一つの食材から生まれる十の絶品レシピ! “口福”な二人暮らし。

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表題作僕らの口福ごはん

(仮)飯野和樹,会社員,陽平の恋人
(仮)簗城陽平,小説家,和樹の恋人

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

小説家の陽平と会社員の和樹は一緒に暮らす恋人同士。ある日、陽平が大量の空豆を買ってくる。あきれる和樹を前に陽平は空豆を使い十の料理を作り始める。料理上手な陽平が指示して和樹が手伝い完成した料理は、まさに“口福”の味。陽平は他の食材でも十品作って小説に書くと言い出して――。
空豆と豚のトマト煮、鯛皮の湯引きポン酢、山葵のマッシュポテト、とうもろこしのかき揚げ。一つの食材から生まれた十の絶品レシピが、二人の日常を彩る。江戸時代の料理集『百珍物』から着想を得た、幸せでおいしい短編集。

作品情報

作品名
僕らの口福ごはん
著者
高庭駿介 
イラスト
うごんば 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
レーベル
富士見L文庫【非BL】
発売日
電子発売日
ISBN
9784040748733
3.5

(2)

(0)

萌々

(1)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
7
評価数
2
平均
3.5 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

幸せはキッチンから

ちるちるの作品発売カレンダーに登録されていたこちらの作品。
あたたかみのあるタイトルとカバーイラストに惹かれて読んでみると、突然空豆が現れるんです。
本を開いてすぐに空豆が現れ、陽平と和樹という登場人物たちがキッチンで料理をしている様子がただひたすらに描かれます。
彼らが何者なのかも深く語られないまま進み、気が付いた時には空豆だけで10品目もの料理が出来上がっているのだから驚き。
それもとびきりおいしそうなものばかり!

江戸時代の料理集から着想を得た、料理がテーマの短編集。
主人公となる和樹と陽平は同じ家に住む恋人同士。
料理上手の小説家・陽平が料理を作り、会社員の和樹がちょろっとお手伝いをしながらつまみ食いをする。それだけなんです。
会話ベースで進むので、彼ら2人のごく普通の日常と食卓を側で見て聞いているような気持ちになれますよ。
少し前に「◯◯ごはん」系の作品が一時期商業BL小説界でも数多く発行されていた時期がありましたよね。
(こちらの作品は非BLレーベルだそうですが)恋人同士の2人が登場するごはんものの中でも、場面が台所からほぼ動かない作品は珍しいなあと非常に新鮮でした。

空豆・鯛・じゃがいも・とうもろこし…と、章ごとに食材を変えて、時にさり気なくいちゃつきながら、それぞれ10品の料理が調理され2人の胃の中に幸せが収まっていく。
なんだかすごく幸せで、出来上がったものを見ていないはずなのにおいしい料理をたくさん食べたような不思議な感覚になりました。
あまりにも調理シーンが具体的なものですから、なぜこんなにも出来上がりの想像が出来る説得力があるのか…?と思っていると、著者は料理に囲まれて育ち、幼い頃から包丁を握っていたと書かれていてなるほどと納得。
食材の全てを無駄にせずおいしく食べられる料理ばかりです。
陽平が語る料理と食材に関する雑学も本当に面白くて、ああこれやってみたいかも!なんて考えながら楽しんで読めました。

ただやはり、料理だけではなく2人の生活も見てみたいじゃないですか。
章の合間に、同じ家で同居をしている恋人たちのちょっとしたエピソードも描かれているんです。
これがまた絶妙なやさしさというのかなんというのか、ちょうど良いぬくさで良いんだなあ。
一緒に住んでいれば、喧嘩まではいかない微妙にピリついた雰囲気になることもありますよね。
まずは自分が悪かったと態度を反省して、その日の内に謝ることが出来るうえに自然と相手が好きなものをこっそり準備し合っちゃうような2人なんです。
彼らの深い部分は今作のメインテーマではないので想像するしかないのですが、楽しそうに料理を作り食べる2人と、合間の短いエピソードだけでも関係性が伝わってきて素敵。

会話が中心なので、がっつり小説らしい小説が読みたい方にはどうかなといったところ。
けれど、このぬくい雰囲気がお好きな方もきっといらっしゃるのではないでしょうか。
幸せはキッチンからなんて言葉がぴったりの素敵な作品でした。

1

ゲイカップル+料理。映像化向きかな

お料理小説というかレシピ本というか。調理の工程や道具・雑学などが細かく書き込まれており、“物語”を読んでいる感覚にはなれない。できた料理を食べた際の感想も軽くあるだけで、飯テロ効果はない。映像化には向いていそうだと思った。

主な内容はゲイカップルが会話しながら料理を作る形で、間に日常編と出会い編が挟み込まれていた。構成的に、登場人物がどういうキャラなのかが見えないうちから料理の説明に入るため、実際に作ってみたい人への実用書寄り。

1つの食材に対し10個のレシピ紹介があり、20個分が書かれ、なんとなく二人の関係性が分かったところで短編「ある日の二人」。ケンカ未満のモヤモヤが描かれていたが、熟したカップルだからか、曖昧な妥協が見える後味の良くない終わり方。
また、料理説明がなく日常描写のみになると、小説としての文章の上手くなさが際立っていた。

その後さらに20個分のレシピを紹介し、最後の締めに二人の出会い編。特になんてことのない話。
生き生きと美味しそうに食べる和樹と、食事を振る舞い満ち足りた気持ちになる陽平。絵がなく文章だけなのだから、もう少し強調したいシーンを印象付けるような書き方をしてくれても良かったのでは?と思う。人を描くには表現が簡素すぎる。

正直な感想は、創作小説としては味気ない、レシピ本としては充実してて参考になる。ゲイカップル+料理のブームに乗った書籍化+コミカライズなのかな、と思わずにはいられない内容だった。

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