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2005年に出た旧版を持っていました。
続きが出るのを心待ちにしていた覚えがあります。
五年後の2010年に、続編とともに、旧版を「新装版」として改めて二冊同時に発売したと知り、時間が随分経ちましたが読んでみようと思い立ちました。
書き出しから雰囲気のある文章で、心を掴まれます。当時流行っていた、警察や探偵が出てくる一般小説と近い世界観を感じて懐かしくなり、BLであることを忘れてしまいます。
メインキャラの二人は、今は探偵と刑事ですが、かつてのバディ。
探偵の黒澤は警察官だった過去があり、その時組んでいた相手が同い年の櫂谷で、二人は性格は対照的だけど抜群のコンビネーションだったことが端々から窺えます。
話は過去と現在を行ったり来たりしますが、どうして黒澤が警察をやめたのか、二人の関係はどうなのかが現在進行形のエピソードと相俟ってよく分かり、読み応えがあります。
二人は過去に一度だけ身体の関係がありますが、お互いに無かったことにしていて、「相棒」「元・相棒」という関係性を敢えて保とうとしているような、理性が勝った繋がりなのが却って色っぽいです。
特に、櫂谷→黒澤のモノローグが、櫂谷のクールな見た目や態度と正反対に熱いので、いつ崩れるのかとわくわくします。(本書では崩れません)
余韻の残る作品。未完のようですが、改めて17年ぶりに続編が読めることが楽しみです。
高遠琉加さんは、「神様も知らない」を読んで知った作家。
サスペンス仕立てで、心に傷と寂しさを持つ登場人物たちの心情描写が上手いと思う。
二冊まで出ているけど、シリーズは未完。
元刑事の探偵x同僚だった刑事が、事件を解決しながら、
自分達の過去を思い出したり、傷の舐めあいをしたり、
立場が違う二人が、何故今も付き合いを絶たないのか段々に分かっていく。
雪舟先生挿画の紙本を購入。
これを先に読んでしまうと、茶屋先生が描くキャラのイメージが、野太く感じてしまうけれど、何方も影を背負っている描写で素敵。
茶屋先生の方が、濃い影。
雪舟先生は、儚い影。
①世界の果てで待って(旧版)2005年9月12日 挿画:雪舟薫
①世界の果てで待っていて -天使の傷痕-(新装版) 2010年10月23日 挿画:茶屋町勝呂
⓶世界の果てで待っていて -嘘とナイフ- 2010年10月23日
事件は解決しても、二人の関係は未解決。
紙本発刊で「嘘とナイフ」の続編をひたすら待ちたいけれど、
著者が活きている間に、何かの形で出して欲しい。
高遠さん初読み。硬質だが読みやすい文章で、事件ものの緊張感を際立たせており、とても良かった。表現力が高く、BLにしては珍しく小説らしい比喩に触れられた。一般書に近い読み心地。
メインキャラは元刑事の探偵と現役刑事。この一冊では、主に攻めの黒澤の事情を掘り下げている。櫂谷視点で描かれる黒澤の苦悩は生々しく、心理描写は少ないのに痛いほど内面が伝わってきて苦しかった。
櫂谷の方はまだ深くは語られていないが、頭と体と心の反応がバラバラになっている自分に何かを感じている様子が良かった。
黒澤の過去や二人の事情は、エピソードだけを並べ立てればとてもシンプル。だがそこに絡む感情の複雑さがグサグサ心に刺さり、深みを持たせている気がした。
