SS付き電子限定版
前巻に続き読み応えのあるスケールの大きな話でした。
前巻で受けのリディルは傷の瘢痕で途切れていた魔法円に傷をつけることで魔法円を繋ぎ、一時的に魔力を取り戻すができましたが、傷が完全に治癒すれば、また魔力が無くなります。そんな中、リディルの兄の嫁ぎ先であるアイデースに負けたはずのガルイエトがイルジャーナに攻めてきます。ガルイエトの狙いは大魔法使いとして名前が知れ渡り始めたリディルでした。イルジャーナの王でリディルの伴侶であるグシオンはリディルを助け重傷を負います。リディルも落馬して子供の頃以降の記憶を失くしてしまいました。
魔力を失いかけているリディルに王を癒す力はなく、このままでは国がガルイエトに滅ぼされてしまう状況の中、重傷を負いながら自分を気遣う王の姿を見て、彼を助け記憶を取り戻すために、リディルは単身で城を抜け出し、アイデースに向かいます。
アイデースに行けば兄が魔法円を完成してくれる目算でしたが、アイデースは雪と氷に閉ざされていて、普通の人なら到底城まで辿り着けない状態でした。
呪いに蝕まれた体を治してもらうためにアイデース王妃に会いに行こうとしていた大魔法使いと遭遇し、旅の途中で魔法円を完成させてもらったことで、リディルの魔力が回復し、「飛び地」というワープ機能で城に辿り着くことができました。
しかし、城の周囲も城の中も生き物は全て氷で固められて時間が止まっている状態でした。それはガルイエトに勝った先勝祝いの宴で、王妃を狙ってガルイエトの刺客が放った呪いの矢が、王妃をかばったアイデース王を射抜き、その人の持つ力を増幅させる呪いを持った矢であったため、炎の使い手である王の力が暴走しないよう、王妃が全てを凍らせたのでした。
いずれ王妃が魔力を使い果たせば、伴侶を失った王は無尽蔵に力を使うことはできないため、民への被害を最小限に食い止められると咄嗟に判断したようです。
リディルが大魔法使いになっていたため、リディルの力を借りて氷を維持しながら王に刺さったままの呪いの矢を抜くことができ、王の呪いも、国中の氷も解けました。
アイデースが援軍を出してくれて、「飛び地」で陥落間近のイルジャーナに駆けつけ、ガルイエト軍を追い払うことができ、グシオンの傷を治すこともできました。
記憶を失くしてもグシオンとリディルの間には確固たる絆があり、恋愛面では大きな揺らぎはなかったので、どちらかというと冒険ファンタジーの色合いが強かったです。互いを思い合う気持ちは、そこかしこから伝わってきました。
息をつかせぬ展開で、映像を思い浮かべながらストーリーも楽しむことができました。
ただ、一つだけ気になったのが、戦が落ち着き、王家の親戚筋である小国から養子をもらったことです。四歳の皇子で、赤ん坊の頃から養子に迎えることを検討していたようですが、その子の境遇については詳しくは語られていません。グシオンのことを「父王様」、リディルのことを「お母様」と呼ばせているので、自分たちの子どもとして育てているようです。
「母親が産後すぐに亡くなり、父からも疎まれている」などの事情があれば、四歳の子を引き取って育てるのもわかりますが、もし、実の両親が生きていて、両親から引き離して連れてきたのなら、実親も子も可哀相だなと思いました。自分に置き換えて考えると、母親が実は男で、両親とは血の繋がりがなかったと大きくなってから知らされるのは、かなりショックです。
グシオンもリディルも、結果的に幸せになったとは言え、王族に生まれてきただけで生まれながらに重すぎる責任を背負わされてきた人達なので、王族でもない四歳の子に同じ重荷を背負わせることにはもう少し葛藤があってほしかったです。
個人的に、今回での一番の萌えポイントは、側近コンビのイドとカルカが、口では喧嘩しながらも阿吽の呼吸で動き、お互いを信頼し合っているところでした。
花降る王子の婚礼シリーズ第2巻。
グシオン王と幸せな婚姻生活を送っているリディル。背中の傷が治るにつれて日々弱まっていく魔力に不安と焦りを感じ、なんとか魔法円を繋ぎ直してグシオン王に安定した魔力を供給出来るようにしたい。
大魔法使いロシェレディアのいるアイデース帝国に便りを出すが返信がなく、優しい王はそのままのリディルを愛すると言ってくれるだけに、余計に自分の無力さに打ちひしがれる。
そんな中突然、帝国ガルイエトが攻め込んできてグシオン王は重症を負い、自身は落馬し記憶を失ってしまう。
八方塞がりの状況に国を思う大臣、メシャムから自分がイル・ジャーナに輿入れした経緯と、この戦いは大魔法使いになったという噂のあるリディルを奪うために仕掛けられたということを言われてしまいます。
