの計らいでステージ上で演奏するスタンの音楽を耳にした桂人は、スタンにヴァイオリンの道へ行くよう進めます。
しかしスタンはやはりそれを激しく拒否して、挙句の果てにヴァイオリンを選ぶことは桂人との未来を蹴ることだ、とまで言いやがりました。

いや~~~ほんとスタンふざけんな~~~~というのが本音ですね。
わかってますよ?スタンは物凄く傷ついてる。実の母親から性的虐待を受けて、その母親が自殺した後はアルバートのために自分を犠牲にしてきた彼が傷ついてないわけがない。
でもだからって桂人に面と向かってヴァイオリン弾いてたらお前といられないだとか、桂人といるのがそれなりの幸せだとか、桂人を愛しても何も変わらなかったとか。二人で過ごした十か月を踏み躙っていい訳じゃないでしょ!!
今作は本当に桂人がかわいそうで見てて、つら…つらい…。最大のネタバレしますけど、スタンはヴァイオリンを選んで桂人と別れます。はぁ???って思ったでしょ?私は思いました。
そんな桂人にとって苦しい状況の中で不意に出てきたエドワード・グラームズ。礼を一身に愛する姿に安堵しました。まさかエドに癒される日が来るとは…。

三年のブランクを抱えながらヴァイオリンと向き合うスタンは、凡人には理解できない世界にいるのでしょう。天才というのは、こういうものなんでしょうね。身近に芸術家も天才もいないので憶測ですが、才能ある人はやはり普通の人にはわからない、踏み込めない世界を持っているのだと思います。
そんなスタンの姿に要らないものとして切り捨てられたと苦悩する桂人は、色んなことの発端である音楽家アーサーと関わることで、自分がどうしたいのかを改めて自覚します。

最後はもちろんハッピーエンドですが、そこにいくまでの過程が本当につらい。桂人はもちろんだけど、スタンも苦しんでる。今まで見ないふりしていた傷に桂人が容赦なくグッサグッサ切り込んでいくから色々と心臓に悪いし…。
ちゃんと自分の気持ちを吐き出したスタンに安堵しました。これまでの言動の裏の気持ちを吐露するとこは読んでて安心した。当然ですけど、ちゃんと桂人への愛もありました。
ただ、絶対にそれはあかんことをスタンが二回やらかしてますが桂人が許してるから許すよ。

当初思っていた、二人の関係を深いものにするちょっとしたスパイスとはかけ離れていて、正直劇薬のようにも思いましたが、スタンが救われるためにこれは絶対に必要なことでした。そして寮やストーク家でスタンの誘いを待つだけだった桂人にも、会いに行くという気持ちが芽生えたのはとても大きなものだったと思います。
今作も素晴らしかったです。まだまだ桂人とスタンの話が読みたい。次回作、お待ちしてます。

-追記-
ラブが物足りない方は5/22に発売した小説Chara vol.42「ヴァイオリニストは甘やかしたい」をぜひ!タイトル通りのスタンが拝めます笑

15

愛を求めた彼らのその後

作中にクラシック楽曲が登場するからか、小説を読んでいるのに、頭の中でシーン毎にBGMとして音楽が流れて来るような不思議な感覚になりました。
登場楽曲のどれもが登場人物達の心情を表現しているようにも感じられる部分があったりもして。
樋口先生はそこまで考えられて楽曲を選んだのでしょうか。
今作も濃厚な人間ドラマが丁寧に描かれた素晴らしい作品でした。
読後にカバーや口絵を見返すと、yoco先生のお仕事の細やかさにため息が出ます。
書きたい事が多過ぎて文字数が足りません。

前作で、歪んだ形の愛し方や愛され方しか知らなかった者同士が寄り添い合うようにして恋人関係となったスタンと桂人。
恋愛面では確かにスタンと桂人の物語のようだけれど、私にはどちらかと言うと桂人とアルバートの成長途中の物語であったように思えてしまっていたのです。
桂人は何度も愛していると伝えていましたが、ではスタンは?桂人に何度口に出して愛を伝えた?
そんな疑問が残るラストだったように思います。

