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表題作悪食

奥槻泉里,28歳,水琴の才能に魅いられた画商
胡桃沢水琴,18歳,画家の卵

その他の収録作品

  • 蜜葬
  • あとがき

あらすじ

田舎の小さな村のあちこちに、
静かに佇む死者の姿──。
学校にも通わず彼らを熱心にスケッチするのは、
母に疎まれ祖父の元に身を寄せた18歳の水琴(みこと)。
風景は描けるのに、なぜ僕は
生きた人間が描けないんだろう…。
そんな秘密を抱える水琴の才能に目を留めたのは、
銀座の画商・奥槻泉里(おくつきせんり)。
鋭利な双眸に情熱を湛え、
「君の才能は本物だ。私にそれを磨かせてほしい」
と足繁く通い、口説き始めて!?

作品情報

作品名
悪食
著者
宮緒葵 
イラスト
みずかねりょう 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
シリーズ
悪食
発売日
ISBN
9784199009747
4

(80)

(38)

萌々

(24)

(8)

中立

(4)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
15
得点
314
評価数
80
平均
4 / 5
神率
47.5%

レビュー投稿数15

妖精画家との出会い。

BLの恋愛的ストーリーとしても、オカルトちっくストーリーとしても、とても面白かったです(≧▽≦)


受け様は、死者の姿が見える水琴。
田舎の祖父の家で、心の赴くままその姿をスケッチに描いて過ごしてきた。

そんな水琴の絵を見た旅行者がSNSにアップし、その絵に惹かれた画商が水琴を訪れる。

この東京の大手画商に勤めるのが、攻め様である奥槻。

水琴は、軍人のような隙のない奥槻が自分に対して特別な扱いをしてくれるのが嬉しい。
素直に好意を丸出しにする純粋培養の水琴と、それにうっと胸を撃ち抜かれまくりの奥槻の様子ににまにましちゃう。

画家としての才能はもちろん水琴自身にも惹かれ、奥槻は水琴を自分だけの腕のなかに囲いこみたいと思うようになる。

そんな願望がうんだ生と死の狭間の屋敷の中で、奥槻は思う存分水琴を貪ってましたよ。
そして明かされる奥槻に寄り添う、水琴にだけ見える影の真実。


SNSで妖精画家と呼ばれる水琴と、そのパトロンとなりがっつり囲いこむ奥槻の出会いの表題作『悪食』。


書き下ろしの『密葬』では、水琴を東京に呼び寄せた奥槻は同棲してるのに、手は出してなかった!!(゜ロ゜ノ)ノ
夢の中ではあんなに好き放題だったのに、現実では紳士なんだかヘタレなんだか。

そんな中で水琴は画商の槙と出会う。
槙の抱えるトラブルに巻き込まれた水琴は、槙の後ろに漂う2つの影に導かれるように、隠されていた真相を暴く。

あぁ、水琴の信奉者が増えましたよ。
嫉妬やら独占欲やら、奥槻はこれまで以上に全方位に目を光らせなければ(^_^;)

また、我慢に我慢を重ねてきた奥槻と水琴の、生身での初えっち。
水琴が煽っていて罪作りな子でしたよ( ☆∀☆)


イラストはみずかねりょう先生。
表紙から口絵、中の挿し絵、全てが美しくて目の保養です。


1

執着強め!攻めの愛が重量級


あ~~もう冒頭から面白いやつ~!!

画商×美人画家で受けが無自覚あざとい系です。
霊が見えてしまうが故にイジメに合っていたりしたので内向的ですが、無邪気ゆえのあどけなさでイケメンスパダリが翻弄される様は最高でした。
それに抗うように攻めも片道6時間かかるのに足しげく通い、最初から優しく紳士的にアプローチ。
見えない攻防が繰り広げられている二人の口説き対決のよう。

途中、急にここはどこ!?異世界!?となったり、攻めの性格がガラッと変わって戸惑いました…(笑)
それまでは執着をチラ見せくらいだったのに、エンジン全開フルスロットルでヤンデレに変化して私は大歓喜!
監禁を仄めかす発言をしたり、二人きりになった途端エッチ三昧。

意外にも受けがしっかりしていて、どうにかこの状況を打開しようと試行錯誤。
気づきました。
このお話、受けの方が幾分マトモです(笑)

また、ページ半分が馴れ初めという感じで後半からは、二人の同棲からのお話となっていて、二巻分入っている感じでお得感がありました。
その後半も受けの能力が存分に発揮されていきます。

狭間の世界では何回もヤッたのに現実では、すれ違いがありなかなか事に及べません。
というのも、受けが「あの時みたいに感じすぎて引かれたらどうしよう…」という不安でエッチを受け入れられないのですが…。

お、乙女すぎる…。

とはいえ、誘拐されたり殺されそうになってしまったり…と、読者を飽きさせない展開に一気に読み終えてしまいました。

美人受けの良さが際立ち、イケメン紳士の攻めの方が翻弄されている姿や、チラチラとブラック攻めがヤンデレ臭を仄めかすのが最高でした~!

