【SS付】【イラスト付】【電子限定著者直筆サイン&コメント入り】
小説
読み終えて無性に…おぼろ豆腐が食べたくなりました(。-∀-)
海野先生による、胸熱・本格お仕事もの。
24歳×40歳という、なんと一回り以上…実に16歳(!)もの
歳の離れた相手とのラブストーリーでもあります。
感想の前にまず一点、イラストについて。
逆月酒乱先生のイラスト大好き!…なのですが、
ちょっと正直なところ今作は、受け・慶一の見た目が
若く(幼く)見えすぎる、かな...?という気のするページもありました
”年齢より若く見える”と地の文にもあるのですが、
もう少々、年齢を重ねた男の渋みというか、男前なテイストも
感じたかったな、、と思った部分も;
で、内容について話を戻して。。
つい先月、先生の「社長、〜」シリーズ最新刊を
読んだばかりなのに、こうしてまた間を置かず
新刊が拝読できるなんて、嬉しい限りです☺︎
まさかタイトルの「浮世渡らば豆腐で渡れ」がことわざであるとは
知らず、海野先生のあとがきを読んでびっくり!
本当に今作の内容にピッタリの、素敵なことわざです。
「豆腐のように外面は四角四面できっちりしていても、
内面は柔軟に対応していくのが世渡りのコツ」
という意味だそう。深い...
とある”電源装置メーカー”が舞台のお仕事ものであるこちら。
主人公は営業部次長、40歳の慶一。
上司からの重圧や無神経な部下からの一言、そんなものに
いちいち目くじらを立てず、自分さえ黙って耐えれば波風は吹かないー
と、心の中の”綻び”を長いこと無視したまま
諦観して生きてきた彼。
しかしそんな慶一の日々は、あることをきっかけに一変することに。
担当工場の工場長が過労で入院、
生産計画について初めて工場から営業部にクレームが入り、
それがきっかけで、常駐する調整役?を体よく押し付けられ…
いや、任されることになりー
と続く本格お仕事ものです。
この、出向先の工場に勤務しており、
倒れた工場長の代わりに24歳にして”工場長代理”を務めていたのが、
今回の攻め・深見です。
で、自分、この深見がもう途中から可愛くて可愛くて
仕方なくなっっちゃったのです。。
笑うと犬歯の見える大型ワンコ(U・ᴥ・)
実は初対面(オンラインですが)の彼らの出会いというのは
最悪で。
一方的に、高圧的に、本社の大分年上のオジサマ達の揶揄にも
怯まず「無理なものは無理です!」と伝える深見。
会議終了後、営業部の面々からは深見への
悪口が次々とこぼれます。
それを聞いて、本音では嫌だ、卑怯だ、ひどい…と思っていつつも、
ついつい周りに合わせてしまう自分、そんな自分への自己嫌悪。。
なんかなんだか、そんな場面って自分も身に覚えがあるかも...?と
思い、ひやひやしながら展開を見守りました。
で、戦々恐々としながら工場へと赴いた時の、
深見の爽やかな笑顔!
慶一と一緒に、私も呆気に取られたー!
そしてこの場面、この瞬間から深見に惹きつけられ、
大好きになってしまいました。
オンライン会議でのあの姿は、上司・杉本から
”あえて”指示されてのことだったのかー..なるほど!
とはいえ、実際に思ってもいないことを発言したわけではなく、
まさに彼はあの場面で「正しく怒った」のですよね。
この”正しく”と、”怒る”という言葉の意外な結びつき。
意外だな、と思うのに、心にストンとちゃんと落ちてくるところ。
海野幸先生、やっぱりすごい。。(語彙力ーーー!!)
この言葉がまた、後半になって出てきて
慶一自身の行動を変える原動力となるシーンがあります。
もう、鳥肌が立つというか、身体中の細胞がたぎる感じというか…!
