単行本未収録コミック付
己で刻んだ印を背負い、愛を求め続ける男たちの物語
阿仁谷先生は「どうしても〜」だけ既読です。
ねっちょりした絵と手描き文字がそこまで好みではなかったのですが、本作ではそれが合っていたと思います。
ツイッタで、ぬるくない作品を読みたいと呟いたらフォロワさんが本作をおススメして下さり…確かにぬるくなかった。読み応えありました。
バッドエンド、救いがない、読後感悪い…という意見が多いみたいですが私はそう思わなかった。
これが現実よね、という印象です。
そして、そこに愛があった(超重要)。
だから、死んだり、意識不明になったり、HIVになったり、事実としては救いがないけど
『皆が幸せな夢を見られますように』
『せめて夢だけでも』
…償いながら生きようね
という言葉がすんなり入ってくる。
シビアな現実を受け入れた上で、希望を持って生きるという。
HIVのくだりは、カタギは自分が感染しているのをわかっていて、久保田と行為をして復讐した。
久保田もそれをわかっていて受け入れた。
ということなんでしょうね。
だから、お互い「謝らない」と言っている。
他の意味もあるけれど。
武藤と有馬の甘いひとときが唯一の癒し…と思ったら夢?だったとわかった時はさすがにずどんときました。
私はいわゆる夜明けの腐みたいで、闇モノやバッドエンドは苦手なんですが、ヤクザモノの場合、暴力や死はある程度覚悟しているので、まだ大丈夫でした。
だってそこには愛があったから(超重要←2回目)。精神的には希望もあったし。
余談ですが、それより説得力なく愛を感じられない上辺だけの闇(病み)モノがめちゃくちゃ苦手です。ただ狂気や背徳感のエロを描いたようなやつ。
暴力も苦手ですが、本作ではまだ大丈夫だったのはヤクザモノということと、痛さ、悲惨さを淡々と描写していたからだと思います。
例えば、カタギが輪姦されたり、タバコの火で火傷させられたりしても、本人的にはケロッとしているのが私にとってはありがたかった(カタギにとっては、武藤と有馬のことの方が辛かった)。
久保田も痛めつけられるけど、ドMのような反応で辛いというよりむしろ進んで受け入れている?と感じられたし。
痛さや悲惨さを過剰に演出されるのがどうも苦手で。それは事実だけで十分伝わるので、最低限の描写が好みです。
そして、読後感が悪くなかった要因は久保田のキャラも大きいと思います。
キャピっとした普段?と、刑事として行き過ぎと思われるほどの行動とのギャップ。
愛する人を逮捕したり、命をはってまで「僕の仕事」をする。
そこまでするのはなぜなのか。どんな信念があるのか。どんな過去や背景があるのか。
嫌でも気になります。
久保田の深掘りを中心に、カタギとの続編があれば理解や物語がもっと深まっておもしろそうですが。
でもHIVがあるから厳しいか(悲)
同時収録作は、安奈の精神状態と生き霊との絡みがリンクしていておもしろかったです。
「どんとこいフロイト野郎」がツボでしたw
浅い知識ですが、フロイトの夢分析ってたいていエロスにつながっていたような。
なので、お話とピッタリだと思いました。
これまでのレビューの評判やらを読んでいで、かなり凄い作品なんだろー!と、思い〜
ずっと、読みたかった作品。
念願叶って〜ゆっくりじっくり堪能しました。
いやぁ〜、衝撃と満足感が半端ないです。
それぞれの立ち位置があり、事情があり、まぁ〜なんとも言えない気分です。
だけど、どんな形でもしっかり愛はありましたね。
最後に、久保田が背景で、
“幸せの雛形なんてどこの誰が作ったの? ”
これで、締めくくられてるのが納得しました。雛形なんていらないね。
これは、この世の中へのメッセージでも良いかも。
間違いなく、神作品!
こんな、素晴らしい作品に出会えて良かった。
「救いがない」とか「痛い」だとかいうレビューがズラリで、かなり読むのを躊躇っていた作品です。
1話目を読み終わった時点ではややバドエン寄りのメリバコメディ?っていう印象だったのですが、2話、3話、そして4話目の「みんなの唄」でオムニバス全てが繋がり、事実が明らかになる展開でした。
辛い、たしかに辛い。
個人的には武藤と有馬には夢の中みたいにささやかな幸せがあって欲しかった。
ヤクザものでも甘々お花畑〜な作品がありますが、その対極にあるような作品です。
"誰かを傷つければ必ず報いを受ける"
そのセリフのまんまの結末が彼らに訪れています。
そして久保田もまた、その報いを自ら受けようとしている…というお話でした。
同録の好きな人の生き霊を呼び寄せてしまうお話は、少しグロい描写もありますが、甘めなのでバランスは取れてるかもですが『刺青の男』シリーズだけで纏めても良かったような気がします。
余韻がすごいお話なので、最後まで表題作シリーズに浸りたかったかも。
評価は萌えはあまりなかったのですが、単純に神から少しマイナスで萌2としました。
何度読み返してもウーンこれはとんでもない作品だなと唸らせられます。
BLを読み始めてからかれこれ10年以上経ちますが、未だにこの作品を超えるBLは読んだことありません。
古い作品であることは承知していますがどうしてもこれをレビューしなければと思いこれを書いています。
まず、キャラクターの設定や作りこみが秀逸です。メイン登場人物は久保田、カタギ、坊、武藤と4人いますが、ページ数が限られているのにも関わらず1人1人キャラがたっているというか、どういう人物かがハッキリつかめます。2次元的ではなくちゃんと奥行きのあるキャラクターです。特に久保田というキャラクターは実に魅力的ですね・・
ストーリーは最後の「みんなのうた」を読むまで全体像がわかりません。その構成力にも脱帽です。少し群像劇のように進み、最後怒涛の展開ですべてがまとまる。突き落とされた感がすごいです。バッドエンドでもないと個人的に思いますが、重いストーリーが嫌いな方にとってはこの作品はNGかもしれません。
攻めの受け化があるのでリバ的要素が地雷な方は要注意。また、この作品が出たのは2008年であることを意識して読まないと、最後に出てくるとある出来事に対して「?」となるかもしれません。個人的にはツッコミどころは数か所ありましたが、いずれも冷めてしまうようなものではないです。
阿仁谷ユイジ先生の作品は一通りすべて読んだことありますが、本作が圧倒的ベスト作だと思います。未読の方には是非読んでいただきたいです。
「都合が良くて甘いだけのBLに飽きた方におすすめ」・・とあったので、読みました。
たしかにこの作品にあるような不条理が、現実なのかもしれない。
どんなことからも、目をそらさず、逃げないで、見届けてあげるのが愛なんでしょうね。
讀み終えるまで胆力を必要とする物語でした、あー 重い 重い。
裏切り、復讐、ゲイ、やくざ、HIV、流血・・あらゆる闇の鬱展開とバッドエンド。
転落人生を止められない入れ墨を入れた人、寄り添う連れ合いはどこか狂ってる。狂うことで、自分を保っているのかもしれない。
ボクシングで学生チャンピオンになった者が身近に二人居て、一人は事故死、もう一人はこの作品のように、何をやってもダメ人生で、最後は病気で吐血して死んだ者が居たことを、この作品を読んで思い出してしまった。
頭に障害を残す体に良くないスポーツは廃止にしたらいいのに。
この作品には、脳漿が飛び散るシーンがありました。苦手な人は、ご注意ください。