【電子限定おまけ付き】【イラスト付き】
2021年刊、タイトルにある『王と王子』にピピっときた。
挿絵も好きなレーターさんが受け持っているし、久々に新刊に目が向いた。
既に自分好みの年上攻め・年の差、見栄えのいいカップルって事で満足度が満たされつつあったので、オメガバース設定は無くても良かったかもねって考えだったが、読み進めるにつれて浅はかだったと気がついた。
むしろこの話はオメガバースの概念が作中に上手く溶け込んでいるからこそ面白い。
攻め受けがアルファ同士って組み合わせもいいものだね、他にもアルファ同士のカップルものを読んでみたくなった。
受け・士貴が顔、頭の良さ、家柄に恵まれながらも自惚れるどころか周りに気を遣う性格は、従来のアルファ像(自信に溢れ周囲に羨望される)とくい違っていて気になった。
士貴の双子の姉がオメガで病弱なのが不憫だからって理由から彼女中心に回るのが当然で、同じ家の子なのに蔑ろにされるって家庭事情は痛ましい。
そんな士貴の転機は大学祭講演の交渉がきっかけとなった神門(みかど)との出逢いだった。
神門のほうが士貴にベタ惚れなのがまる分かりで、交際と同時に婚約、同棲へと持っていくせっかちさも微笑ましく見える。
地位も風格も申し分のないアルファである神門に尽くされて戸惑う士貴だったが、次第に彼に惹かれる気持ちがしっかりしたものになっていく。
そんな一方で、自身の事よりも常に神門の多忙さを気に掛ける優しさも光っている。
しかしまぁ、士貴の姉や家族が彼の幸せを踏みにじる行為に出るとはね…
(あれは不意討ちのトラブルではなく、姉が故意に仕掛けたものだと勘ぐってしまう)
肝心の神門が思惑に嵌らず士貴を救い切った山場には心底グッときた。
自分はこのシーンが大好きで、何度も読み返してしまう。
確かにオメガバース上ではアルファとオメガの結び付きこそが最強だし、オメガの発情期に左右されやすい危うさもある。
それでも『運命の番よりも大切なもの』として、この後に続く神門の真の告白こそ強くて尊いものだった。
作家買い。
小中さんはコミカルなものからドシリアスなものまで書かれますが、どの作品にも共通しているのは緻密で繊細に描かれる登場人物たちの心情とストーリー展開のお上手さ。その手腕でグイグイと作品の持つ世界観に引きずりこまれてしまう。
今作品は小中作品としてルチルではお初となるオメガバースもの。
しかも、アルファ×アルファというCP。その設定だけでおかわり3回いけるなーと思いつつ読み始めました。
ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公は大企業の御曹司で大学生の士貴。
実家は金持ち、アルファで、見目麗しく優秀な彼は王子とあだ名がついている。性別問わず、セックスを伴う友人も多い。
けれど彼はその「入れ物」を裏切る根深いコンプレックスを抱える青年でもある。
そんな彼は、大学の文化祭の手伝いをしていてとある有名な人物と繋がりができる。20代で起業し大成功を収めた若きビリオネア・伊王野。アルファらしい才能あふれる彼に傾倒していく自分を自覚する士貴だったが、ある日酔った勢いで伊王野に抱かれてしまい―?
というお話。
金銭的な苦労もなく、アルファらしい才能に恵まれており友人も多い。
けれど士貴は実家が苦手で家に帰りたくない。
そのため友人宅を転々とする日々を送っていて、その中には身体の関係もある友人たちもいる。
んー。
ボンボンらしい我儘?反抗期?
と思いつつ読み進めました。
そんな彼のお相手は、こちらも優秀なアルファである伊王野。
若きビリオネア、と言われてはいるものの、彼自身はオメガの母を持ち苦労した経歴もある。自身の能力一つで世界にのし上がっていった、そんな男性。
だからこそ、士貴が伊王野に心酔していく、その過程に無理がない。
が、そこで収まらないのが小中作品か。
伊王野の能力と人の心にするっと入り込む人心掌握術、そういったものに憧れを抱く士貴の、その根っこが、少しずつ見えてくる。士貴の、家庭環境が。
士貴には双子の姉がいますが、彼女の存在が今作品のキモかと思われます。
あまり書いてしまうと壮大なネタバレになってしまうので控えますが、彼女の動かし方が素晴らしくお上手です。
士貴のネガティブさ。
彼の家庭環境。
そして、伊王野との恋。
そのすべてに、彼女が関わっている。
こういう展開の仕方がさすが小中先生といった感じ。素晴らしいです。
オメガバものって、作家さまやその作品によって若干世界観が異なりますが、今作品はオメガは虐げられる存在ではありません。むしろ、オメガのフェロモンにアルファは抗えず、自分の子を産んでもらう存在として描かれています。だからこそ、アルファ×アルファという伊王野と士貴の恋に、暗雲が立ち込めていく。
伊王野と、お酒の上での失敗、と言ってしまって良いのかな。身体の関係を持った後、伊王野から結婚を前提に、婚約をしようと提案されます。
伊王野を愛してしまった士貴と、そんな士貴の家柄から彼に求婚する伊王野。そして、そこに士貴の複雑な家庭環境が絡んでいく。視点は士貴で、だからこそ読者も士貴に感情移入してしまって、もう士貴が健気で可哀想で、読んでいてちょっと気持ちがとんでもないことになりました。
今作品は攻め・受け共にアルファというCPである、というのが大きな軸になっています。士貴もアルファなので、序盤、彼とオメガとの絡みの描写があります。詳細な描写はなくうっすらと関係があったなと分かる程度のものですが、受けさんが他の人物を抱く攻めだったという展開なので苦手な方は注意された方が良いかもです。
士貴の、アルファでありながら受け入れる側になる葛藤と、それを受け入れてでも伊王野に抱かれたいという深い想い、そして士貴のバックボーン(良家の子息であるという点)を望んだ伊王野との駆け引き。
二人の恋愛という軸だけではなく、士貴の葛藤や人として成長していく過程、伊王野に向けるひたむきな想いもきちんと盛り込まれていて、めちゃめちゃ萌える作品でした。
士貴の友人の、ミヤや渋谷といった登場人物たちも非常に魅力的で、彼らのスピンオフが読んでみたいなと思いました。
三廼さんの挿絵も良かった…!
