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表題作ハッピーエンドアパートメント

それぞれのアパートの住人
それぞれのアパートの住人

その他の収録作品

  • PROLOGUE
  • chapter1 ディノとサルバドール
  • EXTRA ハビとルカ
  • chapter2 ノエと双子
  • chapter3 マティアスとペペ
  • chapter4 ホセとエヴァ
  • chapter5 ハビとルカそしてルカ
  • Anoter Prologue

あらすじ

同棲相手に追い出されたルカは部屋探しへ。入居募集の張り紙を見つけ行ってみると部屋は空いておらず大家が「俺と一緒に住まないか?」と誘ってきた。超不審だが背に腹は変えられず住むことを決める。さらにそのアパートは奇妙な住人ばかりで・・・。
(出版社より)

作品情報

作品名
ハッピーエンドアパートメント
著者
えすとえむ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
シトロンコミックス
発売日
ISBN
9784862639783
4

(23)

(8)

萌々

(8)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
13
得点
91
評価数
23
平均
4 / 5
神率
34.8%

レビュー投稿数13

軽やかでハッピー

絵もお話も軽やかになりましまね。
内容もタイトル通りハッピーエンドで、先生の作品を出版順に7作読んできましたが、こんなにハッピーなのは初めてではないでしょうか。
オムニバスではありますが、1冊通して同じcpのお話なのもお初かな。

タイトル、表紙、通りの名前、各話の構成などがおしゃれでかわいい。
毎作デザインが好きです。

いろんな人物、それぞれの恋愛がありおもしろかったです。

中でも、3年間全裸で過ごすサルバドールの心の内を聞いた時はなるほど〜と思ったし、何でもいいから着てくれと言われ「じゃあ ウエディングドレスが着たい」と言った時は笑いましたw

でも、サルバドールは真剣ですもんね。
ウエディングドレスを着させてすぐ脱がせるオチもよかったです。

ホセとエヴァのお話も好きです。
ホセが薔薇の花束を一輪ずつ自分の部屋まで置いていくのがロマンチック。
エヴァの「ワナにはまる野生動物の気分ね」も笑いましたw

このお話のラストもステキでした。

先生の過去作のキャラ、レオン、リュシアン、アンヘルの名前が出てきたのもうれしかったです。


完全に好みですが(5☆満点)
すごい ☆☆☆☆
面白い ☆☆☆☆
内容が好き ☆☆☆☆
絵が好き ☆☆☆☆☆
キャラが好き ☆☆☆
萌える ☆☆☆☆

0

どこまでがルカの創作か、想像するのも楽しい

 最初に登場する主人公・ルカがこの作品を書き上げたという設定がまず素敵だなと。同じアパートに住む住人達それぞれのハッピーエンド。無理矢理ハピエンに持ってかれたような感覚もなく、どれも良質な余韻の残る話でした。

◆ノエと双子
 双子のキャラクターに惹かれがちな自覚はあります。同じ人を好きになってしまう双子のもどかしい性。でも、そんな彼らを2人まとめて受け入れてくれる人が現れた。どちらか一方に愛情が偏ることなく、2人とも平等に好きだというノエ。双子は彼を試すけれど、彼はけっして一方を放っておく選択はしない。2人を同時にまったく平等に愛すことができるなんて信じがたいけれど、ノエのことは信じてみたいなと思いました。

◆マティアスとぺぺ
 変声期に悩む合唱団の少年・マティアスと、人形作家の老人・ぺぺの交流から始まります。子供と老人ですからBLには発展しない箸休め的な作品かと思いましたが、ぺぺはマティアスの姿からかつての恋人を思い出すんです。同じように変声に悩んでいた恋人。ぺぺが大事に持つ人形に込められた秘密。上質な絵本を読んでいるような、温かい気持ちになれました。マティアスとぺぺ、両方に希望の持てる展開があり、ほっとしました。

◆ハビとルカ そしてルカ
 家なしだったルカを快く自分の部屋に住まわせてくれたハビの過去。声が恋人にそっくりだったから、という理由でルカを受け入れた彼。見た目じゃなくて声というところが、恋人を連想させるものならどんなものにも縋りたいという気持ちを感じさせて、なんとも切ないですよね。それでもいい、忘れられなくてもいいから、自分のことも考えてくれない?というルカの健気な告白が、とても印象的でした。ハビが過去ばかり振り返るのではなく、ルカとの未来を考えられるようになればいいなと思います。

