ぼくは、恋人を壊すことにした。

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表題作恋か破壊か

北林掌・破壊衝動に悩む高校生・17歳
笹井蛍二郎・文具店店主・30歳

その他の収録作品

  • 描き下ろし
  • あとがき
  • カバー下イラスト

あらすじ

高校生の北林掌には悩みがあった。
それは、幼少期から自分の中に眠る
何かを壊したいという突発的な”破壊衝動”。
そんな自分を恐れ、このままでは
人生を台無しにしてしまうと思った掌は、
一度だけその願望を満たすことを決意する。
そんな時に、偶然入った町の古びた文具屋。
年上で物腰の柔らかい店主の蛍二郎に出会い、掌は決める。
「――こいつにしよう」と。

作品情報

作品名
恋か破壊か
著者
糸井のぞ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
プランタン出版
レーベル
Cannaコミックス
発売日
電子発売日
ISBN
9784829686218
4

(50)

(21)

萌々

(17)

(6)

中立

(5)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
11
得点
196
評価数
50
平均
4 / 5
神率
42%

レビュー投稿数11

じっくり主人公達を想い、感じて読みたい作品

読後にジェイン・オースティンの「分別と多感」をふと思い出しました
全く相反する訳ではないけれど同軸ではない微妙な感情や歪み
同じような感情でも抱えるその人物の環境(年齢や家庭環境など含めて)如何によって成す意味は同じではない

とても複雑でありながら同時に実はすごく単純だったりする、、、人間の厄介さを至極丁寧に浮き彫りにした作品だと思います

攻めの掌はそれこそ多感なお年頃
その上不安定な母親に振り回されながらも自身の内に抱える「破壊衝動」を持て余している
このキャラを生み出し、描き切った事がこの作品の個性だし他とは確実に一線を画すBLだな、、、ってつくづく思います

受けの蛍さんもまた人間らしいです
痛みも狡さも知り、経験しながらもそれらを自身の糧として受け入れるにはまだ若い、、、それでも掌に比べたら十分な大人の年齢、、、

年齢が人を育てる訳でも経験だけが人の厚みを出す訳でもない
彼等を通して向き合って積み重ねて、そして受け入れていく事の大事さを感じていきます

「今だから分かる事」が増えて来たからこそ冷静に受け止めて読める作品かも知れないな~と思います
揺れ動く気持ちを整理出来ずに弱さと混同してしまったり、どうしようも出来ない環境への苦しさに当面した時期にもし読んでしまっていたら少し鬱屈としてしまったかも知れないな。。。なんて少し思ったりもします
いや?もしかしたら先に希望が見える、という点では読むべき作品となるのかも知れない。。。

印象深い作品です
糸井先生、、、ガッツリBLはもぉお描きにならないのでしょうか…?
また新作が読みたい作家さまです(ღ˘͈︶˘͈ღ)

0

先が読めなかった!

今まで読んだことのないタイプの攻めでした。
傷付けることを目的としたサドではなく、粉々に破壊することを目的とした破壊欲求というのは珍しい気がします。
「え、これラブになんの?」と思いながら読み進め、読めないキャラの思考と展開にハラハラして面白かったです。題名が一番のキャッチコピーになってる気がする。
受けが攻めの目を綺麗と思っていましたが、攻めの狂気性を知っているとサイコパスの目にしか見えないw
できればネタバレなしで読んでほしい作品です。
あと受けのオンとオフのギャップが良い。

1

表紙

表紙がなんだか怖くて買ったはいいが放置してしまった。「世にも奇◯な物語」の夢男みたいな怖さがある。本編の北林の顔ともちょっと違う気が。

終盤、すごくドキドキしながら読んだんです。どうたたんでくのかなと。そうしたらのソレ。うーん作者の描きたかった部分がそこなら仕方ないんだけど、壊れた瞬間を書き、壊れてる間は省いて、再生を数ページ見せられてもついていけないというか、納得できないというか。ここまで紙幅を費やしたのに、そこはそんなに駆け足…自分は残念でした。

