SS付き電子限定版
作家買いです。
人間の「闇」と言ってしまうとあまりに手垢がついた、時に薄っぺらくなる言い方で、上野先生の作品にはふさわしくないのではと感じておりまして。
自分の感情がわからない、他者から見て何を考えているかよくわからない、心のうちの「わからなさ」がありながら、それでも惹かれ合う、どうしたらわかり合えるか…という関係性が多く描かれていると思っています。
そのためキャラが不気味さを漂わせていることがあり、それがただ怖いのではなく、心の中の「わからなさ」故だというのがたまらなくクセになります(個人的にはちとせくんだけやたらポップに感じました)
それを最小限の説明、巧みな心理描写とストーリー展開で見せられるのが大好きです。
前置きが長くなりましたが
本作では、まず園山の三白眼のアップのコマが繰り返され、何を考えているかわからない不気味さを見せられる。先生の過去作かつとし感が蘇ります(ぞくぞくする)。
そして瀬田がただの堅物ではないことがわかってくる。
この進め方もおもしろい。
園山は生い立ちから何かや誰かに本気になったりなられたりすることはないと思っているようで。楽になりたかったから=苦しい。
それでも自分に執着し好意を寄せる瀬田が気になる。寝不足になり目の下にクマが出るほどに。
瀬田の、わからないから知りたい、好きというのはそういうことなんじゃないか…という言葉に園山は腑に落ちたんですよね。
だからキスした。ここで園山が三白眼でなくなり黒目にうっすら光が入るのがいい。
「なんでキスしたか知りたい?」←この2ページ背景が真っ白で2人だけの世界なのもいい
ラスト、園山のセリフがいいし、廊下の手前の影のまだらな感じがちょい不気味でたまりません。
園山の「本当」は「瀬田の言うことは本当らしい」につながっていて、それは本気で好きだということ、好きになってほしいということでしょうね。とこんな陳腐な言葉になってしまいすみません。
わからないから知りたい、それが好きだということ
キスの理由を知りたい
この終盤の描き方がすばらしかったです。
先生の作品の一連のテーマに通じる部分だと思いますし。
2人のアンバランスな感じにハラハラしながら読んでいたのですが、
強面の探偵吉見のいきなりの「ソノちん」呼びに爆笑しました。
その後のセンパイ呼びに喜んでいたり、円山もいい人でほっこりしました。
瀬田の上司も含め脇キャラの描写も大好きです。
表紙の帯に隠れる部分の大量の文字が瀬田の変人ぷり炸裂で笑いました。
再会は偶然。街中で助けを求められたエリート商社マンの瀬田がどん底まで堕ちた元同級生の園山から「オレのこと飼ってみない?」と言われるところから物語はじまります。
最初はちゃんと家政夫のようなことをしていてもすぐに仕事をおろそかにしてだらしない姿でパチンコをする園山。そのことに対して注意した瀬田にイライラした園山は出て行こうとし、そんな園山を瀬田は焦って引き留めようとします。
完璧に見える瀬田ですが、中学時代の彼の様子を見ると彼に発達障害があるんだと思われます。自分の思ったことを遠慮なく言ってしまうことで、周りから空気が読めない・変わっていると思われます。でもそんな中、ちょっと助けてくれた園山を瀬田は気になっていきます。
園山も家族に恵まれなかったり、SNSで炎上してどん底まで堕ちて行ったり、無気力になっていく様子が描かれていきます。
実は最初の再会は偶然ではなく、瀬田が随分前からストーカーをしていたことも、探偵を雇っていたこともわかります。そして、思い込みが激しい瀬田は、だんだんと自分を理解してくれる、彼を理解できるのは自分ではないかと思っていました。もちろん、園山には嫌いだと拒絶されます。
それでも瀬田は真面目に考えて、上司に相談して(ここもおかしいけど)独りよがりで自分の気持ちだけ押しつけて園山の気持ちを考えていなかったことに気づきます。
そして、瀬田から離れた園山も瀬田のことで頭がいっぱいになっていきます。イライラするのに気になってしまいます。誰かにそれほど執着されることも愛さることも園山にはない経験だったのかもしれません。
離れた方がいいのか近づいた方がいいのか、一緒にいることに意味があるのか、なぜキスをするのかわからないまま最後にふたりはセックスをします。だからと言ってふたりが付き合うとかではないんでしょうね。
「アンバランス・バランス」絶妙なバランスで行ったり来たりしている不思議なふたりの関係。正解はなんなのか?ハピエンなのか?
