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表題作爪先に光路図

室田,菌類学者 
岩井新,助手のバイトに来た大学生→大学院生

同時収録作品さかなの体温/午前0時の回遊

誠司,高校生→社会人
広隆,高校生→社会人

同時収録作品八月、夏の底/夏来るらし

春彦,大学生
こう,春彦の祖父の家で出会った不思議な少年

その他の収録作品

  • 残灯
  • あとがき

あらすじ

大学生の岩井は、ある日、菌類学者の助手のバイトを紹介される。訪れた先で待っていたのは、室田という気難しそうな男だった。最初は不安を感じていた岩井だったが、室田の教えてくれる未知の世界に触れたり、生活能力のない室田の世話を焼いたりする毎日は、楽しいものだった。そんな時間の中、岩井は次第に室田に心惹かれていき……

(出版社より)

作品情報

作品名
爪先に光路図
著者
青井秋 
媒体
漫画(コミック)
出版社
大洋図書
レーベル
ミリオンコミックス HertZ Series
発売日
ISBN
9784813053668
4.1

(114)

(57)

萌々

(31)

(17)

中立

(6)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
28
得点
466
評価数
114
平均
4.1 / 5
神率
50%

レビュー投稿数28

詩的な世界が素敵❤︎

教授ものをなんだか急に読みたくなって、
とても久しぶりに読みました。

菌類学者でも、変わってると言われて
人付き合いをしない博士と、
博士の助手アルバイトをすることになった
学生のおはなし。

学生もまた、マイペースな感じで
独特なんですよね。
実はモテちゃう博士は、色恋目的でくる
女子学生に辟易としていて
最初は無愛想にしていたんだけど

学びに対して真摯な姿勢をみせ
知的好奇心で助手の仕事も楽しむ
学生、岩井くんに対して素になってくる。

その素、が割とスキンシップ多め
だったりするのがくすぐったくて良い❤︎

先生の作品は、植物が多く出てくるんですよね。
初コミックスの今作から既に
豊かな色彩を思わせる、細密に描かれた
植物の世界と、
それに寄せて綴られる
主人公の気持ちの揺れがまた素敵で。

ゲイだとか、そういった性的志向が
先生の作品では
一切語られないのもいいんですよね。

空いていたところが埋まるように
独りで思い描いていたものが
一体何だったのかを初めて知ったように
お互いが半身の片割れであるかの如く
出会って惹かれていくのを
静かに、密やかであるかのように
語られていく、素敵な物語で
私はとても好きです。

菌類学者ということで、
自然採取をする場面から
色々な植物が出てきたり、
そのなかを歩きながら、
岩井くんの室井さんへの気持ちが
植物の世界とリンクさせて
語られるロマンチックなシーンは
特に好きです。

ストーリー自体は、王道なんですけど
いつ読んでも素敵な気持ちになります。
おすすめです。

0

まさに神

良い。
特に『残灯』がすごいと思いました。
美しく、素晴らしく、また鈍い痛み。
「ーーねぇ、岩井くんて 女泣かせね」
の言葉が響きました。

0

優しく温かい気持ちになれる短編集

◆爪先に光路図(表題作)
 とても落ち着いた雰囲気で進んでいく物語でした。モノローグの言葉遣いが非常に繊細で、日本語の奥深さを改めて感じました。学者の室田と、バイトで彼の助手をすることになった大学生の岩井。岩井が室田の穏やかさやふとした時に見せる優しさ、豊富な知識で自分の世界を広げてくれるところなどに惹かれていく流れもとても自然で、素敵な恋をしているなぁと思ったり。告白して一旦は距離を置いてしまう2人ですが、今度は室田の方から歩み寄ってくれます。森や星空の美しい景色と共に、優しい気持ちで2人を見守れるような作品でした。

◆八月、夏の底 / 夏来るらし
 一番好きな作品です。春彦が亡くなった祖父の家で出会ったのは、こうという少年。彼は祖父のためのお供えとして、山で採ったらしい花や木の実を持って来てくれます。ある夜、春彦はこうの秘密を知ることに。彼は罠にかかったところを春彦の祖父に救われた狐でした。祖父とこうは、お互いのおかげで寂しい1人きりの生活をしないで済んでいた。でも、もう祖父は亡くなってしまいました。嵐の夜でも自分の好きなものを一生懸命集めるこうの健気さが愛おしかったです。祖父のいない寂しさを忘れられるくらい、春彦とこうがこれからたくさん思い出を作り上げていければいいなぁと思いました。