「鍋に火をかけたまま」って…「鍋を火に」ですね。編集さん気づいてあげてよ。

1

歪みと衝動

破壊衝動を抑えて生きるDK‥
なかなか衝撃的なお話でした。

それが異常なように感じているけど
誰もが胸の内に秘めている衝動が
掌にとっては「破壊」だったというだけ。
でもやっぱり悩んじゃうし
どんどんおかしな方向へ進んでしまう自分を止められないし‥
色々と葛藤しているところにリアリティを感じました。
家庭環境も複雑そうだったし
思春期特有の歪んだ悩みを持ってしまうのも無理なさそう。

一方で蛍二郎も過去を引きずり
「壊されたい」願望を持っている。
でも蛍二郎のそれは大人の逃げですね(笑)
だからこそふたりはお互い惹かれたんだと思います。

数年経ってまたふたり会えて
今度こそ一緒に居られるようになったのは
お話の着地点としては良かったです。

0

ストーリーがしっかりしてていい

やはりストーリーがしっかりしている漫画は読み応えがあります。

破壊願望のある高校生、掌。
そして、恋に破れ、祖父の文房具店を継いだ蛍二郎。

蛍二郎に出会い、仲良くしてから、壊そうと決意する掌。次第に蛍二郎に執着するようになるが、それが本当の恋だと気付かない。
一方、手ひどく彼氏に振られ、心に傷を負ったままの蛍二郎。しかし、まっすぐに自分をみつめる掌に、だんだん心を動かされていく。

ちょっと変態な掌も個性的だけど、やはりかわいくて明るく、でも少し影のある蛍二郎の魅力がいい。

ついに掌は、蛍二郎を自分のものにしたいと拘束して犯そうとしてしまう。それっきりいったん二人は別れるけど、掌が大学生になって再会。そのとき、掌が大学にも行かず(中退だったかな?)ふらふらとしている、というのがちょっと悲しい。でも蛍二郎を手伝って、二人幸せに暮らせるならそれもいいのかな。また勉強を始めるようだしね。前向きに生きてほしい。

2

攻めの衝動を理解してあげられない

 ありのままに評価するなら、萌え寄りの中立という感じでした。理由は表紙の人物・掌の抱えている破壊衝動について、この作品を読み終えるまでに完全に理解できなかったというのが大きいです。そもそも彼のこの衝動はどんな経験によって形成され、どういうことを引き金に生じるのか。今までどうやってやり過ごして来たのか(ひたすら我慢していただけ?)。その対象が人物となった時、「破壊」は何を意味するのか。体を傷つけること? 精神を崩壊させること? その辺がすべてふわっとしていたため、最後までメイン2人の関係に浸ることができなかったです。

 タイトルにもあるように恋「か」破壊か、つまり恋 "or" 破壊ということは、恋と破壊衝動は彼の中で紙一重の感情で、言い換えれば恋することによって破壊衝動を失くすことも可能というのは分かります。でもそれってとても複雑な心理ですし、私にはもっと詳細な描写が必要でした。恋をするといろんな欲や嫉妬や、不安が出てきて、それらが苦しいから相手を破壊したくなってしまう? 分からなくはないけれど、私にはなんだかもっと違うところに掌の根本的な心の問題があるような気がしてならないのですが…。上手く言えなくてもどかしいです。最後はすっきりとハピエンの雰囲気でしたが、私の中では掌の衝動って本当になくなったの?とすっきりしなかったのでこの評価になってしまいました。ただ、人生経験をさらに積んでから読み返せば、また違う評価になるかもしれないと期待しています。