幸せから一気に過酷な状況に落とされたグシオンとリディルを思うとつらい。
少し読んでは休みなかなかページが進みませんでしたが、魔力を取り戻すためにリディルが1人ロシェレディアの元に向かうあたりからは気持ちを落ちつけて読むことが出来ました。
泣き虫だけど勇気があり、身を犠牲にするのを厭わないリディル。今作は彼がロシェ兄さまに会えて大魔法使いになれるのかどうかというお話です。
離れ離れになってもお互いを思い合っているエピソードもあり、やはりグシオンとリディルは真実の愛で結ばれているのだなぁと思いました。
前巻を凌ぐストーリー展開、見事でした。
国の垣根を越えたスケール感、魔法が生み出す神秘的世界、失われた中で"失われて"いない夫婦の絆、兄弟愛……よくぞここまで濃厚な設定を爆盛りにできたものです。
一つ一つの場面展開が目まぐるしく変化していくにも関わらず、詰め込み感を感じない上にストーリーの流れに無理がない。そのせいか飽きがこず、すんなり話が頭に入ってくる心地よさを心ゆくまで堪能しました。
奇襲をかけてきた敵国とのバトルシーンは臨場感・緊迫感に溢れ、またアイデースに嫁いだ兄に会いに行くシーンからは逼迫した切実な状況が伝わってきたりと、終始目が離せませんでした。この混乱に陥ったリディルたちの未来がどんな着地点に落ち着くのか、途中経過からは予想ができないほどの圧倒的ストーリーです。読みながら興奮で鼻息荒くしちゃいました。
記憶喪失という不穏な状況をひっくり返す回復劇にはシビれました。めちゃくちゃ気分が昂りました!
もう、そこからの怒涛の物語展開といったら声にならないくらい最高で最高です。
nice!good!great!amazing!excellent!のコンボ祭り。終盤はワクワクが止まりませんでした。前半部の鬱々とした気分が一気に晴れやかになる素敵ロードへまっしぐら〜…楽しくて嬉しくて仕方ない(≧∀≦)
このシリーズに酔いしれたもう一つの理由。それは、リディルの兄夫婦の存在です。
いやいやいやいやいや……こちらもリディルたちに負けず劣らずのおしどり夫婦。素晴らしいものを見せて頂きました。
前巻では謎めいていたリディルの兄・ロシェレディアと嫁ぎ先の大国・アイデース帝国でしたが、そのベールが見事に解放され、私の想像を遥かに超えたアイデース国夫妻の深い愛と絆に大・感・動。
えーー…この夫婦を脇キャラに据えていて良いんですか?のレベルです。ロシェレディアとアイデース皇帝・イスハンのストーリーをメインでじっくり読んでみたいのですが、あり得る話でしょうか。グシオンとリディルたちとは違う濃密な関係で繋がっている彼らの物語もいつか読める日が来たら嬉しいです♪
さてさて。2巻でこれだと3巻も期待大です。
3巻の発売を知り、1巻から一気読みしている花降る王子シリーズビギナーの私ですが、どハマりしちゃってるのは言うまでもなくです。
3巻はどんなストーリーが待ち受けてるのか読むのが今から楽しみです♪。
「花降る王子の婚礼」の続き。
神レビューばかりですね…すみません。
※ネタバレ注意※
前巻は読みやすいものの設定など好みではなく萌評価。長いお話になって、登場人物の掘り下げが深くなることを期待しました。早々に記憶喪失ネタか〜〜手垢がつきまくってるんだよな〜とやや落胆したものの、結果前巻より好き!スケールの大きい話が好きなので、特にロシェ兄登場以降の壮大さが良かった。リディルが身体を失いそうになる描写は"花降る"設定の勝利です。読みながら情景が思い浮かぶタイプの読者はそれぞれに花を舞わせたことでしょう。期待した登場人物への愛着はあまり深まらなかったものの、今回もするするっと詰まることなく飽きることなく読めました。
グシオンがリディルの拷問についての無垢っぷりというか無知っぷりに苛立ってたとこ言及されてたの好きです。リディルはこの世の汚い部分をもっと知るといいけど、そうはならないだろう。
待望のシリーズ続編。
王道と思われる王妃略奪シーンや記憶喪失ネタを尾上先生が書くとこうなるのか!という面白さがあった。
リディル王妃の魅力とグシオン王の包容力に今回も悶えました。
毎回思うのだけど、尾上与一作品はカップリングが絶妙すぎて他の誰かでは考えられない唯一無二の存在なことがとても理想的。
読むたびに幸せを分けて頂いている感じがするのだけど、この王と王妃は特に心が温かく満たされます。
切なくて、愛おしいお話。
どのカップルも末永くお幸せに。
まだまだシリーズとして続いて欲しいですね。