0

惹き込まれます

全部で3つの作品が収録されています。
この作品がデビュー作だそうですが…素晴らしいです。
緻密な静物や背景にも感嘆ですが、ストーリーがどれも切ないけれど暖かくてとても好きでした。
『ステラリウム』を読んだ時にも思いましたが、青井さんの作品を読んでいると植物や動物、そして人に対する愛情が溢れているようで、その優しさに心震えます。
この本に収録されている作品もそうで、登場するキャラがとても控えめなのですが、それは相手の心情を思い量ってそうなっていたり、ファンタジー要素を含んでいる同時収録作品では動物が登場するのですが、その動物たちがさり気なく優しかったり。
動物大好きなので、そういうことされると非常に弱い。
どのお話も好きでしたが、一番ツボを突かれたのは『八月、夏の底』。
おじいさんの優しさもそうですが、こうの健気さにもう、涙が止まりません(寝る前なのにどうしてくれる…笑)。

1

AIのおすすめ作品

何度も条件を変えて沢山のおすすめ作品を挙げてもらったなか、実際に購入に至った数作品のうちのひとつ。
おそらく、AIにおすすめしてもらわなければ手に取ることはなかったと思います。


世界観が完璧に出来上がっていて綻びがない事に驚きました。初単行本なのに本当に素晴らしい。
細部にまで行き届いた繊細で美しい「絵」を見ているだけでも眼福。
物語として楽しむのはもちろんのこと、画集のように眺める楽しさも併せ持つ稀有な作品だと思います。


3作品が描かれています。
そのどれもが精神性が高く、肉欲とは別次元なところで展開されているためかBLというよりも一冊通してある種のおとぎ話を読んでいる気分で読了しました。
ファンタジーとリアルの境界が揺らぐ感じや、本から流れ出る湿度、温度、色彩が心地よい作品でした。

そして評価は「萌え×2」としましたが、5つ星判定であれば、星4つです。

1

優しい気持ちに

爪先に光路図
先入観なしで読みたかったのに受け攻め表記が目に入ってしまい、しまったと思いました。が、表記はありますが描写はありません。まあなるとしたらおそらくそうだろうという感じです。

室田の研究室で静かに流れる時間。室田の研究にどんどん興味を持っていく岩井。
ゆっくり恋をしていく岩井ですが、つい告白してしまい室田に迷惑をかけると助手を辞めてしまいます。

室田もその後助手を雇うことはなく岩井を忘れられないようで。

森や自然や菌の話や星空などの描写に癒され心地よくて穏やかなお話と合っていて染まれます。

17才差なんですね。どうなるのかな?最後まで読みたかったな。

残灯ではその後の二人を垣間見れます。

さかなの体温 午前0時の回遊
子供の頃から魚が見える広隆。友達の誠司の魚が一番きれいでなつっこい。誠司も何かと傍にいてくれる。
ある日広隆の魚が誠司に入ってしまって…。

不思議で優しいお話でした。
きっと誠司の想いと魚のなつっこさは関係あったんですね。

社会人になっても仲は続いてるようで。高校の頃からどんなふうに進展したのかはわかりません。変わらず優しい誠司です。

八月、夏の底 夏来るらし
祖父の葬儀で見かけた子供。7日おきにお供えをもってやってくる。
こちらもファンタジーですね。
祖父が助けた狐が人間に化けて助けてもらったお礼と交流。心が温まります。
孫も狐の正体に気がついても構わず、また会いに来るって。狐も待ってました。

全編通して優しくて穏やかでじんわりくる素敵なお話でした。
ページの記載も凝っていて好きです。

3

心地よい静かなテンポ

気に入った本は何度も読む方ですが、一番多いのはこちらかもしれません。
何度読んでも飽きないし、絵を見ているだけでも心が落ち着きます。
雑貨屋さんに何時間でもいられる感覚に近いかも。
以下ネタバレまじりの感想です。


「爪先に光路図」
前中後編なので読み応えあります。
素直な岩井くんと寡黙で不器用な室田さんの組み合わせがとても良くて、お互いが恋愛感情を抱く過程も自然です。軽いキスまでなんですけど絵が美しい為十分満たされました。
また、森の植物や自然の精緻な描写にはただただ感動…詩的な岩井くんのモノローグとも合っていて神秘的です。
『残灯』という描き下ろしは女子目線。これは短いけどいい女子BLでした。岩井くんにほのかな恋心を抱いていた女性の目線です。


「さかなの体温」
人が眠りにつくと体から出てきて宙を泳ぐさかな…
さかなが宙を泳ぐシーンがとても美しくこれまた神秘的です。電車内で寄り添って寝てる子供達はさかな同士も仲良し、とか午後の授業中は居眠り者続出で沢山のさかなが泳いでいる、などの設定も面白い。
内容も恋心とさかなをうまく絡ませていて素敵な話です。
描き下ろしは数年後の2人。


「八月、夏の底」
タイトルがホラー風ですが、神様が出てくる話です。
こちらは動物のモフモフ好きには堪らなかったです。
中々のモフモフ尻尾でした。
人間の姿の時の髪の毛のボリューム感も意識されたのか凄くいいです。
おじいさんとの出会いはまるで昔話の様でしんみりホッコリ。
描き下ろしも少し打ち解けたコウが可愛くて、変身シーンも良かった。

