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朝南かつみさん画の坊主が美しい、
戦国時代を舞台とした義兄弟モノ。
いとう由貴さんの作品と言えば
昼ドラのようにドロドロしたイメージが強く、
ラブより当て馬とのバトルの方が
印象に残ってしまうことが多いのですが
本書はそのドロドロがプラスに作用していたように思います。
時の領主が、美しい侍女を戯れに
強姦したことで生まれた月永(受け)。
侍女は、正室に手酷く折檻された後
故郷でひっそり月永を育てていたが
正室の放った刺客により家族共々殺される。
生き延びた月永は僧となり、復讐のため城へ。
異母兄・善康(攻め)を自身の虜にし
国を滅する策謀を企てるが・・・
復讐と言っても、一介の僧の月永には
国を滅ぼすような大事は成せません。
正室を恐怖させ、息子との関係を壊すことには成功したものの
全てを知った善康は、逆に一国の主として逞しく成長してしまう。
そんな彼に抵抗する術もなく
閉じ込められてしまう月永は
時の権力の前には無力な、儚い存在です。
この善康も、ただの善良な兄ではありません。
弟を愛し、父母の罪を知ってしまった善康は
罪を背負い月永に許しを乞うような愛し方ではなく
もっと偏執的な情念を見せます。
弟を閉じ込め、毎夜その身体を貪り
共に畜生道に堕ちると言いながらも
朝になれば領主として外の世界へ出て行く。
月永を愛している一方で
彼を自由にしたり、何もかも捨てて月永を選んだりすることはできない。
相手への思いやりより、自身の執着心や支配欲の方が勝った、強者の愛し方に思えます。
月永も、外に出られない日々に虚しさを感じつつも
夜、兄に激しく求められればそれだけで満足し
兄への愛憎半ばする感情に支配されている。
身分である程度一生が決まってしまう、非常にままならない人の生きざま。
この先、月永が遺恨を捨て、善康を愛する自分を認めたとしても、囲われの身で一生を終えることに変わりはない。
その不自由さに、時代物特有の切なさとドラマを感じました。
背徳感ある濡れ場の数々は、ねっとり耽美。
非常に引き込まれる作品でした。
「兄上、共に地獄に堕ちましょうぞ」ってなんて背徳的で淫靡で甘美な煽り文句でしょう。10年近く前の作品なのでよくわかりませんが、作中に出てくるこのセリフが絶対帯のキャッチコピーだったと思います。
時は鎌倉〜室町時代?位の日本。妖艶な美坊主のお話です。その上腹違いのガチ兄弟設定。美しい僧侶の月永はその体を寺での生活でエロ坊主達に差し出しながら生き抜いてきました。正妻の息子で国主となった兄への復讐のために。
ドロドロして愛憎渦巻く感じがいとうさんの作風にピッタリです。最初は憎んでいたはずなのにいつのまにか愛してしまった!というお話を多数書かれているので。あとがきも歴史ものへの愛を感じて楽しかったです。あれくらいパッションのある人じゃないとBL作家にはなれないなあと思います。
今は亡き朝南かつみさんの挿絵も美しいです。最初から最後まで全坊主です。最後の方だけ髪が伸びてる、とかじゃなく。難しいテーマなのにも関わらず数々の色っぽい美坊主イラストでした。髪が全く無くても美しいって相当の美貌のはずですからね。
戦国時代を舞台にした、しっとりしたエロたっぷりな復讐の物語。
朝南かつみさんの、坊主絵がまたものすごいフェロモンを撒き散らして、犯罪ですぅーーーー!!!
坊主萌えのきわみかもしれない。
都から僧侶の月永が遣いとして縹国にやってきます。
彼には、仇を打つという目的がありました。
その美貌と身体に領主の義康がとりこになり、月永の復讐も遂げられるのかと思われたのですが・・・
月永の復讐は、その出生の秘密にあります。
彼の目的は仇を討つということなのですが、具体的にはされておらず、縹の国を滅ぼすということなのかな?とは思いましたが、身一つで国主をたぶらかしてそれだけで国が滅ぶのか?
