イラスト入り
傍にいられること以上に、もう何も望まない――。
木原先生の作品が好きすぎて読み惜しみしているのですが、面白すぎてシリーズ一気読みしてしまいました。
SLEEPシリーズは高久の変わりように唖然としてしまいましたね。記憶を取り戻した時記憶喪失中の記憶を失くしてしまい、元の粗暴な性格に戻ってしまう展開はさすがです。
ハサミのあの描写には本当に背筋がゾッとしました。
記憶喪失で性格が180度変わって爽やかで大型犬のような性格も、暴力で感情を伝えてくる粗暴な性格でも藤島は高久を愛したのは高久という人間が好きなのか、昔孤独を救ってくれた人物に執着しているだけなのか、裏切った罪悪感からなのか…共感できない心情に圧倒されてしまいました。
サラッとあのヤバい母親が亡くなってることが語られてビックリしました。絶縁されてたけど死に際には呼び出されたりしたんでしょうか?そこら辺もちょっと気になります。
そしてヤバいと思っていた透よりもヤバい秋沢。自分のことしか考えられないこの手の男は何気に現実でも多い気がします。
人の気持ちが分からない精神疾患や発達障害なのかなとも思いましたが、役に入ると分かるというのはどうなるんだろう。
一度役のつもりで楠田になりきってみたらあんな事件は起こらなかったのかな。
あんなことがあったのに、秋沢が少しずつ楠田を尊重し出したのと比例して楠田も心を開いていく様が何とも言えない気持ちになりました。
秋沢が少しまともになれたのは久萬の存在があったからなんでしょうね。あんな秋沢相手に根気強く説明し、納得まではいかなくても譲歩させることができたのはあの性格だからかと納得。
間接キスの場面、いやもう本当にすごいなと。怖いけどしたいという楠田の気持ちがめちゃくちゃ伝わってきました。
また付き合うことになったことが良かったと心から思えない秋沢のヤバさを作り上げるのは流石木原先生だなと。
アカデミー賞への嫌味は痛快でした。
「in TOKYO」で感じた不穏が「in NEWYORK」で結実し、これ以上ないという地獄絵図を見て、暗澹たる気持ちでこの「THE FINAL」を手にしました。
本書は同人誌や無配ペーパー、特典小冊子等に掲載された短編、SSをまとめた作品集で、「in NEWYORK」のあと、二人がどのように生きて、関係を再構築していったのかが分かる内容になっています。
関係修復ということではなく、再構築であると思いました。
「in NEWYORK」で再会したあとも、諦めきれない秋沢は頻繁にニューヨークへ行き、楠田は恐怖に戦きながらも、確実に変わって行っている彼に目を瞠る。
たくさんのエピソード、時も流れ、ゆっくりじっくりと二人の関係が描かれます。
見方を変えれば秋沢の執着はすさまじく、専門医に掛からず自ら荒療治に踏み切る(踏み切らざるを得ない)楠田の無謀さにもどうなんだろうと考えさせられるのですが、前2冊とはまるで異なる秋沢の成長?に私もまるめこまれ、気付けば秋沢を応援している自分がいました。
前2冊で大暴れしてたちの悪い子供みたいだった秋沢が嘘のように、我慢したり約束を守ったり許容したり、いわゆる普通の大人のような態度を示したりすることで、健気にも見えてくるのがずるいなと。元々は楠田も彼を好きだったわけだし、これは絆されるなと思ったりもしました。
「in TOKYO」のラストは突然のほのぼの感で、なしくずしに甘い雰囲気に騙されているような気がしないでもなかったのですが、本書はじっくりじっくり描いているのと前述の絆されにより、甘々に耽溺できました。
ジェシカが秋沢に率直にぽんぽん物を言うのが小気味よくて、ビアンという設定もよかったです。
お店をハロウィン仕様にしたエピソードが一番気に入っています。
今更ながらCOLDシリーズにハマり、やっとラストまで辿り着きました。私が読んできた木原先生の作品の中では糖度No.1だったので、ずっとテンション上がりっぱなしでした。
秋沢と楠田はFall of endingからの恋愛模様がラブラブで、前作までの痛い・辛い・苦しいを吹っ飛ばす勢いでした。何より、楠田が秋沢に「何が嫌で何が許容範囲なのか」はっきり示し、秋沢が少しずつ成長していく過程がすごく綺麗。恋を知らない秋沢が性欲に任せて自分勝手に他人を傷つけ、楠田は仕事に対する責任感から逃げるタイミングを逸して・・と、散々だった前作から考えて、二人とも大人になったなと思いました。幸せ過ぎて泣けたのは久しぶりで、優しくて胸がいっぱいになる話が続きます。同時に、二人がどうしてこんなに惹かれ合うのかも読み解けます。楠田は自身を「凡人」と称しているものの、その滲み出る善良さが才能のある孤独な人を惹き付けやすい。それは前作の透を見ても明らかですが、幼い頃から派手な芸能界で生きている秋沢も同じで、楠田の温かさや人柄の良さは本人が思う以上の価値がある、まさしく癒やし系なんだと思います。一方で、秋沢の圧倒的な才能と芸能人オーラは楠田にとって眩しく、生きる糧になっている。どうしても秋沢の危険性に注目しがちですが、個人的には楠田も相当ヤバいな、と(笑)。あんなにボロボロにされてなお、好きだった頃の気持ちを思い出せるって凄い。執着度は似たり寄ったりの、お似合いカップルだと思いました。
