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なんと初の単行本だそうです。これがデビュー作なんですね。
勢いがとてもあるのですが、やはり最初からお話が描ける作家さんというのは違うなぁと再読して思いました。
さて、若干つながっているお話もありますが、基本的には短編集です。
自分をカラオケで襲った(ほぼレイプ)とんでもないヤクザのクズ男がなぜか忘れられない漫画家の菊ちゃん。この二人がメインカップルです。
以下、短編のまとめ。
ESCAPE
とんでもなく素行の悪い同級生との逃避行。最低の奴だが自分のことだけは大切にしてくれた。
ソウルフルチェリーボム
コインランドリーで出会った軽そうな青年。なぜか自分にアプローチしてくるのだが、実は因縁があって。。
つきあっている塾講師より自分をずっと大切にしてくれる青年は、しかし中学生!?
何処へも帰らない
家にいれてもらえず所在なげに玄関に座り込んでいた隣人、ヒロ。自宅で過ごさせてあげようと家にあげたら、Hなことをされて。。
怖いヒロの同居人、カツローに因縁をつけられるも、ヒロと一緒に生きようと決めた主人公はお金を支払って上京しようとするが。。
ハートフルなお話。
明日どーやって笑えっちゅうの
強面編集と漫画家のお話。無表情な編集だが、なぜか漫画のネタのためならHなこともしてくれるという。しかし二人には因縁があり、編集の鮫島は彼の前から去ってしまう。明るい未来はあるのか?
昔の名前で出てんじゃねェよ。
漫画家菊池と二階堂あらためクズのお話。襲われてしまった菊ちゃんですが、なぜか彼のことが忘れられない。分かれたりまた出会ったりを繰り返して、やっとこのカップルは明るい未来をつかむ。
どれも一筋縄ではいかない愛のお話で読み応えあります。短編集なのに濃いというか。
語シスコ先生の作品、近年稀に見ない作風でパンチがきいてるわ!
短編集なのに、アップダウンが仰山だわ。
この時代のBLはよく分からないが、絵柄からセリフまわしから、素晴らしい。
全話通して、あまりのはちゃめちゃぶりに途中で大笑い。。。
なぜ、そこでそうなるの?って、奇想天外www
大体が、イカれてる。
容赦のないいかれたヤロー達の行動と、ホロっと見せる弱さ。グッと深くなるね。
何気に、「何処へも帰らない」の、脇役のカツローがいい奴だったな。
語シスコの世界観〜神!
◆ESCAPE
最後は3編からなる表題作の受けの話で締められるので、読み終わった後、この冒頭の作品の記憶はすっかり薄れてしまうのですが、再度読み返すとやっぱりいいなぁと思いました。青春の中の儚い逃避行。悪行を繰り返しながら逞しく生きるアキオと、箱入り息子で親からの愛も十分足りてそうだけど、学校と家だけの狭い世界に閉塞感を感じているキョーヘイ。進んで犯罪に手を染められるほどぶっ飛びはできないけれど、アキオの側にい続けたいというキョーヘイの幼くも純粋な感情が切なくて。2人がその後再会できたかは分かりませんが、キョーヘイの記憶には永遠にきらきらと焼きつくのだろうなぁと思いました。
◆何処へも帰らない
これは一番萌えた作品かな。施設育ちでちょっと頭の弱い、裕倫。恵まれない子供が施しを受けた見返りに相手に奉仕する、というのはBLではそこそこ見かける展開。ですが、彼の場合はそこに悲愴感や後悔もなく、お金がないから代わりに性行為、という単純な報酬の構図になっているようで。でも、穏やかな愛を注いでくれる元春とは、体の関係以上にちゃんと心も通い合うようになるんですよね。臆病な元春を追いかけた裕倫の気持ちが、沁みました。字が読めないと言えなかったいじらしさも。そして、悪役だと思っていたカツローの思わぬ優しさに泣かされました。
◆明日どーやって笑えっちゅーの〜LOVE&CATASTROPHES(表題作)
表紙を飾る、漫画家の菊ちゃんの物語。最初は担当編集の鮫島との関係から始まって。これも、よくあるエロ漫画を描くための担当と作家の恋なのかと思いきや、物語は想像よりずっとヘビーな方向へ進んでいく。鮫島を憎みきるしかなかった彼の想いが、痛々しかったです。後ろ2編は新たな恋。暴力こそないけれど、ほぼレイプと言ってもいい行為を繰り返すイチローがとんでもない男なのですが、菊ちゃんも読者もなぜか憎めないのは、確かに菊ちゃんへの一途さを感じるからでしょうか。責める時も歯の浮くというか笑ってしまうほどの状況描写をするタイプで、それもあながち冗談でもなさそうな所がまた面白く。不毛かもしれないけれど、一度は一緒に突っ走ってみればいい、2人にもそんな青春を楽しんで欲しいと思います。
これがデビュー作とは…恐るべし。
先に「ラブ?YES」を読んでしまい、元の作品「何処へも帰らない」を目当てに読んだわけですが、どの短編も濃い!
