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無表情な年下弁護士×一途な年上元美容師が育む不器用ラブ
弁護士の攻めと元美容師、求職中の受け、これが後輩先輩の間柄から約10年越しの両片思いです。
しかし、ちょっと物足りないというか、私の萌えポイントを微妙にずらしてしまっているのでした。
物語は高校時代と現在を行き来しながら進むのですが、その移り変わりに追いつけなくて(そういう作りのお話は他にもあって問題なく読めるのもあるんですが)、盛り上がった気持ちがスカされるというか、もったいなかった。
ただ、後輩攻め君の気持ちは焦ったくて、昔からわかりやすく(読者的には)好意を持っているのに、目線だけでどう思っているのかわかるという先輩なのに、伝わってなくて。
これは先輩の方も、後輩君に想いがあったからなんでしょうね。
彼女作って家庭を持って、ってお互いが相手に思ってるってのも切ないものがありました。最後はちゃんと想いが通じての繋がりが出来てホッとしましたけど。
弁護士と美容師(しかも自分のお店を持たせてもらう)として一緒に暮らしていくんだろうな。
人生は思う通りにならないものだ。
けれども、どんなに望んでもそうならないことを知りつつ「そうあって欲しい」と強く望んでしまう時がある。
望めば望むほど悲しみは深くなるのに、望む事を止められない時。
そんな自分の全てを受け入れてくれる人が側にいてくれたら、手に入らないことの哀しさがたとえ薄れなくとも、明日もまた生きていけると思える。
……この物語はそんなお話だと思いました。
清水は暴力に晒されている人を放っておくことが出来ません。
自分がやられている訳でもないのに、暴力で対抗してしまいます。やり過ぎてしまうこともしばしば。
クラブで演奏していたバンドに瓶が投げつけられた時もそうでした。
しかし、清水の行動でバンドのギタリストは手に大怪我を負ってしまいます。
それが清水と、同じ高校に通う1学年下の直の出会いでした。
怪我をしても飄々としている直は清水を責める訳でもありません。
それが気に入った清水は、人とつるまず見た目も気にしない直と、約10年も続く交流を始めます。
27歳の清水は客を大切にしないことに嫌気が差して、勤めていた美容院を辞め、弁護士をしている直の所に転がり込みます。
嫌なことが会った時の清水の逃げ場になってくれている直に、恋愛感情を持っていると清水は自覚しています。
出来ることなら、直の所にずっと居たい。
でも、直には女性と結婚して幸せになってもらいたいと思うのです。
清水は義父に殴られて育ちました。母は庇ってくれませんでした。
独立してからも清水の所に金をせびりにやって来た義父を追い出してくれたのは直でした。
その後、母と会った時、義父と母が結託していたことを知ります。
彼らは清水に対して『絶対やってはいけないこと』をしていました。
清水は傷つき、許せないと思います。
縁を切ろうと思います。
それでも清水は母の愛を諦めきれないのです。
粗暴でちゃらんぽらんに見えても、清水は真っ当に努力して生きています。
それを評価してくれる人も居ます。
でも、心はいつも寂しい。
直は清水の知らない所で、沢山のことをやってくれていました。
それに気づいた時清水は直に問いかけます。
「可哀想だと思ってなのか?」
それに対して直は、素晴らしい回答をします。
私はこのお話「……成宮さんは随分清水に対して厳しい」と思っていたのですけれど、直のこの言葉!