二人の関係性は、この一冊では何も変わらない。過去の一夜を持て余し引き摺る描写は、櫂谷視点でのみ書かれ、黒澤の胸の内は分からない。なんとももどかしくて興味を惹かれ、たまらなくこの先への期待を煽られる。
それぞれが人間として魅力的なのも良かったし、関係性もとても好き。お互いの根底に揺るぎない信頼が見えるのが良い。
今作で二人が追うのは、子供の誘拐事件。これは完全に好みの話だが、大人を振り回して出し抜く子供の図が嫌いな私は楽しめなかった。自分の意思でついていく子供と、それを理由に犯罪を正当化する大人という図も。事件そのものはどうでも良いが、リアルの一億総批判社会で巻き起こる糾弾内容がチラつくところが苦手なので。
まだ情報を得る手段の少なかった初版発行時に読んでいれば、何の引っ掛かりもなく読めたかもしれない。時にリアルが読書の邪魔になるのが悔しい。
しっとりした雰囲気で、影は落ちているが暗くはなく、内に激しい想いを秘めながら堅実に生きる二人の男が描かれていて良かった。
なんというか……BL小説として見るならとても貴重な一冊だと思う。
攻、受、共に刑事です。
2005年、そして続編が2010年と刊行されています。肉体関係成立まで性急で安易な展開ストーリー運びのエロはすぐ満たされるが、すぐ忘れ去られる一発勝負作品( シリーズものを含む
) が多いなか、その対極にある作品です。初動萌えがいつまでも燻り残り続けます。しつこく。
エロよりエロスを求める人におすすめしたい。
…………… そういう意味では読む人を選ぶので、萌の真骨頂に触れてみたいとか、萌の極みに近づきたいと思う人にはたまらない一冊でしょう。まさに自分が読みたいと思うBL。長い年月をこの作品にしっかり喰われてしまいました。
ストーリーは肉体関係以前同様の二人が、だけどお互いに忘れたフリをしているせつない一夜を生んだあの日ーーー。
攻め元刑事の妹が殺された事件当日から2年経過してしまうのだが、二人の関係性を縦軸に、事件解決への背景展開の意外性を横軸として。 攻めの元刑事が警察を辞めたり、事件当初の怒りが変節したかと思うほどの冷たい熱情と執念を持って犯人を追う様子は、妹への愛がせつなく、痛々しくて胸が詰まります。それを見守る受刑事も痛々しくて。
事件当初からのある日、攻めは情緒不安とケガのストレスがきっかけとなり、もともと好きだった受刑事を抱いてしまう。戸惑と疲れや虚脱感、同情と複雑な無意識の感情を絡ませながらも受け入れて行く場面の、受けのしどけなさ、男の色気の本質のすごみを、著者が絶妙な筆致で高めています。 こ、この時の初動萌えがすごい。 ものすごいインパクトがある。何せ一回きりの情事と呼べるものだから。 しかも、
リ・ア・ル、の、一言で表現出来ないほどの。100回以上は読み直しています。この7年間で。
十分掘り下げてくれました。ストイックな人間が情に流されて体を開いてしまう時のあのチラリズム………いやいや、それだけの作品ではないのですが。………それほどのストイックなエロティシズムに長〜い時間、絡め取られたのはこの作品がはじめてです。それが言いたかったのです。
ーーーー人は、性的情欲を含む愛情を感じる相手にそれを見破られる事なく、ずっとそばにいることは可能か?ーーーー
しかし、受け刑事の真意を期待したり問いただす事もせずに、その一夜を攻元刑事は自らの手で潔く封印してしまう。扉を閉めて鍵を掛けるように、笑顔で。 妹を亡くした直後なのに!受刑事に甘えてもよかったんじゃ?
