謎めいた水神×不幸体質な青年のケモ耳ファンタジー!

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表題作水神の契り

十六夜、天音が暮らす東の屋敷で唯一懐いている妖
天音、妖に襲われ続ける贄の血筋の末裔

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

「贄」の家系に生まれた天音は、常に化け物に命を狙われる不幸な体質の持ち主。持て余した母親によって呪術師の家系である東家に預けられるが、そこで導かれるように妖だらけの鏡の裏の世界に引き込まれてしまう。見知らぬ世界で天音を待ち受けていたのが、東の屋敷で唯一心を開いていた妖・十六夜だった。元の世界に戻るには妖と契って式神にする必要があると聞かされ、天音は戦くが、神々しいばかりに美しい十六夜に「私がおぬしの式神になってやろう」と体を求められて…!?

作品情報

作品名
水神の契り
著者
成瀬かの 
イラスト
みろくことこ 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
レーベル
角川ルビー文庫
シリーズ
白虎の契り
発売日
ISBN
9784041051337
3.4

(18)

(2)

萌々

(10)

(2)

中立

(2)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
3
得点
58
評価数
18
平均
3.4 / 5
神率
11.1%

レビュー投稿数3

埋め立てられた河川の水神の神嫁

契シリーズの一番最後の巻と知らずに、最初に読んでしまったから、背景と関連がイマイチ不明瞭なまま読了してしまいました。
あとがきを読んで、またやってしまったと、ちょっとがっかり。
---
白虎の契り 清夏とリ星 
黒豹の契り 由羅と桎梏
鬼人の契り 橙弥と正親
鬼人の契りの後が、水神の契り
雛菊と慎吾は、戸籍では橙弥と冬芽の子 ジグは冬芽と式神(夕貴丸)との子
---
東一族の外家の子に産まれた天音。
父と母は、遠い「贄の血筋」だった。贄の末裔である父と母の間に生まれた天音君は、贄の血筋のハイブリット、とんでもなく美味い香を持つ贄の子。
天音君の両親は、仲が悪い。母は、父の実家の東家が大嫌い。
天音君が守る力が無い状態で、「怖いもの」に襲われた時、神主のような男の人が現れて、恐いものから守ってくれた。「お礼は10年後に渡す」約束を天音は神主のような人と交わす。

その綺麗な神主のような人は、水神で、父の里にイツイていた。
埋め立てられた河川の水神だったので、今は祀る人もなく、神名も忘れて神力を復活出来ない水神様。仮の名を「十六夜」と決めて、天音と暮らすことにする。
神力の復活が出来ないので、神力が尽きるまで神嫁の天音と暮らして、共に消える覚悟をして人間世界に天音と一緒に来たことを天音は知らない。

「千と千尋の神隠し」の「ハク」のような、気の毒で寂しい水神様でした。
環境破壊をテーマにしている話だったんですね。

1

契シリーズ4作目

東家のお話「白虎の契り」「黒豹の契り」「鬼人の契り」に続く4作目のお話です。
今作だけで話は分かるようになっていますが、全てのCPが出てくるのでシリーズで読むと一族のことなどがわかってより楽しいと思います。
今作の攻め様は前作「鬼人の契り」で壮大な横恋慕をやらかした水神様なので、水神様の状況をより知りたければ、「鬼人の」はおすすめです。

妖が視える体質の天音(受け)は小さいときから妖に狙われてきました。
そのことを周りは誰も信じてくれません。母親は「変なの」が視えるというととても嫌がるので言わないようにしていますが、外に出ると襲われるのでとうとう不登校になってしまいます。
母親にさじを投げられ、父親の一族が住む東家に預けられることになった天音は東家で引き込もって生活することになります。

天音は母方が「贄」の家系で、妖の血の入った父方の血がざ混ざったことで、妖にとってとても美味しそうな存在のようです。
妖の存在を頑なに信じたがらない母親により、その存在を認めようとする父親から遠ざけられ、もらったお守りも奪われ、外に出れば妖かしに襲われ何度も殺されそうになります。
不登校になってしまった天音を無理やり外に出そうとして再び妖に襲われた日、両親の不仲が決定的になり、父親の一族のところへ身を寄せることになるのです。
父親の一族・東家は呪術師を生業としてきており、式神がそこかしこに生活しています。天音は霊力を感知する能力が高く、市井の妖よりも強い式神たちのいる東家でも安心して生活できません。東家では天音に気を使い、式神の存在をなるべく感じさせないように配慮するのですが、本能的に恐れる天音はできるだけ部屋から出ないように生活することになります。
しきたりのせいで詳しく説明してもらえないため、疎外感を感じており、東家の人からは大事にはされているのですが、その厚意を素直に受け取れず、自分はガラクタで存在する価値もないと卑下しています。そんな中、時々遊びに来る妖の十六夜は昔出会った人に似ているうえ、全く力を感じさせないのでとても親近感をもちます。

