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翻訳モノのミステリー小説、フェア・ゲームの続編です。
事件自体は1話ごとに完結していますので、前回を読んでいないと全くわからないということはありませんが、主役2人が結ばれるまでは前回に描かれていて、こちらではすでに同棲中で周りからもある程度周知のカップルとなっています。
自分は前作が大好きで大好きで、分厚い内容にも関わらず何度読み返したことか・・・。続編を翻訳して頂けるのを今か今かと待っていました。こうして日本でも出版して頂けて本当にありがたいです。
今回のストーリーは主人公のエリオットの父親の家が放火され、おまけに狙撃されるという事件が起こるというもの。
勿論じっとしていられないエリオットは恋人でFBI捜査官のタッカーの忠告も聞かずあちこち飛び回り事件の真相を探ります。
どんなはじっこの登場人物にも一度は疑いの目がいくよう構成されている・・・ミステリ小説のセオリーを踏んでいて引き込まれます。
さらりと流せるようなお話でないので、読むのに時間はかかりますが、皮肉の効いた言い回しが本当に楽しくて読み終えるのが惜しいくらいでした。
しかし、前回のように主人公自身が狙われてどんどん人が殺されるという緊迫したドキドキ感は控えめで、今回は過去にあった出来事をたどって真相を探るという内容です。
エリオットは前回同様、無鉄砲にあちこち飛び回っていますが、緊迫感は前のほうがあったかもしれません。
しかし、恋人のタッカーとの関係はより深く掘り下げられています。
結ばれてからの恋人たちの前途多難な道を、この2人は一歩一歩踏みしめながら進んでいきます。
同じ作者さんの長編、アドリアンシリーズのカップルとどうしても比べてしまいますが、あちらに比べるとこっちの2人はだいぶ落ち着いたカップルだと思います。
タッカーは必要ならカミングアウトもあっさり出来るし、エリオットに対する愛情を隠さず必要なときはストレートに言葉にしてくれます。おまけにベッドでエリオットがどうしてほしいか熟知している。恋人としてかなり理想的でないかと思います。
愛情表現がへたなのはエリオットのほうで、なかなか面倒な主人公だと思う。それをエリオットも途中で気づきますが、う~ん、なんというか、ゲイ小説の主人公としてみれば面白いキャラクターかも。
エリオットのほうは簡単に好きだと口には出せず、弱みを見せることも嫌うし強がりで意地っ張りですが、ベッドでは徹底的に支配されるのを望みます。
しかもそれを望んでいると相手にはっきり知られている顔をされるのも気まずいんです。
そんなわけで、ベッドでのエリオットは徹底的に蹂躙されたい「根っからの抱かれ役」で、タッカーは「根っからの支配者」になります。
このレーベルの翻訳作品で多く見られるリバはありませんので、リバが苦手な方はご安心を。
二人は半分ぐらいは甘々で、半分くらいは喧嘩をしています。
というか、ずっと反発して言い争っているように見えなくもないですが、二人の根本に「別れる気はない」という気持ちが見えますので、そこは二人で乗り越えていくものだと理解し、気持ちが違ったときは距離を置いてみるなど大人な対応をしているように思えます。少なくとも世のカップルが陥りそうな、なりふり構わないドロドロの爆発的な言い争いはしていなくて、どんなに激昂しても言葉を選んでいる
ように思えました。
なんというか、私はこの2人の言い争いが好きでした。
意地と愛情で言葉を選んでいるのがわかるからです。
言葉は難しく、上手く伝えられないと伝えることを放棄してしまいそうになるけれど、この二人は「言葉で伝えられない」ことを伝える努力を頭をフルにつかって最大限にトライしているように見えます。それが面白いし、感動し、感心します。
ニュアンス一つで意味が変わってしまうようなことを、もちろん日本語と英語では違うかもしれませんが、その選んだ言葉の端々にいちいち心を揺さぶられました。
