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ケモミミの使い方(活かし方)が面白い作品だった。考えさせられる系な側面もありつつ、主人公の変化やBLもしっかり描かれており、読み応えアリ。悪意の匂わせはあっても、悪い人は出てこないので読みやすい。読後感も良かった。
理人は雨の音にトラウマがあったり、両親に言えないわだかまりがあったりと、苦しい事情を抱えている。加えて隠しているがΩなこともあり、情緒不安定になりやすく、事あるごとによく泣いていた印象。
思い込みで勝手に悲観することも多く、そのわりにはフェロモンで誘惑しようとしたりして、前向きか後ろ向きかどちらに暴走するか分からない。仕事とプライベートでのギャップが激しく、ある意味素直だけど、口は素直じゃない。
汐見はふらふらしているようで仕事デキそうな雰囲気が伝わってくる。理人への対応を、他の人に相談して慎重に進めていたのはちょっと意外だったかな。改まって謝罪するシーンが何度もあり、中身は誠実な人っぽいと感じた。
ストーリーは、いろいろと勘違いしたままの理人視点で語られるので、片思いの切なさと確認しないもどかしさを適度に味わえる。汐見の反応はわりと一貫して理人に構ってもらえると嬉しいって感じで良かった。
告白シーンは前後の理人のギャップがすごい。あんなに怒鳴り告白みたいなことしてたのに、両想いになったら可愛くなりすぎ。ここぞとばかりに調子に乗る汐見にも笑った。
苦手だったのは、若干説教臭く感じるところがあった点。現実問題にリンクする表現もあったが、時々刻々と主流となる意見が変わる現代で、今この主張を見ると時代を感じる。社会への責任転嫁が見えた時点で冷めた。
汐見と理人のBLも良かったが、汐見の仕事への思いや来栖の生き方など、理人に影響を与える事象の描写もすごく良い。それらを素直に受け止める理人も素敵。応援したくなる主人公だと思う。
海野作品の中でもかなり大好きな作品!
アンリミに入っていたので、久しぶりに読み返しました。読みやすくて読み応えがあってちょっぴり切なくて優しいケモ耳オメガバースです。
大好きな作品ほど言葉にできない現象ってありますよね…。
作品紹介や読みやすい感想は既に多くのレビューがありますので、自分はネタバレ含むただの感想を順不同で書き連ねようと思います。
こちらの作品は、とにかく!
普段ツンツンしている受けのかわいさがちょっとかなり超弩級に可愛すぎて!!
終盤に「可愛い…可愛すぎる…」と唸り続ける攻めの気持ちに大共感。
会社ではキリッとしすぎているくらいなのに、ヒートになったときや攻めと二人きりのときの無自覚で素直な甘えたっぷりよ!!!
中盤までの展開で、受けの理人が不安定になったり、心が乱れてネガティブ循環に陥ってしまうのも理解できるし苦しい。が、それを乗り越えた先の攻め汐見の包容力たるや。。
理人の不安定さにハラハラしつつ、汐見のブレない佇まいに受けと一緒に安心感を感じてしまう。
エロは少ないけど甘くて濃いです。最高です。
それにしても、ケモ耳とオメガバースをこういう設定で使うんだって目からうろこでした。恋愛だけでない作品の底に流れるテーマもきちんとしていて、オメガバだけど地に足のついた作品だと思います。
最後に、脇キャラの後輩来栖くんもいいキャラしてました。来栖君で一本書いて欲しいなぁ~。彼はなにか良い恋愛してそうな気配がするww
再読しての感想です。
「ウサ耳オメガは素直になれない」
タイトル通り、受けの理人(ウサ耳オメガ)は職場ではとてもツンツンしてます。
素直うんぬんというより、もともとの顔の作りもあり怒ってるように見られることも多々。
言葉遣いもきつい。
同い年とはいえ、中途入社だし、汐見に対する話し方はちょっと敬意がなさすぎる…
口調はそのままとしても、せめて敬語がよかったのでは。
でも心の内側はとても繊細で、家でひとりになると、ときどきウサギの本性が出てしまい、涙ぽろぽろ、寂しい、悲しい気持ちでいっぱいになり、自分でもどうしようもなくなってしまうこともあります。
