幼馴染で、親友で、それから・・・?

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表題作初恋

独占欲の塊ドクター/慎みすぎな海の男
流され続ける乙女くん

あらすじ

港町で育った多伎にはふたりの親友がいた。無口だが包容力のある洋人と、裕福な家庭に育ちストレートに愛情を表す隆晴だ。生まれも育ちもばらばらの三人だったが、多伎を中心に三人はいつも一緒にいた。だがある日、隆晴が多伎に気持ちを告げたときから、三人のバランスは崩れてしまい!?

作品情報

作品名
初恋
著者
水原とほる 
イラスト
片岡ケイコ 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813011071
2.6

(11)

(1)

萌々

(1)

(4)

中立

(3)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
9
得点
24
評価数
11
平均
2.6 / 5
神率
9.1%

レビュー投稿数9

絶妙なバランス

幼なじみの三人は絶妙なバランスを保っていたのに、隆晴が多伎に告白したところから、多伎が洋人への想いを諦めようとしたところから狂ってしまった気がします。

隆晴の間違った理想の形、執着、多伎への愛情。
第三者から見ると、仕事に邁進するところまでは許せても、出世や恩義から結婚に至ったことは間違いですよね。それさえなければ、パートナーとして多伎を見て、大切にしていたら、、、
きっと多伎も洋人も現状維持だったんじゃないかなと思います。

結婚相手との生活、多伎を愛人にしたこと、ましてや嫁の妊娠というのはもうね、隆晴がダメですわ。
彼の失敗。とはいえ、最後は洋人に多伎を預けるというのは頑張ったなと。下手したら監禁とかにいっちゃいそうな感じでしたし。

洋人も、高校時代にちゃんと告白してたら、隆晴が告白した時に応援しなければ…
でも、最後は多伎と幸せになれるのなら良かったねと言ってあげたいかな。多伎が一番イケてないかも。まぁ流されつつも隆晴を律儀に待ってたりしたとこは彼らしいけれど。

1

堪えられなかった男、耐え忍んだ男

2005年刊。
実はどこまで続けられるか不安だが、水原さん作品読破挑戦中で現在刊行順に読んでいっている最中だ。
順番で読むとまだまだヤクザだの愛人だのといった不穏そうな話が連なり、この本を手に取って穏やかそうな一冊でほっとしたら、これってがっつり三角関係ものですやん…
…なのに、一気に読み進めていたのだった。
多分、水原さん作品個人的お気に入り上位に食い込むと思う。

三角関係ものでも最後には三つ巴で落ち着くパターンを多く読んでいるせいか、この話の主人公・多伎(たき)がきちんとどちらかを選んで付き合う姿が真っ当で好感を覚えた。
(本当は三つ巴で着地するってのも好きな展開だけどね)
あと、終盤にはどうしてもDVが出てくるものの、始終痛めつけられる描写が無かったおかげで、初めて水原作品の受けキャラが古風で芯が強く気丈だって事を実感できた。

多伎は17歳の頃に洋人へ抱いていた淡い想いを断ってから、隆晴の告白を受け止めて付き合い始め、大学進学を機に遠距離恋愛になってもお互いきちんと向き合って交際を続けていた。
社会人となり教師をして頑張る日々の中、医者を志す隆晴の夢を共有して気持ちが繋がっているのを信じていた。
一方の洋人も、厳しい父親に堪えつつ漁師の跡を継いで地元で頑張っていた。
多伎との時々の交流は友人としての関係を守っていた洋人だが、内心はもしかしたら彼への恋心を隠しつつ幸せであるようにと支えていたじゃないか?と見て取れる。

こうして17歳から30歳位までの三人の半生が淡々と書き綴られているが、この時期の人生の記憶の色濃さというを思い起こすと、作中の展開に何だか深いものを感じる。
親の闘病、死別ってのも絡んでくるとなると…ね。
また、舞台となる彼らの故郷、港町の情景にもぐっとくるものがある。

恋と結婚とは違う現実、気ままに生きていけない世知辛さに直面した隆晴は他の女性と結婚してしまい嫌な男に成り下がってしまったが、周囲の期待に追い込まれた辛さってのも何となく分かるかも知れない。
進学せずに故郷に留まった洋人の人生にも苦労があったと思う。
しかし二人の間には、いつしか堪えられなかった男と、耐え忍んだ男として差が開いていて切ないものを感じる。

