SS付き電子限定版
こういう、オカルトちっくな因襲もので、あくまで舞台は現代日本っていうお話、沙野先生独特の世界観ですよね。しっかりと作家様の色がある。でもって濃厚ラブなところがこれまた素晴らしい……好きや〜!
三百年にわたり主従関係を結ぶ九城家と伏見家。伏見家は「夢を生む」特殊な能力を持つ家系で、久城家の庇護を受けるかわりにその能力を提供し、互いの協力によって生き延びてきました。そして現代では両家共に国家レベルにまで影響力を及ぼすフィクサー的存在として暗躍している…という、なにげにぶっ飛んでるSF風設定。本作の推しポイントは年の差で主従です。そんでエロス滾るプレイですよ沙野作品といえば。
伊織サンがエロい…。暁さまにお仕えする14才年上の教育係なので年齢は40代前半。彼の言動はBLだから興奮するのであって、冷静に考えたら結構ヤバいやつですよね笑。なんたってハイライトは着衣&マスクプレイでしょう。どこであのマスク入手してきたんだ伊織サン。ネットで選んでる姿とか想像してしまうよ。。伊織の方が従で暁の方が立場的には上なのにプレイ中は下克上ですから、お約束だけどすてきすぎます。こんなん、ナンボあっても困りませんからね〜笑。暁が伊織のスーツを汚してとっさに謝ってしまうところ、キュンときました…。
本作は両視点で進み、攻めの本心が意外に早い段階で暴露されています。実はお互いのことを強く思い合っているからこそすれ違いが続いてしまうもどかしさには延々とヤキモキ。いや〜、作者様によって表現される恋愛心理は本当にすごいとしかいえない。いつも身悶えてしまいます。
シリアスで文体も硬めな作風なので、受け攻めともに雄雄しいキャラ付けをイメージされるかもしれませんが、わりと受けは乙女系です。攻めのことが好きすぎて気が狂いそうなのに、潔癖なのでそういう自分が許せない。だけど体が裏切るエロさがたまんないですね…。
というわけで、ところどころギャップ萌えが堪能できる本作。ラブの部分に思いっきり耽溺することができました。九城家と伏見家の関係性が全てにおいてキモとなっておりますので、そこにハマれば盛り盛りなストーリー部分も受けとめられるのではないでしょうか。
兄弟絡みも嬉しいオプションてす。兄の朔と湊士も萌えるし、暁の弟、無邪気な惺と黒猫のクウスケには癒されました。
SF要素入りのBL
「夢で願う事を現実化する」夢生み
夢生みが視る夢を支配する「調律師」
・・夢を見させて、夢生み者を支配する九条家の調律師。
冒頭から、暁が何かから逃げ続けている、転居するためにバイトを辞める。
バイクに乗り外出したところ、黒猫をよけて事故に遭い、目覚めると実家に戻っていた。
三人兄弟の夢生み。
兄の朔は、夢を見たまま目を醒まさない。
次男が家に戻る様に夢生みをさせられた三男のサト。
兄と弟を守る為に、家督を継ぐ決意をする暁。
・・・夢生みのために伊織と同衾する暁
家の因襲から逃れないなら、せめて楽にしてやりたいと思う気持ちからなんだろうと思うけど、残酷な見えない檻の中で生きている二人は、気の毒。
夢も見ない熟睡をする私には、理解できないホラーな物語。
すごかったです。読み終わったら脱力してあらすじも、あれ?どうしたんだっけ?とすでに忘れかけてます。
なんだか現実のエッチと最後の数十ページが印象が強すぎて、暁の葛藤や奮闘も薄れてきちゃって。
暁は九条の掌の上で、でも伊織が守ってくれたってことでいいのかな?