ちなみに藤島と透もラブラブです。
楠田は記憶喪失後の透が陽、記憶が戻った今の透が陰だと表現していて、「それだー!」と思いました。ただ、どっちの透も基本的には寂しがり屋で、だからこそ藤島は両方愛せるのだと思います。秋沢に比べて愛情表現が少ないせいか、今作では透の不器用さがすごく可愛く感じました。2カップルのバーベキューも可愛くて、ジェシカが羨ましい(笑)。一軒家+犬+近所付き合いはBLにおいて幸せの象徴だと思いますし、色んなことがハッピーエンドを象徴していて号泣しました。
COLDシリーズは糖度高めが好きな方にも勧められる、木原先生の入門編だと思います。しんどさが幸せでカバーできるくらいラストが充実してるので、気になっている方はまとめて買って最後まで読み切ってほしいです。
読んで後悔は無い。読んで良かったと思っています。
今まで同人誌等で書かれていたCOLDシリーズの話を一冊に纏めて出版していただいたのは本当に有難く嬉しいです。ありがとうございます。
全てが納まるところに納まりました・・・・・・これで良かったんですよね?
う~ん・・・四人とも愛する人と生きていく決意をした、それは尊重したいし、そう決めたなら応援したい、良かったと思いたい・・・けれど見守ってきた一読者としては思うところもあり・・・
特に、秋沢と楠田の二人にはもう、ジェシカ!もっと言ってやって!!という気持ちでした。
楠田がとてもいい人で、周りの人間は楠田に幸せになってもらいたいから手を差し伸べてくれるのであって、秋沢!お前は!!とモヤモヤしております。秋沢も頑張っているのは理解できるのですが・・・・・・う~ん、私には秋沢の魅力が今一つ理解出来ないからなのか。
物語が終わった後もキャラクターたちの人生は続いていくんだな、と思いました。
FINALお疲れ様でした。
山も谷もこの先あるだろうけど、互いに手を繋いで小さな幸せを積み重ねていって欲しいです。
読み応えがありました。こういう番外の短編を一冊にまとめた本にはぶつ切れ感を感じてしまいがちなんですが、それぞれのお話にボリュームがあって、またお話とお話の間にあまり時間経過がないことから、違和感なくするすると読むことができました。
『美しいこと』シリーズでいうところの小冊子『愛すること』のように、もう『COLD THE FINAL』にひどく傷つく登場人物は出てきません。超問題児の攻め組、透と秋沢は落ち着いて、受け組の藤島と正彦も幸せそうです。
ここからネタバレ有り
『COLD THE FINAL』のストーリーの主軸は、正彦が秋沢に植え付けられたトラウマに少しずつ時間をかけて打ち勝っていく姿です。私も不安障害を患っていたことがあるんですが、ようやく正彦と秋沢が久しぶりにつながることができたシーンで、正彦が「こんなもんか」と言うようなセリフがあって。これ不安障害の人間にはあるあるな気がしました。頭や体に刻みこまれた恐怖感を乗り越えるのは一筋縄ではいかないけれど、現実にその恐怖の対象に向き合ってみると、だいたい現実の方があっけなかったりして。
トラウマを持っている人間の心情をどうしてこんなに理解しているんだろう?木原先生すごいな〜と個人的には思いました(私はそう感じた、というだけで、PTSDの方がみんなそう考えるというわけでは当然ないです)。
他の方の感想にもありましたが、木原作品の登場人物は身を切るような挫折や失敗を経験した人が多いです。今回だと秋沢のマネージャーの久萬さんもそうだし、CRUXで良い仕事をしている藤島もそう。挫折を経験している最中は絶望感しか見えないことが多いけれど、そのフェーズを通り越したら想像もしていなかった分野で第二の人生やキャリアが始まることもある。そのなかに新しい幸せを見つけられることもある、というポジティブなメッセージを感じます。案外、幸せっていうのは想定外な方向で見つかるのかもしれないなぁとか。
COLDシリーズが好きな人は、こんなに長く作品を楽しめて、こんなご褒美のようなファイナルも出版されて、とても幸せだと思います。本当にご褒美盛りだくさんの一冊でした。
