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「.Bloom」創刊号で知って、作風に即オチでした。
こちらが作者初のBL作品にも関わらず、「“ものがたり”を愛するあなたのための」という触れ込みで創刊されたアンソロのトップを堂々と飾って、「このアンソロ期待大!」と思わせてくださった圧倒的漫画力、惚れ惚れします!
本作の何が良いかって、青年漫画家さんらしい作風でしっかりとBLを描いてくださっているところでしょうか。
決してツウ向けではなく、居場所や他人の体温に飢えている根無し草な男2人が出会って寄り添っていくBLジャンルではむしろ王道とも言えるような物語で、とても読みやすい。
「嫉妬」→「愛着」→「孤独」というアンソロのテーマに沿って描かれたお話はストレートにグッときます。
だからと言ってありきたりかといえば、画力とストーリー力がそうはさせないぞと読ませにかかってくる。
語る絵と語り過ぎない文字の量で、漫画を読んだっていう満足感がとても高かったです。
松庵先生も雪さんも、とにかくキャラがいい!
無骨だけど、そのカッコつけなさが男らしくカッコいい松庵。
想われる側がグッとくる愛情表現をカッコつけずに次々とやってのける。
対して、男を虜にする艶っぽい風貌だけど、女にされることを嫌い男らしさにこだわって生きる雪。
好きだなぁと思ったのは、雪が自分のことを「いい男」だと言ってくれる2人の男に分かりやすく愛着を持っているところ。
最初は兄貴(佐吉)で、それが松庵へと移っていったんだなぁということは語られずとも推し測れる。
人間味のある生きたキャラたちが魅力的です。
本編が始まる前に導入されている「雪を松」は描き下ろしです。
これがまたやられる、グッとくるお話なんです。
「松」は「待つ」と解釈していいはず。
雪の日に首を斬られて倒れていた雪を松庵は拾って自分の元に置くのですが、その後はぶっきらぼうな言葉だけを投げつけて、雪が何にどう決着つけるかをただじっと「待つ」んです。
自分が直接何かをしてやるんではなく、ただ待つ。
ここでしっかりと、松庵が雪を自分と同じ「男」として扱っていることが分かる。
本編で松庵が雪を「いい男」と言うのは決して上辺だけのものじゃないことが分かる。
語られない部分に色んな思いが読み取れる作品だと思います。
“ものがたり”が見えるとでも言えばいいのか。
読み終わって満足せずにまたすぐ読み返してしまうほど。
ガツンとハマりました。
まだまだこの2人のお話を読んでいたいので単巻じゃなくてホント嬉しい!
順調に連載されているので、2巻もそう遠くないスケジュール感で手にできそうかな?
ぜひたくさんの方に読まれますように。
願ってます!
【電子】シーモア版:修正○、カバー下なし、裏表紙なし、シーモア限定特典(1p)付き
これは紙で、インクで、自分の目で見なければ分からないような壮絶さかもしれない。
トクボウは漫画もドラマも楽しませて頂きました。
そんな先生が満を持ししてのBLデビューということで、.Bloom相変わらず攻めてるな、と関心するこのごろ。
とにかく、色んな人に読んでもらいたい。そして、この世界に取り込まれて、逃げられなくなって欲しい。
漫画作品としてのレベルが高すぎて、上手い感想が出てこないほど。
プロの漫画家さんに「漫画がうまい」ということは、声優さんに「声がいい」と言うのと
同じレベルで失礼なのでは……と思いつつも、ひたすらに、ひたむきに、漫画が上手い。
最低限の効果音、最低限のセリフ、静謐な世界観。
そこから一転して、クスリと笑えるようなほのぼのした空気も存在していて、
重くなりすぎない、そのバランス感覚は思わず唸ってしまうレベル。
それは長きに渡って青年誌の第一線で活躍されてきたからこそ出来ることなんでしょうね。
「漫画」のことを知り尽くした人の漫画ほど気持ちいいものはないですね。
技術と感性の話に寄ってしまったのですが、この漫画は間違いなくBLでして、
BLじゃなくていいのに〜という感想とか一切抱かせません。それがまた凄い。