7

表紙で勘違いしてた

表紙で受けの水琴くんの瞳が白っぽく描かれててキラキラもないのでまるで生気が感じられず、なんか白痴か不思議ちゃんキャラなのかなって思ってました。

全然そんな事はなく、美人で健気で素直で老若男女が彼の魅力に引き寄せられるようなタイプ。
死者が見えその絵を描き続けた事で不気味がられて学校、家族にさえ退けられて、不憫に思った祖父が田舎に引き取って2人で暮らしてる。

平和な毎日に突如都会の洗練された大人の素敵な紳士、泉里さんが水琴くんに会いにやってきて物語が始まる。こんなロマンティックで心の救済があって満たされるお話だったなんて!

私が読んだことある宮緒葵先生の作品は、ど執着でもはやサイコパス?みたいな攻めのお話だったので、
こんな甘々で受けに翻弄される執着攻めとは!

2つのお話があったけど、どちらもミステリー要素がとっても面白かった。水琴がどちらも魂を救うお話でマジ天使。

攻めの泉里さん、大人の落ち着いた男性なんだけど、無自覚に煽る水琴にメロメロで(……っ!この子って子はっ!やれやれだよっ)って何度も悶絶してるのがわかるシーンがあって面白い関係性。

はぁーーーー!面白かった。
続きが今日発売か、有難い。

0

在らざる者を描く画家の卵

2019年刊。
なかなかオカルト味があり、この話で初めて『黄泉戸喫(よもちへぐい)』という言い伝えを知った。

あとがきで『初めて書くタイプのお話』と語られているが、確かにイロモノ度はなりを潜めている気がする。
その一方で、いつもの微かな仄暗さも漂っている気はしたが。
宮緒さんの作品の攻め受けは、二人だけ(又は三人だけ)の世界で結ばれた幸せを貪っていればいいって閉ざされた感に浸っているイメージが強い。
しかしこの話は、第三者がきちんと裁かれたり救済されたりしていて、その後の生活も続く"未来が開かれている感"が目新しいなと感じた。


あらざる者を描く画家の卵と、パトロンとして庇護する存在の画商。
続編も決定し、水琴が高祖母から受け継いだかのような美貌と不思議な力を持つ限り、ゆくゆくはシリーズ化していくのだろうか。
それに付いて行くには、今後泉里と水琴がどんな変貌?を遂げるか次第になるかな。

ずっと田舎の老人達に可愛がられてきたとはいえ、両親に拒絶された生い立ちから水琴は引っ込み思案だと想像していた。
だが、若い男性・泉里に対しては警戒せずに初対面から随分と打ち解けている。
もしかして本来は物怖じしない性格なのだろうか。
今はまだ一途さ天然さが勝っているが、泉里や怜一の傾倒ぶりを読んでいると、将来水琴は当人の思いもよらないところで周囲に天女の如く奉り挙げられそうな気配がする…

また、今は過保護の域に留まっている泉里の干渉も、既に内心では水琴への独占欲が渦巻いている。
宮緒さんなりに異色に挑戦していくにしても、どうも従来の執着攻め×魔性を秘めた受けに行き着くきそうな予感がするのだが、果たして…

0

ひきこまれて一気読み

恐ろしげなタイトルとあらすじでなかなか手が出ませんでした。
しかし!読み始めたら一気読みでした。さすが宮緒さん。

オカルト的な面もありつつ恋愛と救済と再生と。
まさか冒頭の描写が狭間の世界の出来事だとは。

次の話が始まると思ったら、さらにおどろおどろしいタイトルで。

もう水琴は天使ですね。
男を虜にする容姿に無垢さ。そして自覚のなさ。
祖父の家にいる頃は微笑ましかったものの、泉里の元へ行ってからは、宮緒さんらしさを感じました。
身につけるものは全て攻めの選び抜いた高級品の王子様ルックで。

