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毎回ね、皆さんにオススメしたいほど好きな作品は詳しくウザく書き込んで「みんな聞いてよ!こんなにいいんだよこの作品!」状態になるのですが、ちるちるには上手にあらすじにからめて感想やちょっとした気づきや小ネタ(この言葉はこんな事の伏線ですよ、この本は前作飛ばしても面白いですよ、この本ホントは雑誌では18禁で発売されたんでエロいですよ←かなり重要)も入れてくれるありがたい方ばかりなので、もう私はそんな素晴らしいレビューは書けっこないのでそれならばなんとかネタバレせずにレビューって方向でどうだろうか?と思ったので書いてみます。
「日本ちょっと昔話」ってあとがきに作者さんが書かれていたけど、そう!まさにそれ!昔話には色々あるのよ…。酸いも甘いもね。あとは作品紹介を見ていただければ。さあ!本作を買って頂戴!
戦時中や昭和初期ものもあるので、ならではのあるあるシーンもあるよ、でもね、深井先生の絵とミョーに感情移入たっぷりのモノローグやセリフがないストーリー運びで、ハートにガクんッと来るのよこれが!飽きっぽい私だけど何回も読み直しちゃう♡
あとは深井作品をオススメするポイントとして、最初は私も絵柄が古いかも…と心配しちゃったけどそれがスッキリとしていい!それに電子の場合、試し読みなんかでは主人公達が結構目つき悪くコチラまで睨みつけてくるような書き方があるけど、大丈夫!その後のデレがたまらなくなってその主人公がたまらなく好きになりますから!
あとはストーリー展開かな。深井先生のストーリーはたびたび「ダーク!」と表されるけど、これも対比でダークだからホットにもなりまっせ!という手法と思われます。そんなに怖がらなくても良いのではないのかなぁ。まぁ、オイオイこりゃダークだなぁ!もありますがね。
でも私はそんな深井先生のトリコで先生の作品は電子化されてるものならほぼコンプリートです。
この作品、特にどんな方に読んでもらいたいかなぁ〜と考えたんですが、BLの湾んの中で泳いでたけど、さあ!大海原に乗り込むぜ!オレは海賊王になる!という状態の方にオススメかなぁって。
あとは、BL読んで涙を一滴も流したくないと言う人以外にぜひ!!!
カラー口絵(五月雨る抱擁)がとても好きです。
雨の中、しゃがんで草木の手入れ(雨の中やる必要はなかろうにというのは野暮か)をする管理人さん(受け)に傘を差し出して背後から抱きつく学生(攻め)。自分はずぶ濡れなのにとても幸せそう。
「一緒にいても…いいんだ…?」「…うん」[ずっと…一緒にいてもいいんだ…」「そうだよ」
くー、たまらないっ!作品【五月雨る抱擁】はこのまんまの世界です。
アパートの管理人さんとそこに住む学生さんとの恋模様で、穏やかな性格の二人の気持ちが寄り添っていく様子が描かれていました。
昭和からお付き合いスタートして、作品の終わりには「ずっと一緒にいた」何十年後かの二人が、出会った頃のやり取りを懐かしむ様子が描かれていて相変わらずお互いを思いやって慈しみあっている様に心打たれます。
全部で6作品(描き下ろし含む)収録されていますが、そのうち三つが死ネタ絡み。死んで全てが終わりではなく更に永遠の結びつきを得るといった内容が多く、アンハッピーエンドとは言えないところが切ない余韻をもたらします。
しかしそのうちの【契る花】には目が点。村の神様の使い「ニギノサマ」として選ばれた青年と、身の回りの世話をする少年とのお話でいよいよ定めに従って人身御供となり永遠の別れかと思いきや、まさかの触手プレイ。
せつないお話かと思ってたら触手ですよ……。あれやめて欲しかったなぁ。なんでここで触手??しかも硬い桜の木の枝で死ぬほど痛そう…。
しかもその桜の木に取り込まれるんだけど、静かに消えるのではなく、バキバキバシャッと潰され&血飛沫飛びまくり系で唖然呆然……。何これ、ホラー?
