電子限定おまけ付き
夜は終わって朝になり、やがてあたりは明るくなって行く。そう、明けない夜は無いのだ。
これは閉じられ燻っていたかんちゃんの心の救済の物語。
一読した際は、「ええーっ。(長らく)待ってたのに。これだけ⁈ これで終わり⁈」という肩すかし感があったものの。何度か読み返してみるとやはり涙。頬を伝う涙に驚かされてしまうのだ。
林田さんの、恋人に暴力を振るっていたという過去は消えない。それは懺悔したところで、恋人だった弓が許したとしても。決して。当の林田さん自身がそれを許せないのだ。その事自体が胸を締め付ける。悔恨の苦しみの中で林田さんは孤独だ。また、恋人を傷つけてしまうかもしれない自分にずっと怯えて過ごさなくてはならない。(かもしれない。)その気持ちを本当の意味で悟った秀那。恋人の苦しみをただ見守るしか無いという苦しみ。
遠恋中の秀那は偶然行ったバーで、林田さんの元恋人・弓と出逢う。そしてこれまた偶然、美しい弓の背中に押し当てられたと見られる煙草の火傷痕を見てしまう。
弓は言う「俺のは見えるだけだから。」その傷は跳ね返って林田さんにも付いている、筈の傷。痛み。苦しみ。目の当たりにした事で、この傷がどんなにか深く林田さんを傷付けているのかを知る秀那。どうしようもない、どうも出来ないんだよ?という事に、こんなにも胸が苦しくなるのかと、涙しました。
決定的なドラマがあるわけでは無いんです。
「好きだから、支えたい。」という秀那の気持ち。
「好きだから、その手を離したくない。」という林田さんの気持ち。
それが互いに信じられるものだと分かり合えたから。
林田さんはまた。前を向いていこうと思える様になる。
ひっそりと思い出の中で。弓がかんちゃんの笑顔が好きだった事を思い出すシーンが美しくて好きです。別れた頃のかんちゃんは怒っていて怖い顔ばかりしていたけれど。高校生の時、確かにかんちゃんは笑っていたし。そんなかんちゃんの事を自分は本当に好きだったのだと。(涙ーーー‼︎)辛くて悲しいお別れに終わった恋かもしれないけれど、弓にとっても後悔しただけの恋では無かったのです。と、いうことが分かって嬉しい。嬉しいよ‼ ︎私は‼︎
いつも弓にした酷いことを決して忘れない様にと、弓との写真を壁に貼っていた林田さんが、弓から貰ったアルバムにそれを仕舞う。林田さんは一生その事を忘れる事は無いけれど、これからの為に一区切りするのだ。そしてこれからは。いつも、では無くて時々それを見返す事になるんだろう。というラストにはホッとさせられます。
秀那がいつ何時も、そんな林田さんを愛し抜く。と決意した瞬間もいい。めっちゃ喋ります‼︎ けど、言葉にしてこそ、ですもんね。
最後に甘あま後日談。指輪を贈るってのも。いかにも秀那がしそうな感じで良いですね。ところで秀那の転勤はいつ頃終わるんだろう? これってまだまだ続くのかな。
どこかでちょこっとショートストーリーになってお目見えしそうな予感ですね。
エッチはさすがのエッロエロ。林田さん初めての潮吹き、アレはお漏らしなんじゃなかろうか?疑惑がありますよねぇ。
描き下ろしのエロ下着編も、秀那ってノンケの筈だったんですけど、もはやフツーに変態さんの域。彼のエッチにかける情熱には驚かされますが、怒りながらも満更では無さそうな林田さんが可笑しみ。
この一連の作品をかんちゃんの物語として読んだ場合、こんな美しい終わり方があるのかと思った。
かんちゃん…林田さんは、過去を抱えながらも秀那と幸せになる道を選んでくれた。
私にはどうしてもかんちゃんが加害者一辺倒とは見えなくて
それ以前に家族から経済的DVを受けていたし、ブラック企業で激しい暴力を受けていた。
二重に被害者である…というか、その被害がなければ果たして林田さんは弓に暴行を働いたのだろうか?
ウィキペディア先生を読むと、DVは「男はこうあるべきだ」という偏見が強い人ほどDVに寛容であるという傾向が東京都やWHOの調査でも指摘されているそうだ。加害者は何らかの精神疾患にあるとして、治療やカウンセリングの対象として捉えるアプローチも試みられているそうだ。
林田さん自身も何らかの治療を受けるべき人だったと思う。
しかし、林田さん自身も周りも、そんなことには気づかない。
弓はサンドバックになって林田さんを受け入れ続けていたが。
弓と別れた後、身体だけの関係と言いながら秀那を求めたのは、林田さんの自傷行動でもあり
自ら救済を求めていた結果なのかと思いました。
秀那とぶつかりながら強い信頼と愛情関係を結んでいき
秀那によって弓との関係まで救いをもたらされるなんて、
秀那、よくやった!ありがとう・・・と思いました。
かんちゃんと弓が再び会わず、写真によって幸せな頃を思い出したのが本当に良かった。
一生再び会うことはないだろうけど、かんちゃんにも弓にも幸せになって欲しい。
過去に大きな過ちを犯したとしても、心から反省し、そして自らに恐怖を抱えながら生きる林田さんの傍らにずっと秀那がいて支えて支えられて生きていって欲しいと思いました。
最っ高でした!