とりあえず1度読んだかけではわからないので何度も読んでみたくなる、でもわからないまま…そんな上野ポテト先生らしい考えさせられる物語になっています。
展開的にはページが進めば進むほど分かって来る事が多くて、読みながら考え、考えると同時に知っていけるような読み応えがあります
その分かって行く上での「過去」や「ストーリーの裏側」の組み込みの上手さや醍醐味のは面白さを感じつつも、だいぶフィクション感はあるような気がしました…
全くの作り物って事を感じるのではなく、これがリアルだったらちょっと辛いなぁ~って思ってしまうような事もそこそこあるので、、、平和ボケ気味な私の脳は「フィクションであって欲しい」という願いが先行して読んでしまっていたかも知れないです
SNSの特定系とか、知らぬ内に調査されてるとか、、、自分の身に起こったら結構怖いかも知れない( º言º)←無駄な心配www
起こる事象はフィクション感を感じるものの、そこに対して生まれて来る感情や言葉には「生身の人間らしさ」をすごく感じます
攻めの中に生まれる諦め然り、受けの無意識下の執着然り、、、
ネガティブな感情だけでなく前向きな言葉も多くあって、特に彼らと程良き距離で関わってくれる探偵事務所の所長さんや瀬田(受け)の上司の田村さんなんかが非常~に良い味を出して、この作品に奥行きを生んでいたように感じます
こういう人間の感情を誇張なく具に描き出すのが先生の上手さだな~とつくづく思います!!
この辺は実の所、メインの2人よりも脇の存在が大きかったかも知れないデス
メインの2人はどっちもどっちで自分なりの正義や芯があるんだと思います
だからこそ上手くいかなかったり、息苦しさを感じるんだろうなっていうのも分かる
そんな所にお互いが共鳴し合ったのか、相手を通して自分を見るきっかけになったのか、、、
何かのセンサーが触れた2人だったんだろうな~というのをぼんやり感じました
何となくハッキリ分かるような心の通い合いって感じには私には受け取り切れなくって、、、ちょっと難しさはありました
これは勝手な私の解釈ですが「恋の萌え」よりも「友情や同志」といった「繋がりを感じる絆」を味わう方がしっくり来たかな?と思いました
なので、、、終盤の流れから描き下ろしがどうにも自分の中に入って来にくかったのです( ;∀;)
特に2人の気持ち、、、ココが掴み切れなかったなぁ~・・・
掴み切れない良さ!みたいなのを含めて空気感を楽しむ、感じる、受け取るって作品なんだと思います
攻めの園山の気持ちはきっとこれから固まっていくのかな?
受けの瀬田くん、、、彼のちょっと難儀な性格はなんだか知れば知るほど愛おしく感じました(*´ェ`*)
ただ、彼の園山への学生の時も含めてカラダが反応したのは性癖だったのか?気持ちから来るものだったのか?この点はやっぱり良く分からなかった、、、という点が残りました
パッと見た感じだと評価も様々なようなので、自分とは違う感じ方、見方が出来る、読者の数だけ正解がある作品なんだと思います!
是非、色んな方のこの作品への感じ方を知りたいな!!感覚の幅を刺激されたいな!って思います|q•д•,,)チラッ♡
修正|描き下ろしで絡みありますが、修正自体は不要(受けのアンダー描写はありました)
やっぱり上野ポテト先生の作品世界は独特。
他の誰ともかぶらないところが素晴らしい。
さて、本作。
女性にモテるエリート商社マン・瀬田が、路上で絡まれている男を助ける。
その男は偶然同級生の園山で、住む場所の無い園山を自宅で住まわせる事にするが…
…というお話。
実は瀬田は中学時代に園山がイジメを助けてくれた事があって園山が好きなわけで。
一方園山はヒモ男で、最初はご飯作ったりしてるんだけど次第にクズっぽさを出してくる。
読者としては瀬田に同情的な気分で読むわけだけど…実は偶然は偶然ではなく…という転換があって、傷つけあってそれでも…っていう展開へ。
わかりやすい園山のクズっぷりはともかくも、KYでド真面目みたいな瀬田も自分勝手でひとりよがりで。
この辺が作者様の言うどうしようもなさっていう部分なのかな。
でもクセって誰にでもあるでしょう。だからこの2人のなんともぼんやりした微ハッピーなようなやっぱり違うような曖昧エンドがなぜだかしっくりくる。
先生の前作が好きだったのでこちらも購入させて頂きました。今回も、中盤以降にえ!?という驚きがあってストーリーにどんでん返しが起きていて惹き付けられました。
商社マンの瀬田と中学時代の同級生でヒモとして飼われることになった園山のお話です。
園山の何をするにも無気力(だけどやらせたらできる)所と、生真面目で人の気持ちを読んで行動する事が苦手な瀬田。中学時代も人気者の園山に対して陰キャで思った事はすぐ口に出るタイプの瀬田はいつも一人。2人はまさに正反対な人種。
2人の間に別段大きな事件が起きるわけでもないのですが、結局人間なんて相手が何を考えてるかなんて分からないよね。分からないからこそ知りたいと思うし、近付きたいと思う。違うからこそ相手に惹かれて分かりたいと思う生き物なんだな…とぼんやり考えさせられるお話でした。
2人共、本当にお互い様にどうしようもないヤツらでした。だけど、不器用な2人がとても愛おしいと思える作品です。