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何か裏があるようには見えなかった。
表紙が素敵すぎたので。
この見つめあってる二人に恨みでどうのこうのの鬼畜な設定はないだろうと勝手な思い込み。
でも、本当に恩返しの為に東を探しだした松岡だったので一安心。
コマ小さいのに細かいところまで描かれているし、1ページ1ページが丁寧で綺麗だし、映像で頭の中に流れてくる感じで引き込まれた。
松岡の為に大切に育てた菜の花。
東が母とのことを勘違いし、怒って庭から菜の花をぶち抜き駅まで走って松岡に投げつける。
その菜の花が春になって松岡と再会したあと、駅のホームに咲いていたのは感動だったな。
東が松岡に告白して、菜の花からの斜め下から見上げるアングルが素敵でした。
たぶん、あの菜の花だと思う。
東の松岡はあの時の怪我をしていたお兄さんだと思い出した時の表情がめちゃめちゃ可愛かった。
結ぶ秋の扉絵が好きすぎます。
風に煽られていて、松岡が東のおでこにキスをしている。
これも、斜め上からのアングルで素敵です。
東の目から涙が落ちるシーンも他にはない感じで良かった。
3コマで描かれていて、東が見ているところは自分の足。最初はクリアな視界で歪んだと思ったら涙の雫がポタッと落ちる。
二人の運命は最初に出会った時に決まっていたよね。
このコミック出るまでに7年かかってるんですね。
壮大なストーリーだったな。感無量です。
流血シーンも(顔も見えなく名前もない人達の首吊りシーンもあり)多々あるけど読んで良かった。
やっぱり、麻生ミツ晃先生の作品好きだなと再実感。
松岡の仕事仲間である情報屋の穂純のストーリーも読みたいし、大学で唯一の友達だった弓削がそのあとどうしたかも知りたいです。
穂純なんて長髪の着物姿でまだまだ謎の多い人物だし、弓削も東と仲直りしてくれてたらと思う。
どっちもイケメンです。
穂純は美しいので情報を得る為に身体を…?なんて想像したりもした。
本当に映画のようなストーリーです。
電子書籍でリリースされた際に試し読みして、冒頭の15ページですっかり魅了され、どうしても紙で欲しいとそのまま別の通販サイトで購入してしまいました。元はと言えば敬語攻めにチェックを入れて検索したときに気になっていた作品で、松岡の丁寧な口調と「私」という一人称、坊ちゃんという呼び方、そして時代背景とストーリーが絡み合った、とても丁寧に描かれた作品でした。
絵柄、ストーリー、キャラ、全てが好ましく、どうしてもっと早く読まなかったんだろうと後悔してしまうほど、大好きな作品になりました。特にコマ運びや場面の切り取り方が素晴らしくて、昔の上質な日本映画を見ているようです。先に書いた冒頭部分でも、暑い夏の日に坊っちゃんが強烈に松岡を意識するシーンは、ひとコマひとコマがとても印象的で、読んでいる私も坊ちゃんの目線で、松岡の太い腕、大きな体、そして間近で見る唇に魅せられて、ドキドキという自分の鼓動と坊ちゃんの恋する気持ちが重なって、『SEASON』の世界にそのまま取り込まれてしまいました。こういう素敵なシーンや印象的なコマが物語のあちこちにあって、その度にわぁ~っと気持ちが高ぶって、坊ちゃんと一緒に切なくなったり、松岡の気持ちに同調して苦しくなったり、今月初めには手にしていた本なのですが、何度も何度も読んであまりに素敵で、未だに残るこの気持ちを表す適切な言葉が見つかりません。
最初読んだ時に一つだけとても気になった所がありました。松岡が坊ちゃんを傷つけた男の耳を切り落とすシーンです。ここは踏みとどまるところではないの?と感じたのです。それは一番坊ちゃんに見せたくない醜い姿なのではないかと…。だけど坊ちゃんと決別する(身を引く)ための覚悟として、そこまで自分を堕とすしかなかったのだなと、何度も読んでからそう理解しました。同じ頃坊ちゃんは、本当の松岡なんていない、目の前の松岡がすべてだと気づくのです。そして松岡は再び(一度目は幼少の坊ちゃんから)価値を与えられ、強く坊ちゃんを抱きしめます。そこから二人が結ばれるまでのくだりは、美しいベッドシーンBESTがあったら、上位ランクイン間違いなしの息をのむような感動的なシーンでした。人目も憚らずに坊ちゃんを抱きしめる松岡、そのまま坊ちゃんの手を引いて旅館へ急ぎ、狂おしいほどに求めあう二人。後ろで響く祭囃子の太鼓と花火の音。この美しさはとても言葉では表現出来ません!!是非読んで欲しいです。
菜の花、雪、など視覚的な効果と共に、聴覚にも訴えてくる、切ない映画を見てるような作品でした。
