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おやすみなさい、狼の王さま
幼少期のはっきりとした記憶のない愛生がぼんやりと覚えているのは狼王の背に乗せられて森を走ったり、体を舐めてもらったりして育ててもらったこと。そんな愛生は20歳になり、施設の存続のため施設長からある侯爵に金を無心するように言われ、国を越えてとある森へとやってくる。初めて見る光景のはずなのにどこか既視感を感じる愛生。その侯爵は名前も国籍もない愛生に名前と国籍を与えてくれた恩人だった。
森で会った侯爵は愛生のことを覚えておらず、冷たい態度を取られる。それどころか殺されそうになるが、何故か侯爵の感情を刺激することが出来たとして殺さずにいてくれると言う。マフィアに借金した施設長を正すために侯爵と施設に戻った愛生はそこで施設長の逃亡を知ると共に襲われてしまうがそこを救ってくれたのは侯爵で…。そこから老犬タロと侯爵との森での生活が再び始まる。
侯爵と愛生の記憶にある狼王の関係や、森の秘密、侯爵の秘密、そしてタロの最期など、そこからの流れが見所です。
読んだ感想は美女と野獣やロミオとジュリエット、そして眠れる森の美女を色々ブレンドした、おとぎ話のようなストーリーだな、というものでしたが、それはあとがきで華藤先生も仰っていました。徐々に明かされていく色んな真実に置いていかれないように後半は必死で読みましたが、感動の涙がありつつ、収まるべきところに収まってくれて良かったです。
残念ポイントとしてはせっかくのyoco先生の挿絵がなかったことです。電子だからかそういう仕様だからかなんでしょうか…。yoco先生の麗しいルドルフをたくさん拝みたかったです。
ボヘミアの森の奥にある城に住む貴族、身寄りのない美少年、銀狼、呪い、真実の愛とファンタジーとしてワクワクする設定に惹かれ購入しました。
主人公の愛生は辛い境遇でありながらも、幼い頃に自分に名前を与えてくれた人に言われたように愛に生きようとしていて、本当に健気で胸をうたれました。
しかし、少し違和感があったのが愛生のルドルフへの気持ちです。ルドルフは愛生を自分の呪いに巻き込みたくなかったのだとしても愛生と再会した時は、普通好きだと思ってる相手にそこまで言える?と思うくらい冷たいです。その後も本心では違うことを思っているのだと匂わせつつも、愛生に厳しいことを言い続け、貴族らしい優美さなどはほとんど感じられず、顔がいいだけの傲慢な貴族という感じがして魅力的なキャラクターだとは思えませんでした。幼い頃に助けてもらって幸せな記憶が残っているのだとしても、愛生が何故そんなにルドルフを愛せるのかよく分からなかったです。
ただ、秋から冬にかけての白樺の森や湖の風景描写はとても美しかったので、雪の森が舞台のヨーロッパのおとぎ話が好きな方にはおすすめだと思います。
現代を生きる狼王の呪いは、愛の力で解けるのか?
プラハの郊外、広大の森の中のお城に住む侯爵ルドルフと、孤児院育ちの愛生。
ルドルフはその身に掛かった呪いを隠して愛生を遠ざけようとするのですが、愛生は呪いに立ち向かうことを選び、ルドルフの全てを受け入れようとします。
華藤作品ではおなじみの健気受けですが、この作品では攻めのルドルフの方が尊大に振る舞っているものの内心はヘタレで臆病、ルドルフがこんな風になってしまったのにはそれなりのわけがあり、愛生が向ける愛を信じ切れずに逃げ回っているように見えます。
そして、ようやく全てを認め愛生の愛を受け入れた時、、、。
さんざ、ヤキモキさせられた割には結末がちょっと急ぎ足というか、、、
おとぎ話やファンタジー風味は、なかなかさじ加減が難しいってことかな。
終わりない呪われた生に倦んだ伯爵と天涯孤独な明るい前向きな青年の恋です
孤高の狼がかっこよかったです。
人に追われ裏切られ最後は人を呪いながら死んでいった銀狼の呪いを解く鍵は、やはり愛でした。
お互いの背景や過去の所業のために愛したり憎むわけではないのですね。
慈しんでその最後を看取った老犬タロへの愛生の愛と、愛生へのタロの愛。
人とはどこまでも強欲で自分勝手な生き物だと思いました。
yocoさんのイラストもすてきでした。
カバー絵の独特な色合いと絵柄に惹かれました。
扉絵のもふもふと幼子がとっても可愛くてキュンキュンです。
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特典SS
やんちゃな子供時代の愛生。
ルドルフが有り余る時間を使って語学学習したそうですが、日本語の教材はアニメだった、という新事実。貴族様なのに案外庶民的。
それも妖怪◯間とか。
怪我で車椅子生活をしていたルドルフに立ってと強請る愛生は、アルプスに住む少女を思い出しました。
うるさがったり鬱陶しいと言いつつ溺愛するルドルフ。
愛生の命名秘話がいい話でした。
今まで読んだ数は少ないものの、華藤作品の読了物はすべて健気受けでした。
今回も同じ様相です。
そしてお馴染み、外国舞台。
とにかく特筆すべきはイラスト。
表紙も挿絵も素敵過ぎでした。イラストは神です。
yocoさんの描かれる絵と物語の世界が驚くほどにピッタリでした。
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受けの愛生は小柄で年相応には見えない20歳の青年。
10歳でドイツの国境で保護され、記憶も失い、日本国籍も持たないため施設育ち。
攻めはヴォルフォスト侯爵ルドルフ。
左目がとあることから失われ、過去の事故が原因で左足が不自由となりました。
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働く施設が経営不振となり以前出資してくれていた貴族に資金提供を願うため、ドイツからチェコへ赴くこととなった愛生。
そこで出会った貴族がルドルフです。
愛生が保護された後、ドイツ国籍を取得できたのはこのルドルフのおかげではないかと考えていた愛生は、この訪問と出会いを喜んでいましたが、ルドルフには冷たく接されて愕然とすることに。
ルドルフの正体とその呪いを解くために、愛生は文字通り体を投げ出すわけですが、その愛生よりもわたしはルドルフの方が切なかったですね。
もちろん愛生も不幸であったわけですが、彼は名前同様愛に生きることを生の目的としておりそれに対しての誇りも持っているので、あまり不幸な様子が伝わってきませんでした。
前向きなんですね。
反面、ルドルフの苦悩と愛生への秘めた愛、そして己の生への絶望と諦めが、愛生視点でありながらもにじみ出ています。
残念なのは時折出るルドルフの「ヤバい」「ウザい」「エロい」という、まるで日本の10代のような言葉。
ひじょうに浮いています。もう果てし無くおかしい。
その瞬間、作品の世界から急に現実へ引き戻されるのですが、これって合わないよなあと思うのですよ。
高貴な貴族というルドルフの設定とは。
そこが小さなことですが異様に気になってしまい、この評価となりました。
あと、タロのラストの言葉とかは必要ないように感じました。
吠え声だけで良いような…
ここで泣いてくださいなと言われているようで、ルドルフの「ウザい」同様にちょっと冷めました。
その前の愛生の「独りぼっちはイヤだよ。タロが〜〜」という台詞で充分ウルッとしたので、変に差し出されて涙が引っ込むという(苦笑
最後になりましたが、この作品獣○ありです。
ただ、獣○自体は物語に無理なく挿入されていて、自然に受け止められます。