今作は前作から約1年後、最終学年の7年生となった双子と桂人。
アルバートは寮代表に、スタンと桂人は監督生として両端からアルバートを支えながら3人で上手くやっている様子。
一見穏やかで幸せな寮での日常のようでいて、僅かな違和感と不安を桂人も感じ取っているようで…
私は前作のレビューで、アルバートの「ずれ」が怖いと書きました。
今作では「ずれ」や「引っ掛かり」のようなものをスタンに感じたのです。
そんな小さな違和感が、他寮代表でありスタンの過去を知るアーサーとの再会によってぐるぐると渦巻いていき、まだ過去から解放されていなかったスタンの危うさが浮き彫りになっていきます。

何でもそつなくこなす完璧なスタン。
彼は決して完璧ではありません。
まるで譜面の上を指示通りに、正確に歩くように、人から望まれる通り完璧に生きなければ、何かを与えなければ、自分は人から愛される資格がないと思い込んでしまっている不器用で悲しい子供です。
桂人の事が好きで、本当は愛しているけれど、完璧ではない状態の自分は愛していると軽々しく口に出してはいけない。
前作で乞うように「どうしたら、まだ好きでいてくれる?」「どんな男になれば?」と言っていた理由がやっと分かったような気がします。
自分のために生きる事を知らない彼は、他者には優しい言葉や思いやりに満ちた言葉をかけられるというのに、自分自身にも同じ言葉をかけても良いのだという事に気付けないのです。
ヴァイオリンというスタンと過去を繋ぐ物を通して、過去と向き合い、悲しみや憎しみ、怒りや弱さ、優しさといった自分自身の中にある不安定で不完全なものまで全てを認めて、自分らしく未来を生きて行けば良い。
その1番シンプルで大切な部分に自分の足でたどり着くまでのスタンの苦悩と葛藤、周囲の人々が心を痛めながら荒療治をするシーンがあまりにもつらい。
正直、読んでいて苦しい部分や、桂人に対するスタンの行動や言動には思うところもありました。
ですが、彼が本当の意味で解放され、ただの17歳のスタン・ストークという少年に戻る為には、この本に描かれていた全てが必要なものだったのだと思います。
苦しんで苦しんで、最後には母親が好きだった「亡き王女のためのパヴァーヌ」を葬るのではなく、慈しむように奏でる事が出来たスタンの姿には胸が詰まるようでした。

アーサーの、大好きなヴァイオリンと音楽だけで構成された完全な円形の幸せな世界。
これはスタンの言う「それなりの幸せ」と似た世界だったのかも。
心地良いその場所から出てしまうと苦しい。
でも出なければ分からないものもある。
この、似ていないようで似ている2人の対比も見事でした。
アーサーのこれからの変化も楽しみです。

そして、アルバートの急成長も頼もしかったですね。
あの目が開いていなかったアルビーがここまで変わり、こんなに魅力的で愛おしいキャラクターになるなんて誰が想像したでしょうか?
自分の足でしっかりと立てる男になって来ました。
発言の端々にも成長が感じられて、ストーク家を継ぐ彼の覚悟のようなものが見られます。
サブキャラクター達の成長もこのシリーズの楽しみのひとつだと思います。

最後に。スタンの不安定さに気付きながら、つついてしまったら幸せが崩れるのではないかと不安で、目を逸らしてしまいたかった桂人。
人は皆臆病です。出来る事なら楽な方向に逃げたい。
それでも逃げずに、折れずに、何度倒れかけても立ち向かって行く桂人は本当に愛情深くて強く逞ましい人でした。
桂人の凄いところは、自分なりの人を愛する形を探しながら、周りの人間をも救って良い方向へと変えていってしまうところ。
ブルーネル寮での出来事もそのひとつですよね。
様々な人と関わり合って生きていく。
隠れるように息を潜めて生きていた桂人はもう居ません。

