特典ペーパー付
親に殺されるはずだった自分は、生まれたときに一生分の幸運を使い果たしたのだ――
ろくでもない男ばかりに引っかかるバーテンダーのすみれは、幸せを諦めて生きています。けれど遠い親戚の大学生佑真と再会し懐いてくる彼と過ごすうち、佑真との時間に安らぎを覚えていきます。その一方、佑真はすみれへの想いを強くしていき…
すみれさんが生い立ち、歩んできた道のりを含めてあまりに不幸で可哀想で泣けちゃうレベルです。
幸せを諦めて生きているのには理由があるのですが、それにしたってそれで幸せを諦めないで…という気持になってしまいます。
親戚でもある佑真は年下でとても眩しい存在でその出会いがすみれさんを変えていくのですが、そこもひと筋縄ではいかず切ない展開が続きます。
きっと、幸せな結末、すごく素敵なタイトルだな〜と思って読み始めたのですがそこにたどり着くまでがなかなかしんどい。
でも、切なくて美しくて同仕様もなく惹きつけられました。
麻生先生の少し前の作品になりますが、先生らしい素敵な作品です。
先生の描かれる生々しいエッチシーンも後半あり、よかったです。
ずっと2人が幸せでありますように。先生の作品を読むと心から強く思います!
切なかったりちょっと痛かったりという作品のイメージがある作家さんで、若干敬遠していたところがあるのですが、タイトルに幸せとありましたので読んでみました。
結果、ストーリーというより絵が苦手だった。。(ごめんなさい)
攻めの学生の子はほくろがあるので見分けられますが、カップルの顔がかなり似ていると思いました。
お話の方は、親にネグレクトされ何も感じなくなったゲイの青年が、遠い親戚の子(ワンコ)に一途に愛されて救われるというものでした。
あまりに主人公が不幸な境遇で痛かったなあ。
世話焼きのバーのママ(主人公の勤め先)がお話を動かすキーマンになっていて、そこは面白く読ませて頂きました。
"マイナスな感情をマイナスのまま 感じる、伝える、伝えられる…そんな2人が描けたら"
の先生のお言葉通り描かれていたと思います。
すみれの生い立ちが過酷で、すみれが自分を守るために"歪んだポジティブ"になっていたのがよくわかる。
佑真が悩んでいて、すみれに救われたのもわかる。
そんな2人が自分を認めて相手を受け入れるまでの過程が丁寧に描かれていて。
正直長い〜しんどい〜となりましたが、ずっとわかるわかるそうやんなぁと思いながら読みました。
途中、少しずつ、でも確実に変わっていくところもよかったです。
が、それが何段階も続いて、長かったけれど、最後の最後で向き合えてハピエンになってよかったです。
前半に出てきたセリフが後半で回収されたり、構成もいつもながらお見事だな〜と思いました。
あとがきに書かれていたように、その都度のリアルタイムな描き方、ゆえに難しく、右往左往されたとのこと、読んでいてわかる気がしました。
言葉を飲みこむ遠い親戚の大学生×幸せを諦めた幸薄バーテンダー のお話。
『ろくでもない男ばかりに引っかかるバーテンダーのすみれは、幸せを諦めている。
親とも疎遠で、寂しさにも慣れているはずだった。』
……この説明文だけで手に取る価値を見いだせてしまうくらい、エモい。安定の麻生ミツ晃ワールド。
引き込まれるような文章や展開をつくるのが上手い先生だと思います。
人の心に届くセリフを紡いでいくのが本当に上手い。絵も構成も上手い。もう上手いが過ぎてどうしようもないですね。推すしかないと思います。
この本は『夜の落下』と二冊同時発売だったのですが、表紙カバー絵のカラー対比も個人的には好きでした。
対比でアイボリー調の明るい色調を纏っている本作ですが、先生曰く『 ❝歪んだポジティブ❞ が裏テーマだった』との事。
……もう本当に推すしかないです。性癖が過ぎます。
第三者として、すみれの働くバーのママさんの言葉は全て読者代表といいますか、空いた隙間にぴったりとはまってくれる言葉が溢れて涙が出てきます。
この世の中、片思いで終わる恋がほとんどなのに、自分の好きな人に愛を返してもらえるなんて本当に奇跡。チャンスを逃すまいと自分の意思で行動して、言葉に乗せて思いの丈を吐き出すすみれにあぁ、よかったと心の中から思えました。
佑真の真っ直ぐで、大事にしたいと思う気持ちがすみれに通じてよかった。心からふたりに幸せになってほしいと思える作品でした。