0

幸せ通り

えすとえむ先生の中でもかなり好きな作品。
アパートメントで暮らす住人たちを描くオムニバスです。
物語がテーマになっています。どこまでが作品の中のノンフィクションで、どこからがフィクションかは分かりませんが、どこまでも皆が幸せであるといいのにと願う作品です。読後感も大変いい。ただ完全なる幸せに包まれるというよりも、少しの寂しさが残ります。

映画っぽい、作品のことを思えば小説っぽいというのが正しい。けどカット割りとかはしっかり漫画っぽい。漫画がお上手だなぁと思う。ストーリーと絵のマッチングが絶妙です。

0

虚構と現実の区別はもはや無意味

家を見たくて散歩をしている節があります。
単純に建築物が好きというのもあるけれど、妄想空想の糧としての家見物がたまりません。
えすとえむさんもあとがきで書かれていますが、「見る」のが好きであって「覗きたい」わけではないのですが、無数の窓の中に自分と同じように生活をしている人たちがいて、いろいろなことに悩み、泣き、怒ったり笑ったりしていると思うとわくわくを通り越してぞくぞくします。
選んだ電気の色がウォーム系か、クール系か。カーテンの模様、注文住宅なら細かい造作まで、家や窓は中にいる人たちの人となりや理想の暮らしに彩られていて、合法的に中に入れる渡辺篤史が羨ましい。

前置きが長くなりましたが、えすとえむさんの「ハッピーエンドアパートメント」です。読むのは今回3回目。異国の独特の空気もいい感じで大好きです。

ストーリーテラーのルカが恋人にフラれて家も追い出されたところから始まります。
ルカは小説家志望ながら出版社が望む「ハッピーエンド」が書けません。作品としてなら知っているハッピーエンドを、自分の人生で感じたことがない。そんなルカの新しい住まい、通称ファナル・フェリス(ハッピーエンド)アパートメントで描く住人たちの話…。

ch.1はディノとサルバドール
ファッションデザイナーのディノとアーティストのサルバドール。3年前から全裸で暮らすようになったせいで外にも出ないサルバドールに不満を抱きつつも、「いつか」元に戻るのを待つディーノ。
この話、すごく好きです。全裸で暮らすようになった理由も、ディーノが3年前にプレゼントしたジャケットのポケットに忍ばせた物の正体も、相手を想う気持ちが強いからこそ。
自分がディーノの立場ならここまで辛抱できるだろうかと考えただけで、ディーノの愛の深さが分かります。

ch.2はノエと双子
何でも欲しいものはすぐに選べるのに、双子を愛したときに「どちらか」を選べなかったノエ。
同じ人を好きになってしまう双子にとってもノエの存在は有り難いものだったけれど…。
双子と言っても性格は違うだろうし、完全に同じではないのに選べない。その感覚がよく分からなかったので理解しきれなかった短編。「どちらかを選ぶ」のではなく「両方を選ぶ」。ずるいのか深いのか、どっちだろう。

ch.3はマティアスとぺぺ
変声期になって合唱団を抜けなければならないことが嫌で仕方ないマティアス少年と人形作家の老人ぺぺ。成長という避けて通れない道に抗おうとする気持ちと今は亡き母親への思いが複雑に入り混じった少年と老人の交流が、老人の過去の記憶を呼び覚まします。
大人になるのはふつうのこと。親にとっては嬉しいものだと感じられたマティアス少年はもうぺぺのところに行くことはないかもしれません。ラストシーンはまさにおとぎ話でした。

ch.4はホセとエヴァ
耳の不自由なホセの部屋の下には、エヴァとエヴァのお情けでどんどん増えた同居人たちが毎日大騒ぎしながら暮らしています。聞こえない人間にとっては騒音も静寂も同じだけれど、聞こえる人間が感じる静寂は孤独。聞こえなくても見える、見せてあげたい。押しかけられるばかりのエヴァが押しかけていくというのも感慨深い作品でした。

