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表題作花夜叉

明煌、受け様の異母弟(他複数)
篠芙、藤代流の若

その他の収録作品

  • 花鎮の饗
  • 散る花

あらすじ

能の名門藤代流の若き後継者・篠芙。
神懸かった舞の才能と、たぐい稀なる美貌を持つ彼は、稚い頃より、観月の四長老にその身を捧げ、一度廃絶した藤代流を復興させるための贄となってきた。
だが、藤代は異母弟の明煌が襲ぐことになり、篠芙の運命は大きく変わってゆく。
男たちに弄ばれ、支配されてきた篠芙が、華麗なる舞の裡に秘めた想いとは―。
狂おしい官能の美を描いた至極の愛の物語。

作品情報

作品名
花夜叉
著者
山藍紫姫子 
イラスト
小林智美 
媒体
小説
出版社
角川書店
レーベル
角川文庫【非BL】
シリーズ
花夜叉
発売日
ISBN
9784043702015
4.3

(42)

(29)

萌々

(8)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
7
得点
177
評価数
42
平均
4.3 / 5
神率
69%

レビュー投稿数7

・・・

哀れで苛酷で美しい「古典芸能と耽美の組み合わせ」「最高傑作」と書評にあるので、読みました。 

読後の恐怖をメモ。
不条理の痛みと苦しみを体験したことがない人なら、平気で読めるのかもしれない。もがいても光が見えない生き地獄、篠芙が気の毒。こういう不幸な筋書きは、上向き景気の頃に受けたもの。不景気な今は、流行らない。

主人公;篠芙が、宗派の贄となって味わう苦しみの報いが、家と芸にしか無い筋書きが辛すぎる。
何度か自殺を考える篠芙。一族の爺の凌辱は、資質を備えた篠芙を精神的に追い詰めることで、幽玄の美、能の美の極み「狂」を磨き上げるためだと言う狂人。
・・これは作者の妄想で面白くするための創作 だとしても、古典芸能への誤解を生むようなインモラル。
---
篠芙は、中世的な美を備え、舞の技術も長けた神気を帯びる人。
流派の存続の道具=贄として生きる篠芙は「鈴虫と同じ」と呟く。用が為せなくなれば、捨てられて消える存在。
兄;篠芙と弟;明煌で舞う「二人静」で技量比べの結果、弟明煌が家を継ぎ、兄篠芙は意に沿わない宗家を継ぐことに。
そして、芸に美の幽玄=「狂」を増す為に、老人達はあらゆる方法で篠芙を苦しめる。苦しむほど、幽玄の美が極まると思っている老人達。
篠芙は女性と致せない。誰も愛せない。弟だけは違うと思っていたが、爺にそれも潰される。
篠芙の子=後継者を産ませるために爺達は、他家へ嫁いだ一族の女に人工授精を行う。
篠芙の形式上の妻=兄嫁から、明煌の子を産ませろと托卵計画を迫られ同意する。
・・といった、インモラルな狂気に満ちた一族の話。
---
書評に、この作品の読後「能楽に興味を持った」という記載があったので、心配になってしまった。この作品の方法で、芸の腕は上がらない。これは、フィクションです。

世阿弥の「風姿花伝」がこの物語のネタ元で、数か所引用と曲解が書かれていました。
・・・・まあ、小説だからなんでもアリだけど、どこかの宗教の血のイニシエーションみたいな曲解は、私には受け付けられない。続編に「花鬼」があるそうですが、明るい展開が期待できそうもない。似た題名の「花夜叉殺し」~赤江瀑短編と関連があるらしい。
・・・でも、今世受けしない不幸な結末の作品は精神を病むだけで心の糧にはなり得ない。

耽美とは?を知りたくて、古書を集めて読み増したが、「アレキサンドライト」は良かった。主人公に明るい未来の兆しの設定で完結しているので。 この作品は、凌辱だけが続く世界感の中に入り込めなかった。受けた衝撃が大きかったのでダラダラ長文になってしまいました。