葬られた罪と真実を暴くところは爽快でハラハラしました。
勧善懲悪みたいでいいですね。
子を心配して離れられず寄り添う親。しみます。

そしてとうとう実体でのエッチ…。
今まで水琴が拒んできた理由も可愛いし、泉里の我慢や妄想もいいし。
現実では無体がなくて良かったです。

男殺しの水琴。泉里の鉄壁のガードで守られ続けることでしょう。

両親や周囲から気味悪がられはじき出された水琴を愛して守って応援してくれる泉里と出会えて本当に良かった。
怜一も救われて良かった。もうちょっと泉里の嫉妬を煽って欲しかったな。

無垢で美しい主人公と軍人のような攻め。
犬のタイプだと何だろう?主の命令だけを聞いて主を命懸けで守る軍用犬?
変態味はありません。精液をお尻にたくさん注ぎ込んで蓋をするような攻めじゃなくて良かった。

みずかねりょうさんのイラストも描き込まれててとっても良かったです。

2

悪食=黄泉竈食(古事記) 

2019年発刊、
とても面白い凝った趣向なのに、タイトル付けで失敗して読者に敬遠されていると思う、勿体ない。
タイトルの「悪食」って
事故に遭い昏睡したオクツキ泉里があの世で「よもつへぐい」を悪食=食べようとするところを
あの世に行った水琴が止めて蘇生させた場面のこと。
古事記が嫌いだとピンとこない、黄泉竈食の「悪食」。

巫女だった美貌の高祖母と瓜二つの美しい胡桃沢水琴は、善良なあの世のモノしか描けない画家。
見る人の心を掴んで揺すぶる何かを持つ絵を描く「妖精の画家」としてネットで大評判になる。

水琴は、死者の想いを伝えて人を導く、高祖母譲りの凄い霊能者。
「悪食」で、死者の気持ちを読み取り、失踪の真相と真犯人を暴いて、黄泉竈食の悪食を止め蘇生させる。
「密葬」では、死んだ画家の唇を読み取り、贋作を暴いて、放火犯人を逮捕。
・・と、短期間のうちに事件を解決していく水琴=「妖精の画家」のファン(信者)が増えていく様子が面白かった。

みずかねりょう さんの挿絵がとっても綺麗で素敵でした。
---
悪食(あくじき)
1 普通には食べない物を食べること。いかものぐい。あくしょく。
2 粗末な物を食べること。
3 仏教で、禁じられている獣肉を食べること。

黄泉戸喫/黄泉竈食ひ(よもつへぐい)
黄泉 (よみ) の国のかまどで煮炊きしたものを食うこと
「あの世のものを食べると、この世に戻れなくなる」
生きたままあの世に行っても、黄泉のものを食べれば黄泉の国の住人になる。

オクツキ/「奥津(都)城」=墓

死者を呼び戻す儀礼:魂呼び 反魂
人が死ぬと魂呼びといって死者を呼び戻す儀礼がある。
この物語は、水琴は手法儀礼を用いず、自分が行って呼び戻している。

2

攻めの恋愛的好きはどこからきたんだ…


最後まで消えなかった気持ちです。
攻めの受けに対する食べ尽くしたいほどの性的好きはどこからきたの?

一目惚れであろう描写や心奪われた受けの絵の才能。仲良くなっていく流れもきちんと書かれていますが、昔は女性と付き合っていたゲイでもない攻めが受けにベタ惚れ状態になるのがどうにもしっくりこなくて、蚊帳の外な空気感で読み進めてしまいました。

おまけにはわわとか言っちゃいそうな(イメージ)可愛らしい受けがどうにもヒットせず辛かったです。
もうこの手の受けにハマれる歳じゃないのかもしれない。
純粋で健気ないい子ちゃんなんだけど、やっぱり受けでも雄みはほしい。
ショタでもいけそうなこのかんじの受けと私の相性が悪かったです。


宮緒さんの作品は5作目ですが、攻めのアレは太くて長い超立派な率が高くて、お、今回もか!と微笑みました。お好きな譲れないポイントなのかな。


決め台詞かのように何度か出てくる「君がこのベッドで着られるのは俺の腕だけだ」に毎度引っ掛かってしまいすみません。
寧ろ泉里と怜一カプだった方が自分が盛り上がった気がしました…。
そんなことも思ってしまいすみません。

