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表題作プライスレス・ライフ~幸せは貧乏神とやってくる~

片瀬一(イチ)、ボクシングバカのプロボクサー 
ビン、屋根裏に住んでいた貧乏神 

その他の収録作品

  • 嫌われ神様に春来たる
  • あとがき

あらすじ

ぼろアパートに越してきたボクサーの片瀬は、天井裏に不審な気配を感じる。覗いてみると、そこには汚い着物をまとった埃まみれの男が。そして自分は貧乏神と言い張るその男と何故か同居することに…!?

作品情報

作品名
プライスレス・ライフ~幸せは貧乏神とやってくる~
著者
雨月夜道 
イラスト
テクノサマタ 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
発売日
ISBN
9784592877035
4.1

(18)

(4)

萌々

(12)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
74
評価数
18
平均
4.1 / 5
神率
22.2%

レビュー投稿数5

お金より大事なモノ

10年発売の初単行本『恋愛小説は書けない』が滅茶面白くてお気に入りだったのですが、一体いつ新刊が出るんだろう?と待ちに待った1冊です!
と思いきや、このお話は新人賞をとった作品に加筆修正と書下ろしを加えた1冊なんだそうです。
それにしても、このお話も見事ツボりましたよ♪
ボクシングバカのボクサーとトラウマ持ちの貧乏神の組み合わせ。
最近だと永井三郎さんの貧福が萌えた『珍神』、秀良子さんの短編に貧乏神が死神に転職するとても切ない話、とか貧乏神が登場する話がありましたが、
このお話も、とても純粋でユニークだけどまっすぐに心に響くとてもよい話だったのですよ。
テクノサマタさんのイラストもとても雰囲気がよくかわいらしくて、とてもお気に入りの一冊に仲間入りしました。

不運ばかりが訪れる、そういって誰もが逃げて行くようなオンボロアパートに、移転したジムに一番近いからと越して来たのはボクサーの片瀬一。
屋根裏から聞こえるかすかな物音に覗いてみると、そこには灰色の物体の後ろ姿。
それが貧乏神と一の出会いでした。
見つかったからには出て行こうとしていた貧乏神ですが、ふと見ると家の中が大変汚れていて、それはあまりに汚い自分が汚したものだと気がつき、布団を貸してくれてご飯まで食べさせてくれたからと、義理がたく思いつい掃除をしてしまうと一が帰宅してくる。
引きとめられて、名前がないと不便だからと「ビン」と名前を付けられてビンは一の部屋で生活することになります。
ボクシングが好きでそれ以外に何も欲のない一の、ボクサーになった理由と、
ビンがなにかにつけてこだわる”あの人”のこと。
人は一体何を求めて必要としているのか?何が大事なんだろう?
それぞれがそれぞれを思いやり、考えながら気持ちが寄り添っていく様が描かれていきます。

地位や金や名誉じゃないよ、というのは貧乏神が登場していることからもうかがえることなのですが、何よりキャラクターが魅力的です。
ビンがとても意地っ張りのツンデレです。
ついつい乗せられちゃうっていう、かわいらしい雰囲気のツンデレなのですよ。
その底に一への感謝がある。
貧乏神だからって卑屈な部分もあるんだけど、一がとてもポジティブなのでついついつられて裏返されちゃうんです。
一のボクシングの試合もこっそり見に行ったのに、言ってないっていいながら、見に行った人しか知りえない状況を説明して、あわてて弁明してみたり、とか
典型的なわかりやすいツンデレがぴったりで。
そしてね、健気なんです。
彼がこだわる”あの人”のことも、彼の健気な気持ちだったのです。
一は、ボクシングバカでボクシングが大事で、これがあれば何も要らない、だからこれを失いたくない。
この一の気持ちがわかったビンだからこその少し事件があったりするのですが、これが互いを思いあう気持ちの前進のきっかけになるんですよね。
一の優しさ、ビンの健気、綺麗事だろ?と言ってしまうと身もふたもないですが、ファンタジーとして、理想の姿だと思うのです。
貧乏神だろうが福の神だろうが、一にとってはビンはビン。
これですよ!これ!!

