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表題作ツァイガルニクの恋の沼

二ノ宮航輝
人気木工作家
市川春音
手芸店の新米店長

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

「誰でもいいなら、別に俺だっていいだろう?」

都会から地元に戻って半年、
祖父母の経営していた市川糸店を継いだ
市川春音には好きな人がいた。
おさななじみで今は人気木工作家の二ノ宮航輝だ。
中学生時代、「男のくせに兄貴のこと好きなの?」と
軽蔑されたように言われて以来、疎遠になっていた。
でも、春音の姉と航輝の兄が結婚したこともあり、
Uターンをきっかけに親しくつきあうようになっていた。
好きだという気持ちは隠したままで。
だけど、やさしくされるほど恋する想いは強まって……
おさななじみのすれ違いラブ!

作品情報

作品名
ツァイガルニクの恋の沼
著者
月村奎 
イラスト
志水ゆき 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
電子発売日
ISBN
9784813013297
4.4

(157)

(87)

萌々

(53)

(12)

中立

(3)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
22
得点
686
評価数
157
平均
4.4 / 5
神率
55.4%

レビュー投稿数22

途中からクールダウン

 同作家様の『嫌よ嫌よも好きのうち?』がすごく好きで、元いじめっ子の幼馴染との再会ものいうことで、そちらを思い出しながら読み進めました。編み物の知識や季節の描写をさりげなく織り交ぜた読みやすい文章で、攻めが受けに好意を寄せていることも序盤で想像がつくので、途中まではストレスなくすごく楽しく読ませていただきました。

 攻めにも受けにも専門学校時代の友人がいて、近所に住んでいる攻めの女性の友人が攻めの自宅にもよく顔を出しているので、受けは二人が恋人同士だと誤解します。一方で、攻めも、元々、中学生の頃に受けが攻めの兄に手編みのセーターをプレゼントしようとしたところを邪魔をした経緯があり、受けが同性愛者だと思っていたことから、受けの友達(男性)が受けの自宅で上半身裸で受けの布団で一緒に寝ているところを目撃し、体の関係を疑います。
 その日、攻めが再び受けの家を訪ねてきて、強引にキスをし、「誰でもいいなら、別に俺だっていいだろう?」と言うのですが、ちょっとそれはさすがにないだろうと思って、一気に盛り下がりました。

 再会してからそこまで一年以上経っていて、中学生の頃、兄へのプレゼントを阻止した際に「大嫌い」と言われたことで臆病になっていたとはいえ、そのときのことを謝罪して気持ちを伝える時間は十分にあったんですよね。しかも、受けは「誰でもいい」なんて一言も言っておらず、「俺が誰を泊めて何をしようと、航輝に関係なくない?」と言っただけなので、泊まりに来ていた相手が受けの恋人だと認識するのが普通だと思います。
 恋人がいる相手に無理やりキスをして「誰でもいいなら、別に俺だっていいだろう?」と言うのは、兄へのプレゼントを阻止した中学生の頃以上に幼稚な言動に思えました。

 その後、受けが、攻めが度がすぎたホモフォビアで、受けへの嫌がらせだけでキスをしたと思い込むのも、「いやいや、普通はそうはならんでしょ」と思って感情移入できませんでした。

 最後はキスの件を攻めが謝りにきて、謝罪した上で告白し、中学生の頃からお互いに両思いだったことが判明しますが、再会してから一年もあったんだから、同居を誘うより先に告白してほしかったです。
 あと、エチの挿入のシーンで、「ゴルフボール用のホールにボウリングの球を押し込まれるくらいの圧迫感」という比喩が出てきますが、それまでゴルフをする描写はなく、キャラ的にもゴルフをしそうには見えないので、なぜゴルフボール用のホールの大きさを知っているんだろうと疑問に思ったのと、ホールの大きさを知らない私は単純にゴルフボールとボウリングの球を比較するしかなく、「いや、それ絶対に物理的に無理でしょ」と興醒めしました。もう少し雰囲気にあった例えのほうがいいなと思います。

 途中まではすごくよかったので、二人とも、疎遠になっていた時間の分だけ成長が感じられる展開なら、もっと好きになれたかなと思います。

0

優しく甘く深い、恋の沼

ふあ。。。なんですかこの読後の多幸感とふわふわは…!!!!

毛糸玉に手編みのニットに手袋、暖かい暖炉の前で食べる手作り料理…

現実の自分の世界には到底出てこない、夢のような品の数々・:*+.

「夏」から始まり、季節のチャプター毎に紡がれるお話にときめきと胸きゅんが止まりませんでした…

両片想いの幼馴染、当て馬(に見せかけて全然そうではないのだけど誤解して暴走する攻め)、クリスマスイブのラブラブいちゃいちゃ…窓に映る自分と春音の姿を見つめて興奮する航輝……に興奮する私←

月村先生の「好き!」をぎゅっと詰め込んだ作品とのことですが、私の「好き!」もこれでもか!!と詰め込まれており、気のせいか小刻みに体が震えました。。。

中学時代に航輝が春音に浴びせた言葉は許されるものではないけれど、
再会後、そして想いが通じた後のスパダリ具合に「もんなんでも許してしんぜよう」という気になっちゃいました。

春音は手編みのニット・手作り手袋、航輝は家具店の職人なのでスツールそして手作り料理と、違いに自分の「手」で編み出したものを相手にプレゼントすることができるのって、とっても素敵ですよね。
(…全然関係ないけど、私も今通っている絵付け教室、頑張ろう!って思えました。完全に感化されましたね)

