SS付き電子限定版
とても素敵なお話でした。
読み終わって、余韻に浸っています。
先生、ありがとう。
500年以上、生きたまま伝説の剣に捕らえられてしまっていた竜✕その伝説の剣を抜いた、祖国滅亡の敵への復讐を誓った青年、の物語です。
決して「壮大な」というストーリーではありません。
でも、大きな山場の間に絶妙な配分で中小の山場が挟まれているんです。
だから、ホッとしてると切なくさせられ、ほのぼのしてると心臓バクバクさせられ、と。
本当にいい意味で気が抜けませんでした。
そして、終盤のそれぞれの救済シーンは、涙無くしては読めません。
頭の中に情景が浮かんできて、その情景が自分で言うのも、なのですが、あまりにもキレイで感動しました。
だって、色が見えるんですよ、文章を読んでいて。
もうコレ、映画化しようよ〜、と思ってしまいました。
この作品を読んだ方は、賛同してくれるんじゃないかな。
深い悔恨と懺悔の過去に囚われた二人の、成長を見守らせていただいた満足感でいっぱいです。
ファンタジーBLに食傷気味だった最近の私の頭、ガツンと一発くらいました。
悲しい過去をもつ一人と一匹の冒険のお話。
旅のなかで少しずつお互い心を開いていく感じがとてもいいです。
「復讐」というワードから想像していたよりはそれほど重暗いシリアスなお話ではなく、ちょいちょいシリアスをエピソードはありながらも、基本的にほのぼの甘い雰囲気だったように思います。
復讐相手となる敵の謎が謎なまま終わったのがちょっと気になりましたが…2人が可愛くてすごく幸せな気分になれたので、買って良かったなと思います。
謎の黒い霧に国ごと滅ぼされた国の唯一の生き残り。
『救いの子』として神殿で大切に育てられながら何もできずに一人生き残ったことで、仇を討つことだけが生きがいで旅をしていた青年シルヴィエルが主役の物語です。
人を喰い殺す乱暴な竜の一族が全て滅ぼされ最後の一匹は勇者が刺した『英雄の剣』によって大地に刺し抜かれたまま500年以上生き続けていました。
シルヴィエルが勇者の剣を台地より引き抜き自由を得た竜はなぜかシルヴィエルになつき共に旅をするという。
一緒に復讐を果たすと言い出す竜の真意はわからないまま人懐こい竜との旅の中で大切な人を全て失い凍りついた心が溶かされいつしか仇を討った後も共にいたいと思うようになっていくのでした。
シルヴィエルが妖剣に力を奪われたり黒い霧に襲われた時に『竜の雫』を摂取することで治癒できるという竜の言葉を信じ、口付けやハグや交尾のような行為をして回復するたびに「これは治療」と唱えながらも後ろめたい気持ちになるところが可愛かったです。
この物語の神様は平等でも博愛でも無く無知と思い込みで一方的に罰を与え苦しめる存在のように思います。
濡れ衣で虐殺されていった竜の一族が哀れで仕方ありません。
本当に弱者を助ける神がいるなら虐殺された竜を助ける人間たちこそ罰するべきなのではないのかと思えて。
それでも竜を友として彼らに罪がないことを信じて寄り添ってきた人間がいて言い伝えることを忘れない一族の存在はせめてもの慰めでした。
失われた国の廃墟で竜とシルヴィエルがいつまでも仲良く平和に暮らせることを祈ります。
そしていつの日にかその亡国の地に再び人が住み良き国が栄えてくれたらいいのにと思います。
578年間「英雄の剣」で刺されて動けなかった竜と、その剣を抜いたシルヴィエルが出会ったことで始まる物語。
最初は竜を信じられず、常に疑いを抱いていたシルヴィエルでしたが、だんだん交流が深まるにつれ、竜に信頼や愛情を寄せるようになります。
その過程がとても好き。
お互いに同じような背景を抱え生きていた彼らは、お互いの「弱み」や「他人には見せない部分」をさらけ出し合って打ち解けていきます。
はじめは剣によって吸い取られた力を補給するための行為である抱擁でさえも嫌がっていたシルヴィエルですが、いつの間にかそれを超えたキスや行為まで受け入れるようになります。
二人の打ち解けてゆく様を見ていると、とても温かい気持ちになります。
ここが私のホームタウン・・・
わたしはこんな温かいBLが読みたかったんだと思います。
これからの二人の旅にたくさんの幸せが訪れますように。
テクノサマタ先生の素敵なイラストとともに月東湊先生の温かい作品を読むことができて本当に幸せでした。
作者さんの最新作を読んではまり、こちらも読んでみました。
すごかった、とっても読み応えがあり、長い物語を読んだような不思議な充実感があり。
シルヴィエルが悲壮で破滅的で泣くことも笑うことも心を開くこともできずに、敵をうつことだけを考えて生きてきたのが…。
毎晩悪夢にうなされ闇を怖がり。
竜に刺さった大剣を抜いたことで、竜についてこられて。
誰も信じないシルヴィエルが竜と旅をするうちに、過保護な竜によってどんどん本来の自分らしくなって。
精霊や妖精や竜などが登場するファンタジーで、旅の相棒は竜なのですが、人間にもなれて愛嬌がありニコニコして頼りになって。
いつの間にか竜に後ろから抱かれてスヤスヤ眠れるようになり。
二人がどんどん仲良くなっていくのや、シルヴィエルがどんどん竜に心を開いていくのが、そしてドキドキするようになるのがとっても良かったです。
そして竜の力を借りて復讐を遂げて。
竜はなぜか先の話をしても答えてくれなかったのは…。
そんな覚悟で助けてくれたの!
シルヴィエルをもう仲間より大切になったのに。
今度はシルヴィエルが竜を助ける番です。
竜の何百年もの悔恨が晴れて。奇跡が起きて。
ああ、良かった。これでお終いかな?と思ったら!
夏は北へ冬は南へ、東も西も二人で旅をしよう!ここを拠点に新しい君の故郷だよって。
晴れて恋人同士になったら竜はシルヴィエルに甘えて子供みたいで。
それに竜の体液は竜の雫と呼ばれる万能薬で。
これはいいですね!
シルヴィエルもどんどん竜の仲間に近づいて。
二人が失った人たちと二人が罪だと思っていた事が、それぞれの形で再会できて、罪ではなく感謝されてて。
竜の人間味あふれるところ、意外とエッチに積極的なところ、二人が種族を超えて愛し合うところ、みんなとっても良かったです。
竜は約束を守る、幸せを大事にする。
その通りですね。