5

ざわざわした、これまでにない感覚

以前『答えて~』でスレを立てた時にご紹介いただいて読んだ作品です。
オシャレBL的な感じでご紹介いただいたのですが、確かにノスタルジックな雰囲気で独特な作風だと感じました。
表題作は森とか花とか昆虫とかの描写がなんともいえないザワザワとした感覚に変わって、BLというよりもその雰囲気を肌で感じながら読み進めました。
後半の短編も同様で、描きこまれた背景にぼんやりと白い人物が浮かび上がる感じが美しくて妖艶。人間以外の動物とか植物とかそういうものに引きずられる怖さも感じながら、それでも離れたくないような不思議な感覚。
人物、風景だけでなく小物の描写も秀逸で、ただ使うためにあるものがこんなに美しく思えるのだな~とか新しくてきれいな物だけが美しいのではないのだな~とかぽろぽろと断片的に新しい感覚が芽生えてきます。
もし、ご紹介いただかなかったら食指がのびなかっただろうことを考えると、ありがたいと同時にもっといろんな作品に触れたいという気持ちが大きくなりました。
BLとしては心をえぐられる感じはなくて、恋愛要素は限りなく少な目ですが、モノクロの無声映画を観ているような感覚。ここにもっとBL的な何かを足すことは決して正解ではない気がする。
いいものを読ませていただきました。

2

覚えてない…

なんか、ちるちるのランキングで見て
購入を決めたような気がします。

「シュミじゃないなぁ」とまでは思いませんでしたが、
萌もなかったなぁという感じです。

思い出すのは、
物語の中に出てくる森や木。
植物の描き方ですかね。

すっごく丁寧で個性的なんです。

それが物語とマッチしていて、
それは良かったかなぁ、と。

キノコの研究を題材にしている物語も
まあまあ新鮮なように感じました。

キノコの群生を見たシーンは、
まるで某有名アニメの飛○石を洞窟で見たシーンのようで
なかなか綺麗だったと思います。

2

繊細な恋模様。

相変わらず、綺麗な命を描く方ですね。惚れ惚れします。

5つのお話が収録されています。
大きく分けて3篇。あと2つは「爪先に光路図」と「さかなの体温」の
違う目線から見た、短編になっています。

いやーもう個人的に最後の「八月、夏の底」がたまらなくて。
けもみみ、それ以前に狐さんが出てくるのが…やばい。
狐であることを「こう」も気づかれまいとしていたけど
おじいさんは知ってて「こう」と名づけたとことか。
心が温まる1作です。
涙ものでしたよ。 

2

緻密に描かれた植物がたまらないです。

繊細な絵とお話を描かれる作家さんです。
多分好きなものが自分と近いので、毎回モチーフのどれもが素敵で。
ステラリウムと一緒に購入しましたが、どうもBLでファンタジーが苦手のようでこちらの方が好みでした。
緻密に描かれた植物がたまらないです。
多分、鉱石もお好きじゃないかと思っていたら、Cannaで連載していらっしゃるお話が鉱石絡みのようで、矢張り!と思ってしまいました。
描かれた二人の関係も、穏やかでこういうBLもいいものですね。

少年趣味とも違うのですが、初期の長野まゆみの雰囲気が好きな方はお好きな作家さんではないでしょうか。
木造校舎の夜の理科室なイメージです。

2

美しさに満ちた世界に

美しい表紙だと思ってはいたのだが、初めて手に取ってページをめくり
口絵を見た途端に、心奪われた。

岩井は、大学の教授に紹介されて、
アルバイトでとある研究者の助手を務めることになる。
田舎の研究所で研究に没頭する、変わった研究者・室田。
最初はとっつきにくく感じていた室田に惹かれて行く岩井。

山でのフィールドワーク、自然の中、
ほぼ二人だけの世界がゆるやかに進んでいく。

自然は美しく、妖しく、そして魅惑的だ。
それらは人の世界のメタファー、
恋も愛も自然の中では細密画の一部だ。
地中不覚菌糸をはびこらせながら、ほんの僅かしか地表に現れない茸、
それは心の中深くいつの間にか取り去りがたく根を張った、岩井の想いだ。

表題作の他、ファンタジックな短編が2編。
いずれも生き物が出て来るが、可愛い明るいイメージではなく
生き物の持つ仄暗さや不思議さが感じられる作風。

「さかなの体温」は、高校生同士のピュアな恋物語だが
眠っている間に人の中から抜け出す魚という象徴が興味深く、
独特の浮遊感を醸し出す作品。

人を中心としたストーリーはある意味ありきたり。
生々しい感動を求めると肩すかしを喰うが、
もっと遠くから眺めるような、あるいはもっと微細な世界を覗くような
そんな不思議な面白さと美しさに満ちた一冊でした。



*光路図とは? ←知らなかったので、調べてみた!
 物体上の1点から出た光がレンズ系を通過していく様子を表した図。
 この図によって各レンズの働きを知ることができます。