父親の事業の失敗により、母親とふたり貧しい生活をしている東(受け)のもとに、昔受けた恩を返したいという、金貸しの松岡(攻め)が現れる。
きっと自分たちを騙そうとしている悪人に違いない、と疑う東はなかなか素直になれないが、長く誠実に援助してくれる松岡にだんだん疑いは解け、ほのかな想いを寄せるようになっていく。しかし松岡は母と結婚したいのだと誤解した東は、松岡にひどい言葉を投げつけ…。
元は金持ちだった坊ちゃん受けと、昔のある出来事により受けに心を奪われた金貸しの攻めの話です。
『Season』というタイトルの通り、移ろう季節とともに2人の関係の変化を描いた、長い作品です。
親に売られ、奉公先できつく当たられていた攻めに、一度だけ与えられた優しい手と言葉。それだけのために自分の人生をすべて捧げて尽くしてもいいくらい、攻めにとってはうれしくて衝撃的なことでした。
受けはそれを忘れていて、父親が何か恩義を感じるようなことを攻めにしたのかなどと抜けたことを思っています。受け自身が忘れていても、攻めの気持ちに変わりはないですが、作中で受けが思い出してくれたときには、攻めに「よかったねえ」と声をかけたい気持ちになりました。
受けの視点の話なのに、攻めの気持ちを思いながら読んでしまうような、そんな作品でした。
くっつくまでは、受けが攻めを追いかける話でしたが、攻めも受けのことを思って距離を置いたりしていただけで、実際にはそばにいたくて仕方ないようなのが可愛かったです。情け容赦のない冷酷な金貸しで、長身でイケメンで顔に傷があったりしてすごくかっこいいのに、なんかひたすら可愛い。
間違いなく、これからどちらかの命が尽きるまで一緒にいるだろうな、と思える2人でした。
元使用人・松岡と、お坊ちゃん・東が、季節を巡りながら、関係を育てていくお話です。
あとがきによると「咲く春」が読切で、そこから7年かけて「とける夏」「結ぶ秋」「巡る冬」と続いたそうです。
「咲く春」
西洋文化の影響で呉服屋が傾き、父の死で生活が苦しくなった母と息子・東に、元使用人だった松岡が恩を返したいと援助を申し出る。松岡を覚えていない東は最初は怪しむけれど、松岡の訪れを楽しみにするようになり、松岡の気づかいへの感謝を慕情へと変えていく。
「とける夏」
松岡が受けた恩とは、怪我した松岡をまだ幼い東が心配してくれた、それだけでした。そんな小さな出来事を、ときに重荷に感じながら生きる意味としてすがってきた松岡の人生は暗い。
恋の芽生えだった「咲く春」から一転、松岡は金貸しだったことがわかり、恨みの矛先が東にも向かうきな臭い話に変わります。
松岡は汚い自分を東に見せたくなかった。東は本当の松岡が知りたいと思っていたけれど、そこにいる松岡が全てだと受け入れる。
東は感情で動いて騙されやすいところもあるけれど、松岡の恩は松岡から聞くか自分が思い出さないと意味がないと本質がわかっている。
自分を傷つけた人間を許し、守り、その人自身を見て受け入れようとする東はなんて強いんだろう。
ここで恋人としての二人の関係が始まります。
「結ぶ秋」
東は松岡の家から医大に通います。
松岡を恨んでる者が石を投げ入れる家で愛し合う二人。
怪我した人を心配する、そんな誰でもできる小さなことじゃなくて、松岡に特別なものをあげたいと願う東が、今度は松岡の言葉で自信を持つ。
未来の実りが予感できます。
「巡る冬」
それから数年後、劇的なことは起こらない二人の日常です。
タイトルの通り、季節を巡りながら日常を重ねて二人は一緒に生きていくと思わせてくれる、締めにピッタリな短編でした。
花、天気、温度、背景の季節を意識して描かれたのがわかる作品です。
自分にはなんでもない言葉や行動が、相手の中で大きな意味を持って人生も変えていく、麻生先生の作品は一つ一つが伏線となって物語が進んでいくので、部分を切り取ってレビューを書くのは難しいし、無意味に感じます。
ぜひ全編、麻生先生の絵と言葉で感じ取ってください。
NHKの朝ドラを観ているような気分になりました!
しっとりとした時代の、地に足がついた世界観。
ひとつ間違えば難解になったり、小難しくなったりする題材に思うのですが、東の健気で可憐な良い子っぷりで、どんどん引き込まれていきます。対する松岡もいろんな思いを抱えながらも、健気に東だけを思い続ける。
中盤でいつの間にか涙が流れていて、それ以降は読みながらずっと涙涙でした。
7年もかけて描いたとは知らずに手に取りましたが、この大作を一気に読み終えられる幸せ! また何度でも読み返したい作品です。