綺麗で、二人のイメージがぴったり合ってる感じ。
ストーリー良し、キャラ良し、バックボーン良し、さらに挿絵良し。
文句のつけようのない、そんな神作品でした。
あらすじ:王子なα士貴が王様なα伊王野と一夜の過ち!? 初めて抱かれてしまった士貴だったが伊王野から突然「婚約しよう」と言われ……。
軽やかに始まったと思いきやシリアスでした。周りから見れば恵まれたαの士貴だけど家族の態度は酷い、けど周囲の期待を受けて完璧なαでいるのはしんどいなぁと思った。そんな士貴がより強いαの伊王野に戸惑いながらも惹かれていくのは必然かと。だけど、この伊王野は士貴に甘いけど本心が見えない。そんな中であれやこれやが起こり、士貴の選択は当然だと思ったし、結果的に上手くいって安堵しました。あれやこれやの部分はめちゃくちゃ切ないし、あの人達に憤りを感じた。だからこそ伊王野の行動に拍手士貴には幸せになってほしい
伏線から展開が想像できたけど、それでも涙したのは小中先生の巧さだなぁと思った✨
小中大豆先生の作品は必ず購入してます。
そして、毎回レビューに書いてますがとても引き出しの多い作家様でどのお話も違っててどれもが面白くて大好きです。
今回のお話もタイトルからして、α同士の恋のお話で前途多難な事が窺い知れました。
α同士の恋人達に襲い掛かって来る、Ωと言う敵がどんな罠を仕掛けてくるかとドキドキしながら読みました。
でもね、最初に波乱を持ち込んだΩは神門と士貴に対して2人にとても大事な絆を贈る事になるんです。
そして、いつ出張って来るかと待ち構えていたラスボス的なΩは、士貴の初めから薄い家族との縁を切るトリガーとなります。読んでて「コイツを悲惨な目に遭わせてやりたい!」と久しぶりに思うほど、胸糞悪いキャラでした。www
初めはとても気になる存在からどうしても手に入れたくなり、しまいには「運命の赤い糸」に導かれるまま恋に落ちて、そこには年齢だとか経験だとかは役に立たなくて、必死に士貴に愛をこう神門がとても素敵でした。
そして恵まれたように見えて、心に孤独を抱えながら必死に愛情と居場所を求める士貴がイジらしくて可愛いのです。
もろ私の性癖を突いて来る作品でした。
それから細かい事を言ってしまいますが、とても気になったので…。
11ページの12行目ですが「受精不能な精子」は「受精可能な精子」の間違いだと思うのです。読んでて意味が分からなくて何度か読み返してしまいました。
あと215ページの4行目の「ラッシュ用の抑制剤」は「ラット用の抑制剤」だと思います。
オメガバースの世界は自由ですね
今回のオメガバースに関してはα同士の恋と言う為かオメガの存在価値及びその作用があまりに不穏すぎてこれはほぼほぼ敵な設定だよなと思い
作中に出てくる2人のオメガどちらがどの弾を撃ってくるのか2人の恋物語の行方と同時にヒヤヒヤしながら読んでおりました
ネタバレありです
孤独を抱えながらも必死に生きていく士貴の愛されないことに慣れすぎているが故に自分が愛されていることに全く気がつかない悲しさがとても愛しかったです
神門が士貴を可愛いと思ってるのは確かだろうが
どういう風に思っているのか
物語の流れ的にはベタ惚れなんだろうと思いながらも所々の不穏な行動に絶対的な確信が持てない中
まず一発目のオメガからの銃弾がやって2人の関係のを変える一発が
二発目のオメガ弾が2人の関係の土台をひっくり返すくらいの勢いで
なーんーでーすーがー‼︎‼︎
その弾の種類と言うよりはその射手と状況があまりに醜くて醜くて全身の血液が一瞬にして沸騰する位頭にきました
他の方もおっしゃっていますが久しぶりになぶり殺したくなるキャラクターでした
そして怒涛のラスト40p
この展開は二次もので何回も読んだ展開ですがやはり切なくて切なくて
大団円を迎えられてよかったです
面白かった!