逃げるか堕ちるかふたつにひとつーーー。

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作スピンアウト 下

巽将貴
会社員,社長子息のお目付役
三木蓉介
ネイリスト

同時収録作品人生はドラマチック

高見沢
甘味処の客
小寺純平
甘味処でバイトする平凡な青年

その他の収録作品

  • あとがき(描き下ろし)

あらすじ

会社員の巽は社長子息の涼馬のお目付役としてストレスの多い日々を送っている。穏やかな表の顔の一方で、巽は美しく妖艶な男・三木とのSMプレイを楽しんでいたが、謎の多い三木との逢瀬を重ねるうち、三木への執着を深めていく。そして、巽に執着する涼馬は、ホテルへ向かう巽をストーカーし、三木との関係を知ってしまい!?

作品情報

作品名
スピンアウト 下
著者
国枝彩香 
媒体
漫画(コミック)
出版社
竹書房
レーベル
バンブーコミックス 麗人セレクション
シリーズ
スピンアウト
発売日
ISBN
9784801953918
4

(88)

(37)

萌々

(29)

(16)

中立

(3)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
13
得点
352
評価数
88
平均
4 / 5
神率
42%

レビュー投稿数13

誰が一番スピンアウトしたのか

上巻はネタバレなしで致しましたが、下巻はネタバレして書きます。下巻はスピンアウトの他、「人生はドラマチック」が収録されていまして、こちらは真逆のコメディーです。シリアスの後のコメディーは何となくほっと息がつける感じがしました、と一言添えるだけにしておきます。
 さて、「スピンアウト」下巻、♯5話からスタートです。もう初めから、巽の心は三木に傾いています。
涼馬ともいつの間にかセックスするようになっていて、以前とはっきり違うのは涼馬に三木の影を追い求めている逆の形になっていること。
そこに再び三木が現れますが何と、右手の爪が全部剥されています。
やったのは三木の姉の旦那。
巽と三木はその旦那を殺そうと計画します・・・
・・・結果は、二人は犯罪を犯しはしませんでした。その準備にホームセンターに来たところで、涼馬が三木を刺殺してしまいます。
 私、このホームセンターで三木が怖気づく場面が強く印象に残ったのですよね。その前のキスもよかったけど、「所詮、僕たち素人ですし、人殺しなんて無理」と、自分から巽に持ちかけておいて、ころっと変わるところが好き。情けなくて、人間らしい。
 この作品で、一番スピンアウトしてしまったのは誰なんでしょうね。
三木は実は踏み外してはいないのかな、と思います。巽に会った時点よりとうの昔に彼の未来は歪められてしまっていた。だからこそ、巽の復讐の意識は実際に三木を殺した涼馬ではなく、姉の旦那に向けられているのでしょう。
巽は、三木の事件以後は会社を辞めて、秘書からタクシー運転手となります。三木に会って、自分に眠る嗜虐性に気付いたときからスピンアウトしていったとは思いますが、巽の変貌はむしろここから先が本番でしょう。死んだ三木への思いを抱いて復讐するか、三木の姉に生まれた子供に面影を求めるのか。いずれにしても仄暗い感じに沈んでいきそうです。
そして涼馬、一番スピンアウトしてしまったのは彼のように思います。
おっとりした社長令息が、巽への執着の果てに三木を殺して殺人犯になってしまったのですから。
「僕はやっぱり、失敗しちゃったんだね」の言葉が重い。
 下巻は巽の底知れない逞しさと、三木の危うい儚さが切なかったです。

10

軽い気持ちで読んではいけません、ネタバレも読んではいけません

ふう…。
読み終わってからしばらく、頭の中がからっぽなのに、胸の中だけがうるさい状態が続きました。

まさかそんな…。

どこまでをネタバレと感じるかは人それぞれなので、一応ネタバレチェックは入れましたが、ネタバレしない方向でいきます。
もしかしたらレビュータイトルや、「まさかそんな…」の一言でも、「ネタバレしないで!」と感じる方もいらっしゃいますよね、きっと。

ネタバレしたら台無しなので、読んでくださいとしか言えません。
ただ読むと決めたなら、そこからは自己責任でお願いします。
読み終わったあとに、本当にぼーっとしたまま、なかなか戻ってこられません。

人の情や業というものは、本当に恐ろしいですね。
作り笑顔すら自然に見える人もいるし、その内側で何を考えているかなんて、周囲の人間には知る由もありません。
そういうどろどろをすべて見せられたような気持ちで、どう処理していいか悩みます。
ただ、嫌な気持ちにはならなかったのは、作者さんの見せ方のおかげだと思いました。
ミスリードを巧みに使って、最後までそれをうまく利用してくれたおかげで沈み込むことなく読み終えることができたのかな。
胸にぽっかり穴が空いたような気持ちではありますが、どこか晴れ晴れとした気持ちもあって、何だか言葉で言い表せない複雑な気持ちです。

ネタバレしない、と言いつつ、ネタバレになってしまっているかもしれませんが、ぜひとも読んでほしい。

同時収録もありますが、こちらでかなり救われます。
ポップでコミカルな短編、しかも勘違いスパダリと不運な僕ちゃんという、可愛らしい話なので、重くなり過ぎた気持ちが軽くなります。大丈夫です。

さらに言うなら、あとがきも結構ラフな感じなので、相当救われます。

本当は本編についていーーーーーーーーっぱい言いたいことがあるのですが、もし未読の方がここを見たときに、ネタバレを見てしまうと、わたしが感じたような気持ちにはなれないと思うので、この辺で。