愛情だとか信頼だとか支配だとか、互いが互いにとってどういう位置にいるのか、そんな簡単には伝えられないフィーリングを、時に喧嘩して、仲直りして、抱き合いながら伝え合っていきます。
恋人って、なかなかこうは上手くいかないんじゃないでしょうか。
二人はもしかしたら自分たちは喧嘩ばっかりの難儀なカップルだと思っているかもしれませんが、少なくとも隠し事や嘘を嫌い、そのせいでおこるいざこざに目をそらさず傷つき合っても話し合いを怠らない、自分から見ると大分進化した(?)理想的な恋人関係に思えました。
でもまだまだ事件を孕んだ未来が見えるような終わり方です。
このシリーズが大好きですので、可能ならまだまだ続編を生み出し続けてくれたら嬉しいです。
最近どはまりしているジョシュ・ラニョンさんの作品です。アドリアンシリーズを先に読み、それも大変面白かったですが、こちらのシリーズの方が受けと攻めの関係がラブラブです。もう甘々です。一作目では色んなわだかまりがあってケンカップル風で大丈夫なの?!って感じでしたが、今作では既に同棲中で二人の愛もゆるぎないです。
日本のBLの様式美に慣れてるので海外のMM小説、しかも作者も男性ってことで色々なことがカルチャーショックで新鮮です。例えば主人公の受けはアメリカのシアトルの近くのグース島という島に住んでてフェリーで大学に通勤してるのですが、同棲中の攻めは自分の船で行き来できるので受けは彼氏が家に帰ってくると「お帰り、船乗り」と言ってベッドで抱きしめるんです。あと彼氏はFBI勤務なので仕事中電話で愛してるよって最後に言えない時は「気を付けて」って言うのが二人にとって「愛してる」の意味の代わりになるとか、家で「2階で話をしよう」っていうのは「セックスをしよう」って意味だとか・・二人の間だけの暗号みたいなのが色々あってどんだけ仲良しなのよ?って感じです。
受けの父親も訳あって一日ゲイカップルの二人と同居するのですが、料理上手の父親は息子がゲイということには理解をしめしていて息子の彼氏の分まで夕食を作ってあげようとするのです。優しいー!日本で翻訳されている文庫3作品とも攻めが警察官とかFBI捜査官とかでとにかくかっこよくて、お話もスリリングです。BL以外の部分も楽しめてとってもお得です。脳内でかっこいい二人の映画が絶賛上映中です。
今週末もアドリアンシリーズの甘々な表紙の新作が出るので絶対買います。てかあれはどう見ても「私たち結婚しました」葉書きみたいです。草間さかえさんの描く男性らしくそして可愛らしい受けの姿も素敵です。(今シリーズもアドリアンシリーズも両方草間さんです)
あとどの作品も受け35歳、攻めアラフォーというのが多いです。日本のBLだと35歳でオヤジ扱いの作品も多いですが、35歳なんてまだまだチャーミングな年齢よねえ・・とおばさんは思ってしまいます。
フェア・ゲームの続編。
タッカーとエリオットの二人はゲイカップルとして同棲していますが、そこにエリオットの父の過去にまつわる事件が絡んできて二人も巻き込まれていく…というストーリー。ベトナム戦争やヒッピームーブメントが関連する過去の謎解きがとても面白い一冊になっています。
次々に出てくる人たちはみんなどこか怪しいし、エリオットは無謀にもいろいろ突っ込んでいくし…ハラハラし通しです。
結果的にはお父さんには敵わないなー…という感じでしたが(笑)
日本のBLを読み慣れた人には、ラブ要素が少ない! ベッドシーンが少ない! と思われてしまうかもしれませんが、大人同士のカップルであること、男同士であることがしっかり描写されていて、この二人の関係性が私は大好きです。(セックスシーン含め)
しかし、この手の本は、一度はまるとしばらくは類書を読み漁りたくなりますね。原書ではもうこちらの続編も出ているようで、ついつい自分の語学力も顧みず買ってしまいそうなほどです。