外では、本性がバレないように虚勢をはって、毛を逆立てて(ウサギがそんなことをするかはわからないけど)威嚇してるような感じなんですね。
小さい頃の事故で、否応なくオメガの象徴であるケモ耳を切除されてしまい、心の傷になっている理人は劣等感のかたまりです。
いいないいなと、堂々とケモ耳を見せているオメガをみては羨み、心のバランスを崩してる。
自分が選んできたこと、頑張ってきたことを土台から否定されているような気持ちになるのかな。
本当はすごく根性のある頑張り屋さんなのに。
「理人」という名に恥じぬよう、感情に揺らがさず理性の人であろう、という気合いがまた自分で自分を追い詰めて…なんて不器用すぎるのか。
汐見は態度の悪い理人にもいつも怒ることも動じることもなく、優しくおおらかで、仕事の能力も高い人。
ふつうなら、雷雨に怯えて別人のようにぷるぷる怖がる理人を見たら、普段とのあまりのギャップにものすごく戸惑ってしまうと思うのだけど、そんなときでもきちんと受け止めてくれます。背中を撫でたり、優しく抱っこしたり、まるで本当に小動物を可愛がっているようになだめる汐見に萌えます。
自分に自信を無くして弱りきっている理人は、つい誘惑に負けてヒートのフェロモンで汐見を誘惑しようとしますが…なぜかアルファであるはずの汐見には効きません。
というのも、じつは汐見はベータだからなんですが。
来栖はとても良い子でした。
ケモ耳を誰にも否定されない恵まれた環境で生きてきたのかと思いきや、しっかり自分で戦ってきた来栖でした。
当て馬どころか、彼がいちばんの功労者では。
そんな来栖に感銘を受けて、周りのせいやオメガのせいにばかりするのではなく、自分が変わらなければと動く理人。
垂れ耳のつけ耳つけた理人、すっごく可愛いです。
勘違いや思い込みを乗り越えて、ようやくふたりは結ばれます。
あまあまで幸せになれてよかった!
でも、やっぱりなんだか一番印象に残っているのは来栖なんですよね。
(汐見はあんまり揺らがないから最後のほうまであまり気持ちが見えないし、逆に理人はずっと不安定すぎてハラハラした)
来栖が乗り越えてきたものや、きっと心にまだ抱えているはずの弱さや葛藤なんかも、いつかスピンオフなどで読めたらな。
うっわー!
久しぶりに文章飛ばし読みしてしまいました!!
ソワソワしすぎておもしろすぎて先が気になりすぎて!!!
お互い好きですよね?って感じなのにまぁ縮まらない距離…!
やっと理人が汐見に対する恋心を受け入れられたと思ったら、同じオメガだけどありのままで自信たっぷりに生きている来栖君の登場…!
今作ではオメガはケモ耳を持っていて、それがキーポイントになってお話が展開していくわけですが。
8割くらいでようやく結ばれ、ギャップ萌えに汐見でなくともやられましたw
ケモ耳設定が私には違和感しかなくてこの評価になりました。
ただ、BLやオメガバースという以上に、自己決定権とかアイデンティティとか、盛り込まれたテーマが深いなと思いました。
ありのままの自分があたかも劣った存在であるように思わされてしまう周囲の目(両親を含めて)。
自分の体のことを自分で決められなかった悔しさ。
劣等感。
先天的な障害を持つ人や、後天的に体の一部を失った人の心情にそのまま置き換えられるような気がして考えさせられました。
このお話の場合、主人公が失ったのが象徴的な部位だったので、作者様の身近で婦人科の手術を受けた方がいたのかな、などと思ってしまいました。
それくらい、主人公が抱えているものをBLのスパイス的な要素としてではなく、真剣に取り扱っているという印象がありました。
あと、親が良かれと思って子どもに手術を受けさせるなんて、めちゃくちゃありそうなことじゃないですか。
我が子であっても体と人生は本人のもの。
説明と同意は大事だなーとか思ったり。
色々考えさせられるいいお話なのですが、ファンタジー世界ならともかく、現代日本にケモ耳は合ってないなーと思いました…