1

はやくヤっちまえ笑

デンジャラスなハイスペック執着攻めを期待してた。始まりがそれだったから。

そしたら何⁉️妄想みたいな⁉️実体ではないだと⁉️

実体は思った以上にジェントルメンなハイスペック執着攻めだった。肩透かし。

始まりが濃厚な情事だった割になかなかエロい事しないんだもん。はやくヤっちまえよ!って感じでせかせか読み進めました。

なかなかエゲツない悪者達が出てきます。
オカルトも織り込まれて面白く読みました。

しかし、どうしちゃったの?エロが実体で合体1回きりで幽体?よりも随分とノーマルだったのはちと期待ハズレだった。

どんだけエロ好きやって?嫌いじゃないし、好きで読んだよ。ただまあ前半と比べてしまったらこうなったんだよぉ。

0

流石の文章力

死者の姿をスケッチする主人公とあらすじにあったので、恐々しながら読みましたが全然怖くなかったです。
むしろ死者より生きている人間の方が、とても恐い作品でした。流石の宮緒先生です。
狭い世界で守られていた水琴が、広い世界に出て行こうと決心したきっかけは奥槻です。
不思議ちゃんな水琴の考えを先読みして、行動出来る奥槻はスパダリでした。
義弟の犯罪が暴かれるまでは下僕のような扱いでしたが、解放されてからが別人でした。

後半のお話しも生きている人間の恐ろしさが際立つ内容でした。ちょっと水琴の鈍臭いところが前半よりもイラつきました。奥槻が言っていたように小悪魔要素があると思います。
BLの主人公だから大目にみて貰えますが、違うジャンルならあざといキャラで嫌われそうだと思いました。





1

悪意ある生者と死者の無念

今回は東京の画商と死者の姿を絵にする青年のお話です。

受様の死者の視える力で攻様の母親の失踪事件が進展を見せる本編と
攻様の同業者の画商の両親の死の真相が解明する続編を収録。

受様は高祖母の美貌と不思議な力を引継いで生まれます。幼い頃から
人には見えない不思議なモノが見えていました。

彼らは陽炎のように揺らめいていて様々な場所でゆらゆらと佇んでい
ましたが、幼い受様が何度その存在を訴えても周囲の人間には気味悪
がられるだけでした。

そこで受様は誕生日に買ってもらったスケッチブックに彼らの姿を
描き貯め始めますが、真に迫った筆致で見えないモノを描き出す受様
は周囲から恐れられ、完全に孤立してしまいます。

受様は小学校に上がる前に彼らがこの世にいない人々で、自分以外に
は死んだ人の姿が見えず、見える事がおかしいのだと悟ります。しか
し、受様の目に映る彼らは在りし日を懐かしんでいるように感じられ、
彼らをスケッチする事が楽しくてやめられませんでした。

そんな受様を母は激しく拒絶し、父は母と受様との板挟みになり、
唯一理解し憐れんでくれたのは父方の祖父だけでした。祖父の祖母は
見えないものを見、聞こえない声を聞こえたと言われ、祖父の子供時
代には不思議な力を頼る者が多くいましたが、胡散臭いとつらく当た
る人々もいたと言います。

理解されずに苦悩する祖母の姿に受様を重ねたのか、受様を自分の住
む田舎の山村に引き取る事を提案します。その村に住む人々は祖父と
同世代の高齢者しかおらず田畑と自然しかないところでした所でした
が、受様を優しく見守ってくれる人たちばかりです。

受様は祖父の畑仕事を手伝い、東京よりもずっと少ないながらも村で
も漂っている死者の姿を絵が気ながらのんびりと過ごしていました。

ところが村に観光にやって来た夫婦が受様の画いた少女の絵をSNSに
アップした事から、東京の画商の目に留まる事になります。この画商
こそ今回の攻様になります♪

攻様は受様の絵から受様の才能を確信し、受様を画家として世に出す
べく手助けをしたいとやって来たというのです。そして描き貯めた受
様の絵を見ても絶賛し、画廊で扱いたいとまで言ってくれますが、受
様には自分がそれほどの才能があるとは思えません。

その上攻様には寄り添うようにぼやけた影が寄り添っていたのです。
その影は受様がいざ描こうとしたとたんに空気に溶けてしまい、描き
留められなかったことも気になっていました。