書下ろし【嫌われ神に春来たる】で、ビンがこだわっていた”あの人”が一のスポンサーについてビンと再会を果たしたことで、誤解がとけるというお話になっています。
スレ違いって切ないね、と思うと同時に、あの人は色々持っていてそれを守る為だったけど、一にはボクシング意外なにもない、そして今はビンとボクシングと。
モノじゃない、心だよね。

そんな、切なさも楽しさも悲しみも喜びも、人間に大事な心がたくさんつまったあったかいお話でした。
さて、貧乏神のビンちゃんは果たして・・・←これは伏せておきます♪

6

可愛い貧乏神はいかがですか?

雨月先生の2作品め、とても楽しみにしていて、かなり自分の中のハードルが上がっていたはずなのに、只今二マニマしています。
前作の言葉選びにツボった様に、本作も素晴らしい作品でしたv

今回のキャラも相当面白くて、貧乏神とプロボクサーのストイック青年のファンタジーなのですが、加えて、社会風刺したの?(笑)とリアルモノにも思えました。
雨月先生が人物に語らせる言葉に「あっ!Σ(゜o゜)」と考えさせられこと、しばしば。

人間社会って否応なく格差があって、それに反発しながら又は諦めて、それなりに生活していますが、なんと貧乏神のビンちゃんの神社会でも同じらしい。
ビンちゃんも、福の神の幸せな職に憧れる半面「こうあるべき貧乏神」を全うしなきゃという気持ちと、でも憑いた同居人に情けを掛けてしまう葛藤がある。
人間のイチもそうで、苛めが発端の暴力事件は、イチが被害者なのに加害者という胸くそ悪い現実を甘んじて受け入れている。
2人とも可哀そうなんです。
この2人が出逢って、お互いを頼りにして好きになって・・・思い合う程の可愛いすれ違いに、とても優しくてとても愛しい気持ちになりますv
雨月先生、好いですね~♪

だけど「萌え×2」にしたのは、表題作は1冊の2/3、その後編『嫌われ神様に春来たる』で1/3という短さだから仕方ないけど、テクノ先生のイラストの相乗効果もあって、可愛さが目立ってサラ―と読めてしまったから。
悲しい部分ももっと掘り下げて欲しかったなー。

可愛くなって、腹立てて、応援している自分。
二人を知れば知るほど(読めば読むほど)どんどん好きになること請け合いです♪

4

貧乏神が健気ツンデレちゃん

貧乏神が主役のファンタジー、福の神になりたいと願っていた貧乏神が神様なのに
どこか意固地でトラウマ持ち、更に人間を怖いと思ってる節もある。
神様にしてはやけに可愛いのが萌える貧乏神のビンちゃん、座敷童の雰囲気もあるかもと
微笑ましい感じもするのですが、何故皆に嫌われる貧乏神なのかとちょっとグレ気味で
相手を貧乏にする事に罪悪感もあって相手の富を糧にしてるのに優しいからいつも飢えてる。
そんなビンちゃんと、ビンちゃんがいなくても初めから大らか貧乏でボクシング命の
イチがお金で買えない幸せを教えてくれるストーリー。

単なる貧乏神が出てくる人外ものファンタジーと侮ることなかれ、この1冊に優しさや労り
お金では得難いものがあるって意外に胸にじんわり染み込むような内容で凄くいい。
人間の富を糧にしてる貧乏神だから富を食べれば食べられた相手は当然貧乏になる。
けれど、本当にお金が無いだけでその人間はダメになったのかなんて思わせる。

攻め様も過去に辛い目にあっているけれど、ボクシングに出会った事で自分自身が嫌悪していた力で誰かが喜んでくれると思え、ボクシングがあればお金なんかなくても
全然気にしないし、貧乏神が恐れを抱いてしまう程慎ましすぎる生活なのに本人は
いたって呑気で楽天的。
ビンちゃんを貧乏神だなんて信じていないイチなのですが、ビンちゃんも文句を云いながら
次第にイチとの暮らしに安らぎを覚え、同居生活が続く。

そんな時にイチの悲惨な過去の原因になった相手が現れ再びイチを苦しめようとする。
心優しきビンちゃんは憤り、過去トラウマもありイチを陥れる相手に報復を決意。
報復は出来たが、二人の間には微妙な擦れ違いが生まれてしまう。

