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前半は夢中になって読みました。引き込まれましたね。
特に小学生、中学生の時のお話が本当に良かったです。幼い頃の艶と永見、どちらもちょっと変わり者なんですよね。かわいらしくて、切なくて、いじらしくて。これ、大人になったふたりが恋人になった時のシーンに生きてきます。子供の頃、そんなふうに思っていたのか〜と微笑ましかったですし、2人の会話にニヤけちゃいました。
ただ正直、大人のシーンがちょっと残念でした。子供時代のようにテンポよく、とはいかなかったように思いますし、ふたりの人物像というか、性格や魅力が伝わってこなかったように思います。
子供時代が良すぎたからそう思ってしまったのかな。
砂原糖子先生の御本は2冊目。
『イノセンス』がとても素晴らしくて、先生の作品を他にも拝読したいと思っていたところに、書店で見つけてお迎えしたのがこちらの作品。
新品の紙本在庫があって良かった...(『イノセンス』は電子で読んだためイラストを拝見できなかった)
そして、何から何まで完璧な作品でした。
1ページ目から引き込まれる文章。
最後までページを捲る手が止まりませんでした。
超がつくほどシリアスなストーリー。
時間軸が何度か行き来しますが、先生の手腕が素晴らしく、すんなりと頭に入ってきました。
ふたりの出会いやタイトルの意味など、徐々に明らかになっていく要素によってどんどん深みが増していって、とにかく凄かったです。
『イノセンス』に登場した"レイダーマン"なる特撮ヒーローアニメがこちらにも登場していてワクワクしました。
梨とりこ先生のイラストも素敵です。
木原音瀬先生の『月に笑う』シリーズの挿絵も梨とりこ先生のご担当ですが、先生のイラストは裏社会系の作品ととてもマッチしているなと感じました。
絶対絶対、何回も読み返すと思います。
読み終えて、余韻に浸ってしまう、それぐらい良かった。
幼なじみの再会&両片想いモノです。
時系列も現代だったり過去の話だったりします。
でも混乱することなく、スムーズに読めますし、過去のエピソードのひとつひとつが印象的で、無駄なく現在に繋がっているんですね。
あの時のあの言葉はこういう心情で、とか、あの態度はそういう流れで、とか。
切ない。
読者としては、過去エピソードの小、中、高とも二人が両片想い状態なのがわかってしまうから、とにかく切ない。
父親の跡を継ぎ、貸金業を営む艶(受け)視点で話が進むのですが、この艶がもうたまらなく好きでした。
人気子役だったときの醜聞での引退、父親の遺志を継ぐ決意、継いだ後の汚れ仕事でのストレスなど、艶は若いのになかなかの苦労人なんですよ。
母親は最低な人間ですし。
学生時代から顔はキレイなのに無表情で心を隠し、ヤクザまがいの仕事では本来人情家なのに取り立ては非情、という心身のアンバランスさが危うく思えて、読んでいて惹きつけられるんです。
人に頼ることをよしとせず、歯を食いしばって向い風に立ち向かう姿がカッコいいんです。
攻めのね、永見もね、カッコいいんですよ。
取ってつけたようですが(笑)。
艶への執着度合、良いです。
読んでいる最中はあまり思わなかったのですが、この永見…ヘタレわんこ…ですよね?
タイトルにもなっている走馬灯がとても効果的に使われていて、お話全体が幻影的で薄明かりを通して綴られている、そんな感じがしました。
ゴミ捨て場に人が転がっているという不穏な始まりは、BLではありがちで、よくあるボーイミーツボーイかと思いきや…ですよ。
読み終わった余韻が心地良くて、また読みたくなるような作品でした。
すごく好きです。時系列を外したエピソードの並べ方で煽ってくるような演出で、最初にちょっと不安な気分でスタートして、大丈夫かな…?どうなるのかな…?と恐る恐る読み進めて、徐々に明らかになる事実にすっかり魅了されて一気読みしてしまいました。
街金業の束井とバーを営む永見の幼馴染み再会愛です。迷走しまくる束井の想いと、子供の頃の気持ちを温め続けた永見の一途がめぐりめぐって成就する流れがとても好きでした。迂回する初恋パターンよき…。子役のスターだった束井のいびつな感情(周囲の思惑に翻弄される束井の人生が切ないんですよ…)を理解し受け入れる永見の包容力にも萌えました。表面的な糖度は控え目なのですが、すました表情の下で、めちゃくちゃ炎上している感情(溺愛)が見え隠れするのも最高でした。
主軸の2人のキャラクター(美形男気と男前男気)もいいんですが、周辺人物たちも面白くて(永見の元カレ・ヒラメやヒラメ兄のおしゃべりオネエ蜂木、強面だけど気のいい束井の部下たち、そして、もはやこれは執着愛では?とすら疑ってしまうほど束井の存在に固執する元・ライバルで俳優の大瀬良!)、物語に奥行きが出ています、さすがです。作品の雰囲気にドンピシャな梨とりこ先生のイラストもあいまって、迷いなしの神評価です。
砂原さんの文章が好き。呼吸に合うリズムと柔らかい文体で、するする読める。来てほしいところに来てくれるような、しっくりくる納まりの良さがある。エロシーンでは文章が清潔感を付加してくれているように感じるところも好き。
本作は長い長い両片思いのお話。といっても受けの束井は自覚するまでに驚きの期間を要しており、片思い未満かもしれない。攻めの永見は一度振られているため、束井のことは特別枠に入れておいた感じなのかな。
序盤で語られる束井の過去はとても辛いもので、はっきり言って胸糞。だがこれはただの始まりにすぎず、終盤まで影を落とし続ける。そこらじゅうに散りばめられた傷に、読みながら心がささくれ立っていくような辛さを覚える。
そうした中、束井の中で永見は最後の砦のような存在なのだとはっきりしてくる。本当に本気で自分がダメになりそうなとき、最後の最後で頼りたくなる存在。このブロマンス的な関係性にめちゃくちゃ萌えた。ここをものすごく強調したい。好き。
落ちぶれて見られようと向いていない仕事に就こうと、無意識にでも永見を心の支えにすることで束井は立っていられたのかな、と思った。
後から思い返すと永見の出番自体は少ないが、それを感じさせないほど束井の中に永見の存在を感じていた。
ストーリーは終盤にかけてめまぐるしく動く。事件の盛り上がりに永見が直接は絡まないのが残念。とはいえ、そこに至るまでに永見がやったことは、純粋な執着愛が見えて良かった。
解決後、やっとのことで結ばれる二人。心のつながりの強さはずっと感じていたので、そこに関係性を合わせるために必要な手順を踏む二人を見ているかのよう。ブロマンス作品にその先がついてきたお得感がある、みたいな。
悪には鉄槌が下り、過去も修復傾向を見せ、二人は夢に向かって新たな出発を決める。物語は綺麗に終わり、ラストにちらっと描かれる永見の明るさに救われた。
本編後にほっこりできる二人の小話なんかも読みたかったな。
序盤からしんどい展開が長く続き、最後まで読んでやっと気持ちが晴れる。途中で止めるとモヤモヤが残ってしまうため、しっかり一冊全部読み切る時間を取って読んだ方が良いと思う。
