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コミックとともに読みました。
終始切ない思いでした。寂しいふたりが、出会い離れ己と向き合い心の寂しさや切なさを確認していく。そこからお互いの大切さに気づき再び歩み出そうとする。ですが心も世間もスムーズにはいかないもの。想いが通じたからこそ一緒にいるために少しづづ歩き進むさまが、これまた切なくて。これからをちょっとづつ積み上げて、幸せをふたりで噛み締めて行くんだろうなと思わせてくれる。小さいくほんのりじわじわ暖まっていくような素敵な作品でした。
「新装版」は、元のプラチナ文庫版に短編「ありがとう」を加えたものです。
プラチナ文庫版のあとがきも、収録されています。
挿絵はなく、口絵もなく、表紙カバーは美麗な水彩画。BLに興味があっても本屋で手に取るのに勇気が要る、というような方に適した仕様かと。
紙質の手触りが素朴でやさしくて、作品の内容にも合っていると思いました。
文庫版の表紙は冬のイメージでしたが、こちらは春のイメージですね。
恋愛詐欺で男から金を巻き上げて暮らす青年が、騙している相手に恋をするお話。
読むのは2回目です。
前に読んだのは10年以上前でしたが、同じところで泣いてしまいました。
収録されている「積木の恋 Christmas Book」。これが私にとってものすごくツボでして、アドベントカレンダーを前に窓を開けたり閉めたりする主人公の姿に、無条件に涙してしまいます。
悲しくても傷ついても、仕方ないと諦めて飲み込む蓮の気持ちと、いつになっても蓮との間に見えない壁があって心を預けてもらえない加賀谷の気持ちがどちらも手に取るように分かります。
一緒にいる時間を重ねることで少しずつお互いが歩み寄っていける、穏やかで優しいカップルだと思います。
タイトルの「積木」について、あとがきでも触れられていますが、積み重ねていく意味のほか、私は無垢というイメージも持っていました。いずれにしてもよいタイトルですね。
今回挿入された「ありがとう」という短編は、同じプラチナ文庫の「お菓子の家」のクロスオーバーにもなっています。
コミックの方を先に読み、これは絶対に小説の方も読まなければ…と思って新装版のこちらを購入、一気読みしました。
蓮が出所後見つけたバイト先で、前科持ちというバックグラウンドから善意の行動もが誤解され解雇されてしまうシーンにどうしようもなく胸が痛くなり…
でも、解雇した店の主人も奥さんも決して、全く悪人ではないんですよね。
大切な人やものを守るためなら、人は身勝手になるもの。
終盤の攻め視点の話の中で、加賀谷が蓮を危ない目に遭わせまいと「元ヤクザのいるお店なんて危ない。今すぐ辞めてください」と言い、自分の言動の矛盾に気付くシーンが印象的で、ハッとさせられました。
ざっくりしたハリウッド映画みたいに世界は単純な善と悪には分かれておらず(※ハリウッド映画を貶したいわけではなく…!!むしろ大好きですが)、人は知らず知らず自分の立場に合わせて身勝手に行動しているものなんですよね…。
「積木の恋」というタイトルも秀逸だな、と。
簡単に崩されてしまうものでもあり、一つ一つ積み上げていけるものでもあり。
蓮にはこれから新しい家で愛犬クーと加賀谷と共に、小さな日々の幸せを積み重ねていって欲しい。心からそんなふうに思い、本を閉じました。
今回は大学の研究室所属の医師と詐欺師の青年のお話です。
詐欺師の受様がカモとした攻様の恋人になるまでと
本編後日談短編3話を収録。
母子家庭で育った受様は9才の時に母に捨てられ
引取取られた親戚からも一線を引かれて
養護施設に入れられます。
中卒で施設を出て工場勤務となりますが
社長の娘に好意を持たれた事から
難癖をつけらて首を切られてしまいます。
その後も中卒、施設育ちのハンデが付いて回り、
どんな職場も長く続かない受様の今の職業は
男専門の恋愛詐欺師です。
受様にとって信じられるのは金だけで
偽名で金を持っている男達に近づいてカモにし
金を巻き上げていました。
そんな受様が次のターゲットとして目を付けたのが
実家が大病院の医師の攻様でした。
バーのカウンター席に並んで声をかけますが
口下手なのか、奥手なのか
受様がコナをかけても会話が続きません。
焦れた受様が次回の約束をして店を出ると
攻様が慌てたように追いかけてきて
そのままホテルへとなだれ込みます。
「夢みたいだ」と呟く攻様に違和感を感じますが
次の日から続いた毎日の電話と芸の無い口説き文句は
受様を退屈させるばかりです。
受様は頃合いを見て事実を織り交ぜた過去と
母の入院のための借金話によって2か月足らずで
400万もの金を巻き上げる事に成功します。
金持ちで、家柄もよくて、穏やかで品がある攻様ですが
受様には頭が悪い男にしか見えません。
しかしながら攻様との付き合いで
受様は攻様が受様とは違う痛みを持つ事を知っていき・・・
初出のプラチナ文庫のリメイク版になります♪
既刊既読ですが10年以上前に読んだ本で
朝南先生のイラストと相まって
とても切なく胸を打つ作という印象の強い1冊でした。
本作は書き下ろし短編を加えただけのようですが
時を越えて読者の胸を打つ人間の本質を鋭く突く本作は
素晴らしい作品だと思いました。
人は多面性を持つ生き物ですが
その人を判断するのは相手が見ている一面だけあり
それをもってその人を論ずることはできません。
攻様は受様が隠し続けた寂しさや辛さを
受様を知る事で知っていこうとしますが
受様には弱さを見せる事ができませんでした。
そんな2人の未来を変えたのは
皮肉にも受様の逮捕でしたが離れた事で
変わるもの、変らないものがあり
2人の再会シーンにはとても胸を熱くさせられました。
リンク作もリメイクされたら嬉しいです。
旧版読んでいましたが、要先生装画と聞いたので購入。(残念ながら中の挿絵は無かったですが、コミックと2冊並べて、満足してます)改めて読み返し、神だよねと再確認できました。忘れないんですよ、このお話。
お話を旧版と見比べていないですが、読んだ記憶あるものばかりなので、そのままだと思います。くっついた後の部分があるので、表紙も二人並ぶ絵になっているのかなと思います。コミック読んだ方、是非こちらで、二人が戸惑いながらも、より一層近づいていく様子を読んでほしいなあ。いいですよーほんとに。「お菓子の家~un petit nid~」もすっごくいいので是非。
++好きなところ
二人の思いが通じるところ(バス停)も凄く好きなのですが、その後続く二人のお話も沁みます。加賀谷、透と知り合う先生、万里さんもイキイキしていて嬉しい。透の世界が少しずつ広がって、彼の心も少しずつ開いていく様が嬉しいのです。最後の方で、大好きなお話「お菓子の家~un petit nid~」の舞台と少し絡むところも嬉しかったでした。
久しぶりに加賀谷、透に出会えて、やっぱりこのお話、良かったよなと再確認できた一冊でした。