故郷に戻った多伎が速攻で洋人とくっついても別段おかしいとは感じなかったのは、隆晴と別れるまでの葛藤を経て気持ちが冷めていくに至るまでの描写もきちんと読めたって満足感があるからだろう。
多伎も洋人も誰も責めない生き様であるってのは強い人の表れだと思う。
だからきっと、二人ともこの先も悲観せずに生きていける気がするのだ。

1

??でも、じわるのです

水原とほる先生の十年前の作品になります。ふと手に入れて、読む前にちるちるで検索してみたら攻め受け紹介が秀逸でした。ちょっと失礼して抜粋しますね。
攻、独占欲の塊ドクター(と)慎みすぎな海の男。受、流され続ける乙女くん。
思わず笑いました。上手いなあ、これどなたが書いたんでしょう。もちろん、彼らにはちゃんと名前があります。ドクターが隆晴、海の男が洋人、乙女くんが多伎、彼ら三人の十五年ほどに及ぶ長ーい恋の物語です。
 始まりは漁師町、彼らは高校生。美形の多伎の初恋の人は洋人ですが、隆晴に告白されてそのままおつきあいが始まり、キスもセックスも隆晴とが初めてで、以後ずーっと隆晴オンリーとなります。
高校卒業後、多伎と隆晴は大学へ進学。多伎は高校教師、隆晴は心臓外科医の道を歩みますが、洋人は成績優秀でも固い意志で父親と同じ漁師になります。
多伎と隆晴は会えない時間が長くとも、東京、アメリカと遠く離れていても恋人関係でいますが、三十歳を過ぎた辺りで隆晴のタガが外れ、医院長の娘と俺は結婚するが愛しているのは多伎、絶対別れない!と愛人関係になり、さらに一歩変になってしまった隆晴との別れを多伎が言い渡し、漁師町に帰り、ついにというかあっさり洋人と結ばれてエンドです。
 評価がイマイチなところでお分かりのことと思いますが、何だ?という点が結構あるのです。
本作はに段組みで描かれ、水原先生の文章は潮の匂いが伝わるようであります。特に序盤は瑞々しく彼ら三人が描かれているのですが、中盤から何やら昼メロのようになるのです。私は、多伎というキャラは気骨があってそれほど乙女くんには思いませんでしたが、隆晴の多伎の愛し方が段々、女性相手でもおかしくないような感じになるんですね。そこが笑えたのですが。
 水原先生の作品の中では確かに、傑作とは言い難いでしょうがでも、私は好きです。エッチ描写に先生独自の迫力があっていいんですよ。
彼ら三人の「何じゃ、こりゃ?」な関係にじわりました。

2

私のチョイスミス?

初読みの作家さんです。
気になってた作家さんだったのですが、チョイスを間違ったかも…。

主人公は片想いしている多伎。
好きな相手にそれとなく同性愛のことを聞いてみるも相手にされず。
そんな時、告白してくれた隆晴と付き合ってしまう。
愛されて愛せればいいなという思いのもとに、片想いの気持ちは徐々に折り合いをつけて。
隆晴との関係は遠恋になっても続き十数年にも渡る。
けれど、その間に隆晴の愛情は深くなりすぎてはなれている分濃い執着となっていくのだが。

えと。
隆晴の執着はわかるんです。
好きで好きで好きで。
でも、自分の夢も諦めきれなくて。
医師として成功しようという思いもあって遠距離になってしまうこととかは。
結婚に関してはまぁ、そこで別れないで「愛人」として付き合うってのはどうだろう…という思いはないではないですが。
なんとか世間的地位と多伎のことを両立させようと思ったんでしょうね。
一方の多伎。
好きな相手に相手にされないから近くの優しさに甘えてみるというのは高校生だったからいいとしても。
それから、長く付き合っていって。
隆晴の愛情に自らも好意を寄せているようでもあるのに。
不安や淋しさから2人の気持ちの距離が離れていって。
それでも本当に最後の最後までその縋っている手を離せなかったのがなんというか…。
せめて結婚の時点で離せたらな、と。
それまでの人生の大半を結果的に隆晴で埋め尽くすことになったので、それを無に返すことが嫌だったのかもしれませんが。
手を離した後、あっさり次に行ってしまうのもなんか…。
1人でやり直しのならまだもう少し見方は違ったのかもしれませんが。
「今度は間違えないように」という思いもあったのかもしれませんが、でもなぁ…。
私の好みとは合いませんでした。