話の終わりとしては少年(もう大きくなって青年だけど)にも神の使いの証である痣が浮き上がって、次は彼の番、来たる日がきたらやがてその木に彼も取り込まれる事で二人は一緒になれるという終わり方で悪くないんだけど、いかんせん途中がエグすぎて台無し。せっかく綺麗な人だったから、もっとマシな人身御供の方法だったら切ないトーンで作品に浸れたのになぁ…残念。
表題作【世界は光に満ちている】
戦時中、まさかの敵国人・米兵と元医学生の青年のお話。敵兵だけど医学の道を志していたこともあり瀕死の人間を官憲に突き出す事ができず匿う事になります。そして見た目は違えど同じ人間であり、戦ではなく絵を愛する画学生であった事を知りやがて愛し合うようになる。
肺を病んでいて春を待たないと言われている青年だったのにまさか米兵のほうが先に死んでしまいます。そして青年も数日後事切れる。
一番心打たれて泣けたのは死ぬシーンじゃありませんでした。一番最後のページ、二人と一緒に暮らした弟の回想です。確かにそこには儚く短かったけれども光に満ちた世界があったのだと思うと。
短編集でした。
深井結己さんがあとがきで書かれている通り、
少し昔の日本が舞台になっています。
どの作品も全て舞台は日本で、ノスタルジックな香りが漂う
1冊となりました。
◆◆ 世界は光に満ちている ◆◆
表題作です。
戦時中、肺を病んで、東京の帝大から故郷に戻ってきていた受け。
そんな時、近くの山に敵機のB29が墜落し、
たったひとり生き残った異国の男(攻め)が
大怪我をして、受けの家に押し入ってきます。
このまま放置すると、この男は死んでしまう……。
そう思った受けは、敵と知りながら治療を施します。
受けは英語を話すことができ、攻めとだんだんと心通わせていくシーンが
印象的でした。
しかし、肺を病み、もう春までもたないと言われていた受け。
もし自分が死んだとしても、村の者から敵の異国人である攻めを、
隠して生きられるように、手を尽くしていました。
受けの優しさ、攻めの優しさ、それらが通じあい、
2人は一線を越えます。
日本語で教えてもらった言葉「アイシテル」を繰り返し言う攻め。
切ないシーンでした。
しかし、運命は非情で、
攻めは脳の内出血のため、突然として亡くなってしまいます。
遺体を桜の木の下に埋める受け……。
そして、暫くの後、満開の桜の下で受けは息を引き取ります。
恋しいという気持ちで世界は光に満ちるのだという言葉を残して……。
◆◆ ◆◆ ◆◆
その他にもたくさんの作品が収められていました。
●象牙色の銀河…小説家を志し、上京した攻めと次のハレー彗星も
一緒に見ようと約束した受けの話。
●上弦の月が沈んだら…亡くなった父親の愛人(受け)に
恋をする攻めの話。
●契る花…ちょっとホラーチックな昔話。触手プレイが
無理やり過ぎと思った作品。
●五月雨る抱擁…下宿管理人の受けに恋した大学生(攻め)の話。
◆◆ ◆◆ ◆◆
昭和初期~中期の話はどれも不思議な魅力に溢れていて、
惹きつけられました。
ただ、どれもページの制限があったのか、次々と出来事が起きて、
折角2人が心通わせるシーンも、なかなか詳細に書かれておらず、
残念でした。
くっつくのが早いんだよ! とか思った話もありました。
うーん、そこは残念。
どの話も昭和から昔の古い時代が舞台になった短編5作品。
ハッピーエンド好みの自分にはちょっと合わない悲しい終わり方もあるのですが
それがまた感動作で・・・
特に表題作の『世界は光に満ちている』は時代背景とともに
当時のどうにもならなかった現実が作品の中に描かれていて
そういう時代に生きた若者の悲しくも美しい姿が表現されていました。
当時はまだ治ることのない肺の病にかかった主人公と
その主人公に助けてもらった外国兵。
誰を責めることもできない状況の中で愛し合った二人の
ほんの一時の幸せに涙しました。
最後に愛し合う二人が同じ桜の木の下で眠ることができたことが救いです。
その他の作品もみんな、共通して攻めが年下受けが年上。
それも結構歳が離れた設定が多かった気がします。
どのお話も、短い中にきちんとストーリーがあってすごく入り込めました。
『世界は光に満ちている』
病のため、医学を途中で断念した正之助と敵国の人間、ジョーイの話です。
はじめは敵同士ということで信用していなかったジョーイですが、やがて正之助とその弟である幸作と打ち解けていきます。
正之助には残された時間は少ない中、やがて二人には別れが訪れます。
成長した幸作の元に、ジョーイからの贈り物が届きますが、彼がそこで思うことにぐっときました。
『象牙色の銀河』
楓とその兄の友人である禮次郎の話です。禮次郎は文学のために上京し、楓は家業の呉服店を守っていこうとした矢先に、詐欺に遭い、呉服店は人手に渡ってしまいます。
最後に、楓は禮次郎に会おうと上京します。最後と覚悟を決めた楓と、その二人のやりとり、楓の会いたいという気持ちが切ないです。
『上弦の月が沈んだら』
父の命日に、航太郎は、かつての父の部下、天ヶ瀬と再会します。航太郎は、天ヶ瀬のことをかつては好きなおじさんとしか見ていなかったのに、やがて、恋愛対象として好きだと自覚します。
父が亡くなる寸前、天ヶ瀬に伝えたことが、大人になった航太郎によって明かされます。
長い時間を経ての「ゆるし」があるような気がして、萌えました。
『契る花』
継也と彼に仕える笹一の話です。継也は村のために桜の山の木に喰われてしまいます。やや生々しい描写もある中、笹一もやがて継也と同じ道をたどることになるようで、ちょっと悲しかったです。
『五月雨る抱擁』
五月寮の管理人糸屋と、学生の神沢の話です。大学生活に戸惑いを感じていた神沢も、優しい糸屋の援助もあり、大学に慣れます。神沢の父が倒れ、実家に戻ることを考える神沢ですが、彼にとっては、諸々の気持ちを整理する機会になったようです。
すべてのお話が読み切りで、しっとり、切ないが詰まっております。