英語を学び直すのが早いか? 訳書を待つのが早いか? といったところです(笑)
◾️タッカー(FBI)×エリオット(大学教授,元FBI)
前巻「フェア・ゲーム」から半年後です。しっかり同棲していてニッコリ。そしてタッカーが激甘になっていました。常にエリオットを気遣うタッカー。あまーい!!今回特に萌えを運んでくるのが「気をつけて」と「話し合う」です。どういう経緯で2人がそれを決めたのかも気になるけど、そんな素敵な暗号あるかね!「気をつけて」を繰り返した後、最後のタッカーの「愛してるよ」には天を仰がずにはいられなかった。
タッカーがテレビゲームをするのが意外でした。可愛い男だわ。
エリオットはまま被害妄想めいたところがあるな〜という印象。今回のトラブルについてはタッカーに非はないように思える。秘密があることは、即ち嘘をついていることにも、信頼していない、尊敬していないことにもならない。けれどどれも2人の関係性ですからね。外野が判断することではないですね。
エリオット自身も、ベッドの中で支配されたい欲求との矛盾に言及してましたけど、私もそう思うよ。ただエリオットのそのギャップには大興奮でしたけど!タッカーはそれ以上に興奮してるんだろうな。クールな彼を夜は支配する…うん。そして支配させるには安心感が必要で、信用できない相手に自分を任せるのは怖いですから。保護欲の塊であるタッカーはいつもそこを大変ストレートに表現します。タッカーの真っ直ぐなところに、この2人の関係を拗らせない方法が依存しているようにすら思う。
エリオットはそうとう面倒な子だ。面倒な子ほど可愛い。窒息しそうなほど食べるところも可愛い。ただ大きなすれ違いがあってもエリオットが「二人とも、別れる気などまるでない」と言い切ってるところ大好きです。
男性同士の恋愛の面も十分楽しめ、かつ今回サスペンスも相当面白かった。時代背景もしっかりした骨太サスペンス。ラストの父との抱擁含めて充実の一冊でした。文句なし!
フェア・ゲーム続編。
恋人としてエリオットの部屋で過ごす二人に萌える暇も無く、冒頭から事件が始まる。そこから過去の出来事へと広がり、複雑な構造が見えて来て面白かった。
事件を追いながら、エリオットとタッカーは衝突を繰り返す。特にエリオットの性質はなかなか面倒だと思った。ベッドの中では支配されたいと願いながら、それ以外の場面では支援すら許さない。必要以上の庇護を嫌がるのは分かるし共感するが、そうした性格のエリオットはタッカーと相性が良いとは思えなかった。
エリオットのために全てを犠牲にしそうなタッカーは、かなり庇護欲が強い。こうも合わないタイプに思える二人が、ただ好き合っている気持ちだけを頼りに歩み寄る姿を見るのは、心に刺さるものがある。
年齢的に、愛だけじゃ超えられない壁もあると、諦めを伴う恋愛も似合いそう。そんな二人が愛だけで溝を埋めていこうと努力し合うのが良い。
今作の事件におけるタッカーは、電話の向こう側にいることが多く、ほぼバックアップ役に徹していた。実体を伴って登場する際は常にエリオットと話し合おうとしていて、その必死さが切ない。
エリオットの方はずっと自分の内側だけでぐるぐるしていて、タッカーの頑張りが無ければまた離れてしまいそうな危うさがあった。
そうしてついに痺れを切らしたタッカーが強硬手段に出る。これをきっかけにエリオットが変わっていくのが良かったし、体に分からせてあっさり解決でないのにも安心した。
クライマックスは二人力を合わせての解決。やはり現場のタッカーはカッコ良く、全幅の信頼を寄せるエリオットの描写も良かった。
ラストは前作からの置き土産を匂わせつつ終了。今作で起こった事件も二人の関係性も綺麗にまとまったため、次作までモヤモヤを残すことは無い。この先、衝突しながらもずっと一緒にいる決意が見える会話で終わり、爽やかな読後感。
今作でますますタッカーが好きになったので、ぜひ次作も読みたいと思う。