それから攻様は度々、受様のもとを訪れるようになり、受様も徐々に
攻様に慣れていきますが、ある時、攻様の務める画商の社長を帯同し
て村にやってきます。

社長は華やかな空気を空気を纏う人好きのする青年でしたが、受様は
彼の背後に禍々しく渦巻く黒いモノが見えて全身に寒気が走ります。
しかも社長はただの雇用主にしては攻様に馴れ馴れし過ぎ、攻様は痛
いくらい神経を張り詰めていて、印象がちぐはぐすぎるのです。

そんな2人の様子に耐えかねた受様はお茶を用意するからと席を外し
たのですが、戻った際に2人は通した客間にいなかったばかりか、
有名な画家の画いた掛け軸をかけた奥座敷で何やら言い争っていたの
です。

あの爺さんに気に入られているお前なら格安で仕入れられる。
それができないと言うなら、お前がご執心のあの子を俺に寄越せ。
裸に剥いて、初物の尻を思い切り犯してやりたいな。

受様は込み上げてきた悲鳴をすんでのところで呑みこみます。

攻様と社長の間には何があるのか!?
社長に狙われた受様に待ち受ける未来とは!?

雑誌掲載作であるタイトル作に続編を書き下ろしての文庫化で、死者
が見える力をもつ受様の絵の才能に惹かれた攻様が関わったことから
2人が不思議な体験をするオカルトミステリーになります♪

本作は受様が攻様に犯されているシーンから始まり、受様の過去と攻
様の過去が徐々に明かされて行きます。受様の死者を見る力は、攻様
に寄り沿っていた影の存在から攻様の母親の失踪事件の真相にまで行
きつくのですが、お話を読み進む間中、落ち着く先がどこなのか全く
わからず頁をめくり続ける事になりました。

そもそもどこがスタートのシーンなの!?と2人の関係の進展にワクワ
クしていたら、攻様の家族事情がけっこうヤバい!?とハラハラし始め、
受様が攻様に社長の自宅に連れ込まれてしまうと攻様自身がヤバい!?
とドキドキMAX!!です。

タイトルの意味が判って攻様が改めて受様に告白するまでたいへん
楽しく読ませて頂きました (^O^)/

天然過ぎる受様の言動で攻様が悶絶寸前なシーンがかなり萌♡でした。

今回はスパダリ繋がりで宮緒さんの既刊から『狂犬ドルチェ』をおす
すめとしたいと思います。こちらも宮緒風味満載なスパダリです♪

6

特殊な能力を発揮した事件簿

とても面白かったです。
あらすじだけでは分かりませんが、死者を描く青年と、
彼を愛する画商が活躍する事件簿みたいな作品です。


学校へも行かず田舎で絵を描く青年・水琴は、
死者の姿を描き出す事ができます。
その水琴の絵に魅了されて足繁く口説きにくるのは、
東京の画商・泉里です。

水琴は、人に憑く影も見ることができ、
その影は泉里の側にも……
交流を深め、二人はお互いに惹かれ合っていきます。

前半の『悪食』には、この世とあの世の狭間の世界が登場します。
〝あなたの知ら○い世界〟ばりの展開に戸惑いましたが、
その世界で水琴は泉里の執着愛を嫌ってほど身体に教え込まれます。

この時の泉里は普段の紳士的な態度からはかけ離れており、
きっと本能のままに行動してるんだろうな……
と思わせる執拗さと執着ぶりでした^^;
強引な攻め様が好きな方には堪らないかもしれませんが、
私はあまり好きではなかったです。

その世界で泉里に憑いている影が泉里の亡くなった母だと知り、
その訴えにより母の死の真相に迫っていきます。

これが一つ目の事件簿です。
本編はこの事件で終わりなのですが、
描き下ろしがそれを超えるほどに長い!

『蜜葬』
二人のその後が描かれています。
水琴は東京で絵の勉強をしながら、
泉里との同居生活をスタートさせます。

泉里の知り合いの画商・怜一に憑く二つの影とともに、
怜一の両親の死の真相に迫っていくお話しです。

二つの事件を通して水琴と泉里は心を通い合わせていくものの、
現実世界ではまだ一度も身体は結ばれていません。
水琴が天然たらしで思わせぶりな事ばかり言うので、
泉里は振り回されっぱなし(笑)
よくぞ理性を保っていられるな……と思うほどで、
泉里が不憫にさえ思えてきます^^;

一歩踏み出す勇気のなかった水琴は、
身の危険に陥り初めて泉里に抱かれなかった事を後悔します。
事件解決後は身体を許すのですが、
「最後までしてもらったら、気持ち良すぎて、おかしくなって嫌われるかも……」
なんてな事を言うもんだから、泉里はノックアウト寸前ですよ(^◇^;)
煽るよね〜‼︎

泉里は過保護で献身的な溺愛攻めだし、
水琴も素直に一途な思いをぶつけてきます。
相思相愛、入り込む余地なし……な二人がとても好きでした。

水琴が天然で泉里を煽り悩殺するので、
あまりの殺し文句に項垂れてしまう泉里が少し滑稽で、
そこも微笑ましかったです^^
泉里のキザなセリフも個人的にはツボでした!