BLで描いてくれてよかったー! 雪さんも松庵先生も兄貴も大好き! と素直に思う。
ボーイズラブだからこそ物語が動いているし、だからといって所謂「お約束」が連発されるわけでもなくて、その匙加減も絶妙。
アーティスティックにいきすぎて、読者と突き放しかねないぐらい完璧な「画」なのに、
日本人が慣れ親しんできた「人情」をメインに描いてくれているからなのか、
ずっと寄り添ってくれているあたたかさもある。
あー、書けば書くほど、「読んで!」としか言えない。自分の無力さ……(笑)。
本当に素晴らしい作品でした。漫画として、BLとして、読めてよかった。
2巻も楽しみにしています。願わくば、末永く続くことを祈って。
大雪の夜、首から血を流して倒れている青年を拾うところからお話はスタートします。
拾ったのは村医者の松庵。最初は悪どい奴かと思いましたよ。
目覚めた青年に「おまえが死人だったらよかった」と言い放ち、骸でさまざまな薬を作れるからお前が死人だったら今頃、銭が得られた、だから骸が欲しい、お前が誰か殺して骸を持ってこいと言う。
そして生きた体にも使い道はある、といって青年を抱き、雪と名付けます。
骸を持ってこい、持ってきたら俺が竃で黒焼きにすると執拗に迫ったのには訳があり、いかにも曰くありげな青年の過去や行く末を案じた結果であり、そして自分のところへ再び戻ってきてほしいという願いがあったから。
この松庵がぶっきらぼうなのだけど、実は心根の優しい男であり村人達からも慕われているというのが読むにつれてわかってきます。
そして雪は艶っぽくて物憂げな美青年だけど、以前はやくざものの殺し屋だったので、なにかあれば躊躇なく刀を抜いて相手を斬ったり刺したりする非情さも持ち合わせている。
松庵とまぐわっている最中にやってきた刺客を討つシーンなんてゾクゾクします。素っ裸で刀を持って仁王立ちし(最中だったので勃ってるし)相手を見据えているんです。
雪は過去とは決別したいと思っているのですが、渡世人の頃の兄貴や仲間が何かとうろついて、時には松庵の命を狙ったりと脅かします。
自分に「雪」という名前を授けてくれて衣食住だけでなく、心を与えてくれた松庵との穏やかな生活を守るために、汚れ仕事は全部自分が背負う覚悟で刀を抜いたり敵に体を差し出したりします。
そして「先生よう 俺を離したら 殺す」という雪。元殺し屋ならではの必殺台詞ですな。
松庵の留守中に昔の仲間がやってきて殺傷沙汰が起きます。全て終わったあと街道にポツンと佇んで松庵の帰りを待つ雪。
そして二人で夕暮れの中帰っていくのですが、先を歩く松庵の手を後ろから握りしめる雪。このページが忘れられません。
登場人物の目のアップが多いのですが、眼差しだけで全てを描き出せる半端ない画力が素晴らしいです。
モノローグは必要最低限で表情や目の動きで登場人物の気持ちを読者にわからせてくれる、これぞ漫画だなぁ、漫画家って凄いなぁと唸りました。
ちなみに雪がやくざになる前は陰間であり、そこらへんの過去を匂わせた状態で終わっています。二巻が楽しみです。
ずっとずっと単行本化を待っていた作品。やっと紙媒体で読める喜び!
あらすじは割愛させていただくとして、とにかく強烈とも言える画力の前にひれ伏してしまう。
必要最低限のトーン表現にとどまり、あとは全てスミで表現された世界が
「時代物」としてあまりにもマッチしていて、眺めているだけでも惚れ惚れ。
いや、しかし、とにかく、本当に松庵先生と雪さんが超かわいい。
「血みどろほのぼの」なんてパンチの効いたワードで宣伝されているにも関わらず、
(確かに人斬りの話しなので人はバンバン斬られるんだけど、グロくない…後腐れないと言ったらいいのか)
主役の二人が普通に恋愛していて、普通に愛し合っている。
最初こそ悪いヤツ?と思わせるような態度の松庵先生と、クールすぎて何を考えているか分からない雪さんだったけど、
それが時を経るごとにどんどんと愛を深めあっていって、どんどんラブラブになっていく。
きっと表紙を見て「暗いかも」「残酷かも」と思う方もいるかもしれないけれど、
予想をいい方向に裏切りまくる作品なので、騙されたと思って。ぜひ!