未読の方、しつこいようですが、ぜひと読んでみてください。

3

圧倒的な虚無感

上巻と同時発売の下巻。

【※結末についてネタバレ気味ですので、未読の方は閲覧にご注意下さい。】

あらすじ:
三木からの連絡が途絶え、涼馬と関係を持つようになる巽。
汚してはいけない相手の代わりに三木と関係していた筈なのに、今や三木の代わりに涼馬を抱いている。
ある日再び巽の前に現れた三木は、右手の爪を全て剥がされていた。
剥いだのは姉の夫だと言う三木は、
「あの男 殺してくれません?」
と巽の耳元で囁き……

上巻で蒔かれた種が実(破滅)として結実する下巻。
予想できる結末といえばそうですが、あまりにあっけない最後には大変な喪失感があり、その直前の束の間の穏やかな時間がいつまでも余韻として残ります。

果たして最初に道を踏み外したのは誰なのか。
涼馬に想いを寄せながらも三木に嵌まっていった巽か。
巽に殺人を唆した一方で、何もかも捨てて彼と一緒に逃げることも望んだ三木か。
二人に干渉しようとした涼馬か。
三人がそれぞれに足を引っ張り合い、取り返しのつかない結末へと向かうラスト2話の展開はとても哀しいものです。
ハッピーエンドなのか、未来に更なる悲劇が待っているのか、如何様にも読めるラストに何とも言えない感慨と虚無感を感じました。

あとがきにあるように、あの設定は結局何だったの?とツッコミたくなる箇所もあります。
しかし謎が謎のまま、永久に知ることの出来ない状態で残ってしまったからこそ、ラストの虚無感がより強まっているようにも思え、個人的にはそこまでモヤモヤは感じませんでした。

ともすれば陳腐になりそうな物語を、絵の迫力と展開力で描ききった良サスペンスかと思います。BLでゾクゾクしたい方は是非に。

15

絶望的な展開

上巻と続き、こちらもレビューします。ちょっと長くなってしまいました。

読んだ後は本当にショック受けて、頭まわりませんでした笑
今までの国枝先生の作品の中で一番救いようがない、絶望的なラストだったのではないかと思います。

三木は幸せだったのかな。
少しでも巽と一緒にいて幸せだったのであれば、救いにはなるのですが・・・それを確認したくても叶いません。
他の方もおっしゃっているとおり、確かに行き当たりばったり感、とっちらかっている感は多々あります。
しかし、主な登場人物が
・何を言い出すのか、何を考えているのかわからない三木
・意外?にもダークサイドに堕ちてしまった涼馬
・普通と狂気の境目で不安定な巽
なので、こんな暴れ馬3匹をうまくコントロールして収まりのいいラストに導けるのか、といったらかなり難しそうですし想像が出来ない。
ですし、このとっちらかった感が悲壮感、絶望感をより際立たせていてよかったのではないかと思います。
国枝先生が好きなので、色眼鏡入っているかもしれませんが。

そして最後の最後に入っているショートストーリー。
スピンアウトとは180度真逆のコメディーです。
これのせいで本編スピンアウトの虚無感がより浮き彫りになっているような気もするし、ちょっと救いがあるような気もするし。
でもこれを読んで、「あ、明るい方の国枝先生だ!」とちょっと嬉しくなりました。
国枝先生の描くコメディーは短くてもすごくぱあっと明るくなりますし、幸せになれます。このテンションの国枝先生の方が本当は好きです。

色々言いましたが、好きな人は多分好きだと思いますし
非日常を味わいたい、痛い気分になりたい、国枝先生が大好き!!な方にはいいかと思います。

8

賛否両論。読む人を選ぶ作品だと思う。

こんなに評価に迷った作品は初めてです。

攻めの性格、ビジュアル。
「しゅみじゃない」
痛そう!!ばかりでちっとも気持ち良さそうじゃないセックス描写。まったくもって、
「しゅみじゃない」

なのに最終的に評価高めにつけました。
その基準って、私にとっては「何かが心に残ったか。何かが心に響いたか」っていうことなんだろうな。
今回評価づけで悩み、そんなことを深く考えてみたりみなかったり。

あらすじは割愛しますが、下巻ではミステリアスで何を考えているかわからない三木の素性が少しずつ明らかになります。
上巻では三木を気味悪がっている部分も多かった巽も、徐々に彼に惹かれている様子が伺えます。

終盤、暴力的な三木の義兄への殺人計画などを囁きながらも、ホームセンターで家具を見てははしゃぎ、巽からの突然のキスに浮かれる三木がとても可愛くて。
あー、このまま2人、本当に南の島に逃避行して幸せになってくれたらいいのに…
そう思った矢先のあの出来事。
衝撃だった。やるせなかった。
その時点で私はすごく三木のことを好きになっていたし、ミステリアスな彼もいいけど、やはり笑顔の彼の方が魅力的で、たくさん見ていたかったので。

結局、巽の涼馬への気持ちは何だったんだろう。
大切に触れずにいたはずの彼を、何故あんな形で抱いたのか?
涼馬に対する巽の罪は重いよ。

トラジックエンドはBLでは意識的に避けていたけど、今回は知らずに出会ってしまった感じですね。
やはり精神的に結構ダメージがあるので、結末を知っていたら手に取らなかったかも、とも思います。
肌寒い長雨の続くこんな日だからこそ、気分にマッチして入り込めた世界かも知れません。

3

この作品が収納されている本棚

ちるちる評価ランキング(コミック)一覧を見る>>

PAGE TOP