ホラー系でも感動系でもないと思うのですが、
事件簿としても面白く、明らかに両片思いの二人がじわじわ進展していく恋愛も楽しかったです!

ただ、タイトルを「悪食」にしたのは何故でしょう?
少し内容とズレを感じてしまいました……


5

宮緒さん、ちょっと変わった?

あら?
宮緒さんの言葉廻しがちょっと変わった気が……
時代がかった言葉があちこちに散りばめられています。気の所為かもしれませんが。これが『この世の者ではない人を描く』という物語の雰囲気にマッチしていて、私は好きです。

不思議な手触りのするお話です。
『この世の者ではない人が見える』という登場人物が出て来るお話は結構沢山あると思うのですが、今作の主人公は『目に映るその人(?)を描いてしまう』のです。『描かずにおられない』と言った方が正しいかな。
水琴の目に映る死者は、誰かに何かを伝えたがっています。
その気持ちに揺り動かされて、水琴は絵を描く。
周りの人たち、挙句の果てには両親からも、気味悪がられ止められてもやめることが出来ないのですね。

宮緒さんのホラーって、人の性根の醜さ、怖さを見せつけられる様なものが多いと思います。今作も殺人事件がらみの話なのですが、死者を描く行為が水琴の優しさから生まれている為に読後感はとてもいい感じ。
そりゃあ、どんどん追い詰められていくホラーとか、人間の醜さだけをとことん書いている物語も面白いですよ。でも、個人的な好みとしては、話が一辺倒に進んで行くよりも間に笑いがあったり泣きが入ったりする、緩急がある物語が好きです。
最近の宮緒さんの本はそんな感じがするんですね。
偉そうな言い方になっちゃうかもしれませんが、また新しい段階に入られたような気がしました。

それでも、エロいのは変わらず。
私はこの辺がBL作家さんって凄いよねぇと思うのです。
何と言うか職人仕事的なものを感じます。
『軍人を感じる』というほどストイックな泉里が乱れる様(水琴はもっと乱れているんですけどね)は、なかなか読み応えがありました。

2作入っていますが、どちらも尺が長い割にはするする読めます。
萌えたかと言われればそこは今一つ。ただし、これはキャラの好みの問題で話自体はとても面白かった。
出来るものならシリーズ化していただけたらと思います。

3

絵を描く

宮緒先生だしみずかね先生だしマストバイ。静謐な印象の不思議テイストなお話がお好きな方には良いのではと思います。雑誌に掲載されたお話160P超+その続き170P超+あとがき。攻めはスパダリ系、受けは不思議ちゃんと感じ、お話は王道かなと思ったので、萌にしました。

祖父と二人で秘境と言われるほどの田舎で暮らす水琴(みこと)の下に、東京から画商の奥槻が訪ねてきます。彼はSNSで水琴の絵に目をとめ、絵を見せてほしい、絵を自分の画廊で取り扱わせてほしいと頼んできますが、絵を習ったことがある訳でもなく訳ありで中学しか行っておらず、SNSに触れたこともない水琴にしてみれば驚くことばかりで・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
攻めの義兄、義父、受けの祖父。後半では専門学校の友達、槇怜一(画商、イケメン♡)、槇の義父、義姉等々。前半と後半ではがらっと登場人物が入れ替わってます。

**内容に触れる感想

水琴は通常人には見えないものが見えてしまい、それを絵にしてしまう才能の持ち主。その絵が人を惹きつけて止まないものらしくSNSで大人気になっています。そして描いている当人が、絶世の美女だったと聞く高祖母に似て、めちゃくちゃ美人さん、そして世間知らずのうぶうぶさん=ほぼ妖精。男子の群れの中に放り込むと大変なことになると思われる方。また思ったまんま喋るんで、めちゃ攻めは煽られて、前半とても困ってました(笑)。