3

恋のチカラ

壊したくなる衝動、というのはちょっと私には難しかったです。
傷付いて悲しくて記憶を消してしまいたいと思うことならわかるのですが。
それでも誰だって抱えているものはありますよね。
掌の場合はお母さんが“アレなモード”な時があるから
破壊衝動に駆られるようになったのかな…。
妹さんもいるので二人とも転校を余儀なくされて
うまくやり過ごすのも大変でしょうね。気の毒でなりません。
初恋の相手が小さな文房具の店主なんて渋いです。
当の本人は最初無自覚でしたが
始まり方にインパクトがあってちょっと笑ってしまいました。
シリアスな中にもクラスメイトのチョーちゃんの遠慮の無さとポジティブさに救われたり、
大人になりたくてもすぐなれない掌の葛藤や悔しさが切なかったです。
蛍二郎は穏やかそうではありますがゲイゆえ悲しい恋の経験もして
見た目じゃわからない寂しさを抱えてしんどそうでしたね。
ささやかな幸せを願っても簡単には手に入らない。
今日子という幼馴染の味方がいて心強くはあっても
埋められないものはどうしようもありませんものね。
そこに現れた掌は手に負えないようなコでしたが
好きになると立場も年も境遇も関係なくなるから困ったものです。
いえ、恋をして変われるならこんなに素晴らしいことはありません。
蛍二郎の懐が大きくて良かったとついホッとしてしまいました。

1

予想外にコミカルな作風、しかも純愛で上質な神作品!

発売前から表紙とあらすじに後ろ髪をに引かれながらも手にできず、電子発売でやっと購入。
初読み作家さんだったので、この作品にハマり既刊作品を拝読する楽しみができました。

もっとドス黒い感じのサイコ感あふれる雰囲気かと思ったら、柔らかいコミカルな作風。
その中で、突発的な破壊衝動を秘めた高校生 掌のサイコ感が見え隠れする…それが余計に恐怖を煽る。
しかも、読み進めるなかで、掌の壊したいレベルが解らない…
精神破壊なのか、人体破壊なのか、どこまでいくのか解らない、実はそれが一番怖いのかもしれない。

掌は決意してから、常に壊すことを考えて行動しており、標的を文房具店の蛍次郎に決めて毎日通う。
ゲイの蛍次郎はノンケに捨てられボロボロになり、祖父の文房具店を継ぎ立ち直れないまま生きている。

壊したい掌と壊されたい蛍次郎…お互い心情など知らぬまま、運命のいたずらで付き合いはじめる二人。

破壊衝動にドキドキしながら読み進めると、まさかの純愛…
壊す為に近づいた掌は、蛍次郎を知るほどに、どんどん蛍次郎に囚われ夢中になっていく。
そんな掌に癒され蛍次郎も葛藤しつつほだされて…。
関係を深めていく、葛藤する二人の心理描写がすばらしい!特に表情変化の描写がスキです。

上質な作品は秀逸な脇キャラが欠かせません。
学校で掌にめげずに絡むワンコのチョーちゃんは、掌が年齢相応の少年の表情をみせるコミカルさ。
気付けば恋愛相談になっているやりとりも面白く、作品のコミカル担当といえる印象的な明るさ。
そして、学校教諭の今日子…
掌から闇感を感じ取っている唯一の人物で、偶然なことに蛍次郎の昔からの親友。
ネックになるのが、掌が破壊衝動を抱える要因となったと思わせる母や家庭環境。

この作品の面白さは、脇キャラがメインの破壊行動に変に絡んでこないところ。
今日子は掌を主体にして現状を把握しつつ、いつでも手助けができるというスタンスを取ります。
そして、未成年である教え子との関係について蛍次郎を戒めますが、それ以上のことはしない。
破壊行動にも間に合わず、直接的には二人の関係に関わってはいない。
掌と蛍次郎の二人だけで始まって終わる見せ方が、二人の世界という感じでイイ!