貧乏神様と能天気貧乏ボクシング男との種族を越えたファンタジーラブ。
もちろんハッピーな展開ですが、お金で買えない幸せを掴んだ二人のピュアなお話は
とても素敵で久々に面白いと感じる1冊でした。

4

こんな貧乏神なら一家に一神欲しい

『恋愛小説は書けない』が非常に面白かった雨月先生の二作目。

あらすじを見たときは、貧乏神受けって未知数だったのですが、初っ端から飛ばしてて安心感抜群でしたw 攻め受けともに登場時からすごくキャラが立っていて、ちょっとした脇キャラの台詞の端々まで面白かったです♪
前回ほど性格的にぶっ飛んだキャラはいなくて、そういう意味ではテンション低めですが。日常を丁寧に描いたほのぼの路線で少ししんみりする要素もありの良い人情コメディでした。


貧乏神のいるアパートに引っ越してきたボクサー・片瀬一(イチ)。
力が弱っていたためか、自分の姿が人間に見えていることに驚く貧乏神。イチは、貧乏神を浮浪者と勘違いし、「ビン」と呼んで一緒の部屋に泊めてやることに。
イチの暮らしは、ビンが力を発揮するまでもなく、かなり気合の入った超貧乏生活で。
しかしイチは、そんな生活でも心から楽しそうにボクシングに励み、ビンに対しても優しく温かい。ビンは少しずつイチを意識し始め、またイチも、ビンの可愛さと健気さに惹かれていき…という話。

ファンタジー設定なのは貧乏神のビンという存在だけで、その力も決して万能ではなく。登場人物達の対峙する日常は、どうにもならないことの方が多い。
公平でまっすぐな性格だが、それ故に損をすることも多い片瀬、
人間を不幸にするという自分の存在意義に疑問と罪悪感を感じているビン、
ビンのかつての主で、酷い言葉と共にビンを解き放った「あいつ」、など…
金持ちや声の大きい者が得をする、という世の中の側面は否定されないけど、
それでも好きな人や自分の正しいと思った方を選ぶ、登場人物達の優しさが身にしみるお話でした。

貧乏神のビンちゃん、ツンデレの申し子のような台詞がいちいち可愛くて(-^〇^-)
口調はそれなりに男らしいのに、天然で健気で人間の役に立ちたくて一生懸命なんです。
そんなビンが可愛くて仕方ないイチは、すごく真っ当な人間ですが、ビンの存在に教えられることもあり。ビンに「あんた男前だ!」と無邪気に言うまっすぐさに、君も十分男前だよ~と言いたくなります。

書き下ろし『嫌われ神に春来たる』では、ビンのかつての主「あいつ」こと花房さんが、ビンを手放した切ない理由が明らかになります。言葉が足りなかったけど、互いへの思いやりはちゃんとあったんですね…。ビンをイチに託すように去っていく花房が切ないけど男前で、彼はお金持ちだけど金だけに囚われない人なのだなと、最後にこんな人が出てきてくれたことが救いでした。
花房というスポンサーがついて絶好調のイチと一緒に、色んな意味で新たな一歩を踏み出すビンが最高に幸せそうでv
最後のラフ絵の可愛さも含めて、全体的にほっこりできる作品でした♪

3

かわいいツンデレ貧乏神、というだけではなく!

素直になれなくてツンデレ発言を繰り返すビンと名づけられた貧乏神。
昔の男(?)が忘れられなくて、傷つくのがこわくて、傷つけるのが嫌で、卑屈。
ビンは人間を、「貧乏」であるか「裕福」であるか、でしか幸せを測れなくなっていて、
プロボクサーのイチと出逢い、その生き方に触れることで、価値観を変えていきます。

そもそも神様のビンがなんでイチには見えたのかな?とか、
ところどころ、(つくりが)甘いな~と感じる作品ですが、全体に漂う不器用なやさしさや、思いやりの存在にこころ癒されます。

貧乏神とボクサーっていう組み合わせは自分的に新しかったです。

2

この作品が収納されている本棚

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