大人気作家・凪良ゆう先生の最新作!

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表題作365+1

紺宗之 人気スタイリストのアシスタント 24歳
綾野里久 実家の美容室の美容師 24歳

あらすじ

同級生だった紺と綾野。夢を語り、想いを分かち合って共に歩むはずだった。けれど紺は上京し、綾野は地元に残ることになり……。道を違えたことですれ違い始めるふたり。けれど互いを思う気持ちは持ち続けています。男同士だからこそ譲れないプライド、でも捨てきれない情の深さ――子供から大人になるカップルの成長が描かれています。

作品情報

作品名
365+1
著者
凪良ゆう 
イラスト
湖水きよ 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
シリーズ
365+1
発売日
ISBN
9784829625774
3.9

(218)

(78)

萌々

(79)

(44)

中立

(8)

趣味じゃない

(9)

レビュー数
28
得点
846
評価数
218
平均
3.9 / 5
神率
35.8%

レビュー投稿数28

ハピエンですが

攻めざまぁからの元サヤです。

高校時代に出会い、同じ美容学校に通い、両片思いから両思いへ発展していった紺と綾野。共に就職のため状況しようとしていた矢先、母親が倒れたことで綾野は地元に残り、母の病院で共に働き、紺は東京で働くという遠距離になった2人。

流行の最先端でえる東京で働きながらも自分を見失い、くすぶり続ける紺と、地元に残ったことで紺に遅れを取っている、共に同じ夢を追っていたはずの紺に置いていかれると感じるようになる綾野。お互いに相手にいい所しか見せようとしないから言葉も足りず、どんどんすれ違う2人。紺は東京で満たされない自意識、プライドを無意識のうちに帰省した際に綾野にぶつけることで解消しようとし、綾野もモヤモヤが募っていて、ついに別れを切り出すことに…。でも紺はなぜ別れることになったのはを全く理解出来ずにいて…。

そこに出てくる口と性格が悪い美山靫彦(トップモデル)がいい役割を果たしてくれるんです。もうホントにここで綾野と一緒にモヤっていた読者はスッキリするんです✨

正直、無意識に変化のない(ように見える)綾野を安心材料にしている紺には嫌気がさすのですが、男同士ってこんなんかも…とか、こんな男いるよね…って思える妙なリアルさがあるのかな…と思っています。

結果的には元サヤに収まるんだけど、きちんとお互いを見つめ、理解し、足りないことはしっかり言葉で補えるような関係になってのでとてもいい終わり方だったのかなと思っています。

0

攻め視点がしっかりあるのが嬉しい

先に読んだ「愛しのいばら姫」のスピンオフ元作品でした。
美山の友人カップル、紺と綾野の出会いから一緒に住むようになるまでのお話ですが、2人が遠距離恋愛をしているところから始まっています。

田舎のご近所さん御用達の美容室で働く綾野と、方や東京の第一線スタイリストのアシスタントである紺がすれ違っていくのは必然と言えば必然で…。
お互いが大好きなのに、自分の事でいっぱいいっぱいになってしまうと相手の気持ちを気遣えなくなる、そんなリアルに満ちた描写は胸が痛かったです。
綾野視点では紺の身勝手に少しムカムカしましたが、紺視点の章では相手にカッコいい自分しか見せたくないカッコつけな1人の男の苦悩が垣間見られて、切なくなりました。

そんな2人の間に最強の当て馬居るしさぁ。
当て馬としての美山はかなり嫌なヤツでしたw
確信を突いてくる物言いは気持ちいいんだけどね。

いばら姫を先に読んでいたので、綾野と紺がこんな色々なことを乗り越えて安定を得たんだなぁと感慨深いものがありました。

0

「愛しのいばら姫」を先に読むと印象が変わる内容

凪良先生の描写表現は、読んでいて違和感なく心に落ちてしまう。
不思議な文章を書く作家だと思う。
ストンと心に落ちるので、読後、他の本も読んでみようかと思う。
これも次いでに選んだ本。

「365+1」のスピンオフが「愛しのいばら姫」
「365+1」は、紺x綾野 
「愛しのいばら姫」は、久保田x美山

私は、逆順で読んだので、この作品で登場する主人公二人より、
美山が、不器用で口下手だけど、紺と綾野を繋ごうと頑張る健気さを感じてジンときた。

後書によると、この物語のテーマは、
 長い交際期間
 遠恋
 すれ違い
・・と有ったけど、「愛しのいばら姫」を先に読むと、
美山の苦しい初恋が語られるこの本は「茨姫」前段に感じて、
ちょっとだけの登場の美山がとても印象強く残ってしまう。

風変りな母親に愛情を注がれない環境で、ほぼネグレクトされて育った美山は、
愛情の示し方や愛し方を知らない。そして愛されている自覚も薄い。

そんな美山が、初恋の男と似ているドンくさい紺にお節介をやく。
同級生だった紺と綾野のすれ違いを、折々に修正する言動。
 紺に「見下し感」を指摘したり、
 綾野の前で、誤解を修正したり、
 モデルのピンチヒッターを引き受けたり、
 綾野の提案を受けて、髪を切り、初恋の思い出を捨てる
・・不器用な方法しかとれない、とても心が温かい人。

がむしゃらに頑張っている時ほど、掛買いない存在を当たり前だと勘違いしがちで、親孝行も同じ、
失いかけたときや、失った時に、当たり前に「ずっと居ると思っていた支えてくれている人」から受けた愛に気付く

紺も、綾瀬も、ぎりぎりで気付けて良かった。

2

ストレートに抉られる……

凪良さんは相変わらずど直球に心を抉って来ると思った。上京した人間と田舎に残る人間の変化という、ものすごくよくある話を無駄な装飾なしに描くからこそ、ぐさっと刺さる。