一体どうやっていくんだろうとワクワクさせるものがありました。
月永がしたことは、身一つでできる些細な事ばかりです。
でも、義康の寵愛を受け、その身を本人の知らない禁忌の関係に貶めたことで月永は悦びを得ているのです。
その気持ちにはとても複雑なものが感じられました。
今まで感じたことのない至上の快楽と、裏切りのほの暗い喜びと後ろめたさ。
そんなものがいっしょくたに混じって月永に混在するので、ものすごく淫靡でいやらしいくらいに濃厚なエロスが漂います。
結局は、月永も所詮力のないただの僧侶ですから謀略といっても、城内のいざこざを起こすくらい。
ここに登場する最大の仇である義康の聖母である泰恵尼を陥れることには成功しましたが、一国の領主である義康の領主の本領を引き出す結果になってしまったんですね。
世は戦国ですから・・・たかが坊主の色香で惑わすだけではおさまらなかったのかもしれません。
逆に義康に絡め取られてしまうのですから。
月永は、泰恵尼を憎んでいましたが、彼女が愚かな女だったのと同様に、月永も女性的だったと思います。
ただひたすらに、静かに交接する二人のシーンが印象的でした。
禁忌だけになおさら、その行為の最中の呼びかけなどが、一層それを引き立てます。
坊さん!兄弟!復讐!
背徳的な要素むんむんの本作。
時代背景もあるのですが、文章が堅苦しくて
雰囲気を感じました(*´ω`*)くぅ
挿絵の坊主ぐあいがまたエロスでよいです。
お話しはといいますと
現国主の父である元国主の嫡子である受。
それは現国主の母しかしらない事実。
秘密裏に家族を殺され、幼いながらに逃げた受は
寺院で稚児として過ごす。
寺の坊さんたちには稚児としてアレコレされちゃってたわけで
いつか家族を殺した男に復讐をちかっていたわけで。
そんなこんなで復讐の時。
血のつながった兄をたぶらかし、体をつなげつという禁忌を犯す。
すべてを奪い、報復を果たすそれが願い。
だったはずなのに・・・というところでありますな。
私の正直なところとしては、
生まれた時から遭遇したことがないわけで、少なくとも
兄に関しては存在すらしらなかったわけなので
血がつながっていたとしてさほどの禁忌感はないように感じてしまった。
受の様子をみてもあんまり背徳的な感覚がなく。
それが少々残念。
ちゃくちゃくと、少しずつ
復讐のためにことをすすめていく受。だったですが
後半のなんだろうな。。。展開が早すぎる言うか
こつこつ積み重ねてきたものが
あっさりさっぱり一瞬で片づけられてしまったのが
肩透かしでした。
二人が幸せならそれでいいんだけど、
もやっとが拭えないかな~
全体的には読みごたえもあって面白い作品とおもいます。
表題作と後日談ショートの2作品が収録されています。
月永(受け)と義康(攻め)の両方の視点だけでなく、他の登場人物の視点も入っていてドラマっぽいなと思いました。
表紙、冒頭のカラーイラストで言うに及びませんが、朝南先生の艶のあるイラストが堪能できます。月永の怪しい魅力がどわっと伝わってきました。欲しい場面に挿絵も入っているのも嬉しいです。
もっとドロドロした展開になるのかと思ったのですが、意外と素直でした。月永の画策も母上排除までで、発覚してからは義康に一蹴されます。義康の変貌ぶりも中途半端。人が変わったとはいえ城主らしくなったくらいで、月永に監禁や乱暴することもなく相変わらず優しいままです。
月永が高棟を誘惑しようとしたり、義康の怒りを買って切腹することになるのでは。捨蔵が命を落とすことになるのでは、とびくびくしながら読んでましたが、書下ろしショート「けものみち」で丸く収まっていて、拍子抜けするやら安堵するやらでした。
あとがきで書かれていましたが、時代物の計略うんぬんより、異母兄弟の「禁忌」がメインの作品だと思いました。和装好き、色っぽいエロがお好きな方にお勧めです。