限定特典と割引が充実!
この作家さんの別の「職業」モノは読んだ事があり、その本で描かれた正義感にとても惹かれました。
そして、この本を手にとって読んでみたのですが、見事に騙されましたね。
刑事×極道という、BL小説ではよくある組み合わせですが、珍しいカップリングですね。
最初に二人が出会った時から、全てが始まっていたとは。
蜘蛛と蜘蛛が互いを共食いするような、そんな話でした。
最後の「事の発端」を知った時は、作家さんの名前を確認しなおした位に驚きました。
読み終わった後に思った言葉は「悪徳」でした。
悪徳といえば、マルキ・ド・サドを思い返す人もいるかもしれません。私はそうでした。
内容に共通点はないのですが、サディズムな表現も含まれているので、そういった所では共通するのかなとも思ったり。
BLでは本当に珍しい話の流れで、とても面白かったです。
そして奥泉視点のオナガグモ~では、蓮見のサディズムが、まったくの逆に見えた事にも驚きでした。
視点が違うだけで、こうも人間性が違って見えるのかと。
キャラクターが別のキャラクターになった訳ではありません。蓮見は蓮見、奥泉は奥泉、そこは変りないのです。けれども、真逆の存在に見えた事で、この奥泉視点の話はこの本には必要であり、蓮見の抱える想いを「理解」するのにも必要なんだな、と思いました。
このドラマ性と、二人の男の関係の描き方は本当に見事ですね。
他のレビュアーさんも書いていらっしゃいますが、この後の話も読んでみたいと思いました。
最初から、重いです。
薄暗いです。
悪党同士の組み合わせ、でも憎めずに魅かれてしまう。
蓮見さん 刑事なのに 悪党です。
「おぞましくて、美しいものが好き」
ヤクザと刑事。敵対関係にありながら、
お互い魅かれていた。
奥泉の危機に、さっそうと助けにはいり
刑事としては、許されなくても、奥泉の秘密を共有する。
奥泉くんは、頭脳派の悪党君。
向上心はあまりなさそうなのに、ほしいもののために
策略をめぐらす。
自分からはあまり動かず、相手を奈落に誘導する。
二人とも、決して「良い子」ではないのに、
キャラが魅力的なのです。
あと、謎の多いガンマニアの住谷くんキャラも気になります。
ついに 奥泉くんは 襲名してしまいましたが
これからどうなるか
とても気になります。
殆どの人が気持ち悪がる蜘蛛の生態に擬えた小説。
・女郎蜘蛛
JSTX-3 神経毒を持つ毒蜘蛛。 雌の腹部上面は金色と水色の縞模様。
主食はハエや蚊、蛾などの虫 畜肉や魚肉の小片 交尾時に雌が雄を捕食
・尾長蜘蛛
細長い腹部を持つ、クモを食うクモ。網らしい網は張らない、クモに見えない蜘蛛
女郎蜘蛛は、刑事の蓮見視点 女郎蜘蛛は蓮見のペット。
尾長蜘蛛は、組長代行で経済ヤクザ 奥泉視点。
・・・何方も普通ではない人格の持ち主。
蜘蛛の生態を知れば、物語の概要もなんとなく透けて見える。
凝った構成の、病んだ二人の共依存愛。
あ、これは対決とかの意味の×でなくBL界の記号通り右が受けという意味です。受けは組長の元情人(イロ)で武闘派でなく頭脳派の美しきヤクザ、魔性の男です。BL界によくいらっしゃる大好きなパターンです。水原先生のスリリング物久しぶりに読みましたがやはり面白い。でもこれももう8年前の作品なのですね。
この話はヤクザより攻めの刑事・蓮見の方がヤバい奴です。危ない奴というか。刑事なのに奥泉に惹かれすぎて色々とおかしな事になってる。クモをペットにしてたり最後はヤクザのボディガードみたいになってたり変な奴。相棒の住谷も蓮見とは別の意味で変わり者でバディなのに全然仲良くない所が面白かったです。
囚われたのは結局どちらなのか?というよりお互い様という感じの悪党カップルのお話でした。
本編プラスその後を描く短編、およびSSの3編での構成。2014年発表作品。
「女郎蜘蛛の牙」
主人公は型破りな警視庁組対の刑事・蓮見。単独行動ばかりしていて、今日もひとりで令状もなしに岩田組の組本部事務所に乗り込む。
そこで陰のNo.2と言われる代行の奥泉を初めて目にし、その美貌に心を揺さぶられる…
…と始まります。
が、この物語はキュンとする一目惚れとか甘い恋心とは全く無縁!
ある日組長が殺害され奥泉に容疑が!と状況が一変。
奥泉は組の後継に関して陥れられて濡れ衣を着せられ逃亡。組と蓮見の両方から追われるわけなんだけど。
この組長殺害の真実が驚き!全く予想してませんでした。
美貌のヤクザが女郎蜘蛛の魔性を纏っている…という視点はまぁ当然として、本作にはもうひとり「蜘蛛」がいます。
ふたりの蜘蛛がお互い網を張って、獲物として掛かりあい、喰って喰われて…いつかは破滅に至るとしてもその日までは貪り合うのも悪くない…
そんな毒のあるストーリーは読んでてゾクゾクする。
「オナガグモの爪」
岩田組を継ぐ流れになってしまった奥泉。襲名の段取りは着々と進むが同時に命も狙われて、しばらく身を隠すことに。
そこは、奥泉が育った土地。
奥泉の送ってきた人生が明かされます。ごく真っ当で、傾いた家業を継ぐために懸命に学び働いた日々。もう二度と戻らない/戻れない過去の自分に向き合う時間が描かれます。
「襲名」
ついに襲名の日。次の人間に跡目を渡すまでこの運命を生きようという決意と諦めが混じった境地。だがその隣にはやはり蓮見がいるのだ…
これ以上なくフィットしながら、お互い信じていない、いつ寝首をかくのかかかれるのか、命懸けのケンカップル風味。
ヤクザより底知れぬアブなさを持つ蓮見が印象深い!奥泉が絡め取られた犠牲者のようにも見えてくる…