「ESCAPE」
これはラスト1行に全てが詰まってると思ったな…
『窓の向こうには別の世界があって オレはしばらくそこの住人だった』
アキオの強烈な存在感と、コイズミの焦燥。
「ソウルフルチェリーボム」
可愛いお話!
男と不倫する妻帯者のズルさ。そこをバッサリ斬ってくれる年下のラテンボーイ。誠実ってのはこういう事だよね。
「何処へも帰らない」
先に「ラブ?YES」に収録の後日譚から読んでしまって失敗した…と思ったんだけど、逆にコッチを後に読んで良かったような気がしている。
小田桐と裕倫の出会いは、こうだったのか…
この出会い方、カツローの造形あっての2人の暮らし、そして小田桐の達観だったのか、と腑に落ちた。
「明日どーやって笑えっちゅーの」
ここからエロマンガ家の菊地春人の物語になります。
まずこちら。初めてホモマンガを描く事になって行き詰まる春人に、目の前でプロの男の子と緊縛Hをしてみせる編集者。
しかし彼は…?この事実は重すぎる…!
「昔の名前で出てんじゃねェよ。」
出版社のパーティー、いや単なる宴会に出席した春人。そこで1人の作家を紹介されたのだが、そいつにいきなりトイレでヤられ。
作家というのは嘘で実は同級生だと言うが、調べたらその子は事故死していた。一体ダレなんだ⁉︎というどこかミステリアスな話。
だけど春人はこの男に恋するのです。
「ラブ&カタストロフィー」
もう会えない、もう会わないと思っていた好きな男がフラリと舞い戻ったと思ったら、自分の借金のカタにゲイビ撮影させられたり。
でも春人はそんじょそこらの恋にかまけるヤツらとは全然違う。
この男がスキだ。でもオレは1人でいいんだ。アイツはもうすぐ出て行こうとしている。でも止めなかった…
さて、ラストにどんな結末が待っていたのか。これは是非読んでみてください。私は涙が出てきたよ…
ちるちるのあらすじ、紹介文から強烈な個性がぷんぷん漂ってます。
「抱き合えば何もかもどうでもよくなる気がした。よりかかれるものなんて失うくらいなら欲しくはない」ホモエロマンガ家・菊池春人(21才)。
行きずりでワルで調子こきのイカレヤローにナメられそのあげく、永遠の恋に落ちた。愛と孤独と欲望に生きれば、未来は明るい。
このノリ。
正直怯んだのですが、心配ご無用!
ぐいぐいとした勢いに巻き込まれて一気に読み終えてしまいました。そしてクセになります。(早速、「上等だベイビー」も読む事にしました。)
ろくでなし、バイオレンス、アウトロー、セックスに満ちていて、刹那的。とんでもないやつばかりが登場してその勢いに圧倒&油断しているとまさかの純愛が描かれていて思いもよらぬ切なさが心臓を突き刺してくるところがいい。
特に気に入ったのは以下。
「ソウルフルチェリーボム」
不倫の恋をしている河井の前に登場したドレッドヘアの男の子。マシンガントークで攻めてくるワンコ。
好きなところはセックスシーンの「見て オレたちひとつになってる そう言ってユータはぎゅうっと抱くので まるで愛しくってたまんないってカンジでぎゅうっと抱くので」というところ。
ここだけ時が止まったような静けさ、あたたかさ、愛に満ちていてこの作品の中で一番穏やかな部分とも言えます。ここが最高です。セックスの基本ってこれだよね、みたいなものを今更ですけど認識させられたと言うんでしょうか。数多のBL読んでてあまりにも濡れ場慣れしちゃったような私ですけど、原点を思い出させてくれたというか。
それを全編ピュアピュアほのぼのBLではなく、他作品はアウトローやらゲスやらに満ち満ちたシスコさんの本の中に、こんなシーンとセリフがあるもんだからここのピュアさが突き抜けて感じられるという。
「何処へも帰らない」
読み書きを知らない施設育ちの裕倫と小説家とのお話。身体を売って生きてきた裕倫の元締めみたいな存在だと思われたカツローに身請け金500万の小切手を支払った小説家だったが…。
このカツローがまぁ見るからに凶悪そうな面構えなんだわ。しかし!裕倫と小説家のラブストーリーというよりも裕倫とカツローとの絆のほうがグッときます。
ああ、菊ちゃんとアキラもいいなぁ。アキラなんて自分の借金のカタに菊ちゃんとの絡みをゲイビ撮影させちゃうくらいのとんでもないヤローなんだけど、嫌いになれない。酷いやつなのに。
私がトピ立てした「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#IndexNews
で教えていただいたのが、こちらの作品です。
短編集なんだけど、どの短編も捨てがたくどれも良かったです。一度読んだら忘れない類の作品ばかりでした。
読むきっかけを与えてくださり本当にありがとうございました。