6

非常にゆっくりしている

森の風景がリアルすぎて
読むのが嫌になってしまった作品でしたが
作品そのものは、好きだったため
やっと購入しました。

研究員の助手として出会う。
研究って響きだけでも
不思議な気分になるのです

万華鏡をのぞいているような
気分になるなと思ったのは
初よみの時も今もかわらないです。

何がメインなのがいまだつかみきれないのです。

感情とリンクする他の波長や生命体を描きたいのか
目に見えない何かを伝えたいのか、いまいちつかめません。

それでも全体としては
好きな作品でした。

2

きっと、この人にしか描けない。

なんだか神以外付けられませんでした。

これが「ボーイズラブ」なのかと問われれば
世に言う腐的なイメージとは外れると思います。
1ページごとにドキドキして
読み進めた文学作品の様な印象。
暑い夏の日、火照りとともに
綯い交ぜになってしまった恋心のような…
何とも不思議な胸の高揚を感じました。

一般的なBLに見られるように、
岩井は自分の恋心に気付いて悩み、
自己完結しようとするのだけれど、
BL鉄板エピソードである
「夢でその人を見る」というシーンでさえ、
まるで絵画作品のようで。
感想を断言できない、
どう表現していいかわからない、
とにかく静かな衝撃を感じてしまった。

そして、私は表題作【爪先に光路図】の
スピンオフ的ショート【残灯】が
とても印象に残りました。
BLにおける女性の存在は好ましくない
という方も多いとは思うのだけれど、
これはこの先輩の視点からだったからこそ
映えると言うか、美しく思えた。
たった7Pの中の大部分をしめる
室田と岩井のラブシーンは、
台詞など無いのにまるで映画の1シーンのように
幸せで鮮やかで。
そして切なさまで孕んでいるようでした。
ただ、女性視点ゆえ、地雷な人もいるかも。


他2作はファンタジー。
私は実はファンタジー設定が苦手な方なのですが、
ここまで既に世界観が出来ていると
もう苦手とか飛び越えます。
実際、映画でもファンタジーモノは
避けてるんですが、
ハリー○ッターだけは大丈夫だった私。
多分、違和感を感じさせないほどの
出来上がった空気があればそういう苦手意識って
飛び越えちゃうんだと思う。
(ハ○ーもあんだけ作り込まれた世界が
 あったからかと←余談)

表題作と同じくらい、
【さかなの体温】も好みでした。
多くを語らず、謎を解き明かす気が無いのが
この作品の雰囲気を構築しているようで
とてもいい。


しかしレビューはしにくい。
行間を、絵間を読むような作品だから。
時が来ることがあれば読んでほしいというか。
文学作品を読むのが好きな方、
幼いころ、童話や神話の全集を
好んで読んでいた方、
一般的な様々なものにおいて
「丁寧な仕事」に魅かれてしまう方、
きっと蔵書に加えたくなると思います。

カバーや中扉のカラーは勿論なのですが、
カバー下の動植物や菌類の静物画は
ため息が出るほど美しい。
ページ番号の隣の小さなキー絵のひとつも
丁寧さを感じてため息が出る。
この方にしか描けない世界観なんだろう。
装丁・デザインも含めて、ここまでのブレなさが
清々しいほどに素晴らしい。

2

神です。

優しさが本になれるなら、たぶん、この本でしょう。

ものすごく繊細な絵とストーリーに感動しました。

5

絵画のような作品

青井秋さんデビュー作!!

3作品が入っており、独特の世界観のある1冊です。

表題作は、大学教授と生徒のお話。
特にファンタジーではないのだが、コマ割りや森の絵などまるで絵画の様でステキです。
恋の進み方もゆっくりじっくりで絵と世界観にマッチしています。

同時収録のひとつ、さかなの体温。
眠った人からさかなが出てくるお話。(とっても説明しづらい話!笑)
しかし、雰囲気があってとってもいい話。

もう一つは、八月、夏の底。
人間に化けた狐と大学生の話。
この話も雰囲気があって、ほっこりするお話です。

どのお話も不思議な感じでフワフワしていてとてもステキでした。
ただ残念なのは、カラーで読みたかった!!!!笑

白黒でも雰囲気はあるけど、やっぱりカラーの方がキレイなんだろうなって。
ちょっと勿体無いかな??

でも、ストーリーはとってもステキです!!!

