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“ヤバい男達が組んだ”
※結末についてネタバレを含みます。
未読の方は閲覧にご注意下さい。
下巻は、鬼戸の過去編からスタート。
その過去も衝撃ですが、上巻から周到に貼られた伏線にも驚かされます。
正義を貫いたがために左遷された、鬼戸の父親。
精神を病んだ父親に「言われたとおりのことだけをしろ」と言い聞かされ育った鬼戸は、進路も恋愛も全て他人に従い生きてきました。
警察官となった鬼戸は、下っ端ヤクザの寺嶋という男と身体の関係を持ち、彼を情報提供者として利用するように。
良家の子女と結婚し、道警でもエースとして一目置かれ、順風満帆に見えた彼の人生ですが…。
ある事件を機に、彼は自身の正体に気付いてしまいます。
父親のトラウマ故に、自分を殺し社会の規範に沿って生きてきた鬼戸ですが、本来の彼は躊躇なく人を殺せる「異常者」。
上巻で彼が八敷を抱きしめて言った「見つけた」という台詞はロマンティックな意味合いだけでなく、同類に出会えたという意味も持っていたのでした。
そんな鬼戸を、今度は八敷が救う第7話(56ページの描き下ろし)の展開は非常に感動的。
自身の残虐性を隠すことなく生きてきた八敷は社会的には異常者かもしれませんが、鬼戸にとっては本当の自分を理解し受け入れてくれるかけがえのない人物。
「悪党」同士だからこそ分かり合えた二人ですが、そんな彼らが無邪気にイチャつくシーンはとても甘く、上巻同様癒やし要素の一つです。
そうやって八敷と生きることを選んだ鬼戸は「異常者」に堕ちてしまったのか?
個人的には否だと思います。
クライマックスで黒幕と対峙するも、その人物を撃たずその場を去る鬼戸には人間としての理性と矜持が見てとれ、それは八敷を愛することで彼が得たものなのではないかと感じました。
【結末について】
雑誌掲載分の最終話の後に17ページの短編が描き下ろされています。
その短編はなかなか意外な内容で、一読後は、雑誌掲載分の最終話で終わって欲しかった想いもありました。
ある種オペラにも通じる、滅びの美学のような様式美を感じさせるラストを気に入っていたので。
しかし美しく死ぬことを否定し、ありのまま生きるよう互いに励まし合ってきた二人の物語としては、やはりこの結末が相応しいとも感じます。
曲者揃いの登場人物たちによる騙し騙され、殺し殺されのサスペンス展開も楽しめる本作ですが、一番のテーマは「人間讃歌」ではないかと思います。
孤独な二人が運命的に出会い、ありのままの自分で世を謳歌する前向きな物語。
その惹かれ合う理由が「悪党同士だから」という点が皮肉なところですが、一緒に過ごすうちどんどん甘く可愛くなっていく二人を見ていると、人間もそう捨てたもんじゃないなと思えてきます。
過激な描写が多いため万人向けではないかもしれませんが、緻密なストーリー構成と濃密な心理描写により与えられる読後の充足感は格別。
一人でも多くの方に読んで頂きたい作品です。
下巻には6話〜8話+後日談が収録されていますが、こちらの7話がなんとまるまる描き下ろし!
BABYには、6話と8話だけ掲載されたんです。
でもこの7話がいっちばん大事だと思います!!
雑誌掲載時はとくに疑問も持たず読んでたんですけど、この7話があるかないかでこのお話の深みが全く違う。
6話では、刑事鬼戸の過去が。
両親のこと、妻のこと、犯した罪…
彼を創り上げた全てが明らかになると同時に沸き起こる八敷への疑惑。
7話から最終話にかけてがいちばん盛り上がりますね。
オニと化した鬼戸が八敷に吐き出した本音と流した涙。
鬼戸が初めて見せた人間くさい一面に、そしてそれを受け止める八敷。
この死に急ぎの異常者とも言えるふたりが涙して叫んだ『生』への希望。
このあたりがほんとうに感動的です。
“生きたいように生きる”
それはケダモノの生き方だと、ある登場人物は言うのですが、それは誰もが持つ欲で。
そしてこのふたりにとってはそうして生きることがいちばん幸せなんですね、もちろんふたり一緒に。
雑誌掲載時は死オチかと思っていて、それでいいと思っていました。
でも巻末の描き下ろしでのふたりを見て、普通とはかけ離れて生きてきたこのふたりには、これくらいの幸せがあったほうが良いと思いました。
下巻はなんといっても描き下ろしが素晴らしい!!
コオリが溶けて、自分の望むように生きることができる城を見つけることができた。
ここまでたどり着くのがハードでバイオレンスすぎたため、
このふたりが今をめいっぱい生きて、そして未来を見つめているラストに胸を打たれました。
文句なしの神評価です^ ^
正直、人を選ぶ作品なのですが物語としての完成度は非常に高いですし、今年の「このBLがスゴい」の上位には入ってこないとおかしいです!作者の方が引退されたと聞いてショックです…。売れたらまた考え直してくれるかな…などと自分勝手な事を考えてしまいます。とにかく読んで損は無いと思います。BL界、たまにこういう天才が出てくるから腐女子やめられません(笑)。
絵の美しさにますます磨きのかかった、この下巻。
騙し、騙されの怒涛の展開。
え、なにこれ
なに、
なに!
それまで見ていた物、見えていた物の全てが、
見ていた、見えていたとおりではなかったとすれば、
自分でも、自分自身の姿が見えていなかったとすれば、
暴力的で過激な描写は多いですが、次々と展開し転回していく物語の密度と熱量は、なかなかお目にかかれない代物で、読後の充実感がたっぷり。
指でも耳でも剥がした入れ墨でも何でも喰う心意気で、しっかり楽しんで頂きたい。
ちゃんと最後には、アカルイミライ?が待っている。
一読した際、最後の描き下ろしは始終救いの無かった重いストーリーだった本作の中ではかなり明るく感じられる話といった印象を受け、個人的には暗めのラストで終わった方が良かったのでは?番外編は不要だったのでは?と感じました。
ですがじっくり読むうちに実は結末はハッピーエンドともバットエンドとも受け取れる様になっているのではないか?と思い、ああ、なるほどな。番外編がある事でより深みが増しているんだなと。
作者様の力量に感嘆しました。
ちなみに私はバットエンドという風に受け取りました。凄く後味の悪い、それでいて爽快で、とても深く考えさせられる不思議な読後感を味わう事が出来、非常に満足です!
表紙や帯も目を惹かれるデザインです。読み手を選ぶ作品だとは思いますが、是非色々な方に読んで欲しい作品ですね。そして、またいつか作者様が復帰されたら嬉しいなと思います。