人肌恋しくなるこれからの季節、大切に読み返していきたい作品に出会えたことに感謝です◎

余談ですがタイトルの「ツァイガルニク」が気になって気になって、読み始める前に検索しちゃいました。

ツァイガルニク効果:中断された課題や未完の課題は、達成済みの課題より記憶に残る心理現象のこと。

だそうです☺︎(作中でも言及されてます)

中学時代、誤解し喧嘩別れしてしまった二人の未完成の恋…未完成だからこそ、お互いにずっとずっと忘れられなかったのですよね。
タイトルも小粋かつお洒落で、志水ゆき先生の美麗なイラストが作品の世界をより深めてくれていて、大好きな作品になりました。❤︎

1

燻る思いの最適解

再読なのに ついつい前のめりで読んでしまいました。
「そうそう、これこれ。両片思い やっぱサイコー!」と思いながら。幼馴染みのすれ違いラブ、大好物です。

春音(受け)というキャラが私は好きです。いい意味で普通の青年で、でもどこか品があって 好きな仕事には妥協を見せず、しっかり足が地についている。でも航輝(攻め)のこととなると・・・
自分の気持ちが相手に露呈することを何よりも恐れていて、追いつめられると言わなくていいことまで言ってしまう。この不器用さに愛着がわいてきます。
全編、春音視点で語られるので「それ、間違ってるからっ!勘違いも甚だしいから!!」て場面にいくつも遭遇するたび、切なさが じわじわと染み込んでくるのです。

中1の時、尚輝(航輝の兄)がきっかけで 航輝と春音が疎遠になる出来事が起こります。が、今現在 尚輝と春音の姉(夏乃)が結婚しているので、二人は姻戚関係。
【もうおまえは一生俺に話しかけてくるなよ! おまえみたいなやつ、大っ嫌い!】
と、過去に春音から暴言を吐かれたのは 航輝の中で無かったことになっているのか、再会した航輝は やたら親切でいい男になっているのです。おまけに 料理人になっても通用しそうなくらいに料理上手で、 お手製の料理を携え「ぬっ」と春音の元をたびたび訪れます。
こんな感じなので 航輝の本心が春音には読めなくて、接し方の正解がよくわからないまま…

お互い表面上は平静を装って なにごともなかったかのように交流を続けますが、春音の友人・航輝の職人仲間がそこに加わったあたりから 素直になれない臆病くんたちの物語が動きはじめます。
航輝が、誤解を招き度1200%の場面に遭遇してしまい(2度も!)、ひそかに打ちのめされている姿が気の毒で可哀想で でも二人の恋の加速度をヒートアップさせるには、この上ないスパイスで。読み手は思わずニヤニヤ悪い顔になってしまうんですね。

まだ一線を越えていない春音と航輝のたわいないおしゃべりの時間は、なんとも言えない戸惑いと 甘い感情が漂っていて、私は遠足前日の子どもみたいに 読みながら気持ちが逸って仕方なかったです。
月村作品の、この「来てほしいところで来てくれる感じ」何度味わってもいいし この先また何度でも味わいたい。

「ツァイガルニクの恋の沼」
【BLアワード2022】BEST 小説 10位

0

これだから現代ものはやめられない

ファンタジー作品も含めた多くのBL作品を読んできた中で、やっぱりの原点回帰。

現代もの最高ーーー(*´꒳`*)

現代もの作品に心惹かれる理由は、同じ世界に立ってると思う期待からです。私のすぐ近くで起きてるかも?と思うドキドキ感に、私はそれだけで萌え堕ちます。

月村先生×現代もの作品。最強タッグ過ぎる。
そんでもって大好きな幼馴染みときました……間違いない。そして間違いなかった。
面白くて読む手が止まりませーん。


春音と航輝の長い恋心が紡ぐストーリーに、それはそれはもうどっぷり。春音視点のすれ違いと誤解描写が主ですが、航輝の言動に間違いなく春音への愛を感じ取れたことに、妙な安心感を抱きながら読み進めることができました。

ストーリーの中に、色んなトラップが仕掛けられていて、これで誤解するなって言うのが無理でしょって思うくらいです。春音サイドでも航輝サイドでもそれが起こっているから、本当にややこしいしもどかしい。
それを軌道修正できるのは、告白一択。
さてさて、どちらから告白するのかな?…なんて、予想ゲームを脳内で展開してました(笑)

航輝からポロッと好きの言葉が飛び出したのをキッカケに、それまでの誤解と勘違いの答え合わせが繰り広げられていく会話が、とても面白かったです。

航輝のアピールが春音よりも分かりやすくてこれは結ばれたら相当に甘やかすだろうなと想像していたら案の定(笑)春音の部屋まで勝手に作ってしまう気の早い男に、ニヤニヤするしかありません。エッチも底なしのようだし、両想いに浮き出し立ってる姿は、幸せハイ。可愛いですね^ ^


親戚同士の春音と航輝だから元々「家族」の関係にあったけど、これからは本当の意味での家族になっていって欲しいと思いました。

1

ほっこり

この季節に暖かくしながら、まったり読んで欲しい作品です。
何気ないプレゼントの渡し方とその意図がお互い様でお前ら〜ってなります。かわいい。
周りの人達もみんな優しくてほっこりします。

1

この作品が収納されている本棚

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