4

海外の児童文学のような世界

細部まで丁寧に描き込まれた絵、本を開いても意図的な場所や枠外以外は白いところがあまりないです。線ひとつひとつがとても繊細で、触れれば壊れてしまいそうな儚さを感じました。

表題作である「爪先に光路図」と、「さかなの体温」そして「八月、夏の底」、それぞれに似通った世界観がありました。なので、単行本一冊を読み終わったあとにとても満たされます。
通常、数作収録されているものですと、これはギャグ、これはシリアス、これはエロスと分かれていたりするため気がバラつくこともあるかと思います。でも、その感覚がこちらの一冊にはありませんでした。それこそが満ち足りる要因なのかなと思います。
また、エロは一切ありません。
あわく可愛らしいキスを交わすくらいです。確かに、この世界観にはエロは要らないのかな、と思いました。
万一あったとしても、布団の上で口づける、手を握る…暗転。くらいの、そういうプラトニックというかピュアというか、微妙な微妙な危うすぎるラインをくすぐるくらいが良いのかなと納得させるような、そんな作風でした。

爪先に光路図。岩井君、そんなキノコまっしぐらな室田先生に惚れなくったって君みたいな根は真面目で好奇心もあってマメで清潔感のある子なら他にもいくらでも女の子いるだろうに…! と思っていたら、描き下ろしの「残灯」で唸りました。そう、そうだろうと。
きっと室田先生の方こそ、岩井君のような子を求めていたんだろうなと思います。自分の分野だけじゃなくてそれ以外のことにも、作中の言葉にありますように「百学は連環している」ことを理解してくれるような、興味を持って接して触れて学んで…それでいて支えてくれるような。
岩井君と室田先生の出会いは必然だなと思いました。岩井君も岩井君で、室田さんは研究や学問以外ではダメダメだけど、でもその学の面で突出しているところ、尊敬しているんだろうなぁと。これもまた作中、前編のフィールドワークのシーンで、「すごく、すごく――」とあるモノローグ。ダッシュで消えていますがあそこは 素敵 とか 魅力的 とか 惹かれる とか、入るんだろうな。
ゆるやかに惹かれあった二人、それこそそれぞれが水や光を求めるように伸ばした菌糸を絡めあっているのかなと。(……だからこそ少し、二人のそういうシーンを覗きたいなとも思ったりしました。室田先生案外ヤリ手そうで)

さかなの体温、のあの魚は果たしてナニなんでしょう。
てっきり 夢 かな?と思っていたのですが、違うようですし、じゃあ欲? 鍵は、起きている広隆が眠っている誠司に触れて名を呼んだあの瞬間なのでしょうが…
魚たちはどこかでつがいを探しているんでしょうか。夜の街で泳ぐのも、それぞれがいつか結ばれるつがいに会いに行ってるのかも、と。ですと冒頭の女子高生二人の魚が問題になってきますが、仲が良いと遊ぶ、恋に落ちるとどちらかの中へ入る…?
設定を知りたいなと思いました。いいファンタジー感。

八月、夏の底。
こちらはとことんファンタジー。読後に「でも、こんは年を取らないんじゃないかな、神様っぽいしこれからどうするんだろう報われるんだろうか…」となんだか心配になってしまいました。
ボーイズラブ…とは少し違うような。でもこの単行本内に収録されているから違和感がないといいますか、すごくマッチしていました。グッと締まる。
おじいちゃんの人生の最終幕に、こんが居てよかったと、こちらも思えるあたたかいお話でした。

お腹いっぱいになるようなエロスよりも、ふわりと薫る優しい作品が読みたい…と思う方にはぴったりの一冊だと思います。

6

絵がいい

素晴らしく細密で繊細に描かれる絵に参りました。

拡がる菌糸の世界。雑木林の中、倒木の茸たち、木の葉の上の幼虫、雨の滴。(爪先に光路図)

電車の中、居眠りする人たちのまわりで揺らめく熱帯魚。(さかなの体温)

ふさふさの尻尾と耳。(八月、夏の底)

どの作品もうつくしかったですが、特に最後の「八月、夏の底」。
自分内でここしばらく続いた、ケモ耳ファンタジー強化週間の最後を飾るにふさわしい。
リアル動物としては、狸より狐の方が、それも子狐の可愛さは抜群ですが、この作品に登場するコウの寝姿といったら、もう、実にかわいい。

全編通じて、性的な描写は皆無ですが、この絵で、このストーリーなら、キスだけで充分。
寧ろ、それ以上はして欲しくない。

絵が、本当に隅々まで美しかったので「神」で。

9

緻密だけど温か。

緻密に描いているのが、主に自然のものだからなのか、
美しさだけじゃなく温かさを感じさせてくれて、とても素敵。

3つのお話すべて、ゆっくり時間が流れているような感覚を受けるのも、
使われる言葉に詩のような美しい響きと意味があるのも、
全てを明らかにしない終わり方があるのも、
物語に奥行を感じて好きでした。

下にページ数が書いてるところに、ちょっと絵が付いてるのとかも可愛い。

すごくすごく丁寧に作られたという印象の一冊でしたが、
これはどれくらいの長い時間をかけて描かれているのかなぁ。

この本と同じような、不思議さが残る繊細な物語ももっと読んでみたいけれど、
違ったチャレンジ作も見てみたいような・・・

この本には、今回のキャラがすごく合っていたと思うのですが、
そのうちもっと表情のあるキャラクターも見れたりするかしら?見てみたいなぁと思ったり。

青井秋さんの2冊目、3冊目がとても楽しみです。

4

好きでも嫌いでもない

評価すべき点としては、作品は短編集なんだけど
全部雰囲気が統一されていて、世界に入り易く
描写も繊細で美しいこと。

ここまで繊細な絵で、繊細な話で……
つまりはあまりエロさは求めちゃダメだってこと。

私が好きだなーって思ったお話は魚が空気中に漂うのが
見えちゃう男の子の話。
なんで魚で、その魚が何なのか……
読み終わってもさっぱりわかんないんだけど
斬新でいいかな~って思った。

とにかく不思議な感じ。
こんな雰囲気が好きな人も多いはず。
ただ、好みは別れる……かな?