2

モヤモヤするー

痛い系ではなくながーーーーーい密かに三角関係な話。
暴力とかそういうのは無いです。
読んでる最中も読後もなんかモヤモヤするんですよねー。
このモヤモヤの原因は2人が付き合ってる時間が長過ぎるからだと思った。
例えば2年付き合ってる男が出世の為に他の女と結婚するって話だったらそんな男なんて忘れて次行こうよ!次!!ってスパッと聞けるだけど、15年付き合った末に他の女と結婚されたら酷いじゃん!15年間は何だった訳?って憤りを感じるってあの感じ。
こんだけ長く付き合ってて結局これかよ!みたいな。
なので攻ざまあ感もイマイチでモヤモヤするのだな。
それだけ長い時間かけて色々あった末にやっと初恋が成就したのに、良かったねってよりもっと早くこうなっとけばさーーとか思っちゃったですよ。
でもそのモヤモヤも含めての作品なのかなあ。
残尿感みたいなのは残ったんですが、面白く読んだ部分も多かったので一応萌えで。萌えちょっと中立。

2

二度目の読書で印象が変わった・・・

最初に読んだときは、単純に、
「初恋が実ってよかったなぁ」
と思っただけだった。

先日二度目の読書をしたら…がらりと印象が変わって、気持ち悪くなってしまった。

高校時代の同級生の三角関係。
全く違う個性の3人の、切ない恋物語なのに、何故かもやもやとしたものが残ってしまって困った。

隆晴と多伎の恋愛小説として読めばいいのか、洋人と多伎が初恋を実らせる物語として読めばいいのか…。

最初に読んだときは後者として読んだに違いないのですが、再読時はどうも前者寄りで、そのせいで隆晴に対して拒否感が。




多伎しか愛してないなら、なんで結婚したんだよーっ!!



これなんでしょうね、引っかかってるのって。
何度読んでも「洋人×多伎」に気持ちが向くために、隆晴の愚かさに腹が立ってしまう。

死別も、結婚も、男カップルの離別としてはありがち設定ですが…だったら多伎よりも妻を選んでしまえよ、と。
多伎に決着つけさせるなよ~。


どうもそのあたりにムカムカして、初読の感動が砕けてしまった。

再読しなくてもよい作品というのもあるんだなぁと、気づきました。

1

三角関係

男同士の三角関係はいいですね。

受けを取りあう二人ともとてもいい人なので、一方が受けと結ばれれば一方が失恋してしまう状況が切ない。

*以下はネタバレを含みますので未読の方はご注意ください*

全体的に隆晴×多伎の切ないお話といった印象。
最終的に結ばれる洋人×多伎の視点で描いていたら、また違う素敵なお話になっていたと思う。
長い間、好きな男の幸せを見守り続けた海の男、洋人。

三人が卒業してからは隆晴が東京や海外に居たりするので、3人で顔を合わす機会がほとんどないのが個人的には惜しい。
もっと受けを取り合ってバトる攻めを見たかったですが・・・まあ、距離的にも攻めの性格的にもバトルはないか。

多伎の事をひた向きに愛する隆晴が好きだったので、最後の隆晴の行動にはちょっと納得がいかない。
多伎の事が好きで好きでたまらない彼の気持ちは分るけれど・・・
な ぜ 結 婚 し た 。

・地元の有力者の一人息子で、後を継がなければならない彼なりの責任感。
・院長の娘と結婚することで出世し医者としてキャリアを築ける。
隆晴が結婚した理由は要はこの2つでしょうか。
多伎のためにこの2つを捨てられなかった隆晴にちょっと絶望した。
多伎の事を心から愛している隆晴の気持ちを思うと、隆晴の行動がなかなか理解できない。
文句ばかり言ってますが、隆晴大好きです。多伎の事が好きな隆晴が。