もう今年のNo.1BL決まっちゃったんじゃないの……というぐらい、自分の中で大きな作品です。
「1」とついていることにどれだけ心救われたか。
10巻でも100巻でも続いてほしい。BLに新しい神話を作って欲しい……。
そう思っても仕方ないよね、と思えるぐらい素晴らしい作品でした。
文句なし、間違いなしの神評価で!
高橋さんと言えば青年誌の大御所さんのイメージですが、その高橋さんがBLを描いてくださるとは…!ちるちるさんでその一報を拝見したとき、マジで変な声出た。嬉しすぎて。
という事でレビューを。ネタバレ含んでいます。
主人公はとある村で医者をしている松庵。
大雪の日に大けがをして倒れている青年を拾い、家に連れてきて治療します。
目を覚ましたその青年に、
死人だったらよかったのに
引き取り手のない骸はいい銭になる
それでも生きている身体にも使い道はある
と言い放ち、そのままその青年を抱く松庵先生。
って、おおい!
松庵先生、悪い奴なの…?
と思いつつ読み進めたのですが。
松庵先生の言動、一つ一つに意味がある。
首を切られて大けがをしていた青年(松庵先生は「雪」と名付けますが)は、きっと堅気ではないのだろう。
切った相手を憎んでいて、殺してしまうかもしれない。
そうしたら、その相手の死体を片付けてやろう。
という事だった模様。
一事が万事その調子で、あけすけではなく、雪のために行動する松庵先生が素敵なんです。物言いはそっけない松庵先生ですが、彼は雪を含めた他者に対する優しさや思いやりが半端ない。そういう松庵先生の内面が、二人で一緒に生活していくうちに少しずつ見えてくる。
一方、自分の名前さえ松庵先生に明かすことのない雪ですが、彼もまた蓮っ葉な態度を取りつつも優しい青年。
雪の壮絶な過去。
今なお彼の生活を脅かす過去の負の遺産。
その中で、彼が譲れなかった「正義」。
松庵先生も、雪も、どちらも非常に男前でカッコいいです。
雪の、気怠い色気と、それに相反するような男気。そして強さ。めちゃんこツボな子でした。
ほんの気まぐれで雪を助けた松庵先生と、一時の事と思って松庵先生と暮らしていたはずが、いつの間にか松庵先生に心を預けてしまった雪。
不器用な二人が、少しずつ距離を縮めて聞くさまが、非常に切なく、そして読みごたえがある。
かつてヤクザだった、という過去が雪にあり、それゆえに人を殺めるとかそういう表現も多々出てきます。ヤクザの前は色子だったという過去もある。ゆえに、苦手な方は注意が必要な場面はそれなりにあります。
そういった雪の過去の話とも絡み合い、全体的な雰囲気としてはシリアスに分類されるかと。
けれど、所々で入るギャグが笑いを誘い、とてもバランスの良いお話でした。
特に、雪が自分の身体と引き換えに金貸しと対峙するシーン。
え、そっち?
と、雪ちゃんと一緒に突っ込みつつ爆笑してしまった。
絵柄が綺麗かと問われると好みが分かれそうではありますが、とにかく画力は半端ない。
ちょっとしたしぐさや表情で、彼らが何を思いどう行動するのか、というのが端的に読み取れる。さすが、の一言です。
雪ちゃんが全裸で戦うシーンはカッコよかったし、松庵先生の雪のすべてを受け入れる男気にもほれぼれしたし、雪の「兄貴」もカッコよかったし。
表紙がこれまた素敵。
紙質も良いし、二人の表情、色遣いと素敵すぎました。
まだまだ続きがあるようで嬉しい限り。
文句なく、神評価です。