5

絵の書き込みの素晴らしい作品

まず目を奪われたのは背景の書き込みの丁寧さです。
芸術的とも思える菌糸や動植物の描き方が素晴らしいです。
また、黒と白の使い方が大変私好みでした。
丁寧に細かく描かれたビジュアルアートの世界を堪能できます。
絵だけですでに神評価です。

表題作の内容は実に地味な内容で、全ての地味BL好きに贈りたい作品です。
大学の先生と助手の、二人の交流を丁寧に描いていらっしゃいました。
私自身はこういう地味なものも非常に好きなのでグっとくるものがありました。
例えば菌糸の話などは自分の好きなお話でもあります。
キノコに関する文庫本を持っているくらいなので(笑)

また、他の作品もファンタジックなお話で、非常に好きなお話ばかりでした。
こちらの作品はビジュアル面の完成度が高いので、このような書き込みの細かい絵がお好きな人にはお勧めの一冊です。
また、内容も地味でファンタジックなものがお好きなかたには向いていると思いました。
性描写は一切ないので、そうした描写を好むかたには残念ながら楽しめない内容かと思います。

7

江名

はじめまして、こんにちは♪

井上佐藤さんの絵が好きとおっしゃる咲人さんが、
素晴らしい絵とおっしゃるこちらの本、
しかも最初のレビューに選ばれた一冊、すごく興味が出てます!
どれくらい地味なのかも気になるところw
探して読んでみようと思います、ありがとうございましたm(_ _)m

アート作品。

表紙買い。初めて読む作家さんでした。
一言でいうなら『上品な作品』でしょうか。
線の細いキレイなイラストで、植物や生物の写実性が素晴らしいです。
理科の教科書に載っててもおかしくないレベル。

ページの下部にパラパラ漫画みたいにキノコの絵があったりと、細部までこだわっている芸術性の高い1冊になってます。

ストーリーは、比較的セリフが少ないため淡々としてるようにみえますが、
キャラの小さな表情の変化などをうまく描いているため、余韻を楽しめる深みがあります。
セリフが少ない分、「きっと今こんな風に感じているんだろうな…」と、読者が想像する楽しみがあるというか…読者の想像分だけキャラに幅を持たせることができるので、うまいなぁと思いました。

BL要素は少なめ。でも、この表紙だし、ストーリー重視でもおそらく誤解は与えないと思います。表紙の印象のまんまです(・´∀`・)


■爪先に光路図
変わり者の教授×健気に尽くす助手
というカプが最近のトレンドなんですかね?(・∀・*)
『こじかくんと鳩教授』とかでもみかけましたが。でも、こちらの教授は鳩教授以上に口数少ないです。
助手くんが、恋心を自覚してから一端は教授と距離を置く、という慎ましさが好きでした。
気持ちを伝え合ったところで終わってしまったので、二人のその後が気になります。

■残灯
『爪先に光路図』の続きを描いたショートストーリー。
助手くんに密かな恋心を抱いている女性の先輩の目線で描かれています。
第三者の目を借りて件のカップルを見るという手法は、より一層ふたりの愛の深さを知れる気がして好きです。
その第三者がどちらかの異性に恋心を抱いている場合などは、彼女の失恋の痛みの分だけ一層二人の親密度が際立つわけです。
しかも、たった数ページのこの短編に『爪先に光路図』の本編では見れなかったキスシーンを入れるというね…さすがです。『残灯』あっての『爪先に光路図』。

■さかなの体温
高校生同士。人は眠ると魂のような魚が体内から出て浮遊する、という超常現象を目視できてしまう少年が主人公のちょっと不思議系ストーリー。
眠気を誘う授業中の教室など、彼の目にはさながら水族館のように映るわけです。
(もやしもんで菌が見えるのと同じイメージ?)
体内から出てくる魚は人それぞれ異なっていて、好きな彼の魚と自分の魚の距離感で心の距離を表しているような、そんなお話。
穏やかな気持ちで水槽を眺めるように、ふわっとした雰囲気を楽しむ作品です。

