おまけ付きRenta!限定版
おなかがすいたら、帰っておいでよ。
すごく面白かったです。もっと早くに読めば良かった。
最後まで読み進めて、本を閉じたあとにまた初めから読みたくなる作品でした。
細く軽やかな線で描かれる物語は柔らかい部分が多いのだけれど、ページを捲ってコックのアヤと記憶喪失の青年・リネアの日々を追っていくと…非常に読ませる展開に。
ストーリー展開が本当に魅力的です。
この世界観とこの雰囲気は糸井先生にしか出せない味なのではないかな。
異国もの・ワケアリ・複雑な形のパズル・普通である幸せ あたりのワードにピンと来た方はぜひ。
大切な存在が突然居なくなり、自分の中のどこかがぽっかりとあいたままのアヤ。
ごく普通の…言葉を選ばずに言うのなら、どこにでも居そうな彼が物語の重要なキーとなっている上手さ。
現在と過去が語られますが、基本的にはアヤの家で営まれるごく普通の暮らしの様子ばかりです。
暮らしに関しても、アヤに関しても、どちらも普通だからこそが上手く効いた作品だと思います。
食事も居場所も、そこに一緒に居る人も生きる上で欠かせないもの。
自分にとっては何の変哲もない物事だとしても、案外誰かにとっては素晴らしいものだったりするのかもしれません。
そんなことを考えながら、じわりと沁みる深い愛を感じる1作でした。
もっと書きたくなってしまいますがこれは何も言えないですね。
展開も結末も余韻もすごく良い。良いんですよ。
ああ好きな作品に出会えたなあと思いました。
久しぶりに読んだのですがやはりしみじみと素晴らしい世界観だなぁと思う
失ってしまった愛はなくなるわけではなく
確かに細胞の中に生きていて
新しい愛はその上に重なって
前の愛から生まれたものでもあるんだなあ
としみじみ思う
去って行った恋人の想いも
それを受けてやってきた新しい恋人も
その二人の関係性も悲しく美しかった
文句なし神と思うお話
リネアが記憶を失って幼子のような性格だった中盤まではそこまでハマれなかったんですが、記憶を取り戻すと共に段々落ち着いた性格になっていってからは、ちょうどストーリーが要を迎えたこともあって、どんどん引き込まれていきました。アヤが忘れられない元恋人・サイラス。最初はリネアよりもサイラスのことが気になってしまって、過去の2人の話をもっと読みたいなぁなんて思っていたけれど、リネアとサイラスの会話のシーンを読んで2人を比べるような考えはすっかり吹き飛んでしまいました。
最期までアヤのことを案じていたサイラス。自分はもう守れないから、と自分を殺した男にアヤを託せるほど、彼のアヤへの愛は本物だったんだなぁと。そしてそれはもちろん、この短い間にサイラスが、殺し屋ではない本来のリネアは純真で信頼できる男だと感じ取れた故の言動でもあると思います。きっとスープの会話で確信できたんじゃないかな。サイラスが語った穏やかで温かい食事と時間を夢見て、アヤに会いに来たリネア。一度は絶望も味わったけれど、結果的にアヤは2人の男から一心に愛されたわけですよね。温かい心を持った彼がずっと純粋な愛に包まれていたのを知って、私も幸せな気持ちになりました。
期待以上の作品に巡り会えた幸せを味わえました。
正直絵とあらすじがちょっとと思ってたのに、読んで良かった!
アヤとリネアとサイラス。まさかの展開にびっくりです。
傷ついたサイラスを拾ったアヤ。食べ物の好みも食べる順番も同じで奇跡だと思って。愛し合って。なのに突然消えて一年。まだまだ引きずっていたアヤの前に女を探していると美形の男が現れて。
記憶を無くした男をリネアと呼んで面倒をみるアヤ。子供のようなリネアとの生活は傷ついたアヤを明るく変えていって。
しかしリネアの正体とサイラスの行方が明らかに。
サイラスがリネアにアヤを託すところが泣けます。美味しいスープを作ってくれるスープのような恋人を欲しがるリネアにも。
リネアの過酷な過去、サイラスの置き手紙。後半は怒涛の展開です。リネアの花も重要なアイテムでしたね。
アヤはリネアを許せるのか?でももう離れられない二人に。
恋人を殺した男を愛する、愛される。難しいけどあの街であの部屋で二人で幸せに暮らして欲しい。
食べ物が出てくるBLを探し求めて欲しいものリストには入れていたけれど、「女子BL」や「コイノヒ」を読んで「少し好みではないかも」と後回しにしていました。
今回読んでみて、後回しにしていたことを後悔。
読み終わった後に本を撫でてぼうっとしてしまったのは久しぶりです。
一緒に住んでいた恋人に去られて、ただ毎日を消化するだけのアヤ。
ごみを出しに外に出たときに怪しい男に声をかけられ訝るも、アヤを助けるために怪我を負い記憶をなくした男と暮らすことになって…。
アヤの描写がふつうなんです。
天才的なコックでもなければ、目を引く容姿もない。社会のストレスで苛立った周囲から男の恋人がいたことを野次られるような、何も特別なこともなく、特別扱いされるようなこともないふつうの男。
そこがこの作品のとっておきのスパイスだと気付くのは後半でした。紛争による治安の悪さや国民たちの極限まで困窮した生活の中で暮らしてきた人間にとって、アヤのふつうさがどれだけ特別だったか。ふつうだからこそ温かいのです。消えた男とアヤの関係は、もしアヤがリネアのような天使風の外見だったり、周囲から手放しに愛されている人間だったら成立しなかった関係なんですよね。
それとは逆にリネアは天使のような外見も必然だったと思えます。
すぐに周囲と打ち解けて愛され可愛がられる子どものようなリネア。記憶をなくしてからのひたすら純粋無垢に見える存在と、薄暗いどころか真っ黒な過去のギャップが大きいからこそ、窮地に追い込まれた人間の絶望や諦観の恐ろしさが鮮明に描き出されていました。
ふたりの共同生活はのんびりとほのぼのしているようで、はっきりと誘導しているわけではないのに「このしあわせはきっとずっとは続かない」と読者に不安を抱かせるような話の進み方がすごく巧妙でした。散りばめられたパーツを組み合わせて先に仮説を立てられていたはずなのに、思っていた通りの展開になったときにアヤと同じくらい衝撃を受けてしまう。「うまい!」としか言いようのないプロットの組み立てに脱帽です。
語れば語るほどネタバレして、もしまだ読んでいない方がいらっしゃったら感動の横取りをしてしまうので、ぜひご一読を。
4年半も前に出版された作品なのでほとんどの方が読了済みとは思いますが、まだという方にはぜひともおすすめしたいです。本を閉じたあとも愛おしいと思える、読み応えのある作品です。