実際に自分がその場にいるわけではないのに、
血がふつふつ沸き立ち、いけー!慶一!と声を出したくなりました。
何に関しても一歩引いた態度だったり、
”波風立てない”ことが主義だった慶一。
そんな彼が、深見との出会いや
工場への出向で学んだ実態、経験を通し
少しずつ少しずつ変わっていく様子、成長過程が、鮮やかに描かれていました。
その中で特にハッとさせられたのが、
”悩んでいるのは自分一人ではない”という、シンプルな言葉です。
慶一が思い悩んでいるのと同じように、
杉本やあの溌剌とした深見でさえ、隠れて涙を流したり、
思い悩んで眠れぬ夜を過ごしたりもする。
人は決して、見える部分だけがその人ではないー
というごく当たり前の事実、だけれど見過ごされてしまいそうな事実に
気付き、感謝や共感を抱き、理解を示すようになっていく慶一。
これって、自分も忘れちゃいけないことだよね、、と
深く心に刺さる言葉でした。
そして一方、恋愛面。
ちょっとこの部分、もだもだ感は強めかもしれません。
焦ったさを感じる部分も若干あり。
だからこそ、終盤のグググっと甘さの増す展開が、
たまらなく良かったー…!
ノンケ同士で、16歳も年下で、社内恋愛で。
慶一の戸惑い、迷い、悩む過程、心理描写が
これでもか!!というほど詳細に綴られています。
うじうじだなあ〜なんて思って苦笑しちゃう部分もあったんですが、
いやよく考えたらそりゃそうか、と納得です。
もしも、社内の同性の、16歳年下の後輩に告白なんぞされたら!?
そんなの脳内大混乱でしょ、
意識しちゃうでしょ、避けちゃうでしょ…と
煮え切らない態度の慶一のことも理解でき。
で、そこを、慶一のことが好きで好きでたまらないのに、
無理して押せ押せ押せーーー!
とはしてこない健気な大型犬・深見の態度もまたグッとくる…
だって、SNS?のアイコンを、
密かにあの二人の思い出の”豆腐”写真にしてるんですよ。。
慶一が完全に”見限られた”と誤解している中で
間接的に知った、その事実。
まさか生きてきてこんなに、
”豆腐の写真”に心打たれる時が来るなんて!
「正しく怒る」ということ、そしてお豆腐が伝える恋心。
そんな二つの要素に、おおいに心揺さぶられた一冊。
情熱的に慶一を抱く深見、甘える慶一の姿も甘くて甘くて甘くて、
ほろほろと豆腐のように?蕩けましたよー✨
恋愛模様とは別に、この作品の面白さはお仕事の描写にあり!
2人の出会いでもあり、仲を深めていく背景描写の一つですが、すごく深いところを攻めるてくるんですよね。私、めちゃくちゃその気持ちに共感しまして、ウルッときてしまいました。
人の良さにつけこんで好き勝手に言って自分の意見を押し付けるヤツ、社会に出ればそんなヤツらゴロゴロいますよね。従うしかない状況に腹が立ったとしても、何も出来ない自分にもイラつくというか……怒りたいのに怒れないジレンマと、また同じことの繰り返しにどうしようもなくなって落ち込むなんてこと、経験ありませんか?
そんな気持ちを抱えた世の中の人たちにぜひ読んでもらいたい一冊です。
作中、慶一が理不尽なことを言う上司たちにブチ切れて闘うシーンがあるのですが、これがすごいんです。めちゃくちゃスカッとします!
慶一が直面する理不尽な状況に共感できる方なら、この展開はスタンディングオーベーションものでしょう。これまで潰されてきた小さな声の所有者たちの反旗ともいえる心の叫びが胸アツです。
ジワっと嫌な感情をほじくり出すシーン描写はさすがの海野先生。BL以外のところの見せ場がたくさんあって、終始目が離せませんでした。
もちろんBLとしての見どころもいっぱいですし、なんといっても16の歳の差は注目ポイントでしょう。
深見の精神年齢が高いせいか違和感は皆無。むしろしっくりくる雰囲気でした。
深見と慶一が共に過ごす時間や豆腐談義に花を咲かせる穏やかな時間にホッコリ^ ^
"オジサンだろうがなんだろうが可愛ものは可愛い"。なんてったって、可愛いはボーダレスですから!