攻めさんはカッコいいスパダリ系で、絵以外の方面であからさまに口説いてはいないですが一目ぼれ、絶対逃がさないぞと思っていたに違いないです。遠路はるばる東京から画家として面倒みさせてくれと口説くべく、田舎へ通う通う、ご苦労様な状態でした。

お話全般がシリアス、特に前半は黄泉戸喫(よもつへぐい)を題材にしたものなので、くすっと笑うところはなく、攻めさんはひたすらカッコいい系でしたので、さらっと読み終わってしまいました。
攻めさんは受け一筋、何人たりとも触れさせるもんか的態度を、特に後半あからさまにしているのですが、べつに〇〇で臭い付けするというような執着変態系ではなかったので、変人好きな私としてはやはり物足りなく感じた次第です。

シリアスよりな不思議テイストお話がお好きな方でしたら、おススメ!です。

5

独特な世界観に引き込まれる

作家買い。

宮緒作品と言えば、ワンコを通り越したオオカミ攻め、のイメージが強いですが、今作品の攻めさんは程よいワンコ攻めさん。いつもの宮緒作品の執着攻めを期待して手に取ると、もしかしたら若干肩透かしをくう作品かもしれません。

『悪食』というタイトルにもしかしたら痛いお話かな?と思いつつ読破しましたが、『悪食』は、作中にも、そして宮緒さんが書かれたあとがきでも書かれていますが、「黄泉戸喫」を著しているのでしょうか。今作品はなんとも不思議で、けれど温かい、「死者」との関わりを描いた作品でした。





主人公は水琴。
まだ18歳の彼は親元を離れ、田舎に住む父方の祖父の元で暮らしている。
彼は「見えるもの」を絵に描く日々を送っている。
若いのにひたすら絵を描き続けている水琴に、祖父を含めた周囲の人たちは温かく見守ってくれている。

そんな水琴のもとに、一人の男が訪れる。
水琴の絵に惹かれ、絵を売ってほしいとやってきた画商の奥槻だ。

自分の絵に自信がない水琴だけれど、足繁く田舎に足を運んでくれる奥槻に少しずつ惹かれ始めて…。

というお話。

このストーリーのキモは、ずばり、水琴の描く「絵」です。
絵、というよりも、水琴が描く「人物」と言った方が良いかも。

水琴は、


ネタバレ注意!!






**************************************************

死者を見ることができるんです。
その死者を、絵に描いている。

その水琴の能力が原因で、彼は親からも気持ち悪がられ、友達もいないという孤独な日々を送ってきた。
そんな水琴を気の毒に思った祖父に助けられる形で田舎へ引っ越してきたという過去がある。

が、水琴が持っている能力と、そして祖父が水琴を心配する思いは、実はつながってるんです。

なぜ水琴は死者を見ることができるのか。
祖父の水琴に向ける思いはどこから来るのか。

その謎を追う形でストーリーは進みますが、BL作品なので。
そこに当然「奥槻」という男性の存在も絡んできます。

奥槻にも、秘密があるんですね。
その秘密とは一体何か。

その秘密を、水琴が持つ能力で解き明かしていく。

死者が登場したり、水琴が死者を視ることができる、というバックボーンではありますがオカルト感はほぼなし。

水琴が死者を視ることができることがきっかけとなり、いくつかの事件をも解決していきます。

ミステリーや刑事ものではないので、この「解決方法」がなんとも温かい。
悪者(というか犯人というか)逮捕に比重を置いた作品ではなく、水琴の持つ力によって、人が救われていく、というお話なんです。

それを、スパダリ・奥槻さんが陰から日向からサポートする。

ストーリー、バックボーン、攻めさん。
すべてめっちゃツボで、どうストーリーが進んでいくのかページを捲る手が止められませんでした。いくつかの謎を水琴は解明していきますが、少しずつつながっていて、ストーリーに奥行きがある展開なのはさすが宮緒さんというべきか。

みずかねさんの書かれた挿絵も美しく、この作品の持つイメージにぴったり。

がしかし。

受けさんが今一つツボに入らなかった…。
天然ちゃんにもほどがあるぜ!って感じ。

おぼこい、天然ちゃん、まっさらさん。

言い方は様々あれど、ちょっと度を越してる気がします。彼がもう少ししっかりしている青年だったら神評価だったんだけどな。こういう可愛らしい受けさんがお好きな方は多いでしょうし、完全に好みの問題ではあるのですが、個人的にはもう少ししっかりした受けさんが好きなんです。