多伎が洋人を二階に誘った時はニヤニヤしてました。多伎は天然小悪魔だと思う。

0

10数年の三角関係

高校生から30歳までの、洋人、隆晴、多伎の、幼馴染み三人の三角関係が描かれています。
私のツボである幼馴染みモノだったので、楽しませてもらいました。
ただ、後半がちょっと不満。

三人の中では、隆晴が一番スキです。きちんと自分の欲しいものを欲しいと言い、そのために努力を惜しまないタイプ。
作中では描かれてないけど、隆晴は多伎と洋人が両思いであることをずっと知ってたんだろうなと思う。
結局、洋人も多伎も、ズルいなと思った。最後が気に食わなかったのは、そのためです。
隆晴が結婚を決めたとき、洋人は奪ってでも多伎を手に入れるべきだったし、多伎はすぐに別れるべきだった、と思う。そうしてれば私はもっとカタルシスを感じることができた、と思う。なにせそれまでの焦らすような展開にイライラしてたもんで。でも、こういう焦らしは大好物で、焦らされた挙げ句結末でドカーンとひっくり返してくれたら、より深い満足感に繋がるのだ。
そうだなー、それゆえに、この結末をたとえるなら、半分だけ射精した感じになったていうかw

ただ、好きなシーンのたくさんある話でした。潮の香りを感じながら読みました。

2

誰がいちばん悪い?

水原さんにしては甘く、そしてまるでメロドラマのようなストーリーだった。
本当の意味での悪人はひとりも出てこず、皆が誠実で真摯である。
こういうありきたりで先の見えるお話は、下手をすると猛烈に詰まらなくて読めたものじゃないのだが、そこはさすが水原とほる。
しっかりと描き読ませてくれた。
ただこの手の恋に翻弄される主人公がタイプ的に好きではないので、感情移入はし辛く始終イライラはしてしまった。
これは作品の良し悪しではなく、キャラにおける個人的萌え萎えの問題である、と初めに言っておきたい。
誰からも無条件に愛されるヒロイン体質というのは、意外と世間に受け入れられるんだな・・・。

ストーリーは簡潔に言うと・・・幼なじみ3人が十数年にわたって繰り広げる昼メロ風愛憎劇。
主人公は私生児で母親と二人暮らしの多伎(後に教師)。
そして多伎が密かに想いを寄せていたのが、地元漁師の息子・洋人(後に漁師)。
けれども強烈な独占欲で多伎をものにしたのが、地元名士の息子・隆晴(後に医者)。
もちろん本当は洋人も多伎のことが好きだっのだが、口下手も手伝って想いを告げるチャンスがなく、もたもたしている内に隆晴に先を越されてしまったという図式になる。

結局、野心家の隆晴は地位も名誉も、そして多伎も手に入れようと欲張った結果、肝心の多伎から別れを告げられてしまいジ・エンド。
そして自由の身になった多伎は、故郷の港町へ戻り洋人と想いを通じ合わせる・・・というのが、ストーリーの顛末である。
収まるべきところへ収まり、ハッピーエンド。
・・・・・・ハッピー?
隆晴は確かに偏った形ではあったけれど、それも全身全霊で多伎を愛していたからこそであり、洋人についても寡黙でありながら、時には激しく多伎への愛情を見せたりする部分が好きだった。
しかしそのふたりに愛される多伎がな・・・というのが最終的な結論である。
それは彼自身の独白にもあったように、与えられ施されるばかりの存在であったから。
隆晴の多伎に対するひどい執着心を育ててしまったのは、愛される心地よさに溺れるだけで、彼を本当の意味できちんと愛してあげなかった多伎自身の責でもあるはず・・・というのは言い過ぎだろうか。
しかし考えれば考えるほど、私は隆晴が不憫でならない。
初恋の叶ったふたりは良いとしても、長年もの間、独占欲と嫉妬心に苛まれ続けた挙句、『俺達はずっと夢を見ていたんだよ』と多伎に告げられて終わってしまった隆晴の初恋って一体・・・。
きっと多伎と過ごした十数年、いくら体を繋いでも隆晴は片思いのままだったに違いない。

そう考えるとやはり多伎許すまじ!という方向へ行ってしまう。
これはもうループ(笑)

4

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