2

痛いけど

かなりエグい。だけど面白かったです。
ホラー小説読んでるときみたいに
怖いけどやめられない、ゾクゾクしながら読み続ける、
みたいなおもしろさがありました。

ただ複数モノや、凌辱系が苦手な方には完全に地雷です。

山藍さんの小説はBLという枠を超えた
世界観があって面白いです。

1

凌辱だけじゃないんです

藤代流を再興させるため、祖父と父に人柱として観月流に差し出される篠芙。
凌辱がメイン。だからといって読まないのはもったいない。

能の事は分からなくても大丈夫かと思います。
最後には甘い雰囲気になる普通のBLと違ってちょっと男性向けっぽいかも。

1回目読んだ時は凌辱が多くて長く感じたけど
2回目は割とスッキリ読めました。
何度も読めるパワーのある作品だと思います。
最後あたりで二人が見つめ合うだけでほんのわずか進展する兆し。

脇役もなかなかの粒ぞろい
宗家の孫である元裕紀。
後継者として特別扱いで育てられ、我が儘。
篠芙のライバルで、才能のある篠芙を憎んでいたが…。

真木 
いつもスーツ。10歳で観月に移り住んでからたんたんと身の回りの世話をこなす。
手は一切出さない。篠芙を贄とする一員ながらも、篠芙の事は大事に思っているらしい。策士。

こっちとも見たかったかな。でもこれはそういう話ではない。
弄ばれながらも狂おしく美しい篠芙と、それに恋い焦がれて最終的に犬みたいになっちゃう明煌。
芸のため家のため人ではない何かへと変えられる篠芙。
山藍さんの文章が綺麗です。

4

観世元雅×音阿弥妄想がとまらない!

能楽(猿楽)の地位を一気に押し上げたのはいうまでもなく世阿弥でありますが、
それは世阿弥がわずか12歳のとき、将軍・足利義満に見初められたからというのが一因。
ところが、義満から義教の代にかわり、世阿弥の長男といわれる観世元雅に将軍の寵愛が
うつることはありませんでした。
義教は元雅より4つ年下の従兄弟である音阿弥をひいきにしたと言われます。

BLでは珍しい能楽を題材にとった本作品を読んでいると、
明煌(攻め)と篠芙(受け)の関係がどうもこの元雅/音阿弥とかぶってくる。
音阿弥は世阿弥をもしのぐといわれたほどの才能があったそうですが、
結局、観世一座の跡目は音阿弥ではなく長子の元雅が継ぎました。
音阿弥の心中はいかがなものだったか。
歴史上、音阿弥は義教の寵愛をえて、世阿弥・元雅はかなり露骨な形で疎まれるようになります。結局、元雅は客死、世阿弥は佐渡へ島流しにされてしまうのですが、こうも没落した理由はいまだに謎です。

もし、音阿弥が篠芙のようであったら…
本作を読んでまず最初にそれにいきつくって、自分は明らかに能楽ファンとしては
不心得者すぎるんですが、山藍先生の作品の大きなテーマともいえる「業(ごう)」
と幽玄は、秘すれば花の能楽に似合いすぎている。

作中の「二人静」は「羽衣」や「葵上」といったメジャーな演目では
ありませんが、シテが二人で舞うという変則的かつ大変優雅なものです。

9

能の裏世界

伝統芸能を守って行く男の孤独な心を書かれた話です。
10歳でじじいに犯され この後も数々の男達に身体をすき放題にされています。
この屈辱に耐えているのは「能」を継承する為だけなのです。
ストレスがたまった時は 弟を犯す。
兄と弟。
この異母兄弟の弟こそが 男の希望の光になっていきます。
憎いけど一番近くの存在で気持ちを判ってくれる弟。 
最後にちょっぴり心を通わせる場面がほっとします。
エロエロですよ。
濃厚プレイがお好みの方は気に入るはずです。
能の裏世界を堪能できます。 


7

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