2人にとって本当に長く苦しい日々が続きましたが、スタンの愛する人が桂人でなければ、桂人の愛する人がスタンでなければ、この2人はここまで成長出来なかった。
自分なりの愛する心を得たスタンと桂人はどう生きていくのか。
それは、もしかしたらロンドンではないかもしれないし、どこかの小さな町なのかもしれない。
スタンはもっと広い世界へ飛び出して忙しくなるのでしょうし、桂人もやりたい事を見つけて羽ばたくはず。
パブリックスクールという小さな箱庭を飛び出した先には、まだまだ乗り越えなければならない困難が訪れるのかもしれません。
けれど、いつか語っていたように、デルフィニウムの花を食卓に飾って同じ家で暮らす2人の姿が見られるのだと信じたい。
デルフィニウムの花言葉は「あなたは幸福をふりまく」「あなたを幸せにします」
大きな壁をひとつ乗り越えた2人の今後が、幸せに満ち溢れたものであって欲しい。
幸せも居場所もきっとある。
そんな希望が見えるラストでした。

13

肝っ玉母さんケイト

あらすじなどは他のレビュアー様が丁寧に説明してくださってるので省きます。
樋口先生の攻様はいつも傲慢で自分勝手で自己中なキャラが多いですが、今回スタンはまぁすごい。途中読みながら心の中で何度ぶん殴った事でしょうか。
ケイトも健気に全てを受け入れる……かと思いきや、途中でわりと開き直って読者の代わりにスタンを叩いてくれたりしてるので、よしいいぞ!ケイト!もっとやれ!みたいな気分になりました。
そしてケイト。
めっちゃ強くなってる。
ブルーネル寮で辣腕ぶりを披露し、ぐちゃぐちゃだった人間関係を僅かな日数で立て直してしまう。
その立て直し方が!ゴリラの如く(褒めてます)キレ散らかし(褒めてます)正論ぶちかまして全員を黙らせねじ伏せる!
読みながら、いいぞ!もっとやれ!!ケイト!って心躍りました。
不憫受なはずなのに、ケイトはめちゃくちゃ強い。
そしてもれなく、回りの人間を赤ちゃんに変えママになる……。
聖母ケイト。

苦しい内容のお話でしたが、ケイトが終始強くあり、安心して読むことが出来ました。
途中で別れるシーンは泣けましたが、スタンがケイトから離れられる訳がないと信じていたので苦ではありませんでした。
分厚くて読み応えがあり、やっぱりパブリックスクールシリーズ好きだなぁと思いました。
サプライズ的に、エドと礼もチラリと出てきて嬉しかった!
まだまだ続いて欲しいシリーズです。

13

愛する故の不安

このシリーズの好きな所は、恋人同士になった彼等のその後が読めるところです。

前作では色々あったけど上手く行って良かったね。で、終わった後も学生生活は続く訳で、進級して新しい生徒が入って来る一方で年長者はスクールを去り、当人達には進学問題が浮上して来るのです。

まさかスタンに類稀なるヴァイオリンの才能があって、桂人と進学先が別れるとは思いませんでしたが…

冒頭から幸せなはずなのにどこか不安を感じている桂人でしたが、まさにその通りの展開でした。
自分との未来をそれなりの幸せと言うスタンの言葉に傷付く桂人の気持ちも分かるし、それなりを望むスタンの気持ちも理解出来てしまいました。

桂人のように何がスタンにとっての幸いなのかと一緒に悩みながら読み進めました。


それでもケンブリッジでのスタンの演奏に衝撃を受けた桂人が取った選択もうなずけたし、桂人を遠ざけようとしたスタンの気持ちも分かってしまい。


2人の行動が相手への愛故だと確信を持って読めていたので、展開への不安はありませんでした。

桂人はより良い未来をスタンに与えたかっただけだし、スタンは桂人を必死で取り戻したかっただけなんですよね。


ちょっとだけ桂人の方がスタンより強かっただけだと思いました。でもそれはスタンが与えた強さだったりもするわけで。
初めからスタンの音楽の中には桂人がいたのですが、それを掴みとるまでがスタンには辛かったと思います。
在学中に問題を解決出来たので、スタンがプロの道に進んでも2人の愛は揺るがないと思いました。


そう考えるとエドの強さは凄かったと思うのです。ストーク家での夜会コンサートにゲストとして来てましたが迫力が違いました。

出来ればもっともっとこのシリーズを読みたいです。どんなに分厚い鈍器でも待ちます!今回も読み終わるのが惜しかったです。

11

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