清水は母の愛を得ることは出来なかったけれど、それとは違う大切なものを得ることが出来たんですね。
涙が滂沱の如く流れましたよ。
高校時代と現在を行きつ戻りつしながら進む物語構成となっているのですが、現在の彼らの顚末が書かれた後に、2人で過ごした高校の卒業式の夜で物語が終わります。
18歳の清水の、ほんの少しの哀しみを含んだ心情が美しいラストでした。
主人公の2人は1年違いの高校の先輩と後輩で、20代半ばになった今は弁護士と美容師になっています。
2人とも高校は進学校なのですが、先輩の清水は父親が暴力をふるう事もあって、喧嘩で誰かが一方的にやられていると放っておけないタイプでしょっちゅう体中に痣や傷を作ってきます。
それを黙ってみていられない直。
こんな2人の過去と現在を交錯しながらストーリーが進んでいきます。
特に何の前触れもなく現在の話に過去の出来事が挿入される形式で、最初は少し戸惑いましたが、慣れれば大丈夫でした。
清水視点でお話が進んでいくのですが、喧嘩はめっぽう強いのに直に対しては気持ちを伝えられない、とてもヘタレな男でした。
直は口数はとても少ないのですが、黙って行動するタイプで、私は結構好きです。
お話が進むにつれて直がかなり性格も男前で、本気の人には尽くすタイプだと分かってくるのですが、なるほど、これが「理想の男か~」と納得しながら読み進めました。
そして私には極めつけの1文がラストで待っていました…それまで普通に読んでいたのに、その1文でガツンとやられました。
高校のいっこ下の後輩君との10年にわたる永い永い両片想いの顛末記。何度読んでも泣けちゃいます。角川ルビーなので10年という尺にしてはさほどの長編ではないのですが、時系列が行きつ戻りつするうえ、かなり手の込んだ伏線が張り巡らされてるので、読み返すたびに新しく胸に落ちてくるものがあります。
主人公の祥央は腕ききの美容師だけど現在失業中。次の職が見つかるまでの1カ月限定というふれこみで、後輩の直のアパートに転がり込む。ずっと好きで、でも告げる気なんて毛頭ない。「直にはちゃんと女としあわせになってもらいたい」きれいごとでなく、本気でそう思っている。男の自分は最初から数のうちに入れてない。それ以前に、自分がらみで直には随分とあれこれ重荷を背負わせてしまったという負い目がある。だから本当に、1か月だけ、想いでづくりだけ、そう自分に言い聞かせて。
一方の直。喧嘩っ早くて生傷の絶えない祥央にひそかに胸を痛めてる。そもそも2人の出会いも学校じゃなく、ライブハウスでの乱闘シーンだった。でもそばにいるうち直は気づいてしまう。祥央はただ弱者が虐げられているのを見過ごせないだけで、本当は暴力なんて好きじゃない、むしろ憎んでいること。なのにいったん頭に血が上ると、ストッパーが利かなくなってしまうこと。そしてその身体の傷やあざが喧嘩のためだけじゃなく、ろくでなしの義父から母親を護るためだということも。
この祥央の家庭環境といったら、悲惨の一言に尽きます。義父はともかく、実の母親の方が平気でより残酷な仕打ちに及ぶ。直はまだ高校生ながら、法曹一家の身内の力も動員して、祥央を護るべく暗躍する。あくまで本人には悟られないように。でも祥央は祥央で、ちゃんと勘づいている。直が日頃嫌っていた親と同じ法曹の道に進んだのは、自分のせいじゃないか。直の自由とか、将来の夢とか、いろんなものの犠牲の上に、自分はぬくぬくと護られてきたんじゃないかと。
直に女ができたら即身を引く覚悟は出来てた祥央だけど、男と付き合ってたこともあったと知り我慢ができなくなる。「振られたんなら慰めてやるよ」あくまで軽いノリで誘いながら、心の底ではずっと叫び続けている。
「どっちかが女だったらよかった」「俺が女だったら、勝手に直の子どもを身ごもって、反対される前に遠くで産む。直の血の入った子どもがいれば、直がいなくてもやっていける」
普段の祥央は、外見も中身も男前で、女々しさとはまるで無縁のタイプ。そんな彼がひそかに「彼の子どもを産む自分」を夢想してしまう。BLならではのせつなさの根源を見る思いがします。私が最近よくあるお手軽な男の出産・子育てものを好きになれないのはそのせいかも。越えられたくない一線、みたいな。
そういう意味でも本作は自分の嗜好にドンピシャだったのですが、みっつだけ不満が(みっつもかよ)・・・ひとつは最後に直が高級マンションを用意して祥央を迎えに来るところ。確かに直は弁護士さんでセレブではあるけど、ずっと地に足の着いた人たちのお話として読んできたからそういうシンデレラストーリー的な味付けは興ざめな気がしました。ふたつめはタイトル。いつも思うんだけど、成宮さんってタイトルのネーミングセンスは微妙?・・・内容はこんなに達者なのに。最後はイラスト。好みの絵柄でなかった…と言ってしまえば身もフタもないんですけど。ガタイのいい男同士画面狭しと絡み合うのはいいんだけど、妙に腕とか肩とかむっちりし過ぎでは?あと高校生のときと10年後の今と、あんまり2人のルックスが変わってなさすぎる気も・・・
可愛さ余って甘いんだか辛いんだかよくわからないレビューになってしまいましたが、成宮さんは私がコンプしている数少ない作家さんの一人です。最新作からかれこれ1年、そろそろ禁断症状出そうです。いい子で待ってるから、できればキワモノ路線じゃなく、本作のようながっつり読み応えある新作をお願いします
成宮さんの作品はこれが初読みでした。
レビューの高さに惹かれて読んでみて…
うん、納得のレビューの高さだと思いました。
いろんな場面で伏線がきっちり書かれていて、その分ストーリーに幅と深みを感じます。
何度か読み返すとより、それが分かって何度も楽しめました。
これをきっかけに成宮さんのほかの作品も読むようになったお勧めの1冊です。
神でも良いかなと思ったのですが、受けの名前の「祥央(まさちか)」が読みづらくって(笑)
話の途中でふと「なんて名前だっけ?」と冒頭のルビを見直すことになったのが唯一のけってんでした(^^;