自分が招いた一夜だからこそ自分が始末するのか? そこには一体、どんな感情が存在するのだろうか? 一体どれほどの勇気を必要としたのだろうか? その感情に名前を付けるとすれば? 色彩はどんな色合いで彼の心を染め上げたのだろうか………。
しばらく相手の反応見てから、結論出してもよかったのに。受け刑事が、攻めに近づく女性に嫉妬したり、文句を言ったり、の微妙な判別しがたい感情は知ってたんだから。
あぁ……… 待つことを潔く諦めた男の性が哀しい…。
でも、彼なりに考え、下した結論は早かった。攻め元刑事のその男気、大人の流儀、大人の対応。社会的規範に則ろうとする男の矜恃に萌えたよー。 今後まだ希望はあるとはいえ、せつなかった。 一夜とはいえ、一度は抱いた好きな男を自らの手で断ち切るとは。
それが実は相手の望まぬカタチだったとしても。
著者の文章力の凄さは、周知のとおりなのでここでは割愛する。 特にこの作品に関しては、著者は物凄い情熱を持ってこの作品を書いたような気がするのです。その情熱にあてられた時、読者に生じる萌えもすごいんだろうな。きっと。先人のレビュー読むと、胸を締め付けられるように感じるんですよ。こちらまでつらくなるほどです。作品にボコボコにやられたって感じで。 自分と同じように。
だけど、「 世界の果てで待っていて」のタイトルの解釈は、人により差異を生み出す奥の深い響きを読者に残したまま、作品も未完結のままに現在に至っています。
レビューを見る限り、続編を切望する声が多く、獲得した読者層に対する社会的責任を出版社に自覚しろー❗️とまでは言いませんが、満は持したはず。 高遠センセにもぜひ完結編を書いて欲しい。お願いしまっす。
イラストは美麗・安定感のある雪舟氏が作品適合率・適任性100%発揮のマッチング抜群だったのが、2010年新装版ではイラストレーター替えでミスマッチがブーイングを呼ぶ波紋を。私もこなせるのは雪舟氏しかいないと思う。
イメージ重視視点では。
CD…………鳥海さんが、硬質で繊細な男前
受けを。黒田さんがいつもより幾分さわやかにイメージぴったりナイスガイボイスで。熱演に溜め息が。ふたりとも上手すぎる。
しつこいが、続編を読みたくてたまらない。
ホントに
『 世界の果てで待って 』いる気分さ。
ワオ‼︎
高遠先生は文章力はいわずもがな、タイトルセンスが非常に洗練されていると思います。私が好きなタイトルはプルーストの「失われた時を求めて」なのですが、このタイトルも同じくらい好きです。
「世界の果てで待っていて」。簡潔であり様々なイメージを想起させる、一行の詩のようなタイトルではないでしょうか。
この作品の主人公は黒澤統一郎、元刑事で今は探偵。渋谷区神泉に探偵事務所を構えています。
櫂谷雪人は元同僚、今も渋谷警察署の刑事。
黒澤の事務所に葉室奏という少年が双子の兄、律を探して欲しいと依頼するところから物語は動き出します。
双子の少年を巡る今と、二年前の事件と、過去と現在が絶妙に入り混じる物語です。
黒澤というのは男性的で女性にもてる男、文章からフェロモンみたいな匂いが嗅ぎ取れそうないい男。櫂谷は「男前系美人」で、二人は刑事としてうまくやっていたのですが、二年前に黒澤の妹の澪子ちゃんが何者かに殺されてしまってから一変します。
妹の事件後に黒澤は警察を辞め、探偵になるのです。飄々として底知れない闇を抱えていそうな黒澤と、素っ気ない感じがしても実は情が深い櫂谷。
二人の心は互いにあっても関係を結んだのはたった一度。澪子ちゃんの死で黒澤が自分を失くしかけた夜。ここが!今読み返しても本当に素晴らしいです。身体くらいなら、くれてやる!と雪人は文字通り体を張って崩壊寸前黒澤の心を現実に繋ぎ止めます。
なのに翌朝、笑顔でなかったことにした黒澤。私のへっぽこ文では伝わりませんが、何とも大人な雰囲気にクラクラきました。
現在パートの双子の少年の雰囲気もすごく良かったです。一本の映画を観たような読後感があり、すぐに続きを読みたくなること受け合いです。
私はとにかく、黒澤と櫂谷が大好きで、もしblアワードに二人がノミネートされてたら絶対投票するんですけどね。