歳の差カップルだけど、そのせいですれ違ったりもしたけど、ジェネレーションギャップとか関係なくお似合いな2人でした。色んな方におすすめしたい素敵作品です。
面白かったです。
作品タイトルにもあるように、登場人物みんなが小さなアップデートを重ねていく物語。
主人公ふたりだけでなく、この作品に登場する様々な人物が、それぞれの価値観をアップデートしていきます。
骨の髄まで染み込んだ価値観や性格って、それが他者や自分にとってマイナスであろうと、なかなかアップデートするのも簡単ではないですよね。
それでも言葉を尽くし、正面から向き合った先に、新しい景色があるのだと思います。
それにしても、慶一さんが卑屈すぎる笑
過去の出来事も語られていましたが、その出来事の結果として現在まで自分を卑下ばかりして生きてきたのだとしたら、よほど周りの人間に恵まれなかったのでは?と思います。
アラフォーにして深見と出逢うまで、自己肯定感を高めてくれるような人と出逢えなかったのでしょうか......
惚れた弱みとはならず、慶一の良いところも悪いところもしっかり伝えてくれた深見が個人的にMVPでした。
工場と営業っていう立場の違いのお話としてもとてもリアリティがあって面白かった!本社と工場って全然違うんですよね…。ビジネスパーソンとして刺さるエピソードもたくさんありました。慶一のようになんとか自分が我慢してやり過ごしてしまえばと思うことって中間管理職であったら幾度となくある場面で、その先に影響を受ける人たちの事が頭から抜けていないかと考えさせられることがたくさん。深見くんはそのあたりをあの若さと頭の柔らかさで慶一にいい影響を与えてくれましたよね。2人の恋の攻防戦?も慶一がぐるぐる悩んでしまうあたりが大人だからこその反応だし、そこは若さで押せてしまうのも深見くんならではだし。ついに気持ちを認める瞬間好きだったなぁ。
今回は第二工場長代理と営業部次長のお話です。
工場長が倒れた事で発生した納期遅れ対応で
出向した受様が工場の就業改善を図る顛末を収録。
受様の勤める電源装置メーカーは
都内の本社ビルの他に2つの工場を抱える中小企業です。
受様は営業畑で40を過ぎて次長となり
売り上げノルマはなくなるものの無茶な納期短縮や
予期せぬトラブル対応で多忙な日々を送っています。
そんなある日
特殊製品を製造する第ニ工場長が倒れます。
工程が切迫しないか危ぶむ受様に
営業部長はどうにするだと楽観的でしたが
工場と本社のオンライン会議で
工場長代理として会議を仕切ったのは
製造部所属で工場最年少の入社6年目社員の攻様で
開口一番で注残の確認をはじめ
納品できない機器の納期調整を口にし
客の都合を叫ぶ営業部員を工場の都合も考えて欲しいと
一刀両断します Σ( ̄。 ̄ノ)ノ
会議を終えた営業部員達は
若い攻様が昨今の働き方革命を唱えて
暴走しているのでは!?と言い出し
部長には工場の様子見を兼ねて
攻様の根性を叩き直せと受様を送り出しますが
工場の実態は営業部の想定とは全く違う事態で!?
本社向けに工場代理となった攻様と
工場と営業の緩衝材の役目を担わされた受様の
本格お仕事モノになります♪
なんと第ニ工場では
営業部の無理な受注もできないと言わずに受付けて
サビ残と休日出勤が恒常化していたのです。
工場長とともに現場を回す生産管理部員からは
工場長が退勤表を改竄していて
若いうちから仕事だけが生きがいの古株工員達は
働き方改革なんてしゃらくせいと
工場長に同調していたのです Σ( ̄。 ̄ノ)ノ
工場の実態に受様は呆然としますが
これでは若手社員が長続きしないはずと
様々な意味で頭が痛くなる受様を救ってくれたのは
好印象で気配りできる若者だった攻様でした。
本社の対応が思ったよりも迅速だったと喜ばれ
受様はちょっと複雑な心境になりますが
工場の現状を知った営業部長は納期調整とともに
人員対策もしてくれます。
受様は工場に逗留されて工場の改善を図りますが
神中途採用者が働きだすと新たな問題が発覚し
工場長が復帰するとまた新たな受注を押し込んできたり
と問題はなかなか減りません。
それらの事情に受様は丁寧に対していくのですが
若い攻様の柔軟な嗜好に接した事で
受様が苦手としてきた"正しい怒り"を表明することで
事態を好転されていく様子がとても面白かったです。
仕事とは経験の積み重ねであり
苦手な事=出来ない事としてしまいがちですが
自分の為ではなく誰かのためになら
出来ないという選択肢は減っていくのかな。
受様を見習わないといけないと思わせられる
素敵なお仕事モノでした ヾ(≧▽≦)ノ