■午前0時の回遊
『さかなの体温』の続き。大人になっても変わらず付き合いを続けている二人のお話が読めます。

■八月、夏の底 / 夏来るらし
大学生と人に化けた狐のお話。
アニマル好きにはたまらない、毛皮のふさふさ感とかキラキラ感とかが見れます!
だもんで、この短編の中では一番好きだった作品!
田舎の祖父が亡くなったあと、仲良くなった祖父に懐いていた少年は実は狐だったという話。現代の『ごんぎつね』のように、ケガの手当ての恩返しの貢物を持ってたずねてくる様子が非常に可愛らしい。(+´ェ`+)
結局、狐とバレちゃった後も二人は仲良くしていて、寝るときなどは狐の姿で枕元に丸くなるという。非常に可愛らしい!!(+´ェ`+)
大きな事件とか変化はなくていいから、この二人の穏やかでぬくぬくな日常を1冊描いた作品をだして頂きたい!!笑
狐さいこー!アニマルさいこー!もっとみたーい!!とうずうずしましたvvv

《個人的 好感度》
★★★★・ :ストーリー
・・・・・ :エロス
★★★★・ :キャラ
★★★★・ :設定/シチュ
★★★・・ :構成

6

静かに、且つ確実に育つ恋心が心地良いです

とにかく美しい絵に目を奪われます。
登場人物全てが、各人の純粋さを反映させるような透明度の高い瞳。

描きこんでいるコマと
すっきり見せるコマの相反する効果的な紙面で、
描きこんでいるといっても決してごちゃごちゃはしていません。
ただひたすらに美しい!!
その一言!!

あまりの綺麗さに、出来れば青井さんのような漫画家さんに
人間くさいどろっとした面も読ませていただきたかったなと
生意気にも思ってしまいました。
もしそれが叶うなら、非常にギャップ萌えしそうです。
でも青井さんご自身がこのような方なのかもしれません。
作風はそのままご本人が表れるでしょうから…。

純文学のような(すみません、本当は純文学なんて読んだ事ありません!)
余韻が残るコミックスです。

…これがはじめての単行本だなんて、反則ですよ!!
何十年も描いていらっしゃるような印象をうけました。

5

うつくしい世界

美しい自然の表現の数々に、感嘆のため息をこぼし。
短文のような、会話と、空間描写。
読み終わったあとに、1ページを見下ろすと出てくる、幻想陰影。
(白黒具合が、モノクロ写真のソレを言い表しているような)
零された、受け止めるには儚い想いの数々。

 もし、あなたが、国立科学博物館がお好きなら、
わたしは、この作品を、おおいに薦めます。

表題作はキノコ好きにはたまらない作品で、
「さかなの温度」は幻想好きな大人が見がちな夢世界です。

「八月、夏の底」は
ものすごく、亡くなった人に想う感情が救われた物語でした。

物語の合間に描かれている、切手がまた、幻想的で美しいです。
ノンブルのとなりにちょこんと描かれているものや、
カバー下の標本、ものすごくいい味で素敵です。

6

スローペースも気持ちが良いvv

正直最初は表紙に惹かれて購入ですが…

大当たりです、久々にお気に入りの作家さん登場vv

3作品入ってましたが、どのお話もゆったりと流れるような
2人の雰囲気が良いvv
エロは一切無いんですが、それがまたマル○vv

本編の後日談もそれぞれ入ってるんだけど
相変わらずゆっくりとお互いを深めていってるだろう
雰囲気がお気に入りvv 


漫画を読んでるんだけどイラストを見てる感じも好きだな~vv
葉書サイズのイラスト集みたいなの出してくれると
(そのまま葉書としても使えるヤツ)即買いしそう!!。
誰かに送りたくなる。そして自分も保存用に購入する。

8

穏やかに成長するもの。

店頭で見た『人魚ひめ』の表紙絵が印象的で記憶に残っていた。繊細で美しいイラストだなぁと。まさか漫画が読めるとは思わなかった。
大洋図書から発売されるコミックスは装丁というか表紙デザインに凝ったものが多い印象があります。
本作の作者青井秋さんも含め、参加作家さんも独特な雰囲気をお持ちの方が多いようにも思う。
中のモノクロも、表紙絵の雰囲気を壊すことのない繊細な作画でした。

表題作を読んで『こじかくんと鳩教授』を思い出しました。
身なりを整えれば素敵な大人の男前、だけど整理整頓方面に難ありの教授と献身的といえば言いすぎですが、よく気が付き面倒見がよく穏やかな助手の受け。
つきつめれば違いますが、似た設定でした。
こちらの作品の方が、より物静かで物語の中で流れる時間も穏やかに感じました。
失ってから気が付く、喪失感や相手の大切さ。
表面だけではなく、心の中にある見えない隠された感情。
告白と戸惑い、教授の年上らしからぬスマートさの欠片もない不器用さがツボでした。
スマート過ぎる告白やリードよりも、この恋に不慣れな戸惑いが良い。
攻めも受けも、これからゆっくりとお互いの気持ちを育てていくのでしょうねぇと思うとにんまりしてしまう。
その後の話『残灯』のキスしーンが良かったなぁ。受けに片思い?な先輩(女性)はちょっとかわいそうでしたが・・・。
これもまた恋。