最初の母親の酷い態度に本当に気分が悪くなりました。
目の前でいきなり血を吹き出している苦しむ我が子をみても頑なに認めようとせず、普通の子に育てようと意固地になる母親。
対処しようとする父親に、父親のせいでおかしくなると決めつけて父親と会わせようとせず、実は天音を殺す気なのかと思われる行動ばかり起こす姿は狂気でした。最終的に天音を放棄してしまうのですが、この母親の本心がどうだったのかとても気になります。
「贄」の家系だったことが実は彼女の深層心理に何か陰を落としていたのでしょうか?
天音が幼いころからすでに二人は不仲だったようですが、この辺はよくわかりません。そして、父親がもっと早くに行動できなかったのかとも不思議に思いました。自分は視えなくとも、一族が視えることは知っていたのになぜもっと早くに対処しなかったのかと思います。離婚していたわけでもないので絶対に会わせないなんて無理だと思うし、心配はしていても、忙しいのを言い訳にして気にはしながらも放置していたように思いました。

水神・十六夜(攻め)は開発によって穢され、依代をなくしてしまった川の神です。消え行く前に誰かと縁を結びたかった十六夜は、前作受け様・橙弥に言われたとおり銅鏡の裏の世界で式神を得ようとする東家の子を待っていたのですが、待ちきれず眷属を現世に送り込んで天音を見つけます。
天音が18才になるまで眷属に天音を守らせ、東家に来てからは時々様子をみに来るのですが、18才の誕生日に自分の封じられている銅鏡の中へ誘うのです。
ちゃんと天音のための思惑でもあるのですが、神だけあって天音の意見など聞かず、無理やり天音と契ろうとします。
初めは、天音も憎からず思っていたので、流されるように受け入れようとしていたのですが、橙弥とのことを誤解したため話がスムーズにら行かなくなるのです。

前作から25年ほどたっている話なので、1・3作目の受け様・清夏と橙弥は中年といわれる年齢ですが、イラストがあるわけでもない上、性格も全然変わってないので(特に清夏)今の姿が全然想像できませんでした。これはちょっと残念でした。

それにしても、橙弥のことを天音に聞かれて、十六夜が「大昔にそんな勘違いをした」とか「なんであんなに執着したかわからない」とか、橙弥と伴侶の正親をあんなに酷い目に合わせた元凶のくせに、ほんとに神って勝手なものだとちょっと呆れてしまいました。

滅びゆく神の心の安寧と普通では生活できない体質の青年の生活の安寧が、お互いの欠損を補い合う形での伴侶として、上手くはまった形になりました。
二人で東家を出て行くところまでしか描かれていないので、二人の幸せなこの先をもう少し読みたかったと思いました。
東家に引き取られる直前にできた友人の加藤くん。彼が初めて天音の言うことを信じてくれた貴重な友人でした。彼に礼を言いに行くと言っていたので、彼との再会くらい読みたかったな。

3

消えゆく運命だけど傲慢な水神×能力なし生け贄状態の受け

呪術師 東家シリーズの4作目。
3作目で 横恋慕した水神(妖じゃなくて 神!)と
東家の傍系で能力無しな子が主役でした。
水神がすごく切なくて切なくて、4作の中で最も狂気めいてる切なさでした。

舞台は現代日本。東家(みんな美形♡)という呪術師の家が舞台。

当作の受けは、東家血筋の父親が能力なく、東家のしきたりなどは全く知らず。
父母の血筋から突然変異的に、
妖たちからは超旨そうに見えるように生まれてしまったらしく
8歳で初めて妖に襲われ、中学生になってからは
家の外に出られなくなっています。
(このあたりの記述が 少し血まみれ記述。
 怖がりの私でも全く平気なレベルですが)
それをなんとか救済してもらって東家で守ってもらえることに。

ただ東家には式神ごろごろ、霊力自体に敏感な受けは怖くて怖くて
東家の部屋からも出られない状態。
でも東家から出たら食われて死んじゃうし。
普通じゃないという自覚あり、母親からも気味悪がられ、
生きてても意味ないじゃん と自己否定満点な受け。

そんな中、東家の一人の式神(超弱っちくて霊力があまり感じられない)が
恐くないので交流するようになったのですが、
18歳の誕生日にその式神と鏡の中に引きずり込まれ、
その後は前作まで同様契る契らない話でした。

3作目で横恋慕した水神。
そこから25年たって、すっかり元気になっていましたが
所詮依り代であった川はもうなく、いずれ消えゆく運命とのこと。
その前に 誰かと縁を結んでみたかった との水神の想いが
切なくて悲しくて、でもそれをちゃんと受けが受けとめてくれて
切ないながらも良かったなと思える終わり方でした。
このシリーズ、色々出てきましたが、2作目以降、
甲乙つけがたい面白さでした。

2

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