三編に別れた話の一編目は、幸せな二人の馴れ初めからすれ違い後の別れまでが描かれる。綾野視点で紺の状況もなんとなく察することができ、紺の言動は虚飾であり若気の至りだと理解できる。それでも、読んでいて綾野より先に気持ちが離れていってしまった。
丁寧な心理描写は共感できるが、早く別離という結論を出して欲しくて、今回に限り長いと感じた。紺を好きだという気持ちはあまり伝わって来ず、ただ縋ろうと必死な人間が悩む様子を見るのは辛い。

二編目は紺視点の話で、その全てが一編目に対する言い訳のように感じられ、下がった好感度が戻ってこなかった。個人的に性格の悪いズバズバ言いまくる美山のようなキャラが好きなので、読むのは楽しかった。
ついでに言うと、紺は美山と何かあった方が人間的に深みが出て良かったんじゃないかと思った。「綾野じゃないと反応しない」、紺のここだけが妙にBLファンタジー。

三編目は導入から驚き。二編目の話を綾野が読んでいたなら分かるが、そんなわけはなく、あれだけのちっぽけな誤解の解け方ですぐに復縁を望むか?という。読者は紺の変化を丁寧に追っているため共感できても、綾野の気持ちの変化として考えると不自然に思えてしまった。
綾野視点で、二編目の紺の仕事を自らの仕事で一つ一つ否定し、潰していく。描写としてとても残酷で、分かりやすく上手すぎるがゆえに作為的にも見えてしまう。コンテストのエピソードは少々ご都合主義だが許容範囲、盛り上がりがとても良かった。

ラストは爽やかハッピーエンド、だが一つ大人になった彼らは一度離れてもいいんじゃないかと思った。ずっと紺の成長を美山のおかげでは、と綾野は疑っていたが、そのモヤモヤを解消させないまま終わらせてしまった理由も分からない。
恋愛より仕事を選び、晴れやかに別々の道を進む選択をしても納得のいく話の流れだった。元サヤがさらにその先にあるといいな、とは思うが。

さすがによくまとまっているし、話としての破綻はない。キャラ立ちはなくても魅力がないわけじゃない。全力で絶賛できないのは、本当にこの人でいいの?他の人を知らないから見えないことがたくさんあるんじゃないの?という汚れた思考が入り込む自分のせいだろうか。
恋愛に関し視野が狭くなっているようで、いろいろと心配になる二人。だからこそ簡単にヨリを戻したという説得力にはなるが、それはBLというファンタジーとは対極にある世界のリアル。萌えとは違う世界の話な気がした。

関係において対等でありたいってのは人間として普通の感情だと思う。綾野と紺に限らず、男同士に限らず。特に男同士ならではのエピソードは無かった。

1

青春だなぁ。

恋愛に終始していないところがいいなって思います。

もちろん恋愛についてもしっかり書かれているけれど、それと同時にスタイリスト志望の紺と美容師志望の綾野とという二人の青年の夢と現実が絡めて描いてあって、10代後半から20代半ばにかけての青春ストーリーとしても楽しめるので好きです。

田舎町で夢を語り合い専学へ進んだ二人が、いよいよ夢を叶えようと上京&二人で同棲生活を始めようとした矢先に、家の事情で綾野だけ田舎に残ることになるんだけど、遠恋を始めて次第に二人の間に見えない溝が少しずつ掘られていく描写が本当にうまい。

地元のおばちゃん達相手の田舎のしがない美容師の綾野と、東京で流行を発信し続ける現場の第一線にいる紺。
そんな紺に対しての羨ましさとか焦燥感とか、引け目とかグルグルしまくってて、そんな感情を恋人に対して抱いてしまう辛さや自己嫌悪。

連絡も少なくなり、会えばひたすらヤるだけで、おまけに浮気疑惑まで出てきて、とどめは「綾野は夢なんか追わずにそのままでいてくれ(超意訳)」発言。
そんな男とは別れちまえ!と思っていただけに、別れを告げたシーンは良くやった!感でいっぱいだったけど、その後の【365】では紺視点に切り替わって、紺は紺で東京でのしんどくて冴えない日々が明かされていくので、なるほどなぁとは思うけど、やっぱり甘えてるというか傲ってると思う。

「いつでもカッコよくありたい」なんて余計なプライドのせいで泣き言も言えず、「でも綾野なら言わなくても自分の気持ちをわかってくれる」という紺の甘えをズバリ指摘する美山はGJです。
美山はヒール役なんだけど、余計な遠慮がないだけにその毒舌がズバズバ小気味良い。
とりわけ「匿名の場所だとやたら攻撃的になるやつもいるし。現実でなにかを動かす力のないやつが仮想空間で、しかも匿名で吠えても意味ないって。それこそ負け犬の遠吠えってやつで」という言葉は容赦なくて好きです。

私がこの話で一番いいなと思うのは、偶然再会して浮気疑惑も晴れ、お互い本音を曝け出してどういう状況だったかわかったのに、元サヤにならないところ。
今の自分のままではまた同じ事になるだろうと思って、復縁を言い出せないんです。
この時の紺の「長く付き合った相手を失うということは、自分の何分の一かを失うことと一緒みたいだ」というモノローグは名言だと思う。

お互いに同じ夢を目指してきたはずなのに、気づいたら一緒に手を携えて走る相手ではお互い無くなっていた……という喪失感をごまかすために、お互いに顔を見合わせて笑うところは何とも切なくほろ苦くて。
誇れる自分でありたい、対等でありたいという拘りが男同士ならではという感じだなと思います。

そして紺と綾野の変化を見届けた後は、あぁツンデレ女王の美山の変化も見届けたいなぁという気持ちになってスピンオフの「愛しのいばら姫」まで読むのがワンセットです。

2

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