最後にch.5としてハビとルカ そしてルカ
大家のハビとルカの話。ハビとの暮らしの居心地の良さにハビを好きになりそうなルカ。だけど何かが警鐘を鳴らします。2組ずつある食器。枕元に積まれた読みかけのハッピーエンドの小説の山。一枚も残っていない前の恋人の写真。
その理由を知ったルカは、ハビにどんなハッピーエンドを用意することができるのか…。

それぞれの話はルカの創作であって、現実に存在する彼らとは異なるのだと思います。誰もがハッピーエンドを迎えるわけでもないし、ドラマティックな日々を送っているわけでもない。
ノエはもしかしたら親戚の双子を引き取っているだけかもしれないし、ぺぺにも遠い昔の年下の恋人なんていなかったかもしれない。
だけどこれは全部ルカが住人たちを観察して紡ぎ出したストーリー。その中ではどんなハッピーエンドも許されるのです。
でもハビは?目の前にいるハビに惹かれる自分とのハッピーエンドを考えるのは、これだけハッピーエンドを描くことができるようになった今のルカには容易い。でも現実にはまだ今はいない恋人のルカに恋をしたままのハビをどうやってハッピーエンドに導けるのか。
難しい。
もしかしたら亡くなった恋人の存在もルカが考えたフィクションなのかもしれません。
どこからが本当で、どこからが創作なのか。
考えれば考えるほど難しいけれど、きっとただ楽しめばいいのです。ルカの創作だとしても現実だとしても、そこにたくさんのハッピーエンドがあると思うだけでしあわせな気持ちになれる。
知らない家の窓の中の生活を自由に想像するのと同じ。裏付けなんて取れないのです。

描き下ろしのanother prologueの存在が気になってしまいますが。
亡くなったルカとハビの出会いの話。ルカは本当に存在したのか。それともこれも作家志望の方のルカの創作なのか。

謎は謎のまま。
だけどきっとしあわせはそこにあるのです。

1

“ハッピーエンド至上主義”に対するアンチテーゼ

なんて絶妙な皮肉を効かせた作品なんだろうか。
「いくつもの素敵なハッピーエンドが詰まった短編集」としても読めるところがなんとも巧妙で、読み終えて思わず唸ってしまった1冊。

「お前が書くような辛気臭い話は受けないからハッピーエンドを書け」と編集から言われた作家〔ルカ〕が、同棲していた恋人にフラれ部屋を追い出されてやってきたのは、フェリス通り(スペイン語で“幸せ通り”の意)の突き当たりに位置することから「フィナル フェリス」(=ハッピーエンド)と呼ばれているアパート。
ルカはそこで出会った大家の〔ハビ〕から、このアパートの住人達の日常を小説にしてハッピーエンドをでっち上げてみたらどうかと提案されます。

そして、ルカから見た住人達の日常が本編として順番に描かれていきます。

・chapter1
3年間一度も部屋から出ず全裸で生活する男と、服を作るのが仕事のファッションデザイナーの話。

・chapter2
どちらかを選べなかった男と、どちらかを選ばれたくなかった双子の話。

・chapter3
「少年」の人形が得意な人形作家と、成長を恐れる少年の話。

・chapter4
耳が聞こえず無音の中で独り暮らす男と、同居人との騒々しい生活にうんざりしている男の話。

計算されすぎのカップリングと、映画やおとぎ話のようにドラマティックなストーリー展開。
ラストはもちろんすべてこの上ないハッピーエンド。
ここまで読み終わった頃には、読者の感想はきっと二分されているんではないかな。
いいお話だわと疑いなく読める人と、ん?と戸惑う人。
後者の私は色んな引っ掛かりを感じて首を傾げながら読んでおりました。

・chapter5
ハビとルカとハビの過去の話。
この章でルカがあるキーワードをモノローグ内で発してくれたおかげで、それまでの4編で私が感じていた引っ掛かりの正体と、えすとえむさんが何を描こうとされているのかがはっきりと掴めました。
一番最後のルカのセリフなんて、ほとんど答えのようなもんですね。

私はこの作品は、「いくつもの素敵なハッピーエンドが詰まった短編集」なんかではなく、“ハッピーエンド至上主義”に対するえすとえむ流のアンチテーゼだと思っています。
だから最後に『Another Prologue』と題されたエピローグがあるのだと。

3

この作品が収納されている本棚

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