そして、登場する人物すべてが水琴の魅力にドはまりする、というのも微妙。
彼がそこまで人を引き付ける人物には思えなかったのが残念でした。

奥槻さんが程よいワンコさんなためか、宮緒さん作品にしてはエロ度はやや控えめ。
濡れ場に突入するといつもの宮緒さんらしいエロは発揮されていますが、とにかく奥槻さんが水琴を大切にしているためにひたすら我慢する描写に激萌えしました。

この作品の持つ世界観は非常に面白く、続編を作ろうと思えばいくらでも作れる気がします。

ということで、ぜひとも続編を書いていただきたいと思う1冊でした。

6

受けが光属性じゃなかったら、果てしなく闇堕ちしてたと思います

強烈なタイトルに死者の姿を視る主人公と、闇が深めの作品に見えそうですが。
実際は、包容力がある溺愛攻めに純真で真っ直ぐな主人公と、そこまでダークじゃないです。
後半の書き下ろしに至っては、かなり甘めで可愛く仕上がってたりします。

宮緒作品の凄まじい執着攻めも好きなんですけど、個人的には今作くらいのマイルドな「執着ぶり」が一番好みなんですよね。
とても良い執着溺愛攻めだと思います。
いやまぁ、彼がその執念でもって、受けをとある状態に引きずり込んだエピソードはちょっと怖かったけど。
これ、後から気付いた時に、ゾッとくるヤツですよ。
かなりヤバかったんじゃね?と。
受けが光属性じゃなかったら、果てしなく闇堕ちしてく作品になっちゃってた事でしょう。

ザックリした内容です。
死者の姿を視る事から、周囲に疎まれ田舎の祖父の元に身を寄せている主人公・水琴。
彼が描く絵に魅了された銀座の画商・泉里により、熱心に才能を世に出す事を口説かれるんですね。
足繁く通ってくる彼と過ごすうちに、その人柄に惹かれてゆく水琴。
しかし、自分の描いているのが「死者」の姿だとは言い出せずー・・・と言うものです。

まずこちら、純真で真っ直ぐ、ちょい天然な主人公・水琴と、穏やかで包容力がある攻め・泉里と言うカップリングになります。
で、この水琴ですが、絵に関して非凡な才能を持つのですが、彼が描けるのは「死者」の姿だけと言う特殊設定。
また、そんな彼の才能に惚れ込んだ泉里ですが、彼は彼で紳士的で包容力がありと完璧に見えて、実はとある重荷を抱えており・・・と言った感じでしょうか。

これ、見処なんですけど、泉里が凄まじい執着を見せる事となる、二人だけの不思議な世界ー。
ここだと思います。

泉里には決して逆らえない、画廊のオーナーで義弟である男がおりまして。
彼が水琴に目をつけ、自分に差し出すように命令するんですよね。
すると、追い詰められた泉里が望んだ事は・・・って感じで。

いや、まさに二人だけの世界で、何も不足の無いとても素晴らしい所に思えるんですよ。
そこで、思うさま水琴を激しくむさぼる泉里。
そして、服すら与えられず、意識が無くなるまで犯される水琴。
個人的ですね、こういう展開が大好きなんですよね。
受けが朦朧とするまで、と言うか意識を無くしてまで求め続ける攻めと言うのは、それだけでゾクゾクきちゃう。

で、そんな中、この世界に強い違和感を覚え、更に出てくる「料理」に対して、強い拒否感を覚える水琴。
共にここから出ていく事を訴えますが、泉里はこの世界に固執し・・・と続きます。

これ、しつこいですが、後からゾッとくる系ですねぇ。
本当、光属性の受けで良かったねぇと。
いやまぁ、個人的には、このまま闇堕ちでも楽しいけど。

ここまでが雑誌掲載作で、この後に書き下ろしで二人のその後になります。
この書き下ろしですが、東京に出てきた水琴との、甘々同居生活編。
泉里の溺愛ぶりがすっごい事になってる!
そして、その能力により大活躍する水琴と、なんかやたら甘いし爽やかなんですよね。
てか、ここでちょっとしたスレ違いもあるんですけど、もう「おいおい」と言いたくなっちゃう、可愛いスレ違い。
このバカップルめ~!!みたいな。
甘いですな。
ひたすら甘いですな!

そんな感じの、個人的にはとても好みの溺愛執着作品でした。

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