• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作Blue Rose 榎田尤利作品集

客:高瀬、三津井 /義父:雅弥 /親友:トオル
男娼「青薔薇」 百瀬青

その他の収録作品

  • Sleeping Rose
  • Weeds
  • あとがき

あらすじ

青山にある、看板のない『FILAMENT』。
そこでは花のオーダーができる。蘭、白百合、向日葵。
様々な花の一級品が揃っている。店で最も高価な花は青薔薇で――。
愛を売る青年、青の物語が始まる――!
(出版社より)

作品情報

作品名
Blue Rose 榎田尤利作品集
著者
榎田尤利 
イラスト
高階佑 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
シリーズ
Blue Rose
発売日
ISBN
9784813012566
3.8

(49)

(16)

萌々

(14)

(16)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
15
得点
185
評価数
49
平均
3.8 / 5
神率
32.7%

レビュー投稿数15

青の生き方が気になる

極初期の作品を推敲して2012年に発刊した作品。
電子版は、三部構成と合冊版があって、挿絵無し。同じあとがき。
紙版は、3部合冊版と、2001年の「Blue Rose」と「SleepingRose」の二種類。
紙版を破棄して、電子版を購入したら、挿絵が無くて凄く残念。

一度きりしか注文に応じない男娼、
青は「愛を売る」というけど、客から壊されたがる。

愛人契約をした客の家で、幼馴染と偶然遭遇。
トオルは、青の変貌が気になって、青の拠点「フィラメント」を探して青を待つ。
そしてずっと借りていた児童文学書を青に返す。

青の過去と内面を掘り下げる、あとがきに「愛を求める」話とあったけど、
「Blue Rose」は、序盤。
「SleepingRose」では、青の過去。
「Weeds」で、青はやっと欲しかったものを得て救われる。

生き直す物語は、魚住君シリーズと似ている。
この作品、もっと多くの人に読まれても良い作品じゃないかと思うのだけど。

0

青い薔薇の男

榎田尤利先生の初期作品の新装版。
表題作「Blue Rose」、その後をえがく「Sleeping Rose」、そして新装版に追加された完結編的な「Weeds」の3作品収録。

表題作「Blue Rose」は構成がいい。
まず、疲れ荒みきった高瀬という男の描写から始まる。
そこに「贈り物」として高瀬の前に現れるのが美しい最上級の男娼・青だ…
このまま高瀬と青の話が続いてもBL的に普通だけど、この作品はそうは進みません。
呆気なく次の客・医師の三津井と青の姿に続いていく。
ここで、青は本当に「職業男娼」で、客に応じてキャラクターを作る天賦の才のようなものを感じさせる。
並行して偶然会ってしまった青の幼馴染・トオルが絡み、青の抱える過去のナニカが青を侵食し始める。
そして次の顧客・小鳥遊(たかなし)との時間で、完璧に自己をコントロールしていたように思えた青が小鳥遊の思考に引き摺られていく姿を見せる。
つまりは「死」への滑落へ。
死に片足突っ込んだ青を救うのは、トオル。

続く「Sleeping Rose」はその後の青。
トオルに助けられて生に戻ったかと思いきやの、再び壊れ始める青。
レビューではこの後の「Weeds」が蛇足、というご意見があるけれど、私はこの「Sleeping Rose」の方が余計なような気がしている。
青の過去がドラマチック過剰だし、そこから導かれる義父との関係性をことさら「再会」させるのも過剰だし、更には薬物、錯乱、刃傷沙汰にしていく過程もこれまた過剰。
迫力で押されて読むけど、陳腐で安っぽい展開にも感じる。

では「Weeds」はといえば。
物語の展開としては救済編でめでたしめでたしだけど。
表題作の「Blue Rose」の世界観からかけ離れているのが本当に残念。
耽美的な青の魅力。そこは既に片鱗もなく、逞しく生きられるようになった青が描かれて。
それは青にとって幸福だろうけどあまりにも物語の連続性が絶たれているように思う。
「数年後、こんなに人は変わりました」で片付けている。
トオルは今度は青を抱けるの?性愛込みで愛せるの?
そこもクリアされてない。

…と厳し目なレビューですが、全体には面白いと言えるし何より表紙の青薔薇・青が麗しすぎる。
また、BLに女はイラネ派の私ですが、宮乃も翔子ちゃんもいい存在感だった。

0

榎田せんせーぇ!!