そして、元カレへの嫉妬と母に振り回される環境がスイッチとなり、掌は蛍次郎を破壊する…
柔らかい作風だったので、あの展開はけっこうな衝撃度でした。
カラダは成長してみえても、未発達な感情と心は子どものまま…見ていて苦しいですが、
掌の吐き出した想いを、酷い事をされたまま受け止める蛍次郎は大人です。
傷付いて壊れて再生できたからこそ、掌の痛みを理解して許せるのかな。
そのまま、あまあまHに流す上手さで、破壊行動の衝撃が薄れる…スゴイの一言です。

結局、壊れたのは自分で、壊れたからといって再生できるわけではない。
蛍次郎から離れて大人になった掌は、振り回された家族から離れても、自分を見つけられないまま。
蛍次郎に会いに自分から踏み出して、やっと再生できた掌の人生でした。

すれ違いの時間が、それぞれの再生に必要だったんですが、破壊以降の描写がもっと見たかったです。
再生描写が物足りない…再生するようすがもっと丁寧に見たかった。
しかも、描き下ろしの蜜が足りないわぁ…ごねてすみません…でも、もっと続きが見たいです><

※シーモア:修正なし。修正不要な描写です。

6

バラバラに壊れても元に戻せる

ハラハラしちゃいました♪

”破壊衝動”のある掌が、それを理性で我慢してきたが
いつか遂行したいと心に思い続けてるのがぞくっとしちゃいましたね。
そして、出会った蛍二郎の人間関係や家の造りなどを冷静に観察してターゲットへと絞ってからは、掌が蛍二郎に会いに行く度ドキドキでした。

自分が「破壊衝動」だと思っていたのが「恋」だったと清々しい顔で言う掌。

自分が「破壊衝動」を「恋」だと勘違いしたと泣きながら言う掌。

もぉたまりませんでした!!!!!

2

体は大きくても、高校生はまだ大人じゃない

一人顔アップ表紙コミックスも今まで数あれど、これはかなりのインパクト。
その上このタイトルに帯。
あらすじの文章もなかなか不穏だし、さぞかし病んだ内容なのではと思いきや、、、、

主人公の高校生の男の子が、恋する気持ちとは何かをしっかりと悩む、とってもピュアな、ハッピーエンドの初恋物語でした。

現実の高校生男子がこんなに物を考えられるかというと、到底あり得なそうで、実は一番やばそうなお母さんのこともいい感じにスルーして、ラストのハッピーさときたら、現実には到底あり得なそうなBLファンタジーではあるのですが、
ストーリー展開の巧みさといい、構図や個々の絵の上手さといい、
すごく、すごく、上質な物語を、しっかり味あわせて頂けて、本当にありがとうございました。としか言えない感じ。
もちろん、神です。

6

年下攻めを映えさせるのは受けの魅力

少し危ない嗜好を持つ高校生と文具店のお兄さんのお話。

親の都合で転校してばかりの掌には、子供の頃から抱え続けている破壊願望がある。物ならばまだしも、人に対して向けられた暗い欲求は、初めて恋した年上の男性だった。

祖父が営む文具店を譲り受けた蛍二郎は、二年前にノンケの恋人と別れた痛手からまだ抜け出せずにいた。転校生の掌が上履きを買いに蛍二郎の店を訪れたのがきっかけで二人は出会う。

初めは面白い子だなぁくらいに思っていた蛍二郎も、十代の純粋さと狂暴な衝動が見え隠れする掌の危うさに惹かれていく自分を止められない。つい最近まで別れた男が忘れられず、夢にまで見ていたのに…

掌と蛍二郎が惹かれ合っていく段階が丁寧に描かれるけれども、表向きは初々しい恋の始まりのようでありながら、掌の厨二病的な儀式が遂行されつつある怖さが潜んでいます。

とにかく、先生の美的センスに惚れているので、時々コマに挟まれる植物や花のカットに見入ったり、人物の表情やヘアスタイル、ファッションに目がいってしまいます♡

でも、一番の魅力はキャラクターのネガティブな感情をしっかりと捉えて、その醜悪さや、みっともなくもがく姿すら美しいものとして描いてくれるところです。そして物語の中にはそんな彼らを必ず掬い上げて受けとめてくれる誰かがいる。

過激な暴力シーンや極端な変態性を描くような作者ではありませんが、人間の潜在的な悪や毒をチラ見せしてくる巧みさがすごく好きです。作画、作風、ストーリー、色彩、美意識、バランス感覚などなど、全てが大好きな作家様。ドラマ性のあるお話がお好みの方におススメです。

8

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