設定もすごいですね!調律師と夢生み。コントロールされてるようでお互いに侵食しあい。
伊織が暁のためにしたことも何もかも裏切りだったと思わせて、逃してだけど危なくなったらまた連れ戻して。
そのやり方がキツイですが、暁を守るためだったんですよね。
暁に欲上して勃たせる伊織が強烈で。
結局二人の行為は出奔前のは合意なのか、暁の欲望なのか、伊織が導いたのか未だによくわかりません。
しかし沙野さんの滾りはしかと受け取りましたよ!
生まれる前から自分の夢生みを待ち焦がれ、自分で育てて。
紳士なのに全裸で口枷。
二人ともよく頑張ったよ!
レビューも多いので感想だけ…
作品の根幹をなすのが「夢生み」という能力なのですが、これがどうもピンとこない。
まず予知夢、そして夢生みの能力でそれを「確定夢」にする…
ここがわからん。
そしてわからないまま読んでるんで、なんだかね。面白く感じられないわけ。
お互いを補完する能力を持って絡みつく両家の関係性。こういう興味深い設定はいい。非常にいい。
そして現在は夢生み家系の伏見家が支配されて、手助けするはずの九条家が大きな影の権力を握っている。
九条家の人間が伏見家の人間をかつては手助けとして、今は支配として使う力は、声。
その特殊な声を使いながら、体も開いて意識下にまで入り込み…という設定もいい。
今思えば「睡眠姦」といってもいい設定だと思う。
ただ、主人公の暁が自分の能力を疎ましく思っていること、教育係の伊織への愛憎、小さな弟まで使い捨てようとしている九条家への憎しみ、それらが強く出ているので物語のトーンは暗い。
エロも終盤まで心が行き違っているのでなんとも…薄暗いエロです。
あと、一点違うなぁと思ってしまったのが「挿絵」。
北沢きょう先生の絵柄は綺麗です。そこは何も言うことなしだけど、この作品は伊織42才、暁27才。その感じが出てない。綺麗すぎ若すぎ。
設定は興味深かったけど、色々乗り切れなかった。残念。
予知夢を現実にする力を持つ一族の暁と、その力を操る一族の伊織の、歳の差愛の物語。歳の差にも萌えたけど、主従愛でもある。大好物な設定がてんこ盛りで、もうどうしよう。
前半部分は能力の設定を理解するのに、ちょっと戸惑ってしまった。まだ受けが少年だった頃から、アレコレ致しているのは萌えるのだが、この特殊能力が微妙にそれを阻む。
伊織を好きな自覚がある暁は、彼を自分が夢で操ってそうさせているのだと思っているし、声で暁を意のままにできる伊織も、同じように思っている。どちらも相手を想っているのに、相手には想ってもらえないだろうと思い込んでいるから、長年曖昧なまま、体だけを繋げていたという両片想い状態。
せっかく再会した後も、暁は伊織の声の正体に気づいて、自分の長年抱いていた彼への想いすら「調律」のせいなのではないか、などと疑心暗鬼になっちゃうし。
伊織側の視点も挟まれて、伊織が決して暁を裏切った訳ではないのは読者はわかっているので、余計にツラい。
声で暁を操っているわけではないことを証明するため、口枷をつけて行為に及ぶも、そんな伊織をセフレだなどと言い出した暁には、もう切なさ通り越して、腹立たしさすら覚えてしまった。だって小さい頃から、全てを捧げていた伊織を、全然信じようとしないんだもの…(泣)
読み進めていくにつれて、伊織の愛の形は暁が思っていたよりずっと、深くて大きいものだったということがわかる。個人的にいちばんの萌えどころは、暁のことを生まれた時から特別な存在だと思っていた、というくだり。
年上攻めが大事に大事に時間をかけて、守り育ててきた年下受けに、不埒な感情を抱いてしまう背徳感などもいい。兄弟とか父子ものっぽいような雰囲気も感じられて、そこへ持ってきて濡れ場となるとムッツリなので、非常に美味しかったです。
ただ、すれ違いがあまりにも長くて苦しかったので、もっとイチャイチャを見たかった!という不満が少々残った。