待ちに待った下巻の発売……
最終話掲載から1年近くかかりましたね^^;
ラストが連載時のものと違っていて驚きましたが、
私はコミックスのラストカットがとても気に入りました!
ネタバレなしで読んで欲しいので、
ちょっとした感想だけ書かせていただきます。
かんちゃん、秀那、弓のそれぞれが色々な思いを抱え、
自分なりに答えを出します。
弓の思いに触れた時には涙がこぼれました。゚(゚´ω`゚)゚。
弓はかんちゃんに〝昔みたいに〟笑って欲しかったんだね。
でもそれって、〝今の〟かんちゃんを受け入れられなかったってことなのかな……
すれ違ってしまった気持ちがとても切なくて、
胸が苦しくなりました。
秀那の答えは、とてもシンプルでした。
かんちゃんを諦めないでくれてありがとう……と言いたいな。
かんちゃんの頑なさは最後まで崩れなかったけど、
それがかんちゃんの答えであり、
自分に対する戒めでもあり、
秀那と一緒にいるための努力なんだと思います。
早く読みたいような、でも読み終わりたくないような複雑な気持ちでページをめくりました。
そして、読み終わった後も何度も読み返してしまい、
素敵なラストには何度読んでも胸が熱くなります。
シリアス展開の中にクスッとくる面白さもあり、
番外編・描き下ろしはとても楽しかったです。
特に、パリコレには笑った^^
Hはそれほど多くないけど、かんちゃんがとにかくエロい!
あのお兄さん、自分で潮吹きしちゃうんだもん(笑)
Renta‼︎で購入ですが、修正がとても甘かった!
分かってるねー‼︎と、
修正した方を褒め称えたい気持ちになりました。
何度も言いますが、とにかくエロい♡
最後になりましたが、素敵な作品をありがとうございました。
おげれつたなか先生大好きです(๑>◡<๑)
次回作も楽しみにしています!
うろ覚えですが連載時からの加筆シーンがいくつかあったのでメモ的に。
・第9話冒頭、弓目線での回想シーンはなかったような……このシーンが入ることで弓の考えていることや、アルバムを渡した後の表情の意味が伝わりやすくなったように思います。(間違ってたらすみません)
・ラストシーン、連載時は
アルバムに写真を閉じる(まだ合鍵・指輪は渡さず)→秀那を駅に送る→駅のホームで電車に乗り込むギリギリで秀那がかんちゃんに鍵と指輪を渡す→電車に乗り込んだ秀那の腕を引っ張り「ちゃんと渡せ」みたいなことをかんちゃんが言う→駅のホームで指輪をはめてend
だったように思います。
朝の人のいないホームで指輪をはめるシーンはとても美しく、大好きな終わり方だったのですが
その代わり、アルバムに写真を閉じるシーンが割とアッサリと描かれていて少し拍子抜けした印象だったため
今回、弓との思い出を振り返りながらも秀那に救われたようなかんちゃんの笑顔を見ることが出来て本当によかったです。
上下巻の作品はほとんどが同日発売なのですがこの作品は下巻が出るまでに2年もかかりました。待っていた…この日を……待ち疲れた………
「ずっと弓が笑っていればいい。俺がそうできればいい」と思っていた林田さん(上巻参照)と「どんなに寂しくてもかんちゃんが笑ってると楽しくなった」と過去を思い返す弓。林田さんは弓が付き合っている人と一緒にいると知り安堵の笑みを浮かべ、弓は林田さんがまた笑えている事を知り嬉し涙を流し…結果的に2人は上手くいかず離れてしまいましたが、林田さんは弓にしてしまった事も、友達であり恋人だった楽しい時間も忘れず前に進む。きっと誰よりもお互いの幸せを願っているはず…
過去に恋人に暴力を振るっていた人間が新しい人と恋に落ち幸せになる…なっていいのか……私も上巻まではそこがかなり引っかかっていて、DVしていた人間に幸せになる権利なんて無いと正直なところ思っていました。なかなか難しい題材ですが、おげれつ先生らしく前向きで未来あるように締めくくれるのが流石おげれつ先生の手腕だなと感激しました。
秀那からアルバムを渡された時の「アイツらしいな」と弓を想う表情も、写真を楽しそうに貼る秀那を見つめる表情も、大切な人を見つめる林田さんの笑顔はとても穏やかで素敵ですね!今まで辛い思いをしてきた分、これからは秀那とたくさん笑って時には泣いて…幸せな日々を送ってほしいです。