イラスト入り
厚さがあって二段組なので、読むまでとても勇気がいるけれど、読み始めれば時間を忘れてしまうのがこのシリーズです。
そして購入したのに未読が2冊ある事を、こちらの本を読んで発覚しました。だからスイが大人になっててびっくりしたのと、いろいろなアニマと関係を持った時期があったと知り驚愕しました。
今回は「『番』と『半身』上」なので、もちろん表題作は続いてます。
書き下ろし二編と小説アンソロジー掲載作一編でしたが、表題作に関わるお話だったので最後まで読むと理解が深まりました。
「『番』と『半身』」
スイとガルリスがキャタルトンのカナン王の依頼で、キャタルトンで見つかり出した「擬獣病」の調査に行くのでした。獣人のアニマにだけ見られるそれは、魔獣化して意思疎通が出来なくなって凶暴化するというものでした。
キャタルトンに到着した日に知り合った幼い兄弟の父親も罹っていて、兄弟の話やカナン王の保護している罹患者から共通点をスイは見つけます。
そしてカナン王の協力を元に鍵を握ると思われる人物にガルリスと一緒に向かうのです。
その人物とはスイの母親のチカユキとも知り合いであるキャタルトンに奴隷制度があった時の被害者のウィルフレドと、その番でウィルフレドの村を襲った時に騎士団長だったランドルフでした。
スイの話を聞いた2人は過去に決着を付ける為に、一緒に調査の旅に加わるのでした。
そしてスイの先輩が医師をしている診療所まで辿り着くと、そこで「擬獣病」に関する重要な手掛かりを知り4人はベッセという街のエンジュとロムルスに会いに行くのです。
そしてエンジュがウィルフレドと同じ村の出身で、ロムルスがランドルフの部下だったということが判明します。4人がロムルスの案内で診療所の医師として働いているエンジュの元に向かうところで終わっていました。
スイとガルリスが森で見つけた幼魔獣の正体や「擬獣病」の謎、スイの先輩のエルフの医師が言った予言めいた話がとても気になりました。スイは「擬獣病」の原因を突き止めて治療法を見つけられるのかとても気になりました。
それからエンジュは盲目なのにエルフの本を読めたのが良く分かりませんでした。
「因縁の地と僕の思い出」
ガルリスの背に乗ってキャタルトンに向かいながら、スイが幼い時に拐われた話をしています。
キャタルトンで流行った病の治療に呼ばれたチカユキとダグラスとゲイルに、ガルリスに無理矢理連れて行って貰い合流したスイは、両親達の言いつけを守らずに宿を抜け出して拐われてキャタルトンの王城の塔に幽閉されたのでした。
その時に秘密でスイに会いに来たのが当時は王子だったカナン王だったのです。カナン王と騎士のエルネストは現王室を転覆させようと反乱を企んでいました。
そして半身のスイを救出しに現れたガルリスが塔を壊して救出したために、反乱軍は計画を前倒しにしなくてはならず、反乱軍ではブチ切れたダグラスとゲイルが先陣を切っており勝利に導いたらしく、その事は教科書に載ったそうです。
この時に幽閉されたスイの世話をしていたのが騎士のガレスで、小狡く立ち回る人物だったらしいですが、スイに世の中の事や生きる知恵を与えて1人の人間として扱ったので、後のスイの人格形成に影響を与えたようです。
下巻にも登場するようなのでとても楽しみです。
「寡黙な狼」
本編でウィルフレドが話していた村が襲われた直後に行方不明になって、後に再開した弟のマルクスのお話でした。
彼は記憶を無くしたまま心優しい狼族の族長の息子として育てられてました。マルクスは義兄のロウエンを想っていましたが、魔力の無い人族の自分では子供が産めないので、次期族長のロウエンの伴侶にもなれないと気持ちを隠しています。
こちらのお話はロウエン視点でも書かれているので、川で流されたマルクスを見つけた時に番だと一瞬で分かって夢中で助けたとありました。
魔力がある無しは関係ないし番はマルクスだけだ、可愛い、可愛いと何度もあって無口で無愛想なロウエンだけどマルクスへの愛情は激しい物がありました。
彼はギルドでマルクスの兄のウィルフレドと番のランドルフの話を聞いて、行方不明の弟が直ぐにマルクスだと分かったようですがマルクスを失いたく無いと思って、ウィルフレドにもマルクスにも黙っています。
そんな時に反乱軍によって倒されたキャタルトンから人攫いが逃げて来て、ロウエンが見張で留守中にマルクスと隣の家の双子の片割れが拐われてしまいます。
必死で抵抗するマルクスは獣人の耳を噛みちぎり、子供が入った袋を抱えて森に逃げるのですが、追い詰められたマルクスは増水した川に落ちてしまうのです。
そしてロウエンに助けられてマルクスは、額に怪我を負ったロウエンの自分に対する激しい想いを聞くのでした。
2人は想いが通じ合って結ばれますが、その時ロウエンが頸を噛んでマルクスの中で達すると、ロウエンの魔力がマルクスに流れ込むのでした。
マルクスは魔力が無い訳では無くて失われてただけだったのでした。
記憶を取り戻したマルクスは兄のウィルフレドを捜しにロウエンと旅に出たいと言うのです。
それはロウエンとの子供を産んでからとマルクスが言ったので、村に戻る途中でロウエンが喜びの遠吠えをするのでした。
村に戻ったマルクスはロウエンの遠吠えで全てが村人に筒抜けな事を知り真っ赤になるのです。
それから2人の間に子供が産まれると、村人に見守られながら親子3人で兄のウィルフレドに会いに出発するのでした。
このお話は掲載当時に人気があったらしいのですが分かる気がしました。両片思いのお話で寡黙だったロウエンがマルクスと番になってから、族長の父親が恥ずかしいと言うくらいデレてて可愛かったです。
これだけの長編が書き下ろしだった事にとても驚きました。