『さかなの体温』
雰囲気や魚という題材、設定などが長野まゆみさんを連想させました。
眠る人から抜け出てくる魚が見える受け。好きな人からも出てくる魚が一番綺麗だという。
ある日自分から抜け出た魚が好き人の中に入って行って。好きな人の中に入って行った魚は何を意味するのかな?相手と一緒にいたいという本当の気持ち?
無表情で、感情の見えない魚だけれど、すいっと寄ってくる姿や懐くようなそぶりなどが妙に愛らしいです。
続編『午前0時の回遊』では大人になった二人のその後が短いですが描かれていました。
お魚は相変わらず浮遊していたし、そこはかとなく漂う甘い雰囲気がとても良かった。

『八月、夏の底 』『夏来るらし』
祖父の葬儀の後に現れた青年は実は狐でした。という田舎ならではの和ファンタジー。
水干姿に狐耳とふっさりしっぽがもっと見たかったです。

どのお話も穏やか、かつしっとりした世界でした。

7

独特の世界観と、美しい絵柄に惚れ惚れ

繊細でお美しい絵柄で、先生ご自身の世界観がたっぷりと伝わる作品でした。
美しい絵柄に惚れ惚れしつつも、アホなわたしはとりあえずキノコのリアルっぷりに
びっくりでした(笑)すごい!
雰囲気ある絵柄で本当に線が、瞳が綺麗なのです!

人付き合いが苦手で無愛想で気難しそうに見られがちな菌類学の研修員・室田。
温和で柔らかな雰囲気を持ち、丁寧で世話やきな大学生・岩井。
2人は17才差です。
岩井が室田のもとで助手として働くうちに、最初は岩井が室田の不思議な魅力に
惹かれ、室田も岩井を徐々に大切な存在として意識していく…
お互いがお互いに惹かれていく描写が大変丁寧に描かれており、
エロなどは一切絡まずに進む物語に美しい短編映画を観たようでした。

岩井が室田への想いに自覚し告白した後、室田は驚き何も返すことができず、
岩井は助手の仕事を辞め2人は一旦距離を置くことになります。
しかし、室田は室田で岩井のいない生活を過ごす中で岩井を求める自分に気づきます。
蝶が羽化した、といないはずの岩井に思わず声をかけてしまったり…
もう無意識に岩井と過ごした時間が当たり前になっていたのです。

そして、偶然また再会した彼らは…
綺麗なハッピーエンドで満足でした!

描き下ろしの「残灯」は短いお話でしたがよかったです。
岩井にちょっぴり恋心を抱いていた美人な女先輩視点のお話です。

独特な世界観で、お好きな方はどっぷりハマれる作品ではないかと思います。
帯にもありました岩井の『あぁ、やっぱりだめだ。どう考えてもこれは恋だ』。
素敵ですな~。

5

細密な画に目を奪われる

作者さんの初コミックのようですが、表紙からしてもその植物の絵といい、動物の絵といい、細密画(ボタニカルアート?植物の絵でありますよね)を見ているようで、まずそちらに目を奪われてしまいました。
ただ、作中の背景などは、背景ソフトをつかっているのでしょうか?写真を加工したもののような感じを与えます。
その細密なのに淡々とした雰囲気は、物語にもあふれており、激しい熱い情熱ではなく、湿り気を帯びた森の雰囲気そのままに、ごく短い短編小説か散文を絵にしたような印象も受けます。

自分の専攻外だが、教授の依頼で菌類の研究をしている室田の元へ助手として派遣されることになった大学生・岩井。
マイペースで身の回りに気を使わない室田の、研究以外にもついかいがいしく世話を焼いてしまう岩井。
この室田のマイーペースゆえに、そして外見から寄ってくる女子も多いことから、助手バイトが長続きしないというのだが、岩井は室田のその不思議さに惹かれて行く。

ただただ静かに、岩井が一人で考えて結論を出して、或る意味研究バカな部分の室田が岩井がいなくなって初めて彼が自分の心の中に占める存在の大きさに気がつくと言う、
お話は、何でもない普通のものなのに、雰囲気が居心地よいのでした。

『さかなの体温』というお話もまた同様。
一人が好きな高校生には、相手が寝ている時に出てくる分身のような魚が見える。
ある日自分からも魚が飛び出て、いつも一緒にいる友人の中に入ってしまうと言う、とてもファンタジックなストーリー

『八月、夏の底』田舎で一人暮らしをしている祖父が亡くなる。
そこに現れた少年は、実はキツネだった。

どのお話も優しさが、その絵の醸し出す雰囲気だけでその世界に入り込ませる。
それぞれについた短い描き下ろしの短編はとても心あたたまる話になっている。

雰囲気系の実に秀逸な作家さに思われます。
これからどんな作品を生みだすのでしょうか?

5

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