またまたトンデモナイ物語と出会ってしまった。古い作品に魅了されているので、どうしてか直感的にヘヴィーなものを引いてしまう。 むしろこういうズンと来るものを読みたいと思っているけれど、こう続くとなんでBLを読んでいるのかわからなくなってくるくらい、打ちひしがれてしまいます。。

ただ一人の愛を求めながら、金で買われた相手に愛を売る高級男娼・百瀬青の物語。青の客が物語の主人公と見せ掛けてストーリーに導入していくツカミが上手い。冒頭、高瀬の自宅に会社の共同経営者からご褒美として遣わされた青が訪ねてくるシーンで既に彼の存在に惹きつけられている。とにかくミステリアスで魅力のある青年なんです。

契約期間を終えると、高瀬の家で偶然青が再会したトオルって一体何者?…気になる謎を残しながら青は次の客、外科医・三津井のもとへ。SMプレイで客の望みを叶えると同時に、悩みも受けとめる青。三津井による調教シーンそのものも楽しませてくれながら、このエピソードに込められている重要な意味が後に明らかになり、登場してくる人物が次々と繋がっていきます。

トオルが通う大学の教員・小鳥遊の客となったあたりから暗くて重い展開になっていく感じ。この時点で一旦、わたしは耐え切れなくなって思わず絶叫しそうになりましたよ…。

「Sleeping Rose」は、青の初恋の人とのドラマが描かれています。榎田先生って、読むのが辛くなるほど激しく揺さぶられるような、こんな痛々しいお話も描かれていたんですね。読後の虚脱感が激しかった。「Blue Rose」に出てきた高瀬が再登場するんですけど、ここではむっちゃイイ男ぶりを見せてくれます。実は作中で魅力的なキャラNo. 1なんじゃないかな。

一番好きな人とはセックスをしなくても心が通じ合っているだけで満たされる。男娼を描くことでそう伝えてくる先生の手腕に、改めて脱帽です。

最後に「Weeds」が収録されていて、この小品によって救われる思いがしました。そこらへんが先生らしい読者サービスなのかもしれません。

6

独特の雰囲気

何処が良いか、具体的な点を挙げられないのですが、何となく全てが良いのです。
好きです。この作品。
物語を流れる空気感というか、全体の雰囲気が今までにない感じです。

あとがきに、主人公 百瀬青が愛を探す物語とあります。
まさしく、それです。
全体を流れる独特の雰囲気の正体はそれなのです。
特定の二人の恋愛物語ではないのです。
普通のBLとは違うのです。

愛を売る男娼の青、その愛を買う人。
そして、愛を売りながら、必死に愛を探す青。
せつないです。

ただ、最後の『Weeds』は、余計です。
これがあるために、無理矢理小さくまとまってしまった感じ。
折角の空気感が台無しです。
いらないわ、これ。
むしろ、表題作だけで良い気がします。


3

薔薇の日々の果てには……

2001年発行の「Blue Rose」と続編「Sleeping Rose」に
書き下ろし「Weeds」を加えた新装版。

看板すら出ていない青山のバーFILAMENTでは、酒だけではなく「花」も売っている。
それぞれの花の名前で呼ばれる、高級娼婦だ。
その中でも最も高価な「青薔薇」こと百瀬青は男娼、
彼は1週間、客の望むものを与える。
性的な関係も含まれるが、彼が与えるのは身体だけじゃない、愛。

美貌の青を買った若い実業家、S趣味の医師……
普通のBLのようにカップルの話が描かれるのではなく、
主人公の青を軸に、人々を描きながら話が進んで行き
やがて青の人生と過去にとらわれて破滅を願いながら生きる心が焙り出されていく。


読みながら感じたのは、デビュー作の魚住くんシリーズと同じ匂い。
勿論全然雰囲気の違う話なのだけれど、かつての榎田先生の匂いというか
今でも実は「交渉人」シリーズなどでもふと垣間見える先生の世界。

青のキャラクターが好きかどうかで、思い入れ度も作品の評価も違うように思う。
私は登場人物のそれぞれに愛おしい思いを持って読んだが、
とりわけ青は好き……というよりも、幸せを祈らずにいられないキャラだった。


本編の10年後を描いた「Weeds」は蛇足、という意見はあるだろう。
それまでと雰囲気も違うとってつけたような不自然さは否めず、
作品を凡庸にしているのも確か。

「Sleeping Rose」のうっすらと希望が見える終わりで充分とも言えるが、
でも、雑草というタイトルが示す青の成長や
彼のはっきりした幸せのありどころを見せてもらったのは、
個人的には嬉しかった。


高階先生の挿絵は美しく、これぞBlue Rose青という感じだが
一方で他のキャラの絵は今ひとつ見分けがつかないというか印象に残らない。
実際には、それぞれ印象的なキャラクターなのだけれど。
特に最後であしながおじさんを買って出た高瀬は、スピンオフがあってもよさそう……
榎田先生は同人誌を書かれないし、ないのかな?


5

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP