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根底には痛々しさがある雰囲気で、その上でメインの2人が綱渡りをするように恋愛しているような印象を受けました。でも、その綱渡りがあまりハラハラするものではなく、意外に太い綱だったから結構安定していて滅多に落っこちない。そんな実験でした。母親との関係性から、ネガティヴな感情を表に出せなくなってしまった千紘。由一はそんな彼の傍にいながらその感情の機微に気付けなかった過去を後悔するけれど、ずっと傍にいてくれる存在、それだけで千紘は随分救われてきたのだと思います。そんな相手と恋仲になれたのだから、彼の幸せはきっと計り知れない。少し欠けている千紘を愛おしい、可愛いと思える由一ですから、彼の愛も千紘の寂しさを埋めるには十分すぎるほど深いのだと感じました。
電子版の表紙は帯がくっついていてしかも「春のKanipan祭り」と書いてありました。春のKanipan祭りとは! 私には初読みの作家さんでしたが、帯にそのように書かれるということは有名な作家さんなんだろうなと思って検索したら、最近の画風がだいぶ別人のようになっていました。oh……。
この『愛の実験』のどこが1番好きかというと、絵です。可愛いシンプルな絵柄のキャラクター。その背景は細かく丁寧に描き込まれているのですが、キャラを埋没させず引き立て、しかも地方の街の風景が抒情的に描かれているのです。
風景が、子どもという存在の世界に対する無力さや、人生のままならなさをそれとなく語るといいますか。
内容は、あらすじにしてしまえば良くある学生BLになってしまうのですが、シンプルな絵柄にちょっと癖のある人物たちの存在感と、学生生活の閉塞感を、背景の描き込みが下支えし、独特の切ない世界観を作り上げています。
この作品は絵が肝だと私は思ったので、Kanipan先生を興味深い作家さんだなと思いつつ、絵柄が変わってしまったかぁ……とちょっと残念にも思ってしまったのですが、やっぱりこのような作品を描いた方が描いたものは何でも面白そうだなと期待したりもします。
旧版の方が紙本でずっと欲しくて、だけど全然重版されなくて、
もはや紙本では手に入らないと半ばあきらめていただけに
今回の新装版刊行はめちゃくちゃ嬉しかったです…!
そして、旧版では未収録だった初期短編も併せて収録とのことで
ものすごい厚みでした。嬉しい。
本編は幼馴染の由一と千紘の物語。
高校生の由一はある日、千紘から告白されて…。
その部分だけあらすじを読むと、
子供の頃から幼馴染みに片想いしてきた二人のアオハルBLを
思い浮かべそうなものですが、どうやらそうでもないらしい。
千紘は精神を病んだ義母から日常的に暴力を受けている。
いつも生傷だらけでそれでも何てことないように笑う千紘を
由一はただ傍で見守っていることしかできないでいます。
そんな千紘からの突然の告白に驚く由一ですが、
不思議と嫌悪感はなく、千紘を意識するようになります。
母親から傷つけられたときと同じようにへらへらと
笑いながら気持ちを告げてきた千紘。
だけど、その根底には誰かの特別になりたいという
千紘の切実な想いがありました。
父親からは放置され、義母からは罵倒され、
誰からも愛されない日々に孤独を募らせてゆき…
そんな千紘にとっての救いは由一の存在でした。
優しい由一なら想いを告げても、どんな自分でも受け容れてくれるはず。
そうすれば、誰かの特別になることができる。
由一の愛を試すような、そんなどこか打算的で、縋る想いからの告白でした。
タイトルの「愛の実験」とはまさしくこれでは?
そして、実験の結果は…
戸惑いながらも千紘の想いを受け止めてくれた由一。
とはいえ、はじめは“恋”ではなかったのかもしれません。
恋情よりも先に無自覚な欲望先行のキスから始まり、
探り合うようなぎきこちないセックスで繋がり、
触れ合う度に愛情や執着が深まってゆく二人。
どちらが、ではなく、互いに溺れあってゆく、共依存愛。
一応他のモブ友人たちも登場はしているものの、
二人ともお互いがお互いのことしか見えていない
二人きりの世界なのです。
可愛らしい絵に似合わず、ほの暗い空気が漂う
ストーリーの結末が気になってページをめくる手が止まりませんでした。
最後の最後までのめり込むように読み入りました。
小学生からの幼なじみ同士。
継母からの暴力を笑って受け入れるような千紘と、その千紘から告白され、困惑しかない由一のお話です。
表題作は、一話一話が短いです。
えちえちです。
そして、登場人物がトラウマありです。
けれど途中で、千紘に暴力を振るっていた継母はいなくなります。
それからふたりは、別々の学校へ進学します。
それでも会い続けるふたり。
互いにとって「特別」な存在であるふたり。
歪なようで、帯にある「唯一無二」の恋という言葉がぴったりな恋のお話の新装版だったと思います。
そして、幻の短編と呼ばれている「視線」。
中学生の頃、暴行を受けて以来マスクが手放せなくなった笹木がトラウマ克服しようと、唯一マスクを外すことができる長谷川とのお話。
こちらもやはり、笹木が過去のトラウマに翻弄されている展開でした。
「心臓のありか」
ラベル貼り仕事の先輩と後輩のお話。
ちなみに、先輩は人を好きになるのが初めてらしい。
「答え合わせ」
アイドル好きの教師と、その秘密という名の弱みを握った生徒とのお話。
最終的に、教師は教師を辞めてしまう結末。(ネタバレすみません!)
春のkanipan祭りに相応しい、分厚み(紙コミックスびっくりしました!)、読み応えたっぷり、の4作でした。
個人的には、一見して歪んでそうなふたりの恋をじっくり読むことができた、表題作が好きでした!!
kanipan先生の既刊作品は拝読させて頂き、今作も作家買いさせて頂きました。
個人的、各項目5段階で
エロ 3
痛々しい 2
青春 2
しんみり 1
な感じだと思います。
旧版は読了済みで、今作の新装版は、表題作の他に短編が3作品同時収録されています。
物語り序盤はまだ、中学生の由一くんと千紘くんなので、青春もですが思春期特有の初々しさがありますね。
でも千紘くんが、継母から暴力を受けて、傷だらけになっている少し痛々しい描写があるので、苦手な人は用心してください。
中学生から高校生、そして大学生になっていく由一くんと千紘くん。周りの環境は何度も変化し、どこか危なっかしい雰囲気もありながら、それでも2人の関係性は変わないのが、何だか安心しますね。めちゃくちゃ甘々って訳ではないが、絶妙な距離感が良いですね。
旧版の時の特典だったものや電子描き下ろしのものも収録されているので表題作の「愛の実験」が存分堪能出来ます。
お互いに思春期に振り回される由一くんと千紘くんの初々しい青春や特別な存在や、だからこその執着心や独占欲を抱くお話や痛々しくて可哀想な屑をテーマにお話など、様々な物語りが味わえるので、是非とも読んでほしいです。
